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RL微分のラプラス変換

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Last updated at Posted at 2026-07-10

 はじめまして、りょーつといいます。高専出身の博士課程1年生です。研究の専門は力学や機構学で、Qiitaでは主に制御工学や数学に関する記事を書いています。
最近は数学に関する単発ネタで記事を書いていて,これまでに以下のような記事を書きました.興味があれば読んでみてください~.

①ウォリス積分の基礎
②ウォリス積分の応用
③n次元球のイメージについて
④四次元球の体積の計算
⑤ガウス積分
⑥ガンマ関数
⑦非自然数の階乗
⑧N階積分
⑨非整数階積分
⑩ベータ関数
⑪積分の半群性
⑫非整数階微分
⑬Mittag-Leffler関数
⑭多項式のラプラス変換の一般化
⑮非整数階微積分のラプラス変換

目次

1.はじめに
2.高階微分のラプラス変換
3.RL微分のラプラス変換
4.おわりに

1. はじめに

 今回の記事では,RL微分のラプラス変換について紹介します.RL微分は非整数階の微分の定義の1つであり,もう1つの定義であるCaputo微分に比べて数学的な厳密さが高いです(Caputoはまあまあヤンキー).一方で,ラプラス変換などの実用上ではCaputo微分の方が扱いやすいように思えます.これは,微分方程式に登場した際の初期条件の与え方などがシンプルだからです.

 前回の記事では,Caputo微分のラプラス変換について解説しました.一方でRL微分でももちろんラプラス変換をすることは可能であり,本稿ではRL微分のラプラス変換を取り上げようと思っています.

 ラプラス変換の結果を比較することで,実用上はCaputo微分のほうが便利そうなことを察することになると思います~.非整数階積分のラプラス変換の知識を少し使うのでこちらの記事を読んでおいてください(^▽^)/

2. 高階微分のラプラス変換

 本章では$n$階微分した関数$D^n f(t)$のラプラス変換について考えておこうと思います.ここで$n$は自然数です.先に結果を示しておくと,

\displaystyle \mathcal{L}[D^n f(t)]
=
s^n \displaystyle \mathcal{L} [f(t)]
-
\sum_{k = 0}^{n-1}
s^{n-1-k} D^k f(0)
\tag{1}

です.この式はよく教科書にも登場する,割とよく知られた式かなと思います.ただし,これの証明は1階微分の結果が

\displaystyle \mathcal{L}[D f(t)]
=
s \displaystyle \mathcal{L} [f(t)]
-
f(0)
\tag{2}

だから自明だよね?みたいなノリで語られることが多く(偏見),案外ちゃんと証明してる文献も少ないかなと思ったので,本章では(1)式の証明をしておこうと思います.
 また,RL微分のラプラス変換においてもかなり重要なので,ちゃんと説明しておこうと思った次第です(前回の記事ではめんどくさがりました...).

まずは(1)式の左辺に関する漸化式を作っていきましょう.ラプラス変換の定義より以下が成り立ちます.

\displaystyle \mathcal{L}[D^n f(t)]
=
\int_{0}^{\infty}
D^n f(t)
e^{-st}
dt
\tag{3}

ここで(3)式の積分に対して,いい感じに収束するように$s$を取り,部分積分を適用すると以下のような関係が得られます.これが(1)式の左辺に関する漸化式です.

\int_{0}^{\infty}
D^n f(t)
e^{-st}
dt
=
\Big[
D^{n-1} f(t)
e^{-st}
\Big]_0^\infty
+
\int_{0}^{\infty}
s
D^{n-1} f(t)
e^{-st}
dt
=
-D^{n-1} f(0)
+
s
\int_{0}^{\infty}
D^{n-1} f(t)
e^{-st}
dt
\therefore
\displaystyle \mathcal{L}[D^n f(t)]
=
s
\displaystyle \mathcal{L}[D^{n-1} f(t)]
-D^{n-1} f(0)
\tag{4}

(4)式をもとにして順々に展開していきましょう.

\displaystyle \mathcal{L}[D^{n-1} f(t)]
=
s
\displaystyle \mathcal{L}[D^{n-2} f(t)]
-D^{n-2} f(0)
\tag{5}
\displaystyle \mathcal{L}[D^{n-2} f(t)]
=
s
\displaystyle \mathcal{L}[D^{n-3} f(t)]
-D^{n-3} f(0)
\tag{6}
\vdots
\displaystyle \mathcal{L}[D^{2} f(t)]
=
s
\displaystyle \mathcal{L}[D f(t)]
-D f(0)
\tag{7}
\displaystyle \mathcal{L}[D f(t)]
=
s
\displaystyle \mathcal{L}[f(t)]
-f(0)
\tag{8}

(4)~(8)式から$\displaystyle \mathcal{L}[D^n f(t)]$と$\displaystyle \mathcal{L}[f(t)]$の関係を抽出したいので,(5)式に$s$をかけたもの,(6)式に$s^2$をかけたもの,$\cdots$,(7)式に$s^{n-2}$をかけたもの,(8)式に$s^{n-1}$をかけたものを全て(4)式に足せばよいです.その結果は以下のようになります.

\displaystyle \mathcal{L}[D^n f(t)]
=
s^n \displaystyle \mathcal{L}[f(t)]
-D^{n-1} f(0)
-sD^{n-2} f(0)
-s^2 D^{n-3} f(0)
-
\cdots
-s^{n-2} Df(0)
-s^{n-1} f(0)
\tag{9}

初期値に関する項を級数でまとめると(1)式が得られます(^▽^)/.
(1)式は第3章でも重要な役割を果たします.

3. RL微分のラプラス変換

 本章ではRL微分のラプラス変換について紹介します.RL微分はRiemann–Liouvilleの非整数階微分の略称で,関数$f(t)$の非整数階微分$D^\alpha f(t)$を以下のように定義します.

D^\alpha f(t)
=
D^n \big( I^\beta f(t) \big)
=
\frac{1}{\Gamma(\beta)}
\frac{d^n }{du^n}
\int_{0}^{t}
(t - u)^{\beta - 1}
f(u)
du
\tag{10}

なお,自然数$n$と$0<\beta<1$の実数$\beta$を用いて

\alpha = n- \beta
\tag{11}

とします.

 このとき,(10)式はいろいろごちゃごちゃ書いてある一方で,$I^\beta f(t)$の$n$階微分であることに変わりはなさそうです.つまりRL微分のラプラス変換には(1)式が適用できるということ.Caputo微分のラプラス変換には積分のラプラス変換を応用したので,ここが違いだと思います.

 さっそくRL微分の定義式を(1)式を使ってラプラス変換してみましょう.

\displaystyle \mathcal{L}[D^\alpha f(t)]
=
\displaystyle \mathcal{L}\Big[D^n \big( I^\beta f(t) \big) \Big]
=
s^n \displaystyle \mathcal{L} \big[ I^\beta f(t) \big]
-
\sum_{k = 0}^{n-1}
s^{n-1-k} D^k (I^\beta f)(0)
\tag{12}

ここで初期値$D^k (I^\beta f)(0)$について考えてみましょう.簡単のために$k=0$の場合を見ます.非整数階積分の定義は

I^\beta f(t)
=
\frac{1}{\Gamma(\beta)}
\int_{0}^{t}
(t - u)^{\beta - 1}
f(u)
du
\tag{13}

なので,一見$I^\beta f(0)$は積分区間が消滅して0になりそうですよね.でも,そう簡単にいかないのが数学の面白いところです.$I^\beta f(0) \neq 0$になる反例は以下のように与えられます.

f_e(t)
=
\frac{1}{\Gamma(1 - \beta)}
t^{-\beta}
\tag{14}

たしかめてみましょう.(14)式を(13)式に代入して$u = ty$の置換を行います.積分区間は$0$~$t$$\to$$0$~$1$に変化しますね.

I^\beta f_e(t)
=
\frac{1}{\Gamma(\beta)}
\int_{0}^{t}
(t - u)^{\beta - 1}
\frac{1}{\Gamma(1 - \beta)}
u^{-\beta}
du
=
\frac{1}{\Gamma(\beta) \Gamma(1 - \beta)}
\int_{0}^{1}
(t - ty)^{\beta - 1}
(ty)^{-\beta}
t \ dy
=
\frac{1}{\Gamma(\beta) \Gamma(1 - \beta)}
\int_{0}^{1}
t^{\beta - 1}
(1 - y)^{\beta - 1}
(t)^{-\beta}
(y)^{-\beta}
t \ dy
=
\frac{1}{\Gamma(\beta) \Gamma(1 - \beta)}
\int_{0}^{1}
(1 - y)^{\beta - 1}
(y)^{-\beta}
dy
=
\frac{1}{\Gamma(\beta) \Gamma(1 - \beta)}
\int_{0}^{1}
(1 - y)^{\beta - 1}
(y)^{(1-\beta) - 1}
dy
\tag{15}

ここで,(15)式の右辺の積分はベータ関数$B(p,q)$で表されますね.ちなみにベータ関数の定義は以下のとおり.

B(p,q)
=
\int_{0}^{1}
(1 - t)^{p - 1}
(t)^{q - 1}
dt
=
\frac{\Gamma(p) \Gamma(q)}{\Gamma(p+q)}
\tag{16}

(16)式を(15)式に適用すると

I^\beta f_e(t)
=
\frac{1}{\Gamma(\beta) \Gamma(1 - \beta)}
B(\beta, 1-\beta)
=
\frac{1}{\Gamma(\beta) \Gamma(1 - \beta)}
\frac{\Gamma(\beta) \Gamma(1 - \beta)}{\Gamma(\beta + 1 - \beta)}
=
\frac{1}{\Gamma(1)}
\therefore
I^\beta f_e(t)
=
\frac{1}{0!}
=
1
\tag{17}

このような場合においては$I^\beta f(0) \neq 0$と言えますね.このように初期条件の挙動を読みづらいのがRL微分を使用する上での欠点です.

 一方で初期条件をいったん無視($D^k (I^\beta f)(0) = 0$)してみましょう.唐突ですが,制御工学の教科書ではあたりまえのようにやられていることです.このとき(12)式は以下のように簡略化されます.

\displaystyle \mathcal{L}[D^\alpha f(t)]
=
s^n \displaystyle \mathcal{L} \big[ I^\beta f(t) \big]
\tag{18}

また,非整数階積分のラプラス変換を適用すると,(18)式は以下のようになります.

\displaystyle \mathcal{L}[D^\alpha f(t)]
=
s^n \frac{1}{s^\beta}  \displaystyle \mathcal{L} [f(t)]
=
s^{n-\beta} \displaystyle \mathcal{L} [f(t)]
=
s^\alpha \displaystyle \mathcal{L} [f(t)]
\tag{19}

この結果は前回の記事で紹介したCaputo微分のラプラス変換に一致します.つまり,微分方程式の大まかな構造や制御工学的にみたシステムにおいては,どちらの定義の微分を使ったとしても大差ないってことが分かりました(知らんけど).

4. おわりに

 本稿では,$n$階微分のラプラス変換を応用して,RL微分のラプラス変換を導出しました.初期値の動きが直感的なのでCaputo微分の方が個人的には好きですね.来週以降はいよいよ微分方程式を解いていきたいと思います.今後の記事では基本的にCaputo微分を使うつもりです.

 このシリーズをはじめた当初は$n$次元の球について考えるつもりだったんですが,ガンマ関数から派生して非整数階の微積分に脱線してしまいました.そのうちもとに戻します笑

 今週も最後まで読んでくださりありがとうございました!

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