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前回までで、最大電力伝送定理から「効率は最大でも50%になる」という結果を見てきました。
しかしRF増幅器の世界では、効率が50%を超えることは珍しくありません。
この違いはどこから来るのでしょうか。
実は、最大電力伝送定理で扱っていた回路と、RF増幅器では、
そもそものエネルギーの流れ方が異なります。
さらに、「効率」という言葉が指している内容がそもそも異なります。
本記事では、以下の2つを明確に分けて扱います。
- 分配効率:回路内部で電力がどのように分けられるか
- ドレイン効率:DC電力がどれだけRF電力に変換されるか
ケースA:DCとACが同じ経路を通る回路
この回路では、電源から負荷までの経路は1本であり、
DC(直流)も時間変化する信号も同じルートを通ります。
- 電流は常に同じ経路を流れ
- エネルギーは内部抵抗と負荷で分け合われる
という単純な構造になります。
このときの効率(分配効率)は、
$\eta = \frac{R_L}{R_L + R_s}$
で表され、最大でも50%に制限されます。
ここでの効率は、「どれだけ負荷に電力が分配されたか」を表しています。
最大電力伝送定理で議論される理想化回路はこの形態になります。
- NチャネルFET(ローサイド)の場合
VDD → 負荷 → ドレイン → ソース → GND - PチャネルFET(ハイサイド)の場合
VDD → ソース → ドレイン → 負荷 → GND
この構成では、DC電流と時間変化信号が全く同じルートを通ります。直流のバイアス設定(動作点)と交流の出力信号をセットで考えることができます。
ケースB:RF増幅器(DCとRFが分離される回路)
RF増幅器では状況が大きく異なります。
RF増幅器では、DC供給経路とRF信号経路を意図的に分離して設計します。
その理由は、
- RF増幅器の負荷にはDCを流したくない(無駄な発熱となる)
- DCバイアス点には負荷インピーダンス整合が影響を与えたくない
というものです。
RF増幅器のドレイン回路を考えると、
- DC遮断コンデンサは、DC成分を遮断し、RF成分のみを負荷へ伝えます。
- RFチョークは、RF成分を遮断し、DC成分のみを電源から供給します。
これらにより、2つに分けて捉えることができます。 - DC:電源 → RF choke(もしくは1/4波長線路) → FET
- RF:FET → DC遮断コンデンサ → 負荷
というように、DCとRFが異なる経路を通ります。
最大電力伝送定理では、電源が供給した電力そのものが
内部抵抗と負荷の間で分け合われます。
一方、RF増幅器では、DC電源から供給されたエネルギーが
デバイス内部でRFエネルギーに変換され、
その後に「負荷に出力されるか」「損失として消費されるか」が決まります。
つまりここでの分流は、
「供給された電力の分配」ではなく、
「生成されたRF電力の行き先の分岐」を表しています。
まとめ
最大電力伝送定理では、電源が供給した電力そのものを、内部抵抗と負荷が分け合っていました。
一方RF増幅器では、まずFET内部でDC電力がRF電力へ変換され、その後に生成されたRF電力が、
- 負荷へ出力される成分
- デバイス内部で損失となる成分
に分かれます。
つまりRF増幅器の効率は、
- DC電力をRF電力へ変換する効率
- 生成されたRF電力をどれだけ負荷へ届けられるか
という、2段階の構造になっています。
本記事では前者を「変換効率」、後者を「分配効率」として整理しました。
全体のドレイン効率は、
$$\eta_{Drain}=\eta_{conversion} \times \eta_{distribution}$$
と考えることができます。
RF設計では、負荷インピーダンスを変えることで、
- 電圧・電流波形
- RF電力の分流
- 内部損失
が同時に変化します。
そのため、単純な最大電力伝送定理のように「RL = Rs にすればよい」という問題ではなく、
- 最大出力
- 効率
- 線形性
- 利得
のバランスを取りながら、最適な負荷インピーダンスを探す必要があります。
この「理想電流源」と「現実デバイス」の差が、Load-pullやRoptの本質につながります。

