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積分の半群性

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Last updated at Posted at 2026-06-06

 はじめまして、りょーつといいます。高専出身の博士課程1年生です。研究の専門は力学や機構学で、Qiitaでは主に制御工学や数学に関する記事を書いています。
最近は数学に関する単発ネタで記事を書いていて,これまでに以下のような記事を書きました.興味があれば読んでみてください~.

①ウォリス積分の基礎
②ウォリス積分の応用
③n次元球のイメージについて
④四次元球の体積の計算
⑤ガウス積分
⑥ガンマ関数
⑦非自然数の階乗
⑧N階積分
⑨非整数階積分
⑩ベータ関数

目次

1.はじめに
2.非整数階積分とベータ関数の復習
3.積分の半群性
4.おわりに

1. はじめに

 今回の記事では,積分の半群性について紹介します.これは,積分を2回したあとにもう一回すると,一気に3回積分したのと同じだよねっていうことを意味しています.関数$f = f(x)$を$p$階積分して得られる関数を$I^p f(x)$と表記したとき,半群性は以下のように定式化できます.

I^p
\big(
I^q
f(x)
\big)
=
I^p
I^q
f(x)
=
I^{p+q}
f(x)
\tag{1}

(1)式の面白いところは,非整数階積分でも成立する点です.その計算には非整数階積分の定義やベータ関数の定義および性質を利用します.

 第2章で非整数階積分とベータ関数のおさらいをし,第3章で(1)式の証明をします.非整数階積分の記事ベータ関数の記事も参考にしてください.

2. 非整数階積分とベータ関数の復習

 本章では非整数階積分ベータ関数の復習をします.まず,非整数階積分は以下のように定義されます.$\Gamma(p)$はガンマ関数です.

I^p
f(x)
=
\frac{1}{\Gamma(p)}
\int_{0}^{x}
(x-t)^{p-1}
f(t)
dt
\tag{2}

一方で,ベータ関数$B(p,q)$は以下のように定義されます.

B(p,q)
=
\int_{0}^{1}
(1-t)^{p-1}
t^{q-1}
dt
\tag{3}

また,ベータ関数の重要な性質として,以下が挙げられます.

B(p,q)
=
\frac{\Gamma(p)\Gamma(q)}{\Gamma(p+q)}
\tag{4}

本稿ではこれらの材料を用いて(1)式を示していきたいと思います.

3. 積分の半群性

 本章では(2)~(4)式を用いて(1)式を証明したいと思います.流れとしては(2)式を使って(1)式の左辺を表示し,(3)式や(4)式を用いていろいろ展開することで(1)式の右辺を作ります.

 まずは(2)式の定義に基づいて(1)式の左辺を表します.

I^p
\big(
I^q
f(x)
\big)
=
\frac{1}{\Gamma(p)}
\int_{0}^{x}
(1-t)^{p-1}
I^q f(t)
dt
=
\frac{1}{\Gamma(p)}
\int_{0}^{x}
(x-t)^{p-1}
\frac{1}{\Gamma(q)}
\int_{0}^{t}
(t-s)^{q-1}
f(s)
ds
\
dt
=
\frac{1}{\Gamma(p)\Gamma(q)}
\int_{0}^{x}
\int_{0}^{t}
(x-t)^{p-1}
(t-s)^{q-1}
f(s)
ds
\
dt
\tag{5}

ここで,積分の記事で紹介した,積分順序の変更を行います.(5)式の積分領域は図1のとおりなので,これは$0 \leq s \leq x$,$s \leq t \leq x$の領域に変更できますね.

図1 積分領域

(5)式に対して上記のような積分領域の変更を行ったものが以下となります.

I^p
\big(
I^q
f(x)
\big)
=
\frac{1}{\Gamma(p)\Gamma(q)}
\int_{0}^{x}
\int_{s}^{x}
(x-t)^{p-1}
(t-s)^{q-1}
f(s)
dt
\
ds
=
\frac{1}{\Gamma(p)\Gamma(q)}
\int_{0}^{x}
f(s)
\bigg(
\int_{s}^{x}
(x-t)^{p-1}
(t-s)^{q-1}
dt
\bigg)
\
ds
\tag{6}

最終的にはベータ関数を使っていい感じにしたいので,(6)式からベータ関数を作る方法を考えてみましょう.$t$に関する積分区間を$s$~$x$から$0$~$1$(ベータ関数と同じ)に変更したいので,以下のような置換を考えてみます.

u
=
\frac{t-s}{x-s}
\tag{7}
du
=
\frac{1}{x-s} dt
\therefore
dt
=
(x-s) du
\tag{8}

(7),(8)式を(6)式に反映すると以下のような関係が得られます.

I^p
\big(
I^q
f(x)
\big)
=
\frac{1}{\Gamma(p)\Gamma(q)}
\int_{0}^{x}
f(s)
\bigg(
\int_{0}^{1}
\big( (x-s)(1-u) \big)^{p-1}
\big( (x-s)u \big)^{q-1}
(x-s)
du
\bigg)
\
ds
=
\frac{1}{\Gamma(p)\Gamma(q)}
\int_{0}^{x}
f(s)
\int_{0}^{1}
(x-s)^{p+q-1}
(1-u)^{p-1}
u^{q-1}
du
\
ds
=
\frac{1}{\Gamma(p)\Gamma(q)}
\int_{0}^{x}
f(s)
(x-s)^{p+q-1}
ds
\int_{0}^{1}
(1-u)^{p-1}
u^{q-1}
du
\tag{9}

なんだか綺麗になりましたね.ここで,(9)式右辺の2つ目の積分はベータ関数の定義式(3)に対応しています.そのため,この積分は(4)式を用いて書き換えることが可能であり,

I^p
\big(
I^q
f(x)
\big)
=
\frac{1}{\Gamma(p)\Gamma(q)}
\int_{0}^{x}
f(s)
(x-s)^{p+q-1}
ds
\frac{\Gamma(p)\Gamma(q)}{\Gamma(p+q)}
=
\frac{1}{\Gamma(p+q)}
\int_{0}^{x}
f(s)
(x-s)^{p+q-1}
ds
\tag{10}

となります.ここで非整数階積分の定義(2)式より,$p+q$階積分は

I^{p+q} f(x)
=
\frac{1}{\Gamma(p+q)}
\int_{0}^{x}
f(s)
(x-s)^{p+q-1}
ds
\tag{11}

になることから,(10)式の右辺と(11)式の右辺が等しく,(1)式の成立が確認できます.

 (1)式が示せたことにより,変な階数の積分を計算する際,先に整数階積分した後,非整数階の積分をするとか,非整数階の積分をした後に普通の積分をするなど,計算しやすい方法を選ぶことができるようになります.また,非整数階積分を簡略化したりもできます.例えば$1/3$階積分を3回繰り返す場合は,わざわざ非整数階積分を計算しなくても,普通に1回積分すればいいと言えます.

I^{1/3} \big(  I^{1/3}( I^{1/3} f(x)  )    \big)
=
I^{1/3+1/3+1/3} f(x)
=
I f(x)
=
\int_{0}^{x}
f(t)
dt
\tag{12}

4. おわりに

 本稿では,ベータ関数を使って積分の半群性について紹介しました.積分の操作そのものを,指数関数みたいに見ることができるっていうのは面白いですよね.来週はいよいよ非整数階微分について考えていきたいと思います.
 今週も最後まで読んでいただき,ありがとうございました!

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