Db2 AI エディション(Db2 AI Advanced, Db2 AI Standard)にはフル機能のDb2 Genius Hubがバンドルされています。
IBM Db2 Genius Hubはv1.1.3で様々な新機能が実装されました。
この記事では、新機能群を2つのカテゴリーに分けて概説しています。
1)プラットフォームおよび管理機能の強化
2)エージェント型AI機能
これ以降はDb2 Genius Hubマニュアルの翻訳記事となります(関連情報を除く)。
"What's new in IBM Db2 Genius Hub 1.1.3.0"
https://www.ibm.com/docs/en/db2-genius-hub/1.1.x?topic=notes-whats-new-in-db2-genius-hub-1130
1)プラットフォームおよび管理機能の強化
今回のリリースでは、プラットフォーム・サポート、認証、クエリー管理、アラート管理、および接続の整理機能が強化されました。
1.macOSのサポート
macOSプラットフォームのサポートが追加されました。
Genius HubはLinux, Windowsに加えてMacOSにも対応したことになります。
(関連情報)Genius HubのWebサイト。30日間の無料評価版のダウンロードもこちらから
https://www.ibm.com/jp-ja/products/db2-genius-hub
無料評価版をご希望の場合、画面の"無料評価版 (30日間)"をクリックしてください。

2.Kerberos認証のサポート
Genius Hubは、エンタープライズ環境における安全なシングル・サインオン(SSO)を実現するため、Kerberos認証をサポートするようになりました。
管理者は、Kerberosレルム、鍵配布センター(KDC)、サービス・プリンシパルを設定し、LDAPグループをロールにマッピングできます。
設定ウィザードには、組み込みのテスト機能と段階的なガイダンスが用意されています。
Active Directory環境とOpenLDAP環境の両方をサポートします。
3.クエリー・チューニングのためのレジストリー・ガイドラインの推奨事項
クエリー・チューニングにおいて、Db2レジストリー変数を使用してカラムナー(列指向)テーブルのパフォーマンスを最適化するためのガイドライン推奨事項が組み込まれました(Db2 v12.1.3以降)。
これらのガイドラインは、グローバルな構成変更を必要とせずにクエリーに直接追加できるため、実行時間が大幅に短縮されます。
4.SQLワークベンチのエクスポート権限制御
コンソール管理者は、「ロールと権限」機能を使用して、SQLワークベンチにおけるCSV/XLSX形式へのエクスポート機能を制御できるようになりました。
SQLワークベンチのエクスポート権限は、下位互換性を確保するためにすべてのロールでデフォルトで有効になっていますが、「データベース管理者」や「データベース・ユーザー」のロールに対して無効にすることで、クエリー結果をローカル・ファイル・システムにエクスポートすることを防ぐことができます。
5.通知センターでのアラートの一括削除
通知センターで、選択したフィルター条件に一致するすべてのアラートを削除できるようになり、アラート管理の簡素化と手作業の削減が実現しました。
6.主要なインサイトのフィルタリング
PureScaleなどのデータベース・タグを選択して、主要なインサイトをフィルタリングできます。
選択したタグに関連付けられた接続が表示されます。
7.接続のグループ化
「ステータス」または「アラート」に基づいて接続をグループ化し、「利用可能」、「切断」、「重大」、「警告」などの展開可能なカテゴリーの下に整理できます。
各グループには接続数が表示されます。
2)エージェント型AI機能
今回のリリースでは、IBM Db2環境全体におけるデータベース診断、自動化、監視、および運用支援を強化する、新しいエージェント型AI機能が導入されました。
1. 強化されたDBAエキスパートエージェント
ダイナミック・コンテキスト・エージェント・ループ - SMAPドキュメントを活用し、タスクの実行、Db2の運用上の問題を自律的に調査、解決する、AI搭載のシニア・データベース管理者(DBA)エージェントです。
主な機能:
エビデンスに基づく診断 - 仮説を立て、リアルタイムのテレメトリで検証し、根本原因が特定されるまで反復処理を行います。
SMAPを活用したインテリジェンス - IBM DocsおよびSmart Agent Protocols(SMAP)ドキュメントを検索し、エラーコード、症状、および実績のある解決手順を把握します。
ヒューマン・イン・ザ・ループによる安全性 - 重要な操作(SQL実行、構成変更、DDL操作)には明示的な承認が必要です。
マルチツール連携 - ドキュメント検索(SMAPドキュメント)、テレメトリツール、Safe SQL、およびリモートOS診断を連携させます。
2. 安全なSQLの実行
SQLglot解析を用いた多層検証により読み取り専用操作を強制する、セキュリティ強化されたSQL実行レイヤー。
保護機能:
DML/DDL/DCL/TCL ブロッキング - INSERT、UPDATE、DELETE、CREATE、ALTER、DROP、GRANT、REVOKE、およびトランザクション制御ステートメントを防止します。
UDF 保護 - 安全な Db2 組み込み関数の許可リストに対してすべての関数呼び出しを検証し、悪意のあるユーザー定義関数を防止します。
ロック句の検出 - ロックを取得する可能性のある FOR UPDATE 句をブロックします。FOR READ ONLY または FOR FETCH ONLY のみを許可します。
SQL インジェクション防止 - sqlglot パーサーを使用して、コメント、文字列リテラル、および複雑な SQL 構文を適切に処理します。
行数制限の適用 - メモリ オーバーフローとコンテキスト ウィンドウの枯渇を防ぐため、結果を25行(MAX_SAFE_SQL_ROWS)に制限します。
クエリ タグ付け - Db2 モニタリング ツールでの識別のため、クエリの先頭に /* safe_db2 */ コメントを追加します。
3. RemoteOS API ツール
SQL テレメトリを超えたログとクラスタの状態にアクセスして、OS レベルの診断を行います。
機能:
Db2診断ログ(db2diag.log) - リモートOSホストから、時間ウィンドウフィルタリング、重要度レベル(INFO、WARNING、ERROR、CRITICAL)、および自然言語による時間表現(「2時間前」、「昨日」、「先週」)を使用して診断ログ・エントリ-を取得します。
クラスタ状態監視 - クラスタタイプ情報、インスタンス・ステータス、ドメイン詳細、およびクォーラム状態を取得し、クラスタの包括的な可視性を提供します。
4. 制御された書き込み操作
重要なデータベース変更に対するヒューマン・イン・ザ・ループ(HITL)承認メカニズム。
3つの制御領域(a, b, c):
a)データベース構成の更新(update db cfg)
16個の許可リストパラメータ - LOCKTIMEOUT、LOCKLIST、MAXLOCKS、CUR_COMMIT、AUTO_RUNSTATS、WLM_AGENT_LOAD_TRGT、LOGSECOND、SORTHEAP、SHEAPTHRES_SHRなど
実行前検証 - パラメータ範囲の強制適用、AUTOMATIC/ON/OFF値の検証、CASデプロイメントのブロック、現在値と延期値の表示
再起動警告 - データベースの再起動が必要なパラメータ(LOCKTIMEOUT、CUR_COMMIT)を自動的に検出し、承認前にユーザーに警告
b)FORCEアプリケーション(FORCE APPLICATIONツール)
接続の切断 - ハンドルを使用してアプリケーションを強制的に切断し、コミットされていない作業を即座にロールバック
アプリケーション検証 - 強制切断を試みる前にMON_GET_CONNECTIONSを使用してアプリケーションが存在することを確認し、無効なハンドルエラーを防止
リッチコンテキスト表示 - 承認メッセージにアプリケーション名、認証ID、接続開始時刻、アクティブ期間を表示
c)表再編成
2種類の操作タイプ - INPLACE CLEANUP OVERFLOWS(F1違反に対する高速オンライン修正)とRECLAIM EXTENTS(列指向表領域の再利用)
識別子のサニタイズ - 正規表現による検証でスキーマ名/表名を介したSQLインジェクションをブロックし、英数字とアンダースコアのみを許可します。
影響に関する警告 - 再編成中の潜在的なパフォーマンスへの影響をユーザーに通知し、完了後にALTER TABLESPACE REDUCE MAXを実行することを推奨します。
5. トークンの最適化
多層的なアプローチにより、LLMコストを削減し、応答時間を改善します。
6. Db2 Genius Hub MCP Server
MCPサーバーは、AIアシスタント(Claude Code、Bob、Cursor、または顧客独自のAIエージェント)に、Db2の監視、診断、チューニング、および履歴パフォーマンス分析への安全なツールベースのアクセスを提供します。
主要ツール:
クエリチューナー
安全なSQLの実行
実行計画分析
WLMキューイング分析
Db2ベクターストアのセマンティック検索
履歴データ分析
変更分析
約30種類のツール
(関連情報)MCPサーバーにフォーカスした記事はこちら
"さわってみよう Db2 AIエディション#12 〜Db2 Genius Hub MCP Server編 Part#1〜"
Db2 Genius Hub v1.1.3以降で利用できるようになったDb2 Genius Hub MCP Serverの概説とIBM Bobからそれにアクセスする方法などをご紹介しています。
https://qiita.com/ibm_tk/items/639e85ed43f1bfad8f07
"さわってみよう Db2 AIエディション#13 〜Db2 Genius Hub MCP Server編 Part#2〜"
IBM Bobから簡単な自然言語にて、指定したデータベースのキャパシティ・プランニング・レポートを作成する方法などをご紹介しています
https://qiita.com/ibm_tk/items/37456fe2e352f7d04812
7. 新しいSMAP
25件以上の新しいSMAPドキュメントを含む、刷新されたプライベートナレッジベース。トラブルシューティングシナリオと運用手順の強化を網羅しています。
8. PureScaleクラスタのヘルスチェック
リモートOS APIとSMAPガイドによる検証を介した、包括的なクラスタヘルス診断。
コマンド:
db2instance -list - PureScaleクラスタ上のすべてのDb2インスタンスをステータスとバージョン情報とともに一覧表示します。
db2cm -list -alert - アクティブなクラスタマネージャアラートを取得し、プロアクティブな問題検出と高可用性を実現します。
db2cm -list -domain - メンバーノード、CF(Cluster Caching Facility)サーバー、ネットワークトポロジーを含むクラスタードメイン構成を表示
db2cm -list -quorum - スプリットブレイン防止のためのクォーラムデバイスの状態と投票構成を表示
SMAP主導のヘルスチェック:
自動検証 - 4つのPureScaleコマンドすべてを実行し、その出力をSMAPドキュメントのパターンと照合して検証
異常検知 - クラスター状態の不整合、メンバーの障害、CF接続の問題、クォーラム違反を特定
Python3実装 - タイムアウト保護とエラー処理を備えたサブプロセス実行を利用した、ネイティブPythonによるヘルスチェックプログラム
9. その他の機能強化
25以上の新しいSMAPドキュメント
トラブルシューティングと運用ガイダンスを向上させるためのナレッジベースの拡充。
エージェント・ハーネスと精度の向上
エージェント精度の向上および多様なデプロイメントタイプへの対応。
新しい短期・長期記憶ツール
ユーザー設定の保持および長期的な記憶・想起機能の実装。
ナレッジ検索精度の向上
インスタンスタイプ、デプロイメントタイプ、バージョンにより特化したドキュメントの取得による、対話型検索の強化。
スペース管理:レンジ・パーティション表のサポート
レンジ・パーティション表に対する再編成(reorg)チェックおよびスペース再利用(reclamation)機会の検出機能の拡張。
HADR SMAPのセットアップとToDoリストベースのタスク実行
HADRセットアップ用SMAPドキュメントを活用し、エキスパートエージェントがToDoリスト形式のアプローチでタスクを遂行。
さわってみよう Db2 AIエディション・シリーズのご紹介
#1から#5まではAIアシスタント機能についてご紹介しています。
#6と#7はモニタリング機能についてご紹介しています。
#8は耐量子暗号化機能についてご紹介しています。
#9は耐量子暗号化機能を含むv12.1.5の新機能についてご紹介しています。
#10と#11はv12.1.5以降で利用できるようになったSQLによる生成AI機能についてご紹介しています。
#12と#13はDb2 Genius Hub 1.1.3以降で利用できるようになったDb2 Genius Hub MCP ServerとIBM Bobからそれを利用する方法について概説しています。
#1では、Db2入門者、初心者には作成が難しいと思われる複雑なSQLをAIアシスタントを使って作成しています。加えて、Db2 Genius Hub概要、無料評価版のダウンロードサイトやマニュアルURLもご紹介しています。#1からお読みいただくことをお勧めいたします。
さわってみよう Db2 AI エディション #1 〜エージェント型AIアシスタント編 Part#1〜
https://qiita.com/ibm_tk/items/e763bbea3fcf5e8a27a9
#2では、AIアシスタントでデータベースの稼働状況のサマリーを表示しています。
さわってみよう Db2 AI エディション #2 〜エージェント型AIアシスタント編 Part#2〜
https://qiita.com/ibm_tk/items/e11986879f6eca23c249
#3では、AIアシスタントでデータベースの応答時間の履歴を表示しています。
さわってみよう Db2 AI エディション #3 〜エージェント型AIアシスタント編 Part#3〜
https://qiita.com/ibm_tk/items/24647bc2db6a3a266d7c
#4では、AIアシスタントでデータベースのバックアップ履歴とプロセッサー利用状況の履歴を表示しています。
さわってみよう Db2 AI エディション #4 〜エージェント型AIアシスタント編 Part#4〜
https://qiita.com/ibm_tk/items/8d11c4e9fd39740d923d
#5では、AIアシスタントでクエリのスループットを表示しています。
さわってみよう Db2 AI エディション #5 〜エージェント型AIアシスタント編 Part#5〜
https://qiita.com/ibm_tk/items/e2583b00f624e351ce02
#6となる"さわってみよう Db2 AIエディション#6 〜モニタリング編 Part#1〜"ではモニタリング機能をご紹介しています。
https://qiita.com/ibm_tk/items/cdedc3a878998199cfee
#7となる"さわってみよう Db2 AIエディション#7 〜モニタリング編 Part#2〜"では監視(モニター)レポート作成機能をご紹介しています。
https://qiita.com/ibm_tk/items/81608900a0e2c89c18fc
#8となる"さわってみよう Db2 AIエディション#8 〜耐量子暗号化機能編 Part#1〜"では耐量子暗号化機能と登場した背景などについて記述しています。
https://qiita.com/ibm_tk/items/57a115c0d284697dd147
#9となる"さわってみよう Db2 AIエディション#9 〜v12.1.5新機能編 Part#1〜"ではv12.1.5の新機能のハイライトをご紹介しています。
https://qiita.com/ibm_tk/items/daabdf8215b430e804d8
#10となる"さわってみよう Db2 AIエディション#10 〜SQLで生成AI編 Part#1〜"ではv12.1.5以降で利用できるようになったSQLから使える生成AI機能(TEXT_GENERATION関数など)をご紹介しています。
https://qiita.com/ibm_tk/items/54a169cffcfbb9be0fed
#11となる"さわってみよう Db2 AIエディション#11 〜SQLで生成AI編 Part#2〜"ではv12.1.5以降で利用できるようになったSQLから使える生成AI機能(TO_EMBEDDING関数, セマンティック検索など)をご紹介しています。
https://qiita.com/ibm_tk/items/3085c90674561b9d80e7
#12となる"さわってみよう Db2 AIエディション#12 〜Db2 Genius Hub MCP Server編 Part#1〜"ではDb2 Genius Hub v1.1.3以降で利用できるようになったDb2 Genius Hub MCP Serverの概説とIBM Bobからそれにアクセスする方法などをご紹介しています。
https://qiita.com/ibm_tk/items/639e85ed43f1bfad8f07
#13となる"さわってみよう Db2 AIエディション#13 〜Db2 Genius Hub MCP Server編 Part#2〜"ではIBM Bobから簡単な自然言語で指定したデータベースのキャパシティ・プランニング・レポートを作成する方法などをご紹介しています
https://qiita.com/ibm_tk/items/37456fe2e352f7d04812
