はじめまして、りょーつといいます。高専出身の大学院2年生です。研究の専門は力学や機構学で、Qiitaでは主に制御工学や数学に関する記事を書いています。
本稿は$n$次元の球の体積と表面積を求めるために必要な数学の知識として,「ガンマ関数」を紹介する記事です.そのほかにもいろいろな知識が必要であり,これまでにウォリス積分やガウス積分を解説してきました.
前回までの記事は以下を参照ください.
①ウォリス積分の基礎
②ウォリス積分の応用
③n次元球のイメージについて
④四次元球の体積の計算
⑤ガウス積分
目次
1.はじめに
2.ガンマ関数の定義と収束性
3.ガンマ関数と階乗の関係
4.おわりに
1. はじめに
今回の記事では,ガンマ関数について紹介してみようと思います.ガンマ関数は,記号$\Gamma$を使って表されることが多いです.階乗の計算を非自然数に拡張したものとも言われます.微分方程式の級数解などに登場することもあり,$n$次元球の体積を記述する際にも使用します.
解析学の知識が必要ですが,順を追っていけばそこまで複雑ではありません.
2. ガンマ関数の定義と収束性
本章ではガンマ関数の定義を紹介しようと思います.ガンマ関数は複素数でも定義できるようですが,今回は実数に限定して考えます.正の実数$x > 0$について,ガンマ関数$\Gamma(x)$は以下のように定義されます.
\Gamma(x)
=
\int_0^\infty t^{x-1} e^{-t} dt
\tag{1}
広義積分の形で定義されているので,収束性を確認しておきましょう.結論から述べると,$x \to 0$の場合と$x \to \infty$の双方で発散します.
そのためには有限の正の整数$n$について以下の2式を証明しておく必要があります.
\lim_{t\to \infty} t^n e^{-t}
=
0
\tag{2}
\int_1^\infty t^n e^{-t} dt
=
e^{-1}
n!
\sum_{k=0}^n \frac{1}{k!}
\tag{3}
では(2)式から証明してみます.(2)式の極限は分母も分子も発散する不定形なので,ロピタルの定理が使えます.ロピタルの定理は,分数の極限について,不定形になる場合のみ分母と分子を両方微分して計算できることを意味しています.
(2)式も以下のように分数で表すことができますね.
\lim_{t\to \infty}
t^n e^{-t}
=
\lim_{t\to \infty}
\frac{t^n}{e^t}
\to
\frac{\infty}{\infty}
\tag{4}
ではロピタルの定理を$n$回使ってみましょう.
\lim_{t\to \infty}
\frac{t^n}{e^t}
=
\lim_{t\to \infty}
\frac{nt^{n-1}}{e^t}
=
\lim_{t\to \infty}
\frac{n(n-1)t^{n-2}}{e^t}
=
\lim_{t\to \infty}
\frac{n(n-1)(n-2)t^{n-2}}{e^t}
\vdots
=
\lim_{t\to \infty}
\frac{n(n-1)(n-2)\cdots 3t^2}{e^t}
=
\lim_{t\to \infty}
\frac{n(n-1)(n-2)\cdots 3\cdot 2t}{e^t}
=
\lim_{t\to \infty}
\frac{n!}{e^t}
\to
\frac{0}{\infty}
\therefore
\lim_{t\to \infty}
t^n e^{-t}
=
0
\tag{5}
丁寧に展開していくと収束することが分かりましたね.
では次に(3)式を証明してみます.(3)式の左辺は$n$の関数なので$f(n)$とおいてみましょう.
f(n)
=
\int_1^\infty t^n e^{-t} dt
\tag{6}
あとは部分積分で(6)式の右辺を展開します.途中で(2)式の極限が出てきますね.
f(n)
=
\bigg[
-t^n e^{-t}
\bigg]_1^\infty
+
\int_1^\infty nt^{n-1} e^{-t} dt
=
e^{-1}
-
\bigg(
\lim_{t\to \infty}
t^n e^{-t}
\bigg)
+
n
\int_1^\infty t^{n-1} e^{-t} dt
\therefore
f(n)
=
e^{-1}
+
nf(n-1)
\tag{7}
(7)式は漸化式の形になっています.では,これ以降の項も展開してみましょう.
f(n-1)
=
e^{-1}
+
(n-1)f(n-2)
\tag{8}
f(n-2)
=
e^{-1}
+
(n-2)f(n-3)
\tag{9}
\vdots
f(2)
=
e^{-1}
+
2f(1)
\tag{10}
f(1)
=
e^{-1}
+
f(0)
\tag{11}
それっぽくなってきましたね.漸化式なので,初期値$f(0)$を計算しておきましょう.
シンプルに積分すると解が得られます.
f(0)
=
\int_1^\infty e^{-t} dt
=
\bigg[
-e^{-t}
\bigg]_1^\infty
=
e^{-1}
\tag{12}
初期値が分かったので(7)式に(8)式を,(8)式に(9)式を..というように順々に代入して展開してみましょう.すると以下の関係が得られます.
f(n)
=
e^{-1}
+
n\big(
e^{-1}
+
(n-1)f(n-2)
\big)
=
e^{-1}
+
ne^{-1}
+
n(n-1)\big(
e^{-1}
+
(n-2)f(n-3)
\big)
=
e^{-1}
+
ne^{-1}
+
n(n-1)e^{-1}
+
n(n-1)(n-2)\big(
e^{-1}
+
(n-3)f(n-4)
\big)
\vdots
=
e^{-1}
+
ne^{-1}
+
n(n-1)e^{-1}
+
n(n-1)(n-2)e^{-1}
+
\cdots
+
n(n-1)(n-2)\cdots 3\cdot 2e^{-1}
+
n(n-1)(n-2)\cdots 3\cdot 2\cdot 1 f(0)
\tag{13}
(12)式の初期値をもとに(13)式を$e^{-1}$でくくると以下のようにまとめることができます.
f(n)
=
e^{-1}
\big(
1
+
n
+
n(n-1)
+
n(n-2)
+
\cdots
+
n!
\big)
=
e^{-1}
\bigg(
\frac{n!}{n!}
+
\frac{n!}{(n-1)!}
+
\frac{n!}{(n-2)!}
+
\frac{n!}{(n-3)!}
+
\cdots
+
\frac{n!}{2!}
+
\frac{n!}{1!}
+
\frac{n!}{0!}
\bigg)
=
=
e^{-1}
n!
\bigg(
\frac{1}{n!}
+
\frac{1}{(n-1)!}
+
\frac{1}{(n-2)!}
+
\frac{1}{(n-3)!}
+
\cdots
+
\frac{1}{2!}
+
\frac{1}{1!}
+
\frac{1}{0!}
\bigg)
\therefore
f(n)
=
e^{-1}
n!
\sum_{k=0}^n \frac{1}{k!}
\tag{14}
やっと(3)式が証明できましたね.
これらの準備のおかげでガンマ関数の収束性を確認することができます.まずは(1)式の右辺の積分区間を分割しましょう.
\Gamma(x)
=
\int_0^\infty t^{x-1} e^{-t} dt
=
\int_0^1 t^{x-1} e^{-t} dt
+
\int_1^\infty t^{x-1} e^{-t} dt
\tag{15}
ここで(15)式の右辺第1項について,$e^{-t}$は単調現象の関数であり,$0 \leq t \leq 1$のときに$e^{-1} < e^{-t} \leq 1$であるため
t^{x-1} e^{-1}
\leq
t^{x-1} e^{-t}
\leq
t^{x-1}
\ \ \ \ \
(0 \leq t \leq 1)
\tag{16}
となり,
\int_0^1 t^{x-1} e^{-1} dt
\leq
\int_0^1 t^{x-1} e^{-t} dt
\leq
\int_0^1 t^{x-1} dt
\bigg[
\frac{e^{-1}}{x}t^x
\bigg]_0^1
\leq
\int_0^1 t^{x-1} e^{-t} dt
\leq
\bigg[
\frac{1}{x}t^x
\bigg]_0^1
\therefore
\frac{e^{-1}}{x}
\leq
\int_0^1 t^{x-1} e^{-t} dt
\leq
\frac{1}{x}
\tag{17}
が得られます.
では,ガンマ関数$\Gamma(x)$について,$x \to 0$で発散することを示しましょう.(17)式の不等式を(15)式に代入し,極限を取ることで証明できます.
\lim_{x \to 0}
\Gamma(x)
=
\lim_{x \to 0}
\int_0^1 t^{x-1} e^{-t} dt
+
\lim_{x \to 0}
\int_1^\infty t^{x-1} e^{-t} dt
\ge
\lim_{x \to 0}
\int_0^1 t^{x-1} e^{-t} dt
\ge
\lim_{x \to 0}
\frac{e^{-1}}{x}
=
\infty
\tag{18}
たしかに発散しましたね.次は$x \to \infty$について考えてみましょう.ただし,$n$を$x-1$より小さい中で最も大きい自然数とし,$x \to \infty$で$n \to \infty$とします.
このとき,以下のような不等式により発散することが分かります.
\lim_{x \to \infty} \Gamma(x)
=
\lim_{x \to \infty}
\int_0^1 t^{x-1} e^{-t} dt
+
\lim_{x \to \infty}
\int_1^\infty t^{x-1} e^{-t} dt
\ge
\lim_{x \to \infty}
\int_1^\infty t^{x-1} e^{-t} dt
\ge
\lim_{n \to \infty}
\int_1^\infty t^n e^{-t} dt
\tag{19}
ここで,(3)式の関係を(19)式に代入して極限をとることで,証明できます.
\lim_{x \to \infty} \Gamma(x)
\ge
\lim_{n \to \infty}
e^{-1}
n!
\sum_{k=0}^n \frac{1}{k!}
\ge
\lim_{n \to \infty}
e^{-1}
n!
=
\infty
\therefore
\lim_{x \to \infty} \Gamma(x)
=
\infty
\tag{20}
大変でしたが,収束性を示すことができました.
ガンマ関数の広義積分が極限以外で収束することは,上記の不等式について逆を考えれば確認することができます.
3. ガンマ関数と階乗の関係
ガンマ関数に対して,自然数$n \in \mathbb{N}$を与えると,以下の関係が得られます.つまり,ガンマ関数は階乗を計算する関数であると考えることもできます.
\Gamma(n)
=
(n-1)!
\tag{21}
この関係は,正の実数$x$について,ガンマ関数$\Gamma(x)$が以下の性質を有することに起因します.
\Gamma(x+1)
=
x
\Gamma(x)
\tag{22}
(22)式を証明してみましょう.ガンマ関数を定義に従って部分積分すると得られます.なお,計算過程において(2)式の極限を用います.
\Gamma(x+1)
=
\int_0^\infty t^{x} e^{-t} dt
=
\bigg[
-t^{x} e^{-t}
\bigg]_0^\infty
+
\int_0^\infty xt^{x-1} e^{-t} dt
=
x \int_0^\infty t^{x-1} e^{-t} dt
\therefore
\Gamma(x+1)
=
x\Gamma(x)
\tag{23}
第2章の内容に比べると簡単ですね.
また,初期値について考えてみましょう.$\Gamma(1)$を計算します.
\Gamma(1)
=
\int_0^\infty e^{-t} dt
=
\bigg[
e^{-t}
\bigg]_0^\infty
=
1
\tag{24}
では実際に階乗を計算してみましょう.(22)式の関係に注意して(21)式の左辺を展開すると以下のように示せます.
\Gamma(n)
=
(n-1)\Gamma(n-1)
=
(n-1)(n-2)\Gamma(n-2)
\vdots
=(n-1)(n-2)\cdots 3 \cdot 2\Gamma(2)
=(n-1)(n-2)\cdots 3 \cdot 2 \cdot 1 \cdot\Gamma(1)
\therefore
\Gamma(n)
=
(n-1)!
\tag{25}
(25)式より,ガンマ関数が階乗の性質を有することが分かりました.
ガンマ関数は自然数以外にも引数をとることができるため,階乗の一般化であると捉えることもできますね.
4. おわりに
今週の記事では,ガンマ関数の導入をしました.また,ガンマ関数の収束性や階乗との関係性についても紹介しました.特に,ガンマ関数は階乗の概念を自然数から正の実数に拡張できるものであり,非常に興味深いです.来週の記事では,非自然数の階乗について紹介したいと思っています.
今週も最後までよんでいただき,ありがとうございました~.