16
11

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

More than 3 years have passed since last update.

ゴンペルツ曲線とは何か?(1)

Last updated at Posted at 2020-01-05

Benjamin_Gompertz.gif

はじめに

Gompertz 曲線(信頼度成長曲線)はプログラムの残存バグ数推測に使われます。
私は職業プログラマではありませんが、数年前にC型肝炎ウイルスと Gompertz 曲線の関係1について研究していたことがあり Qiita 読者の皆様にも参考になると思い投稿させて頂きます。

指数関数的増加・減少

Gompertz 曲線の解説に入る前に、指数関数的増加・減少について説明します。
高校の数IIIで使った「微分・積分」の教科書を思い出してみましょう。(本稿の内容は高校生レベルです。)
ある一定の倍加時間(a)で分裂して倍増する細胞があるとします。10個の細胞が時間 a 経過すると20個、100個あれば時間 a 経過すると200個になります。10個あった時の単位時間あたりの増加速度は10/a 、100個あった時の単位時間あたりの増加速度は100/a となります。つまり増加速度は、その時に存在する数に比例することになります。
数を N 、増加速度を $\frac{dN}{dt}$ とすると、$\frac{dN}{dt} = kN$ $\ (k$ は比例定数)と表すことができます。
この微分方程式を解きます。

\frac{dN}{dt} = kN\\
\frac{1}{N}dN = kdt\\
\int\frac{1}{N}dN = k\int dt\\
\ln N = kt + c\\
\begin{align}
\ N &= e^{kt + c}\\
&= e^c\ e^{kt}
\end{align}

$\ t = 0$ の時の数を$\ N_0$ とすると、

\ N_0 = e^c

よって

\ N = N_0e^{kt}

上式を対数化すると、

\ln N = \ln {N_0} + kt

となり、切片を $\ln {N_0}$ 、傾きを $\ k$ とする直線になります。
一方、ある一定の半減期(h)で半減する物の場合は、対数グラフの傾きが $\ -k$ の下向きの直線になります。
exponential_growth_decay.gif

Gompertz が見つけたこと

1825年に発表された原著2から解説します。Gompertz はある都市の同一の集団を観察し、10年毎の死亡による人口減少を調べました。

年齢 同一集団の人数 Log (人数)
10 6460 3.81023
20 6090 3.78462
30 5642 3.75143
40 5075 3.70544
50 4397 3.64316
60 3643 3.56146

10歳で6460人いた集団が、10年後(20歳)の時には数名死亡して6090人、30歳では5642人となりました。この変化を対数表示した所、下図のような等比級数的変化を示すことが分かりました。
gompertz_original_graph.gif

もしこの集団の「死にやすさ」が常に同程度であれば半減期は一定となり、対数グラフにすると下向きの直線になるはずです。ところが、時間の経過と共に傾きが急峻となっています。これは半減期の短縮を意味します。集団が高齢化すればするほど「死にやすさ」が増大して半減期が短縮したのです。

上図で、40歳と50歳のLog(population)の差は $\ mp^3$ となり、$\ F(40)-F(50)=mp^3$ と表せます。
t歳とt+s歳のLog(population)の差は、

\ F(t)-F(t+s)=mp^{\frac{t-10}{s}}

となります。
FtSlopeGompertz.gif

sが充分に小さい時、関数Fの傾きは

\begin{align}
\frac{dF}{dt} &= \frac{-mp^{\frac{t-10}{s}}}{s}\\
&= -\frac{m}{s}p^{-\frac{10}{s}}p^{\frac{t}{s}}
\end{align}

ここで、

\ -\frac{m}{s}p^{-\frac{10}{s}}=-A_0\hspace{0.5mm},\hspace{1mm}p^{\frac{1}{s}}=e^k

と置き換えることができます。(いずれも定数であるため)
この時、

\frac{dF}{dt}=-A_0e^{kt}

積分すると、

\ F(t)=-\frac{A_0}{k}e^{kt}+c

t = -∞ の時、F(t)は有限の最大値 $\ln{G_{max}}$ となるので、

\ c=\ln{G_{max}}

よって

\ F(t)=\ln{G_{max}}-\frac{A_0}{k}e^{kt}

となります。
以上に示したように、元来 Gompertz 曲線は、人口の経時的な減少を表すために考案されました。Gompertz 理論が生物の増殖曲線に応用出来ることは、Gompertz が原著を発表してから100年後の1926年に発見されました。(Wright, Sewall, book review in Jour. Am. Stat. Assoc., 21, 494, 1926.)
※生物の増殖曲線では $\ e^{kt}$ が $\ e^{-kt}$ に置き換わっています。

まとめ

  • 倍加時間や半減期が一定の時、対数グラフは直線化する。
  • ゴンペルツ曲線では、加齢による「死にやすさ」の増大が半減期を短縮させる結果、対数グラフが曲線化している。

ゴンペルツ曲線とは何か?(2)
ゴンペルツ曲線とは何か?(3)
ゴンペルツ曲線とは何か?(4)
ゴンペルツ曲線とは何か?(5)
ゴンペルツ曲線とは何か?(6)
ゴンペルツ曲線とは何か?(7)
ゴンペルツ曲線とは何か?(8)
ゴンペルツ曲線とは何か?(9)
ゴンペルツ曲線とは何か?(10)
ゴンペルツ曲線とは何か?(11)
ゴンペルツ曲線とは何か?(12)
ゴンペルツ曲線とは何か?(13)
ゴンペルツ曲線とは何か?(14)

16
11
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
16
11

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?