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AIに、誰の権限で何をさせるか。Tines 3B の権限とガードレールを読み解く

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Last updated at Posted at 2026-10-22

連載「Tines 3B を読み解く」の第4回です。

はじめに

AI にメールを送らせ、チケットを作らせ、ワークフローを書き換えさせる。そこまで任せるなら、先に決めておきたいことがあります。その AI は誰の権限で動くのか。人はどこで止められるのか。

この記事では、AI ネイティブのワークフロー基盤「Tines 3B」の権限とガードレールの設計を、公式ドキュメントに沿って整理します。

こんな方に向けて書いています。

  • AI や自動化に、業務の操作を任せることを検討している
  • 部署や役割ごとの権限をどう設計するかで悩んでいる
  • 「承認」がいつ、どこで入るのかを正確に知りたい

先に結論です。3B の権限は「誰が、どのロールで、どこに対して」という1つの形(グラント)に統一されています。AI は固有の権限を持たず、呼び出した人の権限で動きます。そして 3B の「承認」は、本番へ出すまでの構築時のものです。

第1回(全体像)はこちらです。

こんな場面、ありませんか

  • AI に書かせた自動化が誰の権限で動いているのか、説明できない。
  • 同僚には見えるものが自分には見えない。権限の問題なのか不具合なのか、判断がつかない。
  • 管理者が何人もいて、誰が何を変えられるのか把握しきれない。

どれも根っこは「権限の形が複雑で、説明できない」ことです。

結論:3つの設計

3B の設計は、次の3つに整理できます。

設計 何をするか 得られるもの
権限を1つの形に揃える すべてのアクセスを、誰×ロール×どこのグラントで表す 判定が一貫し、説明できる
AI を人の権限に縛る AI は呼び出した人として動き、その人が届く範囲にだけ届く AI が人を超えない
本番へは人が出す ドラフトは自動で動かず、ライブへの反映は権限を持つ人が行う AI が作ったものが、勝手に本番で動かない

設計1:権限を1つの形に揃える

グラントと判定の順序

あらゆるアクセスの判断は、「グラント」という1つの形で表されます。グラントは次の3つでできています。

部品 答え 例
プリンシパル(誰が) 誰が動くか メンバー、グループ、サービスアカウント
ロール(どこまで) 何ができるか(権限の束) Space editor、Connector user
スコープ(どこに) 何に対してか スペース、コネクタ、スキル、ネットワーク、テナントなど

たとえば「Alice に、Security スペースの Space editor を付ける」が1つのグラントです。ワークフローやチャットなどは、所属するスペースのアクセスを引き継ぐので、ワークフローごとのグラントはありません。

操作を試みると、3B は次の順に調べます。

拒否のとき、3B は「アクセス拒否」と表示せず、そのリソースが無いかのように振る舞います。存在を探られないための設計です。同僚には見えるものが自分に見えないときは、不具合ではなく権限の問題であることが多い、と公式では説明されています。

なお、画面のアクセス表示は利便性のためのもので、セキュリティの境界ではありません。すべての操作は、実行時にサーバー側でもう一度検査されます。

テナント管理者は少数に

テナント管理者はすべてのチェックを迂回し、カスタムロールでは再現できません。公式では、管理者を少数にするよう繰り返し述べられています。

一部の権限だけを渡したいときは、次の3段階を使います。

段階 内容
フルのテナント管理者 すべてを持つ。個人に付ける
組み込みの作成系ロール スペース、コネクタ、ネットワークなどの作成。グループに付ける
カスタムのテナントロール 全スペースの閲覧、メンバーの管理、監査ログの閲覧など。フルのアクセスは含められない

ID の入口と同期モード

ID の入口は、招待、SSO(OIDC、SAML)、JIT、SCIM、サービスアカウントです。外部の ID 基盤(IdP)との同期モードは4つから選びます。

モード ユーザー グループ
Off 手動で招待 手動
JIT(ユーザーのみ) 初回の SSO ログインで作成 手動
JIT(ユーザーとグループ) 初回のログインで作成 ログインごとに IdP の groups クレームから同期
SCIM IdP が作成・更新・停止 IdP が同期

IdP がユーザーやグループを持つと、3B は対応する手動の操作をロックします。つまずきやすい点なので、最初に「どこが正か」を決めるのが大切です。公式で示されている設計の順序も、SSO と同期モード、メンバー、グループ、ロール、共有リソース、スペースの順です。スペースが最後なのは、すべてがスペースに集まるからです。

設計2:AI を人の権限に縛る

3B 自身は固有の ID を持ちません。UI、API、3B の AI アシスタントのどれを通しても、操作は何らかのプリンシパルとして実行されます。AI は呼び出した人として動き、その人が届く範囲にしか届きません。「側面の扉」はありません。

  • チャットは、本人が使えるコネクタだけを使えます。読むだけでなく、メッセージの下書き、チケットの作成、コードの実行もできます。
  • MCP(外部の AI クライアントとの接続)は、新しい特権を足しません。OAuth ならクライアントは本人として、サービスアカウントのトークンならそのアカウントとして動きます。
  • サービスアカウントは独立したプリンシパルで、自分のグラントで判定されます。

裏を返せば、管理者が使う AI は管理者の範囲まで届きます(筆者の整理です)。作り手に広い権限を渡すほど、AI が生成するコードやチャットの届く範囲も広がります。

スペースでは「全員の条件」

コネクタ、スキル、ネットワークは、そのスペースにアクセスできる全員が必要な権限を持つときだけ、そのスペースで使えます。1人でも欠けていると誰にも使えません。スペースを作れる人なら誰でもコネクタの認証情報を使えてしまう、という事態を防ぐためです。

直し方は3つあります。スペースにリソースを追加する、リソースにスペースを追加する、同じグループを両方に付ける、のどれかです。公式では、グループで付けて両側に同じグループを使うのがいちばん簡単だとされています。

設計3:本番へは人が出す

3B のワークフローには、ドラフトとライブ(main)があります。ドラフトは cron や webhook のような自動のトリガーでは動かず、手動の実行か、ブランチの URL でのプレビューで確かめます。

ライブへの反映(push live)には、スペースでの権限が要ります。権限がない人にはボタンが無効になります。Git と同期するスペースでは Push live の代わりに Sync が出て、リモート側でマージします。

Autofix(失敗の自動の修正案)も新しいブランチでの提案にとどまり、ライブを直接変更しません。

「承認」は構築時のもの

ここは区別が必要です。3B の承認は構築時のものです。

仕組み いつ 内容
Plan mode 構築時 AI の提案を、実行の前に確認する(ユーザーの設定)
副作用のあるステップの確認 構築時 メール送信など。公式では、確認するよう構成されていると説明されている(管理者が強制する設定の記載はない)
push live 本番に出すとき 権限を持つ人が行う
コネクタ共有の承認 権限の付与 sharer か管理者が承認する

ライブのワークフローが動いている最中に人の承認を挟む公式の仕組みは、確認できていません。

守ってくれないこと

  • ガードレールは、AI が正しく判断する保証ではありません。仕組みがしているのは、届く範囲を狭め、反映を人に残すことです。
  • 同期モードの選び間違い。IdP が持つ操作はロックされます。SCIM の有効後は、SCIM 由来でも引き継ぎでもないグループをアプリ内で削除できなくなります。
  • カスタムロールは、作成後に編集できません。変えるときは新しく作って付け替え、古いものを消します。
  • 事前チェックの失敗は、通せます。push live のときにステップのテストが失敗しても、確認のうえでそのまま反映できます。
  • 管理者と Watchtower の権限。管理者は他人の個人チャットも読めます。Watchtower の権限も慎重に付ける必要があります。

他のやり方との違い

「承認」の位置づけを、一般的な分類で比べてみます(特定の製品の仕様ではなく、考え方の整理です)。

方式 人が入る場所 向く場面
構築時の承認(3B) AI の提案、本番への反映 作る人が多く、本番へは慎重にしたい
実行時の承認 動いている最中の、重要な操作の直前 実行のたびに、人の判断が必須
承認なし(権限だけで縛る) 入らない 影響の小さい、内部向けの自動化

どれが良いかは、何を守りたいかで決まります。実行時の承認を求める場合は、3B でどう実現するかの確認が必要です。

おわりに

  1. 権限は、誰×ロール×どこのグラントに揃える。
  2. AI は、呼び出した人の権限で動く。
  3. 本番へは人が出す。ただし、承認は構築時のもの。

「AI に何をさせるか」は、「誰の権限を渡すか」と同じ問いです。

連載の他の回

連載「Tines 3B を読み解く」(全11回):

参考

公式ドキュメント(docs.3b.tines.com):

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