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血液検査には、項目数が少ないものから多数のものまでいろいろある。
測定したい疾患等により、測定項目も変化する。

ここでは、医学的立場ではなく、プログラマとして検査対象の計算方法、検査誤差範囲、精密検査の必要の有無などについて整理する。

また、医療の大規模データを解析する際に、血液検査の項目の関連性について、従来の知見以上の知見が出てくる可能性がある。特に、遺伝子解析データとの付き合わせにより、予防、発病、治療、再発防止など様々な可能性を検討する。

#基準値範囲
検査項目の値のうち、ある範囲内にはいっていれば、それ以上検査をしない境界を決めていることがある。
あるいは、ある検査項目は、この範囲内であれば、特定の疾患についての検査をしなくてもよいというような目安の範囲の場合もある。
同じ測定項目であっても、疾患の種類によっては、必要な水準が異なることがある。
そのため、項目と範囲は1対1対応ではない。

また、個体差があり、特定の個体の生まれてからの値がある場合には、その個体の基準値範囲を決めることも可能かもしれない。

#基準値範囲表

基準値範囲(上界) 下界 単位 上界/下界 過去の最低値 過去の最高値 最高値/最低値
白血球数 4.5 7.7 10^3/ 1.71
赤血球数 4.32 5.07 10^6/ 1.17
ヘモグロビン 13.5 15.7 g/dl 1.16
ヘマトクリット 40.4 46.9 % 1.16
MCV 88.6 97.3 fl 1.09
MCH 29.5 32.8 pg 1.11
JCHC 32.8 34.3 % 1.04
RDW 12.2 13.5 % 1.1
血小板数 156 364 10^3/ 2.33
色素指数 0.9 1.1 1.22
5-Baso %
5-Eosino %
5-Neutro %
5-Lymph %
5-Mono %
5-Eosin(ac) 0 0.4 10^3/
5-Neutro(ac) 1.5 7.5 10^3/ 5
5-Lymph(ac) 1 4 10^3/ 4
総蛋白 6.7 8.3 1.23
アルブミン 4 5 1.25
CRP 0 0.3
尿素窒素 8 22 2.75
クレアチニン 0.6 1.1 1.83
尿酸 3.6 7 1.94
Na 138 146 1.05
K 3.6 7 1.94
Cl 99 109 1.1
総コレステロール 128 219 1.71
HDLコレステロール 40 96 2.4
LDLコレステロール 60 139 2.31
中性脂肪 30 149 4.96
LP(a) 0 30
総ビリルビン 0.3 1.2 4
ALP 115 359 3.12
γGTP 10 47 4.7
AST 13 33 2.53
ALT 6 30 5
LD 119 229 1.92
CK 62 287 4.62
血糖 70 109 1.55
HbA1c 4.6 6.2 % 1.34
A/G比 1.04 1.84 1.76
eGFR/1.73m^2 90 ml/min
UN/CREA
AST/ALT
LD/AST
γGT/ALP
LDL/HDL
non HDL mg/dl
LDL計算値 mg/dl
浸透圧計算値 m0sm/l
乳ビ
溶血
黄疸
BNP 18.4 pg/ml
HBs抗原精密 -
HBs抗原 IU/ml 0.005 IU/ml
HCV抗体 -
HCV抗体カットオフ値 0.1 0.9 C.O.I 9
梅毒STS(定性) -
梅毒STSカットオフ値 0.1 0.9 R.U. 9
黴毒TP(定性) -
黴毒TPカットオフ値 0.1 0.9 C.O.I 9
アポ蛋白AI 119 155 mg/dl 1.3
アポ蛋白AII 25.9 35.7 mg/dl 1.37
アポ蛋白B 73 109 mg/dl 1.49
アポ蛋白CII 1.8 4.6 mg/dl 2.55
アポ蛋白CIII 5.8 10 mg/dl 1.72
アポ蛋白E 2.7 4.3 mg/dl 1.59
脂肪酸4分画 #DIV/0!
アラキドン酸 113 166 μg/ml 1.46
エイコサペンタエン酸 17 68 μg/ml 4
ジホモーγーリノレン酸 22 43 μg/ml 1.95
ドコサヘキサエン酸 56 109 μg/ml 1.94
EPA/AA比 0.11 0.5 4.54
DHA/AA比 0.25 0.81 3.24
(EPA+DHA)/AA 0.3 1.11 3.7

上界/下界の値は、基準値範囲の比率を示す。
1.04のような範囲の狭い項目もあれば、4,5,9のように広い範囲の項目がある。
同じ個体で経年測定し、その値の最高値/最小値が、基準範囲との関係で考えることもあるかも。

何か特定の1項目の値が単独で意味を持つ場合もあれば、複数の項目の関係が重要な場合もある。
その場合には、計算項目としてA/Bのように計算項目を設けることがある。

#略号(abbreviation)
AA, amyloid angiopathy, アミロイドアンギオパチー ?? , https://www.yodosha.co.jp/yodobook/word/index_d.html
ALP, alkaline phosphatase, アルカリホスファターゼ, https://www.yodosha.co.jp/yodobook/word/ALP.html
ALT, alanine aminotransferase, アラニンアミノトランスフェラーゼ, https://www.yodosha.co.jp/yodobook/word/ALT.html
AST, aspartate aminotransferase, アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ,アスパラギン酸アミノ基転移酵素, https://www.yodosha.co.jp/yodobook/word/AST.html
Baso, basophil, basophile(好塩基球)

BNP, brain natriuretic peptide, 脳性ナトリウム利尿ペプチド, https://www.yodosha.co.jp/yodobook/word/BNP.html
CK, creatine kinase, クレアチンキナーゼ, https://www.yodosha.co.jp/yodobook/word/CK.html

C.O.I, cut off index(C型肝炎ウイルス検診)

CRE(Cre), creatinine, クレアチニン ??, https://www.yodosha.co.jp/yodobook/word/CRE%2528Cre%2529.html
dl, deci litre, デシリットル, https://dic.nicovideo.jp/a/dl
eGFR, estimated glomerular filtration rate, 推定糸球体濾過量(率), https://www.yodosha.co.jp/yodobook/word/eGFR.html
Eosino, eosinophile(好酸球)

EPA, eicosapentaenoic acid, エイコサペンタエン酸, https://www.yodosha.co.jp/yodobook/word/EPA.html
DHA, dihydroxyadenine, ジヒドロキシアデニン, https://www.yodosha.co.jp/yodobook/word/DHA.html
fl, femto litre, フエムトリットル, https://ja.wikipedia.org/wiki/平均赤血球容積
HbA1c, hemoglobin A1c, ヘモグロビンA1c, https://www.yodosha.co.jp/yodobook/word/HbA1c.html
HBs, hepatitis B surface, B型肝炎ウイルス表面, https://www.yodosha.co.jp/yodobook/word/HBs.html
HCV, hepatitis C virus, C型肝炎ウイルス, https://www.yodosha.co.jp/yodobook/word/HCV.html
MCV, mean corpuscular volume, 平均赤血球容積 , https://www.yodosha.co.jp/yodobook/word/MCV.html
MCH, mean corpuscular hemoglobin, 平均赤血球ヘモグロビン量, https://www.yodosha.co.jp/yodobook/word/MCH.html
CRP, C-reactive protein, C反応性タンパク, https://www.yodosha.co.jp/yodobook/word/CRP.html
HDL, high density lipoprotein, 高比重リポタンパク, https://www.yodosha.co.jp/yodobook/word/HDL.html
I.U., international unit Japanese Committee for Clinical, 国際単位日本臨床検査標準協議会, https://www.yodosha.co.jp/yodobook/word/IU.html
LDL, low density lipoprotein, 低比重リポタンパク, https://www.yodosha.co.jp/yodobook/word/LDL.html
LD, lactate dehydrogenase, 乳酸脱水素酵素, https://www.yodosha.co.jp/yodobook/word/LD.html
LP, lamina propria, 粘膜固有層 ?? ,
https://www.yodosha.co.jp/yodobook/word/LP.html
m0sm, mili osmolality(浸透圧, serum osmolality:血液浸透圧)

Neutro, 好中球(好中球)

pg, pico gram, ピコグラム, https://www.env.go.jp/chemi/anzen/ecochousa_h22/p05.pdf
R.U., RPR(rapid plasma reagin card agglutination test) unit

STS, serologic test for syphilis, 梅毒血清反応(カルジオリピンを抗原とするもの), https://www.yodosha.co.jp/yodobook/word/STS.html
TP, Treponema pallidum subs pallidum, 梅毒トレポネーマ, https://www.yodosha.co.jp/yodobook/word/TP.html
U, unit

UN, urea nitrogen, 尿素窒素, https://www.yodosha.co.jp/yodobook/word/UN.html

Lymph, lymphocyte cell(リンパ球)
Mono, monocyte(単球)
GTP, glutamyl trans peptidase

#検査機器

上記表では、3種類の装置で分析している。

検査装置を順次追記予定。

全自動血球計数・免疫反応測定装置 MEK-1303 セルタックα+
https://www.nihonkohden.co.jp/iryo/products/hematology/mek_crp/mek1303.html

白血球3分類を含む20項目とCRP(C反応性蛋白)

血液学的分析装置、検査機器、ソリューション | アボットダイアグノスティクス
https://www.corelaboratory.abbott/int/ja/offerings/brands/alinity/Alinity-h-hematology-system

WBC、6 分画(Neu、%Neu、Lym、%Lym、Mono、%Mono、EOS、%EOS、Baso、%Baso、IG、%IG)、RBC、HGB、HCT、MCV、MCH、MCHC、RDW、NRBC、NR/W、RETIC、%R、IRF、MCHr、PLT、MPV、%rP

生化学自動分析装置(血液検査室)
https://www.nihonkohden.co.jp/iryo/clinical/department03/subcat72.html

血液検査機器連携
https://www.ahmics.com/service/option/inspection/index.html

・富士フイルムメディカル(株)
ドライケム  FDC-3500V / FDC-4000V / FDC-7000V / FDC-7000VZ
・シスメックス(株) pocH-100iV、pocH-100iV Diff、KX-21NV
・日本光電(株)
セルタック MEK-5254 / MEK-5258
セルタックα MEK-6358 / MEK-6450 / MEK-6458
・アイデックス ラボラトリーズ(株)
ベットラボ ステーション、レーザーサイト、ベットテスト、スナップリーダー、ベットライト、オートリード、プロサイトDx、カタリストDx、スナップショットDx、ベットスタット
・アークレイ(株)
スポットケム SP-4410 / SP-4420 / SP-4430 / SE-1520
スポットケムVIDAS SV-5010 / VIDAS SV-5020
スポットケムDコンセプト SD-9810+SD-4810 / SD-9810+SD-4820
ポケットケム PU-4010 / PU-4210
オーションイレブン AE-4020
・ABAXIS ((株)セントラル科学貿易) ベトスキャン / VSⅡ / HMⅡ / HM5
・ヱルマ販売(株) PCE-170、PCE-210
・和光純薬工業(株) COAG2V
・(株)堀場製作所  LC-152 / LC-662
・シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス(株) クリニテックステータス
・(株)テクノメディカ
GASTAT-navi
GASTAT-600 Series 600 / 601 / 602i / 603ie
GASTAT-1810 Series 1810 / 1820

#平成29年度 第36回東京都衛生検査所精度管理事業報告書
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/smph/iryo/sonota/eiseikensajo/H29dai2kai.html

医学データ―デザインから統計モデルまで-データサイエンス・シリーズ, 丹後俊郎,共立出版, 2002
51X3FMZQVRL.SX325_BO1,204,203,200.jpg
https://www.amazon.co.jp/dp/4320120094/

で平成11年度のデータを解説している。

最新の評価をここで紹介する。各検査項目ごとにPDFファイルが読める。まとめを東京都医師会が書いている。

III 検査項目別評価
生化学的検査
血液学(血算)
血液学(凝固・血液像)
血清学的検査
細菌同定・グラム染色
抗菌薬感受性
細胞診検査
病理組織検査
寄生虫学的検査

IV 精度管理調査を終えて(東京都医師会から)

1)血液学的検査
概ねオープン調査では良好な結果であった が、オープン調査に比較し、ブラインド調査 では白血球数、ヘマトクリット値、血小板数、 MCVで施設間のばらつきが大きかった。血液 像については、写真上での読影は好中球桿状核 球を分葉核球とした施設が35施設中33施設、骨髄球を前骨髄球とした施設が7施設、骨髄芽球 を芽球とした施設が6施設あった。塗抹標本の 検鏡では、幼若球の多い標本であったが、骨髄 芽球と評価できていない施設があり、芽球を正しく評価できないことは診断への影響も大きく 改善の必要がある。プロトロンビン時間では、 INRを指標にするのが最も優れているが、はずれ値を呈する施設や試薬によりばらつきが認め られた。今年度より新たにAPTT、フィブリノー ゲン、Dダイマーの調査が加わった。APTTの 延長検体では試薬間差があり、検査の試薬に よっては場合により正常と判断されてしまう可 能性があった。フィブリノーゲン値は、施設 間差があり10%程度の差も認められた。Dダイ マーでは、正常値の上限に試薬間で差があり標 準化されていない。高値検体では、試薬間差が 大きくなっている。最近、血栓症の診断のため Dダイマーを頻繁に測定しているが、臨床評価 には注意が必要である。

2)生化学的検査
オープン調査では、施設間でのばらつきも少 なく良好な結果といえる。ブラインド調査では オープン調査に比較し、中性脂肪、尿酸、クレ アチニン、AST、ALT、グルコースにおいて施 設間でのばらつきが大きかった。ブラインド試 料の場合、ボランティア血清に異常血清を添加 して作製した影響や、運搬による経時的な溶血 の影響もばらつきの原因と考慮されるが、いず れの施設でも同様な条件であり、実際に近い状 態を調査していると言えるのではないだろうか。また、いつも問題となるが、HDLコレス テロール、LDLコレステロール、HbA1cでは試 薬間での差が認められた。

3)血清学的検査
部分凝集の検体であるABO血液型のオープ ン調査において、33施設中32施設が判定保留と しているが、1施設はA型と判定していた。血液型の結果は、医療事故にも直結する可能性もあり、十分な精度管理が必要である。AFPは、 オープン、ブラインド調査とも以前に比較すると安定した結果となってきているが、試薬・装 置間差があり、AFPは肝癌の治療評価の目安にもなるため、ユーザーとしては利用している検 査所の試薬や測定機器についても認識しなけれ ばならないことになる。リウマトイド因子では、 今年度の調査でも免疫比濁法による検査法に比 較しラテックス凝集法による検査法の方が、施設間での結果のばらつきが大きかった。
4)その他の検査 グラム染色の評価用の検体では、Pseudomonas aeruginosaと菌種を正解している施設は17施設中 8施設のみであった。染色が悪く、Haemophilus あるいはKlebsiellaと判定した施設がそれぞれ 6施設、3施設あった。 また、抗菌薬感受性の精度管理調査では、すべての施設が Klebsiella pneumoniaeと正しく同 定し、すべての施設がカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)と判定していた。しかし、当該 菌株による感染症が発症している場合には、5 類全数把握対象疾患に指定されており、コメント欄に感染症法で定める届出が必要である可能 性を記載していない施設もあり、ユーザーとし てはコメントの記載を是非お願いしたいところである。 細胞診検査においては、東京都医師会が定めた「細胞診検査実施検査所のあるべき基準」8項目があるが、その中で「細胞診専門医、細胞検 査士の比率が1:3」では全施設のうち充足率 が50%と昨年よりは少し改善しているが、「細胞診専門医のうち1名は常勤」では50%と他の 基準に比較し非常に低い。今後の改善が望ま れる。また、子宮頸部の自己採取検体を扱っている施設も多く、採取の問題などから診断に適さないこともあることから今後の検討が必要である。 病理組織検査では、技師一人当たり1年間で 19,000検体以上も担当している施設があり、その正確性には疑問符も付きかねない。 寄生虫検査については、検査を実施している 施設が減っている。小学校の学校健診の必須項目から蟯虫検査が外れた影響で、セロファンテープの入手が困難になっており、今後その対応についての検討が必要である。
ブラインド方式の重要性はこれまでにも議論 されている所ではあるが、日常業務の精度を高 める有効な方法で、オープン方式とブラインド 方式がセットになって初めて適切な精度管理調 査であると思われる。全体を通して、今回もオー プン調査とブラインド調査の結果に乖離がみら れる検査所がある。オープン調査には十分な検 証が入るためなのかもしれないが、どのような 検体に対しても正確な結果を求める姿勢が必要 である。

#参考資料(reference)
検体検査略号一覧 2007.6.1 公立昭和病院検査科
http://irb-showahp.jp/SGHkennsakijyunnti.pdf

血液検査基準値 JA北海道厚生連 札幌厚生病院
https://www.dou-kouseiren.com/byouin/sapporo/outline/vt1bv7000000jwns-att/vt1bv7000000jwpq.pdf

血液検査結果の見方 国立病院機構兵庫中央病院研究検査科
http://hyogo-chuo-hosp.jp/section/pdf/result_201608.pdf

「はたらく細胞」(1) 特許を探す。罠4つ。
https://qiita.com/kaizen_nagoya/items/8e6d028c250f629ebcde

プログラマのための測定入門
https://qiita.com/kaizen_nagoya/items/d4d5b4e5661c21bba8fd

#文書履歴(document history)
ver. 0.01 初稿 20190410 昼
ver. 0.02 表追記 20190410 昼過ぎ
ver. 0.03 略号 追記 20190410 午後
ver. 0.04 参考資料追記 20190410 夕
ver. 0.05 full spelling, 参考URL追記 20190619
ver. 0.06 平成29年度 第36回東京都衛生検査所精度管理事業報告書 20190717
ver. 0.07 URL追記 20230228

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