LPWAって本当にローパワーなの?
LPWA(ローパワーワイドエリア)の、ワイドエリアはなんとなく体感できているのですが、ローパワーは怪しい気がしたので、測定してみました!
Inosensor ES Devkit って何?
実際に測定した機械は、Inosensor ES Devkit という、Sigfox無線モジュール搭載の基板です。
今回は、これの消費電力を測定してみました!
電源を用意しよう!
まず最初に、電源を用意します。電池とかだと使ってるうちに弱くなったりするので、安定化電源を用意しましょう。
今回は、菊水電子工業 コンパクト直流安定化電源PMX35-3A(0~35V/0~3A)を使います。DMM.make AKIBAでお借りしました。ちなみに、記事執筆時点では、Amazonで ¥64,020 の機械です。
これで、指定した電圧の電気を流すことができます! 今回は、写真にあるように 3.00V に設定しています。
ちなみに、この機械でも電流を測ることができるのですが、小数点第三位までしか測れません。なので、デジタルマルチメーターを用意して電流を計測しましょう。
デジタルマルチメーターを用意しよう!
次に、デジタルマルチメーターを用意します。
今回は、KEYSIGHT 34465A デジタルマルチメータ、6?桁、高性能Truevolt DMMを用意しました。ちなみに、記事執筆時点では、Amazonの商品名がバグってます・・・。お値段はAmazonで ¥380,279の機械です。こっちは購入したやつです、色違いなのかな。
早速やってみよう!
こんな感じで装置をつないで実験します。ぶっちゃけ仕組みがあんまり良くわかっていないのですが、安定化電源から出ているケーブルと Inosensor ES Devkitの電源のあいだに、デジタルマルチメーターを繋ぐことで、電流が計測できるようになる感じです。
ちなみに、DMM.make AKIBAの窓際の部屋で実験しました!
測定開始!
まずは、安定化電源のOUTPUTボタンを押します。すると、デジタルマルチメーター経由でInosensor ES Devkitが起動します。あとは、起動直後のデータ送信が終わるまで少し待ちましょう。LEDが消えたら、待機状態です。はたして、待機中の電流はどのくらいなのでしょうか・・・?
なんと! 0.018mAでした! 写真がさっきと同じなので、すごさが伝わらないかもしれませんが、なんとなくすごそうです。
計算してみよう!
Inosensor ES Devkitは、単3アルカリ電池を2個、直列で使用します。電池1個が1.5Vなので、直列に使うことで3.0Vになるからです。
パナソニックのホームページによると、単3アルカリ電池の場合は、100mAで約20時間使用できることがわかります。
放電電流 * 定電流連続放電時間 = 電池容量(mAh)
という公式に、あてはめて電池容量を計算してみると
単3アルカリ電池の電池容量
100mA * 20時間 = 2000mAh
単3アルカリ電池の電池容量が計算できます。
待機中の電流(0.018mA)で、何時間使えるか計算すると・・・
単3アルカリ電池利用時の待機可能時間
2000mAh / 0.018mA ≒ 111,111時間
約11万時間使えるということになります!
時間を年に変換
111,111時間 / 24時間 / 365日 ≒ 12年
ということで、待機するだけだったら12年持つみたいです! これは凄いですね!
電波を送信してみよう!
次に、Sigfox通信中の電流を測ってみましょう。Inosensor ES Devkitに搭載されているボタンを押すと通信が発生します。動画に撮ってみたので、ぜひ御覧ください!
通信中は最大20mAまで電流が上がりました(Sigfoxは3回データを送信するので、3回あがります)。 通信中は、LEDが光ったりもするので、その分も電流が流れてるのかもしれませんね。
デジタルマルチメーターについてきたソフトを使ったら、グラフが見れたのでスクショを撮ってみました(動画とは別に再度ボタンを押して測定しています)。
3回送信しているのがわかりますね! 通信時間はトータルで10秒くらいでしょうか。
計算してみよう!
実機の計測で、通信に必要な電流が最大20mAという事がわかりました。次に、20mAを流し続けると、電池が何時間持つか計算してみます。
単3アルカリ電池利用時の通信可能時間(論理値)
2000mAh / 20mA ≒ 100時間
100時間! 結構少ない気もしますが、通信何回分なのでしょうか? 1回の通信にかかる時間は、10秒くらいだったので、計算してみましょう。
単3アルカリ電池利用時の最大通信回数(論理値)
100時間 * 3600秒(1時間) / 10秒 = 36,000回
100時間あれば、36,000回通信できます! なんだかスゴイことになってきましたね。
MAXまで使ったらどうなる?
Sigfoxには、プランごとに1日の最大通信回数制限があります。
記事執筆時点では、1日最大140回送信可能なプランが最大です。
このプランで使った場合に、どのくらい使えるか計算してみましょう。
まずは、通信に必要な1日あたりの消費電流を計算します。
通信1回あたりの消費電流量
20mA * 10秒 ÷ 3600秒(1時間) ≒ 0.0556mAh
通信に必要な1日あたりの消費電流
0.0556mAh * 140回 ≒ 7.784mAh
次に、待機時間に必要な1日あたりの消費電流を計算します。
待機時間に必要な1日あたりの消費電流
0.018mA * (24時間 - (140回 * 10秒 / 3600秒)) = 0.425mAh
2つの数字を足して、1日あたりの消費電流を計算します。
1日あたりの消費電流
7.784mAh + 0.425mAh ≒ 8.209mAh
1日あたりの消費電流がわかったので、単3アルカリ電池で、どのくらい使えるか計算します。
単3アルカリ電池での利用月数(1日140回使用時)
2000mAh / 8.209mAh ≒ 243日 ≒ 8ヶ月
アルカリ単3電池2本を使えば、1日140回通信するプランでも、半年以上使える計算になりました。
1日1回だったら、どのくらいなの?
先程の計算は、通信回数がMAXのプランでした、普通に考えてそんなに使わないと思うので、1日1回送信した場合を計算してみましょう。
まずは、通信に必要な1日あたりの消費電流を計算します。
通信に必要な1日あたりの消費電流
0.0556mAh * 1回 ≒ 0.0556mAh
次に、待機時間に必要な1日あたりの消費電流を計算します。
待機時間に必要な1日あたりの消費電流
0.018mA * (24時間 - (1回 * 10秒 / 3600秒)) = 0.43195mAh
2つの数字を足して、1日あたりの消費電流を計算します。
1日あたりの消費電流
0.0556mAh + 0.43195mAh ≒ 0.4876mAh
1日あたりの消費電流がわかったので、単3アルカリ電池で、どのくらい使えるか計算します。
単3アルカリ電池での利用月数(1日1回使用時)
2000mAh / 0.4876mAh ≒ 4101日 ≒ 11年
アルカリ単3電池2本を使えば、なんと11年も使える事がわかりました!
ローパワーすごい!
計算ばっかりで、若干あっているか不安になってきましたが、まとめると Inosensor ES Devkitは、1日1回の通信なら、単3アルカリ電池2本で、11年くらい使えることがわかりました(実際は、機械の寿命とか利用条件とかあるので、あくまでも計算上の値です)。
さすがは、ローパワーですね!。 電池を頻繁に交換しなくてもいいので、電池交換が困難な危険な場所に設置できるのはもちろん。電池交換をしない設計にすることで、コストを抑える使い方もできそうです。
いろいろな用途に使えそうですね! わーわー
参考リンク
購入情報
Inosensor ES Devkit:販売ページ
接点入力用ハーネス:販売ページ
Inosensor ES Devkit & 接点入力用ハーネスセット:販売ページ
製品マニュアル
チュートリアル
初級編
Inosensor ES Devkitを使ってみた! ①(購入〜Devkit登録編)
Inosensor ES Devkitを使ってみた! ②(付属品の取り付け編)
Inosensor ES Devkitを使ってみた! ③(はじめてのSigfox通信編)
LPWAって本当にローパワーなの!? Sigfox端末(Inosensor ES Devkit)が本当に低消費電力か測定してみた!
中級編
Inosensor ES Devkitを使ってみた! ④(Sigfox CallBacks入門編)
Inosensor ES Devkitを使ってみた! ⑤(接点入力用ハーネスを使ってみよう!)
Inosensor ES Devkitを使ってみた! ⑥(位置情報活用編)
Inosensor ES Devkit にオムロンの振動センサ(転倒センサ)を接続してみた!
上級編
Inosensor ES Devkit 用SDK(IFS-M01 SDK)に挑戦!①(開発環境編)
Inosensor ES Devkit SDKに挑戦!②(ケーブル編)
Inosensor ES Devkit 用 ファームウェア(IFS-M01-FIRM)の書き込みに挑戦!
Inosensor ES Devkit 用 ATコマンドファームウェア(IFS-M01-FIRM-AT)を使ってATコマンドに挑戦!