はじめまして、りょーつといいます。高専出身の大学院2年生です。もうすぐ博士課程1年生になります.研究の専門は力学や機構学ですが,Qiitaでは主に制御工学や数学に関する記事を書いています。今週は,なにかと登場するガウス積分について紹介します.
目次
1.はじめに
2.ガウス積分の定義と解法
3.極座標変換による計算
4.おわりに
1. はじめに
今回はガウス積分について紹介します.個人的に導出過程がまあまあヤンキーで好きなのですが,いろんな文献を読むにあたって使う頻度がそれなりに高いことが分かったので,取り上げたいと思います.身近な例でいうと,正規分布の計算に使ったりします.また,ガンマ関数の応用に使ったり,熱伝導方程式の解の導出に出てきたり,ガウス積分の逆変換として量子統計力学のハバード・ストラトノビッチ変換というのがあったりします.パッと思いつくだけでもこんなにあるので,応用の幅は広そうですね.
先に結論を述べておくと,ガウス積分は以下のような形式の定積分であり,解に円周率が登場します.今回の記事では,この恒等式を導出することを目的とします.重積分やヤコビアンによる座標変換の知識があると,より理解しやすいかと思います.
\int_0^\infty
e^{-x^2}
dx
=
\frac{\sqrt{\pi}}{2}
\tag{1}
2. ガウス積分の定義と解法
先ほど紹介したばかりですが,改めて掲載すると,ガウス積分は以下のように定義される定積分です.
\int_0^\infty
e^{-x^2}
dx
\tag{2}
通常,定積分は不定積分を計算して原始関数を求め,積分区間の値を代入した差分として答えを得るかと思います.しかし,ガウス積分の被積分関数は原始関数を求めることができないので,ちょっとした裏技を使う必要があります.その裏技というのが重積分を使うというものになります.ガウス積分の計算結果を$I$としてみましょう.このとき,以下の関係がなりたちます.
I
=
\int_0^\infty
e^{-x^2}
dx
\tag{3}
I
=
\sqrt{I^2}
\tag{4}
ここで面白いのは,$I$の値を直接計算することはできないが,$I^2$は比較的簡単に計算できるという点です.この性質を用いて$I^2$を先に計算し,その平方根を取ることでガウス積分の解を得ようという戦略になります.
では実際に計算してみましょう.
I^2
=
\bigg(
\int_0^\infty
e^{-x^2}
dx
\bigg)^2
=
\int_0^\infty
e^{-x^2}
dx
\int_0^\infty
e^{-x^2}
dx
\tag{5}
ここで,2つ目の積分の変数を$x$から$y$に書き換えると,重積分の形に書き換えることができます(^▽^)/
I^2
=
\int_0^\infty
e^{-x^2}
dx
\int_0^\infty
e^{-y^2}
dy
=
\int_0^\infty
\int_0^\infty
e^{-x^2} e^{-y^2}
dx \ dy
=
\int_0^\infty
\int_0^\infty
e^{-(x^2 + y^2)}
dx \ dy
\tag{6}
(6)式の右辺の重積分は解けることが知られているので,第3章でゴリゴリ解いていこうと思います~
3. 極座標変換による計算
(6)式の重積分はそのままだと解けないので,極座標変換をします.(6)式の積分は$x$と$y$の直交座標なので,原点からの距離$r$とその方向$\theta$で関数を書き換えるイメージです.原点からの位置ベクトルを$\boldsymbol{r} \in \mathbb{R}^2$としたとき,具体的には以下のような変換を行います.なお,ベクトルの基底は直交座標系で取っています.
\boldsymbol{r}
=
\begin{bmatrix}
x \\
y \\
\end{bmatrix}
=
\begin{bmatrix}
r\cos{\theta} \\
r\sin{\theta} \\
\end{bmatrix}
\tag{7}
図1 直交座標系と極座標系の変換
座標変換のために,全微分をしてみましょう.まずは直交座標系の場合,以下のようになります.
d \boldsymbol{r}
=
\frac{\partial \boldsymbol{r}}{\partial x} dx
+
\frac{\partial \boldsymbol{r}}{\partial y} dy
=
\begin{bmatrix}
1 \\
0 \\
\end{bmatrix}
dx
+
\begin{bmatrix}
0 \\
1 \\
\end{bmatrix}
dy
\tag{8}
また,極座標系の場合は以下のようになります.
d \boldsymbol{r}
=
\frac{\partial \boldsymbol{r}}{\partial r} dr
+
\frac{\partial \boldsymbol{r}}{\partial \theta} d\theta
=
\begin{bmatrix}
\cos{\theta} \\
\sin{\theta} \\
\end{bmatrix}
dr
+
\begin{bmatrix}
-r \sin{\theta} \\
r \cos{\theta} \\
\end{bmatrix}
d\theta
\tag{9}
重積分における面積素$dS$は,$d \boldsymbol{r}$を構成する平行四辺形の面積に相当するので,(8)式と(9)式のそれぞれで計算してみましょう.平行四辺形の面積は行列式で計算できます.
dS
=
\begin{vmatrix}
dx & 0 \\
0 & dy \\
\end{vmatrix}
=
dx dy
\tag{10}
dS
=
\begin{vmatrix}
dr \cos{\theta} & -r d\theta \ \sin{\theta} \\
dr \sin{\theta} & r d\theta \ \cos{\theta} \\
\end{vmatrix}
=
r \mathrm{cos}^2 \theta \ dr d\theta
+
r \mathrm{sin}^2 \theta \ dr d\theta
=
r \ dr d\theta
\tag{11}
図2 面積素の表現方法
また,三角関数の性質より,(7)式から以下の関係がなりたちます.
x^2 + y^2
=
(r \cos{\theta})^2
+
(r \sin{\theta})^2
=
r^2
\tag{12}
さらに,積分領域は$x$:$0$~$\infty$,$y$:$0$~$\infty$から$r$:$0$~$\infty$,$\theta$:$0$~$\frac{\pi}{2}$に変化します.図3を見ると,これらは異なる領域を示しているように見えますが,原点から十分に遠い点において,被積分関数$e^{-(x^2 + y^2)}=e^{-r^2}$が減衰し,積分への影響がなくなることに起因します.数式で書くと以下のとおりです.
\lim_{r\to \infty}
e^{-r^2}
=
0
\tag{13}
図3 積分領域の変化
以上のことをまとめると,(6)式は以下のように座標変換されます.
I^2
=
\int_0^\infty
\int_0^\infty
e^{-(x^2 + y^2)}
dx \ dy
=
\int_0^\frac{\pi}{2}
\int_0^\infty
r e^{-r^2}
dr \ d\theta
\tag{14}
あとは(14)式の右辺をゴリゴリ計算するだけですね!
I^2
=
\int_0^\frac{\pi}{2}
\int_0^\infty
r e^{-r^2}
dr \ d\theta
=
\int_0^\frac{\pi}{2}
d\theta
\int_0^\infty
r e^{-r^2}
dr
=
\frac{\pi}{2}
\bigg[
-\frac{1}{2} e^{-r^2}
\bigg]_0^\infty
=
\frac{\pi}{4}
\tag{15}
最後に(15)式を(4)式に代入することで,ガウス積分の計算結果が得られます!
I
=
\sqrt{
I^2
}
=
\sqrt{
\frac{\pi}{4}
}
=
\frac{\sqrt{\pi}}{2}
\tag{16}
考え方が特殊なだけで,計算自体はシンプルだったと思います(´ω`)
4. おわりに
今週はガウス積分について紹介しました.ガウス積分は物理や数学を学んでいるとなんだかんだ登場するので避けては通れないと思います.とても有名なのでいろんな記事があるかと思いますが,座標変換らへんは比較的丁寧に説明できたんじゃないかなと思います~
実はこれも$n$次元球の体積計算に関係しています.具体的にはガンマ関数というものの特殊例に対応しているのです.ガンマ関数も有名でいろんなところで登場するので,来週解説したいですね.
今週も最後まで読んでいただき,ありがとうございました~