エクセルのオプション設定の効果が及ぶ範囲には、以下の3種類があります。
- エクセルの環境に対する設定
- エクセルが同時に開いている全てのブック、シートに対する設定
- ブック個別に対する設定
1. 全般 (General)
a) 複数ディスプレを使用する場合
- 表示を優先した最適化(既定)
- 互換性に体操した最適化
高DPIのノートPCを低DPIの外部モニターに接続しマルチモニターで使用している時、モニター間でアプリを移動させた際に表示が乱れることがありました。現在では動的にスケーリングする機能が導入されており、通常、初期値のままで問題は発生しません。
2. 数式 (Formulas)
a) ブックの計算 (Calculation options)
- Excelの計算モードは、既定では「自動(Automatic)」になっています。他のブックを開いていない状態で、新規のブックを作成すると、計算モードは「自動」になります。
- ブックの計算モードを変更して保存すると、次開いた時には以前と同じ計算モードになっています。
- ブック内のシートは全て同じ計算モードが適用されます。
- 同時に開いている全てのドキュメントは、同じ計算モードが適用されます。つまり、複数のブックを開く場合、2番目以降に開いたブックの計算モードは最初に開いたブックのものが適用され、 計算モードが伝染 します。複数のブックを開いている時、いずれかのブックの計算モードを変更した場合も同様に伝染します。保存するときにはその計算モードのまま保存されてしまいます。
※重要 計算モードが異なるブックを同時に開くことはやめましょう。
3. 言語 (Language)
Officeの表示言語 (Office display language)
ボタン、メニューなどのUIの言語を設定します。
リストに表示されている言語を選択し、「優先として設定」を押します。リストに表示されていない場合は、「言語の追加」を押してインストールします。
一部の関数名は、各国の表現に変更されることがあります。例えば、VLOOKUP
は、ポーランド語で使用する際は PROCV
となります。既に作成済みのブックをポーランド語の表示形式になっているエクセルで開くと、PROCV
に自動的に変更されます。
Officeの編集言語と校正機能 (Office authoring languages and proofing)
スペルチェックや文章校正ツールなどで使用する言語を選択します。この設定は、言語アクセサリ パックのローカライズが反映します。つまり、日本語が優先になっていると JIS関数が使用できますがDBCS関数は使用できません。反対に、英語が優先になっているとJIS関数は使用できずDBCS関数が使用できるようになります。編集言語が日本語の状態で作成されたブックを、英語に設定されたエクセルで開くと、JIS
関数は自動的にDBCS
関数に変更になります。
ただし、日時の表示や通貨の表示については、Windowsの地域設定が反映します。
リストに表示されている言語を選択し、「優先として設定」を押します。リストに表示されていない場合は、「言語を追加」を押してインストールします。
4. 詳細設定 (Advanced)
a) 数式 (Formulas)
マルチスレッド計算を行う
このオプションは、新しいブックを作成する時にはオンになり「このコンピューターの全てのプロセッサを使用する」が選択されます。オプションを変更して保存したブックは、次回開いたときもその変更が有効になっています。
Excelは、ワークシートのマルチスレッド再計算(MTR)を使用して、最大1024の同時スレッドを使用できます。コンピューターに複数のプロセッサ、プロセッサのコアが搭載されている場合、OSが最適な方法でプロセッサにスレッドを割り当て、高速計算が可能になります。規定では、「このコンピューターの全てのプロセッサを使用する」になっていますが、プロセッサ数を指定することもできます。 Excelは最大 64 個のプロセッサ コアの使用ができます。
ただし、Microsoft Visual Basic for Applications (VBA)のユーザー定義関数は、単一のメインスレッドを使用して動作します。
b) 次のブックを計算するとき (When calculating this workbook)
表示桁数で計算する (Set precision as displayed)
規定でオフになっており、Excel 既定の精度(規定桁数)で計算が行われます。これをオンにすると、「表示形式」で指定した精度(表示桁数)で計算が行われます。
例えば、以下の計算式があります。
"8.76543211" の表示桁数を1つ減らし、"8.7654321" として計算します。結果は以下のように、オンにすると表示されなくなった桁の数字は計算されません。
一度表示されなくなった桁は失われ、再度桁数を増やしてももとに戻りません。
この設定はブックごとに設定でき、伝染しません。
1904年から計算する (Use 1904 date system)
規定でオフになっています。Excel 2008 for Mac 以前のMac用のバージョンでは、デフォルトで 1904 年を基準とした日付方式を使用しており、互換性を保つためにあります。
c) 全般 (General)
マルチスレッド処理を有効にする (Enable multi-threaded processing)
規定でオンになっています。この設定の変更は、エクセルを次回起動したときも有効になっています。
4.aで説明した「マルチスレッド計算を行う」の設定がマルチスレッド再計算の設定であるのに対して、こちらはファイルの保存、ファイルを開く、ピボットテーブルの更新、テーブルの並べ替え、列の自動サイズ調整といった処理を行うときに、複数のプロセッサを使うかどうかの設定となります。
コンテンツ
- 雑・Excel入門試論 - 脱VLOOKUPの思考 01 - ブック - 仕様と制限
- 雑・Excel入門試論 - 脱VLOOKUPの思考 02 - ブック - オプション
- 雑・Excel入門試論 - 脱VLOOKUPの思考 03 - ワークシート
- 雑・Excel入門試論 - 脱VLOOKUPの思考 04 - セル - 文字列型
- 雑・Excel入門試論 - 脱VLOOKUPの思考 05 - セル - 数値データ
- 雑・Excel入門試論 - 脱VLOOKUPの思考 06 - セル - 日時データ
- 雑・Excel入門試論 - 脱VLOOKUPの思考 07 - リンクされたデータ型
- 雑・Excel入門試論 - 脱VLOOKUPの思考 08 - セル - 計算式・関数
- 雑・Excel入門試論 - 脱VLOOKUPの思考 09 - セル - 数値の書式設定
- 雑・Excel入門試論 - 脱VLOOKUPの思考 10 - セル - 日付と時刻の書式設定
- 雑・Excel入門試論 - 脱VLOOKUPの思考 11 - セル - 条件付き書式
- 雑・Excel入門試論 - 脱VLOOKUPの思考 12 - テーブル - テーブルの作成と入力規則
- 雑・Excel入門試論 - 脱VLOOKUPの思考 13 - テーブル - ソートとスライサー
- 雑・Excel入門試論 - 脱VLOOKUPの思考 14 - テーブル - 動的配列関数
- 雑・Excel入門試論 - 脱VLOOKUPの思考 15 - Power Query - エクセルのデータを読み込む
- 雑・Excel入門試論 - 脱VLOOKUPの思考 16 - Power Query - 変換
- 雑・Excel入門試論 - 脱VLOOKUPの思考 17 - Power Query - テーブルの結合
- 雑・Excel入門試論 - 脱VLOOKUPの思考 18 パワーピボット - データモデル
- 雑・Excel入門試論 - 脱VLOOKUPの思考 19 パワーピボット - 操作
- 雑・Excel入門試論 - 脱VLOOKUPの思考 20 パワーピボット - 日付テーブル
- 雑・Excel入門試論 - 脱VLOOKUPの思考 21 DAX - コンテキストとイテレーター
- 雑・Excel入門試論 - 脱VLOOKUPの思考 22 DAX - CALCULATE
- 雑・Excel入門試論 - 脱VLOOKUPの思考 23 DAX - タイムインテリジェンス
- 雑・Excel入門試論 - 脱VLOOKUPの思考 24 - ダッシュボード - ピボットグラフ(Pivot Chart)
- 雑・Excel入門試論 - 脱VLOOKUPの思考 25 - ダッシュボードの作成