9VAeきゅうべえは、イラストに動きをつけるアニメーション作成ソフトです。
- イラストレータからSVG経由でデータを入力でき、
図形をパーツに分割してアニメーションを作成し、
アニメGIF、アニメSVG、APNG や動画まで作成できます。 - 9VAe単体で、音入りのアニメが作成でき、デジタルサイネージも作れます。
なぜこのような高機能なソフトウェアが無料なのでしょうか。それは、誰でも簡単にアニメが作れるフリーソフトがほしいと考えた個人が趣味で開発を続けているソフトだからです。
ここでは9VAe開発の歴史を説明しましょう。ちなみに9VAeをダウンロードしたい人はこちら。9VAeの質問はこちら
プログラム教育でよく使われる、 スクラッチ(Scratch)や ビスケット(Viscuit) は、どちらも無料です。お金儲けを目的にしないフリーソフトがたくさんあります。
9VAeきゅうべえも同じです。9VAeが無料なのは、誰でもアニメーションが作れる世界にしたいと思っているからです。9VAeきゅうべえは、「プレイフル・ラーニング ワークショップの源流と学びの未来」 から大きな影響をうけました。
- 今のアニメーションの世界は、絵や音楽と比べて偏りがあると思います。
- みんなでアニメーション素材をシェアできるとよいのではと思いました。
- 「キジEVA」にアニメーションの未来を見ました。アニメーションが誰でも作れる世界がみたいので 9VAeを無償提供します。
- 9VAeは、機能や信頼性が見た目以上に高いです。9VAeで保存した SVG は再利用が可能です。
- 無償での商業利用も許可されています。再配布も自由です。
1.9VAeきゅうべえの歴史
1.1 コマ撮りアニメを作って挫折
アニメーションを見るのが好きだったので自分でも作りたいと思いました。最初は大学のクラブでみんなで手分けしてコマを描いてアニメを作りました。8mmフィルムで撮影し、現像し、上映すると上下さかさまになりました(カメラ台に原稿を反対向けにセットしないといけなかった)。それなりにおもしろかったですが、相当手間がかかり、一回でおわりました。
次に絵を描くより人形をカメラで撮影するほうが簡単なのではと思い、コマ撮りできるソニーのビデオカメラを買いました。人形をすこしずつ動かして、何回もシャッターをおしていると、日がかげって、部屋の明るさが変わり、背景の色が変化しました。再生すると画面がちらついて、あっという間に終わりました。
そこで、人形アニメも相当大変だとわかりました。撮影するコマ数は膨大で、失敗していたら、修正したい場面(人形の配置など)を後から正確に再現し、差し替えることは、ほぼ不可能です。つまり、最初から完成品をつくらなければなりません。
1.2 アニメーションエディタ lanma を X68000 で開発
当時、X68000 というパソコンがありました。パーソナルワークステーションと呼ばれており、音を鳴らすことができ、gcc という高性能なCコンパイラーが使え、高解像度のグラフィックスが表示できました。プログラマを育てた名機といってよいでしょう。(2023年、X68000 Zに9VAeが再移植されました。)
アニメーションを作るなら、パソコンで中間の絵を自動作成する
エディタを作ったほうが速いのでは。
そこで中間の絵を自動作成できるアニメーションエディタ「lanma」を作りました。9VAe の仕組みはこのときできました。lanmaで、音や文字が入ったアニメが簡単につくれるようになりました。
lanma は、アスキー Vol.17 (1993年5月号)にフリーソフトとして掲載されました。
lanma.x/LANMA01.LZH
作者■大和団次郎
プログラム名■ラインアニメーションエディタ Ver.0.1
内容■線画アニメーションを作成するグラフィックエディタ。
ページごとに線画を書くなど編集しひとつのアニメーションファイルにまとめることができる。
扱えるオブジェクトは折れ線、文字、音の3種類。
折れ線は破線が使える。音はOPMかPCMが可能だ。
操作はすべてマウスで行い、コマンドなどはポップアップメニューで選択、実行する。
メモリが許す限りデータを作成できるため、かなり長い線画アニメーションも作成可能だ。
lanma.x で作成したアニメーションデータは、同梱されている lanmp.x で再生する。
動作条件■ Human68K Version 2.01以上で動作
X68000 向けフロッピーディスクマガジン 電脳倶楽部、Vol.62 (1993年7月号) にも採録されました。
1.3 EVAアニメータ
1998年11月、アニメーション作成ソフト「EVAアニメータ」が発売されます。このソフトは 9VAe と同じ原理で作られています。ノートパソコンメビウスに搭載されました。
EVAアニメータ作品はいくつかのユーザーのサイトで公開されました。その一部は、「Webアニメコンテスト」 2003年 など初期の応募作品の中で見ることができます。
そして、後で述べる「キジEVA」が作られます。
1.4 Flash 黄金時代のあと消滅
Flashは 1996年に Macromedia社から発売された2次元ベクトルアニメーションソフトです。その後、この分野は、Flash の独り勝ちとなり「Flash黄金時代」 と呼ばれます。Macromedia以外の陣営は、Flashに対抗して SVGという標準規格を作ります。ところが、Flashには全く歯が立たず、SVG派の中心だった Adobe社は Macromedia社を買収します。これで、世界はFlashで統一されると思ったところ、Appleのスティーブジョブズが iPhoneではFlashを採用しない と宣言し、その後 Android でも不採用になり、結局消えることになります。独り勝ちしていた Flash が突然使えなくなったため、2次元アニメーションは何を使ったらよいかわからない状態になります。代替えの標準規格 HTML5 や SVG は Flash の完成度に比べると貧弱で、Webサイト開発者が苦労することになり、Flashより古くて性能が低い GIFアニメが復活します。
その後、Flashの対抗規格だった SVG SMILのブラウザ実装がすすみ、仕様が複雑なので廃棄すべきとのGoogleからの提案(2015)があったものの、CSSで代替えできないので、GIFのかわりに、一部 SVG SMILが使われているようです(2024修正)
2.絵や音楽とアニメーションの違い
2.1 アニメーションが見るだけなのはなぜか
-
絵は子供のときから描きます。音楽も歌を歌い自分で演奏します。大人になっても趣味で続ける人がいて、一部の人がプロに進みます。
-
アニメーションはそうではありません。子供から大人まで見るだけで、自分で作る人はほとんどいません。突然プロが生まれます。不思議だと思いませんか。
考えられる理由は2つ
- アニメーションを作るのは手間がかかる。
- 印刷が中心の社会ではアニメーションを作る必要がない。
2.2 これからのアニメーション
今は、どちらも間違いです。
- コンピュータを使えば、誰でも簡単にアニメが作れます。ひとコマアニメーションは1枚絵をかくだけでアニメーションができます。
- 今はディスプレイの時代です。アニメーションを作らなくてよい理由はまったくありません。
そう考えると、アニメーションが、絵や音楽と同じようにならないのは不自然です。
誰でも簡単にアニメが作れて、自分の役に立つことに気づけば、相当な人数がアニメーションを作るようになるはずです。
ところが、絵を描かなくてもアニメーションが作れるソフトは、プロ向けばかりで、初心者向けに開発されたフリーソフトは 9VAe しかありません。
参考:2D モーフィングが出来るソフトのまとめ
- 9VAeを無料で提供するのは、アニメーションを絵や音楽と同じような状態にできたらすばらしいと思うからです
- 私も自分の漫画作品をアニメ化しました(こちら「実体TV」youtube)制作はとても楽しい作業でした
- 2023年生成AIが登場し、9VAeをつかわなくても、日本語入力してアニメが作れるようになってきました。生成AIで作れなかったときに9VAeを使うという形がよいかもしれません
3.9VAeきゅうべえは2次元アニメーションを記述する言語
3.1 9VAe と Flash の技術的な違い
9VAe と Flash はどちらもベクトルアニメーションですが、時間の扱いに大きな違いがあります。9VAeは時間情報もベクトルで記述してあり、フレームの概念がありません。Flash はフレームの概念があり、時間方向は細かくきざまれています。時間方向がベクトルではないのです。
文字フォントを拡大してもぎざぎざがでないことは、ご存知でしょうか。アウトラインフォントといって、文字の形がベクトル(座標)で記述されているからです。拡大してから線を引くのでなめらかになるのです。
9VAe と Flash の時間をゆっくり動かすと違いがわかります。9VAeは、ゆっくり動かしてもなめらかに変化します。Flash の形はフレームの数しかないため、飛び飛びに変化します。
- 9VAeは、時間方向の点の動きをベクトル情報で持っています。この方が自然です。
- そのため、時間方向に連続した図形を選んで、切り出したり、差し替えができます。
- 9VAeは、2次元アニメーションを記述する図形言語だと言えます。参照:OneP(One Picture)フォーマット
- インターネットが発展したのは、ホームページを HTML言語で記述し、誰にでもそれが見えるようにしたことが大きいです。誰かが考えたサイトを他の人が見て自由にコピーし改造できたのです。アニメーションでも同じことができたらどうでしょう。
- 9VAeで記述されたアニメーションは、他の人が作ったものを簡単に改造できます。インターネットと同じような爆発的な進化が起こるのではないでしょうか。
4.キジEVAはアニメーションのリミックス作品
キジEVA
「キジEVA」を紹介しましょう。2002年に複数のEVAアニメータユーザーの手で作られた一連のアニメーション作品群です。
経緯を紹介しますと、最初に、EVAユーザーのどらごんさんが「2002/4/27 朝、会社へ行く途中の交差点で信号待ちをしていたら キジが横断歩道を渡って行きました。これは実話です♪」と以下のアニメを公開しました。
そうすると他の人が、キジが子供をつれて横断するアニメや、田んぼの稲を抜いてまわるアニメを公開しました。
ある日、Komori さんが、キジにマシンガンを持たせました。
このアニメによって、キジが擬人化し、話がどんどん広がっていきます。
JUN-yyさん、写楽さん、kyamさんなどが参加し、各自のキャラクタが提供され、キジと組織の一大抗争劇が展開していきました。そして、最後はとらえられた仲間を救出しにいく映画のようなアニメーションが作られました。
これは、アニメーションが修正容易な構造化された言語で記述された結果だとも考えられます。アニメーションが何回もリミックスされたのです。
アニメーションは一人で作るよりも、複数のメンバーでキャラクタを交換して作っていくほうが、はるかにおもしろいこと、それによって作られるアニメーションには、限界がないことを、キジEVAは示しています。
- Komoriさんの アニメが パソコン版9VAeに同梱されています。
孤島シリーズと指名手配シリーズが、9VAeの「example/komo_island」「example/komo_wanted」フォルダに採録されています。
ダウンロードはこちら
9VAeは保存フォーマットが EVA から SVG に変わりました。SVG は、16万点のイラストを公開している openclipartというサイトにそのまま投稿できます(*)。openclipart 上で、世界中の人と、アニメーションを交換し、新しい「キジ9VAe」を作ることができるでしょう。(*サイズ制限あり、一部SVGで再現できない機能もあります)
5. 9VAe は プレイフルな、リミックスツール
- 9VAeきゅうべえは、教育工学の上田信行先生のワークショップ(「プレイフル・ラーニング ワークショップの源流と学びの未来」)から大きな影響をうけました。2011年吉野で開かれたワークショップ「REMIX@neomuseum」にも参加しました。9VAeきゅうべえは、「プレイフル」「わくわく、どきどき」「遊び心」をもって取り組むことが大事、そのような環境や場をデザインして子供たちに与えよう!という理念で開発しています。
- ひとコマアニメーションを共同開発したキッズプラザ大阪もプレイフルな場です。
- 9VAeの「ヘルプ」メニューに「わらえもん」という顔をいれました。
- 9VAeには、いろんな仕掛けを埋め込みました。それを子供たちに発見してほしい。発見したことを友達につたえてほしい。そんなツールになるよう9VAeを作りました。
- 「ヘルプ」の「リミックス」の画像は2011年吉野で開かれたワークショップ「REMIX@neomuseum」の招待状でつかわれた画像です。吉野で9VAeを紹介し、画像をリミックスする許可をもらいました。
- Remixは複数の音楽を再構成して新しい音楽をつくる手法です。キジEVAはアニメーションのRemixです。9VAeアプリもRemix素材です。みなさんに提供します。
6. 9VAeは商業利用自由なフリーソフト
アニメ制作が簡単で、役に立ち、みんなで作れば楽しいことを知れば相当な人数の人がアニメーションを作るようになると思います。今までアニメを作らなかった人たちが、どんなアニメを作るのか想像するだけで楽しいです。
こういう変化が起こるときには、ビジネスチャンスが必ずあります。アニメーションは、何を表現するか自由なので、あらゆるビジネス分野で、応用ができるでしょう。
現在の9VAeには、不満な部分もあるでしょう。マニュアルや、教材、講師、画面デザイン、素材、サーバー・・・そういった不足部分を好きなように追加してください。9VAeと違う名前をつけても結構です。
9VAeきゅうべえを利用したサービスを企業様に提案し、不足部分の開発を有償で請負うのもかまいません。企業様も、自社の事業分野にアニメーションを追加することができ、両者が利益をあげられるはずです。
9VAeの開発者、大和団次郎は、今後も個人で、9VAeのプログラムを改良し、多くの人に情報を無償で提供します。私が公開した情報やプログラムは、責任は一切負えませんが、自由に複製、改変、配布してかまいません。9VAeを活用して利益が得られたなら、それを実施した人が全部取得してください。アニメーションの世界を変えるには、それがよいと考えています。
今まで静止画だった部分が、アニメーションになれば、ほんの小さな変化でも、目新しく新鮮味があります。
プレゼンテーションを作る人は多いと思いますが、9VAeでイラストが簡単に動かせます。例えば地震に強い家をプレゼンするときに、家のイラストを使っているとします。この家が実際にゆれていると、与える印象を強くできます。9VAeなら家をゆらすことが簡単にできます。こんな小さなことから実施してみてください。
おまけ:9VAe開発者原作「実体テレビ」
9VAeの開発動機のひとつは、自作漫画のアニメ化で、それは達成されました。このレベルなら、初心者でも作れるという例です。
- 第1話:おやじギャグ。博士はちゃっぷまん(田村信 1976)
- 第2話:状況説明、絵がへた・・
- 第3話:「マトリクス(1999)」がはやってた。ゆっくり動かすのは9VAeは得意
- 第4話:実体TVを盗むところ
- 第5話:キャラクタはルパン3世(モンキー・パンチ 1967)の影響
- 第6話:やばいシーンあり
- 第7話:実体テレビとは
- 最終話:どうなる
1ヶ月に1話公開とかしてました。キャラクタのつかいまわしができるので、制作は楽になります。ベクトルアニメはいくらでも修正できるので、どんどんバージョンアップできます。9VAeで作品を制作して公開されることを期待します。(大和団次郎)
関連記事
9VAeきゅうべえ のご紹介
9VAeきゅうべえ 初級編
- 9VAe チュートリアル(1)ーページでタイムラインなし
- 9VAe チュートリアル(2)ー図形入力、選択、移動、サイズ変更
- 9VAe チュートリアル(3)ーアニメキャストを作る、時間調整
- 9VAe チュートリアル(4)ーアニメキャストの修正、往復
- 9VAe チュートリアル(5)ー動きグラフ、ページコピー、GIF作成
- 書き順アニメーションの作り方
- 9VAeきゅうべえ:長いアニメを作る方法
9VAeきゅうべえ 中級編
9VAeきゅうべえ 上級編
- AviUtil と 9VAeきゅうべえを使った簡単アニメ動画作成
- 動くLINEスタンプのAPNG作成:無料ソフト9VAeきゅうべえ
- 萌えキャラ デジたんを目ぱちさせるまで:APNGアニメの作り方
- openclipartの無料イラストをアニメ化する6つの手順
- イラストから動くLINEスタンプのようなアニメを簡単に作る方法
- 青少年のための科学の祭典で行った100名の連作アニメの作り方
- フリーソフト9VAeきゅうべえで簡単デジタルサイネージ
- Openclipart の 無料SVG をアニメにするテクニック
- 無料アニメソフト9VAeきゅうべえの裏技集
9VAeきゅうべえ サンプル作品
9VAeきゅうべえ 技術資料
- アニメソフト 9VAe をカスタマイズする方法
- イラストレータのデータを 9VAe(きゅうべえ)に変換する方法
- 9VAeをキッズプラザ大阪向けに改造する
- 9VAeきゅうべえにテクスチャを追加する
- 9VAe / 9svg データフォーマット解説
- ワコム筆圧ペンで太さが変わる線をひくアルゴリズム