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契約の前に、何を書面で確かめるか。Tines 3B の導入・契約・費用を読み解く

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Last updated at Posted at 2026-10-25

連載「Tines 3B を読み解く」の第10回です。

はじめに

新しい基盤を試すのは簡単でも、契約して本番に入れる段階になると問いが変わります。認証は。契約条件は。SLA は。いくらかかるのか。

この記事では、AI ネイティブのワークフロー基盤「Tines 3B」について、公開の公式ドキュメントと法務文書から「分かること」と「書面で確かめるべきこと」を分けて整理します。

こんな方に向けて書いています。

  • 3B の導入を、評価から契約へ進めようとしている
  • 認証、契約条件、SLA をどこまで公開情報で確かめられるか知りたい
  • 費用の構造と、AI のコストの位置づけを知りたい

先に結論です。無料の Explore で試せますが、認証の範囲、一般提供後の契約条件、SLA の3B への適用は公開情報では確定できません。有料の価格も非公開です。確認の項目を先に決め、適用される文書の名前と版を契約書面に書いてもらうのが安全です。

セルフホストの比較は第9回、AI の接続は第8回、費用の画面は第5回で扱っています。なお、この記事は法的な助言ではありません。

こんな場面、ありませんか

  • セキュリティ部門から「SOC 2 や ISO の対象に、この製品は入っているか」と聞かれ、答えられない。
  • 試用の約束だったのに、本番のデータを入れてよいのか、契約のどの文書で決まるのか分からない。
  • 見積りの前に、AI のトークン代がライセンスに含まれるのかを確かめたい。

どれも、「製品の説明」と「契約の文書」が別のものだというところから生まれます。

結論:3つの確認

確認 何を確かめるか 公開情報で分かること
費用の構造 プラン、Tines units(TU)、AI の費用の持ち方 プランと TU の枠は公開。価格は非公開
契約と認証 3B に適用される文書、認証の範囲 一般提供前の追補は公開。一般提供後の扱いは未確認
進め方 試用、パイロット、統制、展開 契約が確定するまで、規制対象データを入れない

確認1:費用の構造を読む

プランと TU

3B は「プラットフォーム型のライセンス」です。個別の機能ではなく 3B 全体を使う権利を、プランごとの基盤と TU の枠でライセンスする形です。ライセンスは、環境(ワークフロー、スペース、コネクタなど)、基盤、ランタイム(TU)の3つで構成されます。

プラン 基盤 TU(月)
Explore(無料版) マルチテナント 5,000
Core マルチテナント 100K
Scale 専用スタック 300K
Power プレミアムの専用スタック 900K

TU は、計算、保存、転送の使用量を合わせた指標で、ワークフローの複雑さと実行の頻度で決まります。枠を超えた分は超過料金の対象で、新規の顧客には1か月の猶予があります。

Explore の主な制限は次の3つです。

  • ライブのワークフローは3件まで
  • AI は、一回限りの50ドルの枠
  • 公開 Web サイトの URL は不可

有料プランの価格は公式の記事(Tines 3B pricing and packaging overview)に載っておらず、見積りが必要です。セルフホストのプランや TU の割当も、公式の記事には記載がありません。

AI の費用

公式では、AI について「BYOM(モデルの持ち込み)方式で、既存の LLM の契約でトークンを消費する」と説明されています。筆者はこれを「AI のトークン代は、ライセンスとは別に自社のプロバイダと精算するもの」と解釈していますが、契約上の扱いは確認できていません。

AI の画面に出る費用は、3B が計測したトークンに自社が入れた単価を掛けた推定値で、プロバイダの請求額ではありません(第5回)。

確認2:契約と認証を読む

認証

項目 公開情報で分かること
ISO ISO 27001、27701、42001の取得を、2026年4月14日付の公式ブログが公表している
SOC 2 Trust Center が、SOC 2 Type 2 を掲載している
3B 専用の資料 Trust Center に、3B のペネトレーションテスト報告書がある

3B が ISO や SOC 2 の認証範囲に含まれるかは、確認できていません。 ISO のブログは、認証が「事業とプラットフォーム全体」に及ぶと書くだけで、範囲の定義や 3B への言及はありません。Trust Center は文書が一般提供のサービスに関するものと説明していますが、どの報告書がどの製品を対象にするかは、題名以上には示していません。SOC 2 報告書の対象製品は、報告書そのもの(Trust Center での申請)を見ないと分かりません。

一般提供の前と後

2026年4月15日の公開の追補(3B Early Access and Demo Addendum)は、当時の 3B を、評価、テスト、フィードバック専用の早期アクセスの提供と位置づけていました。要点は次のとおりです(条文の転載はせず、筆者の要約です)。

  • 3B は、既存のコンプライアンス、監査、セキュリティ、SLA、可用性、サポートの約束の対象外とされていた。
  • 規制対象のデータ(保護対象の健康情報、カード情報など)を入れてはいけない。
  • 当時の 3B は、細かな権限制御、監査ログ、ペネトレーションテストが無く、SOC 2 Type II の対象外という注記があった。
  • 提供の期間は、Tines が通知なしに変更、停止できる。
  • 3B に関する性能やベンチマークの結果は、Tines の秘密情報として扱う。

その後、公式ドキュメントにはロールベースのアクセス制御や監査ログの記事が追加され、Trust Center には 3B のペンテスト報告書が載りました。つまり、追補が書く制限の一部は、その後の公式情報と合いません。

では、一般提供(2026年7月28日)の後、この追補はどうなっているのか。確認できていません。 追補自体が、Tines が「他の条件で 3B の継続利用を定める」ことを認めています。公開の法務ページには2026年7月版の一般条件がありますが、筆者が確認した範囲では、その本文に「3B」の記載は見当たりませんでした。3B に適用される文書の一覧は、書面で確かめるしかありません。

SLA、AI、サポートの文書

公開の法務文書にある内容と、その限界です。

文書(版) 要点(筆者の要約) 3B への適用
SLA(2024年8月版) 月間の稼働率の目標は99.9%。未達はサービスクレジットのみが救済。無償、PoC、無料の試用には適用されない。対象は「Cloud Service」 未確認
AI Addendum(2025年6月版) Tines が提供するモデルについて、顧客データを学習に使わないと約束。BYOM は第三者の連携で、設定、セキュリティ、費用は顧客の責任 3B への言及なし。早期アクセス追補は、3B のAI の利用に、この文書が適用されると書いていた
サポート方針(2024年2月版)ほか 営業時間、応答の目安などが定められている 未確認

したがって、Explore には SLA が適用されません(無償のため)。有料プランで 3B に SLA が適用されるかは、文書の範囲と注文書で決まります。

セルフホスト向けには、別の追補(Self-hosted software addendum、2024年2月版)も公開の法務ページにあります。3B のセルフホストに適用されるかは、確認できていません。

リージョンとデータ

公式の3B の記事には、選べるリージョンの記載がありません。Stories 向けの公式の記事やサブプロセッサー一覧には日本を含む複数のリージョンの記載がありますが、3B への適用は確認できていません。

確認3:進め方を決める

次の表は筆者の整理で、公式の手順ではありません。

段階 目的 やること
1 体験 機能を理解する Explore で試す。ライブ3件、50ドルの枠の範囲
2 パイロット 小さく効果を測る 非機密のデータで、1〜3本。成功指標を先に決める
3 統制設計 広げる前に枠を作る SSO、グループ、ロール、スペース、コネクタの承認方針(第4回)
4 展開 部門を広げる 費用と効果を、継続して確認(第5回)

価値の測り方

3B の画面では、節約した時間を金額に換算できます。計算式は、記事(Quantify the ROI of your workflows)では「節約した分数に時給を掛け、60で割る」です。時給の既定は75ドルで、通貨は5種類から選びます(日本円は含まれません)。

提案の枠組みとして、筆者は「純効果 = 節約した時間の価値 - (ライセンス + AI の費用 + 構築と運用の工数)」を使います。パイロットの前に対象業務のいまの所要時間と件数を測っておかないと、後で効果を説明できません。

Stories からの移行

2026年7月31日付の公式ブログによれば、元の製品は「Tines Stories」と呼ばれ、3B と並んで提供が続きます。既存の顧客には変更がなく、追加費用なしで 3B を試せます。移行か併用かは顧客が選べる、という説明です。

公式の自動移行ツールは確認できていません。移行の相談は、アカウントチームが窓口とされています。

守ってくれないこと

  • 契約の確認を、製品の説明で代えること: ドキュメントは契約ではありません。
  • 版の確認: 法務文書は更新されます。契約書面にある版を確認します。
  • パイロットのデータの区分: 契約が確定するまで、規制対象のデータは入れません。誰が区分を決めるかも合意しておきます。
  • 月ごとの変化: 製品は毎月更新されます。提案では日付つきの情報として扱います。

他のやり方との違い

AI 基盤の費用の持ち方は、一般に次のように分けられます(特定の製品の仕様ではなく、考え方の整理です)。

方式 AI の費用 長所 注意点
提供者が、モデルの費用を含める(クレジットなど) 一括 見積りが単純 使用量の上限や、モデルの選択に制約が出やすい
BYOM(持ち込み) 自社のプロバイダと精算 既存の契約を使える 費用の見える化と、突き合わせは自社の仕事
併用 両方 柔軟 契約と費用の経路が増える

3B は、BYOM が基本です。有料プランで Tines 提供のモデルが使えるか、その課金がどうなるかは確認できていません。

契約の前に、書面で確かめること

公式の記事と公開の法務文書では確認できなかった点です。ほかの回で触れた、導入の判断に関わる点も含めて、契約の前に書面で確かめることをお勧めします。

契約、認証、費用

  • 3B が、ISO と SOC 2 の認証範囲に含まれるか。
  • 一般提供後の 3B に、早期アクセス追補が適用されるか。一般提供向けの 3B の契約条件。
  • 3B で選べるリージョン。利用データの所在地。
  • 3B への、SLA、サポート方針、DPA の適用。サポートの言語と時間。
  • 有料の価格、TU の超過料金、セルフホストの料金。
  • 有料プランでの、Tines 提供のモデルの可否と課金。AI 費用の支出上限の設定と、超えたときの動作。
  • Stories から 3B への、公式の移行手段。

セキュリティと監査

  • 外部のシークレット管理(HashiCorp Vault など)との連携。
  • 暗号鍵のローテーションと、顧客が管理する鍵(BYOK)への対応。
  • 監査ログの保持期間と、記録される操作の一覧。
  • ライブの実行中に、人の承認を挟む仕組み。

セルフホストの運用

  • Helm 環境のバックアップと復元の手順。
  • テレメトリの無効化の方法と、エアギャップで送れない場合の影響。
  • サポートの SLA、リリースの周期、サポート対象のバージョン範囲。

おわりに

  1. 費用は、プランと TU の枠で決まります。価格は見積りです。AI のトークン代は BYOM なので、別に見込みます。
  2. 認証の範囲と一般提供後の契約条件は、公開情報では確定できません。適用される文書の名前と版を、書面に書いてもらいます。
  3. 契約が確定するまで、パイロットに規制対象のデータを入れません。

「試せる」ことと「契約で守られている」ことは別です。

連載の他の回

連載「Tines 3B を読み解く」(全11回):

参考

公式ドキュメント(docs.3b.tines.com):

Tines の公開ページ:

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