Db2 AI エディション(Db2 AI Advanced, Db2 AI Standard)にはフル機能のDb2 Genius Hubがバンドルされています。
この記事では、IBM Db2 Genius Hub v1.1.4の新機能群を3つのカテゴリーに分けて概説しています。
1)プラットフォームおよび管理機能の強化
2)エージェント型AI機能
3)MCPサーバー
これ以降はDb2 Genius Hubマニュアルの翻訳記事となります(関連情報を除く)。
"What's new in IBM Db2 Genius Hub 1.1.4.0"
https://www.ibm.com/docs/en/db2-genius-hub/1.1.x?topic=notes-whats-new-in-db2-genius-hub-1140
1)プラットフォームおよび管理機能の強化
今回のリリースでは、プラットフォームのサポート、認証、クエリ管理、アラート管理、および接続の整理機能が強化されました。
1. Db2スキーマの比較
SQLワークベンチに「スキーマ比較(Schema Compare)」機能が追加されました。
これにより、2つのDb2スキーマを迅速に比較し、同一、差異あり、ソースのみ、ターゲットのみのオブジェクトを特定できます。
テーブル、ビュー、インデックス、関数、プロシージャ、MQT、エイリアス、シーケンスを比較対象として、概要や詳細な結果の確認、オブジェクトレベルの差異へのドリルダウン、結果のフィルタリング、および監査やレビュー用のCSV形式での比較概要のエクスポートが可能です。
2. AI分析と使用状況の監視
AIプラットフォームの使用状況(トークン消費量、ユーザーアクティビティ、データベース使用状況、AIエージェントのワークロード、リクエストレベルのアクティビティなど)を一元的に表示する、新しいAI分析ダッシュボードが導入されました。
使用傾向の分析、ユーザー・データベース・エージェント間でのトークン消費量の比較、事前定義またはカスタムの時間範囲によるデータフィルタリングに加え、詳細なアクティビティログの確認、検索、フィルタリング、エクスポートを行うことができます。
3. 「主要なインサイト(Key insights)」パネルに表示するデータベースの選択
「主要なインサイト」ページに「データベースの選択(Choose databases)」オプションが追加され、表示するデータベースを最大5つまで選択できるようになりました。
4. データベースストレージの増加傾向の監視
「監視(Monitoring)」ページから、データベースストレージの増加傾向を監視できるようになりました。
「データベースの増加傾向(Database growth trend)」ビューには、最大30日間の日次増加履歴データが表示されます。
選択したデータベースの過去7日間の増加量の確認や、個々の表スペースの増加監視に加え、すべての表スペースの増加傾向を1つのチャートにまとめて比較しやすくすることも可能です。
5. データベースおよびインスタンス構成の比較
単一のビューから、複数のデータベースにわたるデータベースおよびインスタンスの構成パラメータを比較できるようになりました。
構成の比較では、現在利用可能な監視対象データベースのライブデータが表示され、その結果をCSVまたはExcel形式でエクスポートできます。
6. スキーマレベルのオブジェクトに対するDDLの生成
SQLワークベンチのオブジェクトツリーから直接、スキーマ内の特定のタイプのサポート対象オブジェクトすべてについてDDLを生成できるようになりました。
サポート対象のオブジェクトタイプノードのオーバーフローメニューから「DDLの生成(Generate DDL)」を選択すると、生成されたDDLが新しいSQLエディタータブで開きます。
サポートされるオブジェクトタイプには、テーブル、ビュー、MQT、インデックス、エイリアス、シーケンス、ユーザー定義関数、プロシージャが含まれます。
この操作は、非システムスキーマに対してのみ、かつ選択したオブジェクトタイプに1つ以上のオブジェクトが含まれている場合に利用可能です。
7. パフォーマンスのしきい値に基づく詳細なアクティビティ・データの収集
IBM Db2 Genius Hubは、データベース・アクティビティに関する、しきい値に基づいた詳細情報の収集をサポートするようになりました。
実行時間、CPU使用率、読み取り行数、一時領域の消費量などのメトリックに基づいて、パフォーマンスのしきい値を設定できます。
定義されたしきい値を超えたアクティビティについてのみ詳細情報が収集されるため、監視に伴うオーバーヘッドを抑えつつ、負荷の高いデータベース・アクティビティの調査に必要な診断データを取得することが可能です。
2)エージェント型AI機能
今回のリリースでは、IBM Db2環境全体にわたり、データベースの診断、自動化、監視、および運用支援を強化する新しいエージェンティックAI機能が導入されます。
1. Azure AI Foundryのサポート
IBM Db2 Genius HubがAIモデルプラットフォームとしてMicrosoft Azure AI Foundryをサポートするようになりました。
これにより、ユーザーは自身のAzure環境にデプロイされたAnthropic Claudeモデルを活用し、Db2のエージェンティック・ワークフローを実行できるようになります。
3)MCPサーバー
今回のリリースでは、Db2の診断およびパフォーマンス分析用のMCPサーバーツールが7つ追加されました。
また、Db2 on Cloud (SaaS) への接続機能、サーバー起動の高速化、リソースライフサイクル管理の改善、およびstdioトランスポートの安定性修正も行われています。
新しいツール
1. LOCK_WAIT_ANALYZER: ライブ・ロック待機アナライザー
Db2の監視用テーブル関数を使用して、アクティブなロック待機を分析し、ブロッキング・チェーン(ブロックの連鎖)の完全な概要を構築します。
2. DISK_SPILLING_ANALYZER: ディスク・スピリング・アナライザー
ディスク・スピリング(ソート、ハッシュ、またはOLAP操作が一時表スペースに溢れ出す現象)の根本原因を3段階で分析します。
監視APIへのアクセスには、Db2 Genius Hub (DIC) への接続が必要です。
3. GET_TOP_SQL: パフォーマンス・メトリックに基づくトップSQLの特定
SYSPROC.MON_GET_PKG_CACHE_STMTを使用し、ユーザーが選択したパフォーマンス・メトリックに基づいて、パッケージ・キャッシュ内の上位SQLステートメントを特定します。
4. GET_DB_UPGRADE_HISTORY: データベース・アップグレード履歴
SYSIBM.SYSVERSIONSからデータベースのバージョン・アップグレード履歴を取得・分析します。
5. AUTOCONFIGURE: Db2 AUTOCONFIGUREの推奨設定
Db2の「AUTOCONFIGURE APPLY NONE」コマンドをMCPツールとして提供します。
これにより、推奨される構成設定が返されますが、データベースへの設定適用は行われません。
6. TABLESPACE_IO: 表スペースI/O統計
MON_GET_TABLESPACEを使用して表スペースレベルのI/Oメトリックを表示し、ストレージのホットスポットを特定します。
7. IMPACT_ANALYSIS_TOOL: インデックス推奨の影響分析
クエリ・チューナーによって生成されたインデックス推奨案がワークロードに与える影響を分析します。
既存機能の強化
1. SaaSデータベース接続のサポート
MCPサーバーがDb2 on Cloud (SaaS) データベースへの接続をサポートするようになりました。
資格情報の復号フローが拡張され、DICの暗号化資格情報APIから返されるSSL構成(db_ssl_enabled、db_ssl_cert_path)が反映されるようになりました。
これにより、SaaS環境でのSSL保護された接続が可能になります。
2. サーバー起動時間の短縮
・config.validate() の実行タイミングが、モジュールのインポート時から main() 関数内へと遅延(延期)されました。
これにより、Pythonのインポート段階におけるサブプロセス(WindowsでのTLSキーACL設定用のicaclsなど)のオーバーヘッドが解消されました。
・dateparser のインポートが parse_time_range() 内での遅延読み込み(レイジーロード)に変更されました。
dateparser のインポートには約3〜6秒を要するため、遅延読み込みを行うことで、時間範囲の解析機能を使用しないツールにおけるこのオーバーヘッドを回避できます。
・PyInstaller のビルド設定において UPX 圧縮が無効化されました。
UPX を使用すると、Windows 環境での起動時にウイルス対策ソフトが展開されたバイナリを毎回再スキャンしてしまい、起動時間が大幅に遅延する原因となっていたためです。
3. MCP ライフスパン・コンテキストマネージャ
サーバーのリソース初期化およびクリーンアップ処理において、従来のコンテキストマネージャ方式に代わり、FastMCP のライフスパン・パターンが採用されました。
これにより、ツールインスタンスやデータベース接続プールが起動時に確実に一度だけ初期化され、シャットダウン時には適切に破棄されるようになります。
4. stdio モードの修正
stdio トランスポートモードにおける stdout(標準出力)への不要な出力混入を防ぐ修正が行われました。
これまでは、ツールの実行中に他のコードが意図せず stdout に書き込みを行うと、JSON-RPC ストリームが破損する恐れがありました。
さわってみよう Db2 AIエディション・シリーズのご紹介
1と#2から#5まではAIアシスタント機能についてご紹介しています。
#6と#7、#16はモニタリング機能についてご紹介しています。
#8は耐量子暗号化機能についてご紹介しています。
#9は耐量子暗号化機能を含むv12.1.5の新機能についてご紹介しています。
#10と#11はv12.1.5以降で利用できるようになったSQLによる生成AI機能についてご紹介しています。
#12と#13ではDb2 Genius Hub 1.1.3以降で利用できるようになったDb2 Genius Hub MCP ServerとIBM Bobからそれを利用する方法について概説しています。
#14ではLinux, Windowsに加え、MacOSにも対応したDb2 Genius Hub v1.1.3の様々な新機能をハイライトしています。
#15ではDb2 Genius Hubのセキュリティ強化のために、HashiCorp Valutと連携する方法について概説しています。
#1では、Db2入門者、初心者には作成が難しいと思われる複雑なSQLをAIアシスタントを使って作成しています。加えて、Db2 Genius Hub概要、無料評価版のダウンロードサイトやマニュアルURLもご紹介しています。#1からお読みいただくことをお勧めいたします。
さわってみよう Db2 AI エディション #1 〜エージェント型AIアシスタント編 Part#1〜
https://qiita.com/ibm_tk/items/e763bbea3fcf5e8a27a9
#2では、AIアシスタントでデータベースの稼働状況のサマリーを表示しています。
さわってみよう Db2 AI エディション #2 〜エージェント型AIアシスタント編 Part#2〜
https://qiita.com/ibm_tk/items/e11986879f6eca23c249
#3では、AIアシスタントでデータベースの応答時間の履歴を表示しています。
さわってみよう Db2 AI エディション #3 〜エージェント型AIアシスタント編 Part#3〜
https://qiita.com/ibm_tk/items/24647bc2db6a3a266d7c
#4では、AIアシスタントでデータベースのバックアップ履歴とプロセッサー利用状況の履歴を表示しています。
さわってみよう Db2 AI エディション #4 〜エージェント型AIアシスタント編 Part#4〜
https://qiita.com/ibm_tk/items/8d11c4e9fd39740d923d
#5では、AIアシスタントでクエリのスループットを表示しています。
さわってみよう Db2 AI エディション #5 〜エージェント型AIアシスタント編 Part#5〜
https://qiita.com/ibm_tk/items/e2583b00f624e351ce02
#6となる"さわってみよう Db2 AIエディション#6 〜モニタリング編 Part#1〜"ではモニタリング機能をご紹介しています。
https://qiita.com/ibm_tk/items/cdedc3a878998199cfee
#7となる"さわってみよう Db2 AIエディション#7 〜モニタリング編 Part#2〜"では監視(モニター)レポート作成機能をご紹介しています。
https://qiita.com/ibm_tk/items/81608900a0e2c89c18fc
#8となる"さわってみよう Db2 AIエディション#8 〜耐量子暗号化機能編 Part#1〜"では耐量子暗号化機能と登場した背景などについて記述しています。
https://qiita.com/ibm_tk/items/57a115c0d284697dd147
#9となる"さわってみよう Db2 AIエディション#9 〜v12.1.5新機能編 Part#1〜"ではv12.1.5の新機能のハイライトをご紹介しています。
https://qiita.com/ibm_tk/items/daabdf8215b430e804d8
#10となる"さわってみよう Db2 AIエディション#10 〜SQLで生成AI編 Part#1〜"ではv12.1.5以降で利用できるようになったSQLから使える生成AI機能(TEXT_GENERATION関数など)をご紹介しています。
https://qiita.com/ibm_tk/items/54a169cffcfbb9be0fed
#11となる"さわってみよう Db2 AIエディション#11 〜SQLで生成AI編 Part#2〜"ではv12.1.5以降で利用できるようになったSQLから使える生成AI機能(TO_EMBEDDING関数, セマンティック検索など)をご紹介しています。
https://qiita.com/ibm_tk/items/3085c90674561b9d80e7
#12となる"さわってみよう Db2 AIエディション#12 〜Db2 Genius Hub MCP Server編 Part#1〜"ではDb2 Genius Hub v1.1.3以降で利用できるようになったDb2 Genius Hub MCP Serverの概説とIBM Bobからそれにアクセスする方法などをご紹介しています。
https://qiita.com/ibm_tk/items/639e85ed43f1bfad8f07
#13となる"さわってみよう Db2 AIエディション#13 〜Db2 Genius Hub MCP Server編 Part#2〜"ではIBM Bobから簡単な自然言語で指定したデータベースのキャパシティ・プランニング・レポートを作成する方法などをご紹介しています
https://qiita.com/ibm_tk/items/37456fe2e352f7d04812
#14となる"さわってみよう Db2 AI エディション #14 〜Db2 Genius Hub v1.1.3新機能編 Part#1〜"ではLinux, Windowsに加え、MacOSにも対応したDb2 Genius Hub v1.1.3の様々な新機能をハイライトしています。
https://qiita.com/ibm_tk/items/d52d9e775c317e6ffaf3
#15となる"さわってみよう Db2 AI エディション #15 〜HashiCorp Vault連携編 Part#1〜"ではDb2 Genius Hubのセキュリティ強化のために、HashiCorp Valutと連携する方法について概説しています。
https://qiita.com/ibm_tk/items/f778c060037bd21add32
#16となる"さわってみよう Db2 AIエディション#16 〜モニタリング編 Part#3〜"ではDb2 Genius Hubを使うことで、複数データベースの性能指標や構成の比較が簡単にできることをご紹介しています。
https://qiita.com/ibm_tk/items/ae5d9a0c2a6b88188900