情報技術(information technology)分野の国際規格(international standard)の編集者(editor)の仕事(task)、道具(tool)、能力(skill)で、他の分野の国際規格のエディタと大きな違いは道具(tool)かもしれない。
情報技術分野の国際規格の編集者であれば、国際規格の編集作業にあると便利な道具を選んだり、組み合わせたり、改良したりすることができるはずである。
日本から国際規格のエディタとして活躍されている方々は、大勢お見えになる。横の連絡はあまり密ではない。
関連する分野が複数にまたがるような場合には、連絡(liaison)担当を決めて情報交換をする。
連絡(liaison)は委員会(committee)の議場(chair)・作業部会の招集者(convener)がなることもあれば、編集者(editor)がなることもあれば、専門家(professional)がなることもあります。
<この項は書き書けです。順次追記します。>
#仕事(task)
原案(draft)作成
NWI(new work item)の時点で
国、団体、組織の標準として発行済の文書がついている
それなりに整った原案がついている
概要程度で最終案の分量の半分未満
などいろいろある。
道具1 Webブラウザ
elements_required_to_upload_in_submission_interface.pdf
https://www.iso.org/files/live/sites/isoorg/files/archive/pdf/en/elements_required_to_upload_in_submission_interface.pdf
道具2 MS Word(all versions)
なぜ国際規格の編集の道具がMS Wordであるかの根拠は普及率以外には見当がつかない。Open Officeが対応しているISO/IEC 26300 Open Document Formatと、MS Wordが対応している ISO/IEC 29500 Office Open XMLと、優劣をつけている訳ではないはずである。
ISO/IEC 26300:2006 Preview
Information technology -- Open Document Format for Office Applications (OpenDocument) v1.0
ISO/IEC 29500-1:2016 Preview
Information technology -- Document description and processing languages -- Office Open XML File Formats -- Part 1: Fundamentals and Markup Language Reference
道具3 PDF Reader
文字フォント、体裁など印刷することを前提とした文書はPDFでの配布が主である。PDFを読むソフトウェアでは、PDF Readerと同等の表示ができればよい。
道具4 画像ソフト
-DWG
-DXF
-AI
-EPS
意見の集約
MS Excelを使って、各国の意見を整理し、文書順番に同じ意見、類似の意見をまとめて回答を作れるようにする。
複数の意見に違いがあるかどうかを確認し、違いがあれば、それぞれ別に処理する。
採否の案の作成
意見を集約した表に、採否(accept, reject)を記載し、受け入れる場合には、どのような変更にするか、意見にある案と同等かどうかなどを記載する。
審議に基づいた修正案の作成
採否の案について合意ができれば、採否のあんの表に基づいて本文に加筆する。
想定演習1
多数の国が賛成しているが、反対意見の方が技術的な根拠がはっきりしている場合。賛成の国は、必ずしも意見を述べなくてよいため、投票に参加することが目的の場合には賛成する可能性がある。意見がないとどのような技術的、社会的背景からであるかがわかりにくい。
解決策1.1
反対意見の技術的根拠に関するまとめを、Informative Annexとしてつけ、技術的に先に進もうという技術者の道しるべとする。
解決策1.2
反対意見の技術的な根拠に関する註記を付け、常に真な事象ではないことに気がつくようにする。
解決策1.3
TS, TRなどの国際規格(IS)以外の文書として発行することを提案する。しかし、賛成が次の段階に進める数ある場合には、この選択肢を実現することは難しい。
解決策1.4
技術的な根拠が希薄であれば、規格に適合していることを確認する方法が提供できない可能性がある。そのため根拠が希薄な部分はshall文である規定ではなく、should文である記述にする。
これも、個別の内容で合意することは可能であるが、全体をこの方法で変更すると、賛成多数の意味がなくなる可能性がある。
解決策1.5
時代による技術変化が背景にあれば、その旨を明記し、速やかに次の版の改訂に入ることを決め、注記などにその趣旨がわかるように記載する。
上記のいずれの解決策も、その時々のISO, IECの変更によっては合規則的な手段ではないかもしれない。その時々のISO/IECおよびISO, IECのそれぞれのDirectives等を参照するとよい。
ISO/IEC事務処理要領/ISO/IEC専門業務用指針
http://www.jisc.go.jp/international/isoiec-ref.html
想定演習2
審議に参加している国と投票に参加している国の包含関係が、地域、該当する技術の産業の存在の有無とかけ離れていて、投票している国が当事者でない場合。規格の内容そのものをより当事者の多い分野、段階に焦点を絞る。
想定演習3
審議に参加している国に、相互に同時に使わなければ矛盾しない仕様があり、一つの仕様に必ずしも決める必要がない。
複数の仕様を本文に並列に記載し、相互に同時に使わなければ矛盾しないことを記録する。
能力(skill)
英語を読む
主たる文書は英語である。英語で書かれた文章を理解することが出発点である。
英語で書く
意見は英語で書く。そのため、英語で書く能力が必要である。
単語帳
数学、仕様書、プログラムなどではないため、記号、数字は省略し、アルファベットだけの単語帳を作成した
プログラミング言語AWK,A. V. エイホ,トッパン, 1989
{
gsub(/[`'&%$-.,:;!?^*_~=|@\\\#<>(){}0123456789\[\]"]/," ")
for (i=1;i<=NF;i++)
count[$i]++
}
END {for (w in count)
print w,count[w] | "sort -f"
}
上記のプログラムだとtrコマンドで事前に大文字を小文字に変換しておくとよい。
$ tr '[:upper:]' '[:lower:]' < org.txt > lower.txt
$ awk -f wc.awk lower.txt
The GNU Awk User's Guide:
https://www.gnu.org/software/gawk/manual/html_node/Word-Sorting.html
# Print list of word counts
{
$0 = tolower($0) # to lower character
gsub(/[^a-z \t]/, " ", $0) # only alphabet, space and tab.
for (i = 1; i <= NF; i++)
count[$i]++
}
END {
for (word in count)
printf "%s\t%d\n", word, count[word]
}
単語帳を作ったら、Concise Oxford English Dictionaryに対応づけをつけて見る。
ISO/IEC 2382-37:2017 Preview
Information technology -- Vocabulary -- Part 37: Biometrics
https://www.iso.org/standard/66693.html
Words that are bolded are defined in this document. Words that are not bolded are understood in their natural language sense. The authority for natural language use of terms in this document is the Concise Oxford English Dictionary, Thumb Index Edition (tenth edition, revised, 2002). Words used in their natural language sense are considered out-of-scope for further definition in this document.
イギリス人がエディタの国際規格であっても、Concise Oxford English Dictionaryに掲載のない単語を使うことがある。
もし、辞書にないの計算機科学の新しい用語であれば、規格で定義すればよい。規格で定義しない用語であれば、辞書に掲載のある用語を使うとよい。
あまり馴染みのない、特定の分野、特定の地域での用語であれば、言い換えを要求するとよい。
機械翻訳
機械翻訳ソフトに、規格の定義と、上記Concise Oxford English Dictionaryを組み込んでおけば、それなりの検査が可能である。
機械翻訳ソフトの機能が柔軟すぎて、誤訳や意訳や特定の団体で使う用語に変換する可能性がある。規格専用の機械翻訳ソフトを育てるとよい。
ただし、国際規格であっても、分野ごとに用語構造は異なり、複数の分野にまたがる国際規格では、用語の交通整理が困難なことがしばしばある。
機械翻訳ソフトの利用方法として、英語を日本語にし、日本語を英語にして確認する方法をとっていた。
機械翻訳の学習機能で、最近対象にした事項を学習し、次の翻訳に生かす機能がある。この機能があると、英語を日本語にし、日本語を英語にするとさっきの訳を使うため、検査に利用できなくなった。
p.s.
参加していたISO/IEC JTC1 SC7では、編集者会合(editor's meeting)として編集者が知っていると良いことを伝える会合があった。また、SC7WG10では、英語がNativeではない編集者には、英語がNativeな編集者と組み合わせると言う方法をとっていた。
自分もISO/IEC 15504 part2の編集者をしているときは、イギリスのCatriona Markie(British Telecom)と組になって作業していた。
参考文献
WTO/TBT協定
http://www.jisc.go.jp/cooperation/wto-tbt-guide.html
ISO/IEC Directives, ISO/IECの規定・政策等
https://www.jsa.or.jp/dev/std_shiryo/
日本工業規格JIS Z8301:2008規格票の様式及び作成方法
http://kikakurui.com/z8/Z8301-2011-01.html
JIS等原案作成マニュアル - JISC 日本工業標準調査会
http://www.jisc.go.jp/jis-act/pdf/jis-manual.pdf
自己参照
国際規格を読む前に
国際規格のNormative Reference
プログラマが知っているとよいかもしれない法律1000を目標に収集中。
C言語:未定義、未規定、処理系定義
権利と義務の前に。仮説(147)
<この記事は個人の過去の経験に基づく個人の感想です。現在所属する組織、業務とは関係がありません。>
文書履歴
ver. 1.00 初稿 20180307
ver. 1.01 参考文献等追記 20180310
ver. 1.02 機械翻訳ソフトの利用方法加筆 20180323
ver. 1.03 参考資料追記 20220219
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