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理想電流源は、
端子電圧に関係なく一定の電流を流すことができます。
つまり、
$$
\frac{\Delta I_d}{\Delta V_d}=0
$$
であり、出力抵抗は無限大となります。
これは、
「どれだけ電圧が変化しても電流が変わらない」
理想的な増幅素子を意味します。
しかし実際のFETでは、
- 電圧には耐圧制限($V_{ds,max}$)がある
- 電流には電流密度や発熱による制限($I_{d,max}$)がある
- ドレイン電圧が変化すると電流もわずかに変化する
ため、理想的な電流源にはなりません。
実際のFETの複雑な振る舞いを、設計で扱いやすくするために「理想的な電流生成」と「非理想な損失」に分離します。
- FETコア(理想電流源):
- 特性: ドレイン電圧 $V_d$ がどう変動しようと、ゲートに入力された信号にのみ忠実に従って電流を吸い込む理想的なRF電流源。
- 数式表現: $\frac{\Delta I_d}{\Delta V_d} = 0$ (出力インピーダンス無限大)
- 役割: DCバイアス $I_0$ を引き込みつつ、入力に応じたRF電流 $i_{ac}$ を生成する。
- DCバイアス $I_0$とはFETコアを流れる電流のDC成分
- 内部抵抗($R_{ds}$):
- 特性: 実際のFETが持つ「ドレイン電圧に依存して電流が変動してしまう特性(チャネル長変調効果など)」を、等価的な並列抵抗として表したもの。
- 数式表現: $\frac{\Delta I_{Rds}}{\Delta V_{DS}} = \frac{1}{R_{ds}}$
- 外部負荷($R_L$):
- 特性: アンテナや次段回路へRF電力を送り出すための純粋な行先(AC結合)。
1. ドレイン電圧依存性
この「理想からのずれ」を、
最も単純化して表したものが出力抵抗 $R_{ds}$ です。
つまりRF設計では、
- FETコア:RF電流を生成する理想電流源
- Rds:現実デバイスの非理想性
として分けて考えることで、
負荷インピーダンスとの関係を整理しやすくしています。
FETの出力側は、
- 理想電流源(ドレイン電流の生成)
- 出力抵抗 Rds
で表されます。
このとき負荷とRdsは並列となり、
$i_{d,rf}(t) = i_{RL}(t) + i_{Rds}(t)$
となります。Rdsで消費された電力は内部損失となります。電流の分配比はRLとRdsの値により決まります。
また、並列回路であるため
$v_{d,rf}(t) = v_{RL}(t) = v_{Rds}(t)$
です。
つまり、RLとRdsには常時、等しい電圧が掛かります。電圧の分配はありません。
このドレイン電圧は電流源によって決まる電圧降下の結果であり、
FETは接地側へ電流を吸い込む素子として動作するため、ドレイン電流が増えるほど負荷側抵抗での電圧降下が増え、ドレイン電圧は低下します。
$v_{d,rf}(t) = - i_{d,rf}(t) \cdot (R_L∥R_{ds})$
2. ドレイン効率の定義
RF増幅器では、効率は次のように定義されます。
$\eta_D = \frac{P_{RFout}} {P_{DC}}$
これは、
分配効率が「どこに電力が消えたか、負荷の取り分」を見ているのに対し、
ドレイン効率は「どれだけ電力を変換できたか、変換能力」を見ています。
3. 負荷インピーダンス依存性
「分配効率(最大電力伝送)」と「RF的なドレイン効率の振る舞い」を同じ横軸(RL)で比較しました。
計算例に用いたパラメータは
- DCバイアス電流:$0.5 (A)$
- 電源電圧:$10 (V)$
- 理想電流源:$0.3 (A)$
- 最大電力伝送の電源インピーダンスおよびFETの出力インピーダンス(Rds):$200 (\Omega)$
さらに、FETモデルに対しては
- 電圧制限として
最大許容電圧:$V_{max}=20 (V)$
を設定
(1) 電力ピークのズレ:
電圧制限が掛からない領域(負荷インピーダンスが小さいとき)では、理想電流源とFETモデルの出力電力はともに、
$$P_{out FET}=P_{out Ideal}=\frac{(I_{rf,peak}\cdot (R_L∥R_{ds}))^2}{2R_L}$$
となります。
ケースA(最大電力伝送(青実線)):
$R_L = R_s$ でピークを打ちます。
ケースB(RFモデル(赤実線)):
$R_L$を増やしていくと電圧振幅($I_{rf,peak}\cdot (R_L∥R_{ds})$)は大きくなり、$V_{max}-V_{DD}$に達するとそれ以降の電圧制限領域では、電圧振幅がほぼ固定されるため、出力電力は
$$P_{out}=\frac{(V_{max}-V_{DD})^2}{2R_L}$$
となり、$1/R_L$ で低下していきます。
FETの出力電力がピークとなるのは、
$$R_L∥R_{ds}=\frac{V_{DD}}{I_{rf,peak}}$$
なので、$R_L$で書くと
$$\frac{R_LR_{ds}}{R_L+R_{ds}}=\frac{V_{DD}}{I_{rf,peak}}$$
これを解くと
$$R_L=\frac{(V_{DD}/I_{rf,peak})R_{ds}}{R_{ds}-(V_{DD}/I_{rf,peak})}$$
になります。今回の条件では約$40\Omega$になります。
(2) 効率の挙動:
-
ケースA(分配効率(青点線)):
$R_L$ を小さくするほど電源の内部抵抗でのロスが減るため、100%に向かって上昇し続けます。 -
ケースB(ドレイン効率(赤破線)):
モデル上 $R_{ds}$(並列抵抗)でのロスを想定しているため、$R_L$ が $R_{ds}$ に対して十分小さいときに効率が高くなります。これは「デバイスの持つ並列寄生成分に対して、いかに低インピーダンスで電力を取り出すか」という設計トレードオフを示唆しています。
最大電力伝送定理では、電源と負荷が電力を分け合うため、
効率は50%に制限されますが、
DC電力は別経路から供給されているRF増幅器では、負荷インピーダンスに応じてバイアス電流や電圧スイング条件を再調整した上では、理想電流源モデルでは、負荷を大きくするとRF電圧振幅が増加するため、DC電力に対するRF出力電力の割合(ドレイン効率)が向上する場合があります。
ただしその代わり出力電力は低下します。
言い換えると、
最大電力伝送は「分配の問題」であり、
RF増幅器は「変換の問題」です。
4. Rdsについて(補足)
FETのドレイン側の“非理想性”を表す抵抗は、主に3種類あります。
| 名前 | 意味 | 主な用途 |
|---|---|---|
| $r_o$ | 小信号出力抵抗 | アナログ小信号解析 |
| $R_{DS(on)}$ | ON抵抗 | スイッチング損失 |
| RFモデルの $R_{ds}$ | 非理想性をまとめた等価抵抗 | RF電力・効率モデル |
$R_{DS(on)}$は、表記は似ていますが全くの別物です。FETをスイッチとして完全ONしたときの抵抗です。線形領域(triode領域、ohmic領域)における抵抗です。
RFモデルの $R_{ds}$と小信号出力抵抗$r_o$はほぼ等価です
- チャネル長変調
- DIBL
- 短チャネル効果
- 飽和電流のVds依存性
などによる、
$$\frac{\Delta I_D}{\Delta V_{DS}} \ne 0$$
です。
実際のFETでは、チャネル長変調などにより、ドレイン電圧 $V_{DS}$
が変化するとドレイン電流もわずかに変化します。
これは有限の出力抵抗として表され、
$$r_o=\Big(\frac{\Delta I_D}{\Delta V_{DS}}\Big)^{−1}$$
で定義されます。
RF電力設計では、この有限出力抵抗を並列抵抗 $R_{ds}$としてモデル化し、
- 理想電流源(FETコア)
- 並列出力抵抗 $R_{ds}$
に分けて考えます。
$R_{ds}$に流れたRF電流によって消費されたRF電力は内部損失となるため、ドレイン効率を低下させます。
5. まとめ
最大電力伝送定理では、
電源と負荷が電力を分け合っていました。
一方RF増幅器では、
FET内部でDC電力がRFエネルギーへ変換され、
そのRF電力が負荷へ供給されます。
このときRF設計では、
FETを
- RF電流を生成する理想電流源
- 非理想性を表す出力抵抗 $R_{ds}$
として分けて考えます。
負荷インピーダンスは、
この電流源が生成したRF電流を
どれだけ電圧へ変換できるかを決めています。
しかし現実のFETには、
- 電圧制限
- 電流制限
- 内部損失
が存在するため、
負荷を大きくすれば無限に出力を増やせるわけではありません。
この「理想電流源」と「現実デバイス」の差が、
Load-pullやRoptの本質につながります。
6. 次回へのつながり
では実際に、
負荷インピーダンスを変化させると、
電圧・電流波形はどのように変化するのでしょうか。
次回は、
Load-lineとRoptの関係を用いて、
「なぜこの負荷で最大出力になるのか」
を時間波形から整理していきます。

