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ゴンペルツ曲線とは何か?(14)

Last updated at Posted at 2021-06-20

緊急事態宣言の効果を定量的に検証する

緊急事態宣言が出されなかった 2020.7月〜9月の第2波と緊急事態宣言が出された 2021.3月〜6月の第4波を比較して定量的に効果を検証します。
※ノイズが少ない大阪のデータを用います。

緊急事態宣言が出されなかった時の経過

2020.7.8~2020.9.7 の新規感染者数と同時期の梅田駅前の人出を示します。
大阪第2波検証210620.jpg

\ y=513.6e^{-0.06346(x-28.25)-e^{-0.06346(x-28.25)}}

という二重指数関数に当てはまります。
上り坂と下り坂で人流に大きな変化がないことがわかります。

累計感染者数の実測値と、上式を積分した式は、ほぼ完全に一致します。
大阪第2波累計検証210620.jpg

\ Y=8093e^{-e^{-0.06346(x-28.25)}}

上図を対数化したものが以下の図です。
大阪検証第2波対数210620.jpg
感染者数が指数関数的に増加する場合、累計感染者数を対数化したグラフは上向きの直線になるはずです。
しかし 2020.7.8 の対数グラフの傾きを A0 とすると日々 e-0.06346 倍に減衰しています(一定減衰仮定)。これはまさに二重指数関数(ゴンペルツ曲線)の特徴です。
減衰係数(0.06346)と 開始〜ピークまでの日数 には以下のような関係が成り立ちます。
※ゴンペルツ曲線とは何か?(10)

\ 減衰係数=\frac{2}{開始〜ピークまでの日数}

人流に変化がなくても収束するという現象は緊急事態宣言が出されなかった日本各地の第2波で見られました。
以下は 2020.7月〜9月の各地の新規感染者数(上段)と駅前の人出(下段)です。
兵庫福岡愛知第2波210620.jpg
第二波の経過中、全く人流が変化しなかった兵庫県の累計感染者数と対数化データを以下に示します。
兵庫第二波累計対数.jpg
大阪と同様、累計感染者数は上記の二重指数関数と一致します。対数グラフの傾きも大阪と同様に一定減衰仮定を満たします。
実効再生産数 = 接触率 × 基本再生産数 という仮説が正しいとすると対数グラフの傾きが一定減衰するためには人流が以下の右図のように指数関数的に減少しなければいけません。
兵庫人出実際と仮説.jpg
・・・しかし実際の人流(上図:左)には全く変化がありませんでした。
実効再生産数 = 接触率 × 基本再生産数 という概念は指数関数を感染者数に当てはめるために考案されたものですが検証が必要であると思われます。

行動抑制の強度が一定でも上昇->下降の変化を来すのは、一定の重力加速度で上昇->下降する砲弾の軌跡に似ています。※砲弾の軌跡は以下のような二次関数となります。
砲弾の軌跡210620.jpg
行動抑制の強度は重力加速度に似ています。

緊急事態宣言が出された時の経過

上記をふまえて大阪の第4波(2021.3.13~6.13)を検証します。2021.4.25 に緊急事態宣言が出される前をオレンジ色、出された後を赤色にしています。
大阪第4波新規検証210620.jpg
宣言前(2021.3.13~4.24)の新規感染者数から

\ y=3122e^{-0.05135(x-38.96)-e^{-0.05135(x-38.96)}}

という二重指数関数を導きました。
宣言の2週間後くらいから減少の角度が予測式に比べて急峻になっています。
累計感染者数は以下のようになります。
(※流行初期のノイズを減らすために 2021.3.23 からカウントしています)
大阪第4波累計検証210620.jpg

\ Y=60791e^{-e^{-0.05135(x-38.96)}}

から予測される 2021.3.23~6.13 の累計感染者数は 56930人ですが実測値は 53125人で 3805人少なくなっています。
累計感染者数を対数化すると以下のようになります。
大阪第4累計対数検証210620.jpg
2021.3.23 の対数グラフの傾きを A0 とすると日々 e-0.05135 倍に減衰しています。
注目すべきは、この減衰が流行初期から一定の割合を保っていることです。
上図を見ると全く緊急事態宣言の効果がないように見えますが宣言発令2週間後の 2021.5.9 からの対数グラフを拡大すると以下のようになります。
大阪第4対数検証拡大210620.jpg
2021.5.9 以降で対数グラフの傾きが日々 e-0.07183 倍に減衰しています。

もし 2021.3.23 に発令されたらどうなったか?

今回は発令がピークアウトの後だったので、宣言による累計感染者数の減少効果が 3805人と限定的なものになりました。
もし流行初期の 2021.3.23 に緊急事態宣言が発令されたらどうなったでしょうか?
発令2週間後の 2021.4.6 を境に減衰係数が 0.05135 から 0.07183 に変化した場合、
大阪早期発令の効果210620.jpg
ピークは 2021.4.11 になり 2021.6.13 の累計感染者数は 32503人になります。2021.4.25 に発令する場合より約2万人(40%)減となります。

まとめ

  • 行動抑制の強度は、砲弾の軌跡における重力加速度に相当する。
  • 人流が一定の場合、累計感染者数を対数表示した時の傾きは一定減衰仮定を満たす。
  • 緊急事態宣言は減衰係数を増大させて収束を早める効果がある。
  • ピークを過ぎた後に発令した場合、効果は限定的である。
  • 流行初期に発令すると大きな効果が得られるため、発令は早ければ早いほど良い。しかし発令からピークアウトまでにタイムラグがあるので見栄えは悪い。(今回の第4波のようにピークアウトに合わせて発令した方が印象として「効いた感じ」が得られやすい)

・・・本稿が新型コロナ対策の一助になれば幸甚です。

ゴンペルツ曲線とは何か?(1)
ゴンペルツ曲線とは何か?(2)
ゴンペルツ曲線とは何か?(3)
ゴンペルツ曲線とは何か?(4)
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