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1. ACでは電圧と電流がズレる
DC回路では、
抵抗だけを考えれば十分でした。
しかし交流回路では、
コイルやコンデンサによって
電圧と電流に位相差が生じます。
そのため負荷は
$$Z_L = R_L + jX_L$$
のような複素インピーダンスで表されます。
2. 負荷に供給される平均電力
信号源の内部インピーダンスを
$$Z_s = R_s + jX_s$$
とすると、回路電流は
$$I = \frac{V_s}{Z_s + Z_L}$$
となります。
負荷に供給される平均電力は、
$$P_L = |I|^2 R_L$$
で決まります。
ここで重要なのは、
- 電力を消費するのは抵抗成分 $R_L$
- リアクタンス成分 $X_L$は平均電力を消費しない
という点です。
3. なぜ複素共役整合になるのか
交流回路では、
インダクタやコンデンサによって
電圧と電流に位相差が生じます。
リアクタンス成分は
エネルギーを消費するのではなく、
一時的に蓄えて電源側へ返すため、
負荷へ供給されたエネルギーの一部は戻ってきてしまいます。
そこで、負荷側のリアクタンスを用いて信号源側のリアクタンスを打ち消すことで、電源から見たインピーダンスを純抵抗化し電圧と電流を同相にすることができます。
つまり
$$X_L = -X_s$$
にすると
$$Z_s+Z_L=R_S+R_L$$
となり、虚数成分が打ち消されます。
この状態では、電源から見ればエネルギーが往復しにくくなり、平均電力を最も効率よく負荷へ供給できる状態になります。
さらに、
抵抗成分についてはDC編と同様に
$$R_L = R_s$$
のとき最大電力となります。
したがって、
$$Z_L=Z_s^∗=R_s−jX_s$$
となるとき、
負荷へ供給される電力が最大になります。
これを
「複素共役整合(conjugate matching)」
と呼びます。
4. 整合しないと何が起きるのか
RFではエネルギーは「波」として伝わります。
負荷インピーダンスが信号源の内部インピーダンスと整合していると、
入射した波のエネルギーは負荷で吸収されます。
しかし負荷がリアクティブだったり、インピーダンスが一致していない場合には、エネルギーの一部が吸収されず、信号源側へ戻ろうとします。
これが反射波です。
伝送線路上では、負荷が特性インピーダンスと一致していない場合、
波は終端で完全には吸収されず、一部が反射波として戻ります。
RF回路で使われるSmith Chartは、この複素インピーダンスの整合状態を
視覚的に表現したものです。
5. まとめ
DC回路では、
最大電力伝送条件は
$$ R_L=R_s$$
という単純な抵抗の一致で表されました。
しかし交流回路では、負荷は抵抗だけではなく、
- コイルによる誘導性リアクタンス
- コンデンサによる容量性リアクタンス
を含む複素インピーダンスとして振る舞います。
交流回路で重要なのは、
リアクタンス成分はエネルギーを一時的に蓄えたり戻したりするだけで、平均電力を消費しないという点です。
そのため、負荷へ最大電力を伝送するには、
- 抵抗成分を一致させる
- 虚数成分(リアクタンス)を打ち消す
必要があります。
その条件が、
$$Z_L=Z_s^∗$$
すなわち「複素共役整合」です。
RF回路では、
この整合条件から外れると、供給されたRFエネルギーの一部は負荷で吸収されず、反射波として戻ってきます。
Smith Chartは、この複素インピーダンスと反射の関係を可視化するための道具です。
ここまでは、あくまで「線形で制限のない交流回路」の議論でした。
しかし実際のFETでは、
- 電圧制限
- 電流制限
- 非線形性
- 有限の出力抵抗
が存在するため、単純な複素共役整合がそのまま最大出力条件になるとは限りません。
実際のPA設計では、負荷インピーダンスによって
- 電圧波形
- 電流波形
- 効率
- 利得
- 出力電力
が同時に変化します。
次回は、RF増幅器特有の「DC電力をRF電力へ変換する」という視点を導入しながら、
- 最大電力伝送定理
- ドレイン効率
- Rds
- Ropt
- Load-pull
がどのようにつながっていくのかを整理していきます。
