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「ベンダーに縛られない」は、どこまで本当か。Tines 3B の接続口と、持ち出せる範囲を読み解く

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Last updated at Posted at 2026-10-23

連載「Tines 3B を読み解く」の第8回です。

はじめに

AI を使うワークフロー基盤を選ぶとき、「特定のベンダーに縛られないか」は必ず出る問いです。LLM を変えたくなったら、基盤を乗り換えたくなったら、何が持ち出せて何が作り直しになるのか。

この記事では、AI ネイティブのワークフロー基盤「Tines 3B」がどこまで「縛られない」のかを、公式ドキュメントに沿って整理します。

こんな方に向けて書いています。

  • 生成AI を使うワークフロー基盤の、ロックインの範囲を知りたい
  • 既存のツールや自社の AI クライアントとつながるかを確かめたい
  • 「どこへでも移せる」という説明の正確な範囲を知りたい

先に結論です。LLM、ステップのソース、接続口(MCP、REST API、Git)は、選べるか持ち出せます。一方、ワークフローの構造(config.toml など)、概念(スペース、ブランチ、コネクタ)、認証情報は 3B 固有です。「縛られない」と言える層と言えない層を、分けて考えるのが安全です。

コネクタと認証情報の仕組みは第3回、構築の詳細は第6回で扱っています。

こんな場面、ありませんか

基盤の選定や導入の相談で、よく出てくる場面です。

  • 社内で契約済みの LLM があり、その契約のまま使えるかを聞かれる。
  • Slack、GitHub、社内の DB など、すでにあるツールとつながるのか確かめたい。
  • 数年後に別の基盤へ移るとき、作ったワークフローがどれだけ残るのか分からない。

共通するのは、「つながる」と「持ち出せる」は別の問いなのに、一つの言葉で語られがちなことです。

結論:3つの方向と、3つの層

3B の接続は、3つの方向に整理できます。

方向 何がつながるか 主な手段
3B から外へ(LLM) 構築と実行の AI が使うモデル AI プロバイダの設定と、コネクタ
3B から外へ(ツール) ワークフローのコードが呼ぶアプリ、DB、MCP サーバー コネクタ
外から 3B へ 外部の AI クライアント、CI、Git、他のワークフロー MCP、REST API、CLI、Git、GitSync、ワークフローのコネクタ化

「縛られない」範囲は、3つの層で見ると分かりやすくなります。

層 度合い 内容
選べる 高い LLM の接続先、ステップの言語
持ち出せる 高い ステップのソース、外から使う接続口
3B 固有 低い ワークフローの構造、概念、認証情報

設計1:LLM を持ち込む

BYOM という考え方

3B は、利用者が持ち込んだ AI モデルで動きます。これが BYOM(Bring Your Own Model、モデルの持ち込み)です。有料プランでは AI プロバイダを1つ以上接続して既定にするまで、構築も実行もできません。Explore(無料版)では、Tines 管理のプロバイダが使えます。

接続できる先

記事(Connect your AI provider)が画面の「+」の選択肢として挙げるのは、次の4つです。

プロバイダ 接続の要点
OpenAI、Anthropic API に直接つなぐ。エンドポイントはコネクタのものを使う
Azure OpenAI Base URL(必須)とデプロイ名を使う
Oracle Cloud Infrastructure(OCI) OCI Generative AI。リージョンのslug(例 us-chicago-1)を指定。署名はコネクタ。Chat model は必須
OpenAI 互換 プロバイダの API Base URL を使う

加えて、2026年9月の製品アップデートには「NVIDIA と Hugging Face を接続できる」という記載があります。設定の詳細は保存済みの記事にはありません。なお、AWS Bedrock と Google Vertex AI は、記事の接続先の一覧に見当たりません。

API キーはプロバイダの設定画面には入力せず、コネクタに保管します(第3回の仕組みと同じです)。

切り替えと統制

  • 複数のプロバイダを接続でき、既定はメニューの「set as default」でいつでも切り替えられます。
  • チャットごとに、入力欄のモデルピッカーでモデルと推論の強さ(Effort)を変えられます。管理者の権限は要りません。
  • OpenAI 互換のコネクタ(Cohere、OCI を含む)には、許可モデルの一覧(Available models)を設定できます。公式では「追加の安全策で、完全に任意」とされています。

プロバイダの接続は、テナント管理者の作業(Manage AI providers の権限)です。

設計2:コネクタでツールとつなぐ

ワークフローのコードが外部を呼ぶ入口は、コネクタです。

種別 内容
ライブラリ 900件以上のテンプレート(公式の用語集による)。カテゴリは AI、Engineering、Security、Identity など
カスタム URL パターンと認証方式(Bearer、カスタムヘッダー、Basic、クエリパラメータ)を指定。公式では「connect to anything」と表現されている
データベース Postgres、MySQL(Data カテゴリ。ほかの DB もビルドによる)
リモート MCP MCP サーバーのコネクタ(Streamable HTTP)
ワークフロー 自分のワークフローを、他から呼ぶ

MCP の2つの向き

3B から外の MCP サーバーを呼ぶときは、「MCP server」コネクタを作ります。コードは Authorization ヘッダーを自分で付けず、認証情報プロキシが付けます。

外の AI クライアントが 3B を使うときのエンドポイントは、テナントの URL に /mcp を足したものです。認証は2種類です。

認証 できること
OAuth 本人の権限で、全ツール。構築と公開(push live)も
サービスアカウントの Bearer 参照、実行、3B への依頼まで。構築と公開のツールは使えない

MCP は新しい権限を足さず、変更系の操作は監査ログに「MCP から」と記録されます。

REST API、CLI、Git、GitSync

接続口 要点
REST API /api/v1/docs(Swagger UI)と、/api/v1/openapi.json(OpenAPI 3.1)。API キーは 3b_sk_ で始まり、24時間で失効する
CLI 手順に沿って導入し、3b run などで実行できる
Git スペースは Git リポジトリで、<テナント>/spaces/<スペース>.git をクローンできる
GitSync スペースと GitHub のリポジトリを、双方向に同期する

常時の連携に24時間で失効する個人のキーを使うのは避け、サービスアカウントの認証情報を使うのがよいでしょう。

GitSync には GitHub App のコネクタを使います。既定ブランチは main が必須で、同期はイベント駆動です。保存済みの記事の範囲では対象は GitHub で、GitLab など他の Git サービスへの同期は記載がありません。

設計3:ワークフローをコネクタにする

ワークフローのヘッダーにある「use this workflow as a connector」で、そのワークフローを他のワークフローから呼べるコネクタにできます。コネクタの作成権限と、そのスペースの編集権限が要ります。

これは 3B の中の再利用の仕組みです。外へ持ち出す機能ではなく、3B の概念(コネクタ)の上に作られている点に注意してください。

縛られる範囲、持ち出せない範囲

ここがこの記事の中心です。

対象 取り出し方 注意
ステップのソース Git のクローン、GitSync、ブランチの Download code(.zip) コード、Dockerfile、設定を含む
チャットの履歴 Download chat(JSON) ブランチ単位
ワークフローの構造 同上(config.toml、リンク) 3B 固有。ほかの基盤では作り直し
認証情報 取り出せない 保存後はマスク表示で、上書きだけ可能。移行先で再発行
実行履歴、ボリューム 一括出力の手段は確認できていません

ステップは stdin と stdout を使う標準的な作りなので、コード本体はほかの基盤へ移しやすいと考えられます(筆者の推測です)。一方、トリガー、リンク、権限、コネクタは移行先で作り直します。

公平に言えば、こうなります。

  • LLM に縛られない。ただし「任意の LLM」ではなく、記事が挙げる接続先と OpenAI 互換です。
  • ソースに縛られない。ただし構造は 3B のものです。
  • 構築支援の動き(AI による構築、Autofix、Autotune)は、LLM を選べても 3B の仕組みです。

AI のトークン代は、ライセンスとは別に自社のプロバイダとの契約で払うもの、と筆者は BYOM の説明から解釈しています。契約上の扱いは確認できていません。

守ってくれないこと

  • プロバイダの未設定: 有料プランは、接続して既定にするまで何もできません。導入の最初の作業になります。
  • セルフホストの HTTPS: AI プロバイダの設定は、平文の HTTP では動きません(第9回)。
  • 社内向けの経路: ワークフローのコードから社内宛の通信は、既定で SSRF ガードが遮断します。許可はネットワークとトンネルで行います(第2回)。AI プロバイダの設定から社内の LLM へ届くかは、記載がありません。
  • MCP の Bearer では作れない: 構築と公開のツールは OAuth のみです。ヘッドレスな自動構築は約束できません。
  • データの扱い: BYOM の通信先は、自分が選んだプロバイダです。ログや学習の方針は、そのプロバイダとの契約で決まります。

他のやり方との違い

「縛られない」の作り方は、一般に次のように分けられます(特定の製品の仕様ではなく、考え方の整理です)。

方式 持ち出しやすいもの 作り直しになるもの
汎用のコード(スクリプト、CI)を自前で運用 ほぼすべて 運用の仕組みを、自前で持つ
ワークフロー基盤(独自の定義形式) ロジックのコード 定義、トリガー、権限、接続設定
基盤が出力する標準形式(OpenAPI、MCP)に寄せる 接続口 基盤の中の構造

3B は、コード本体と接続口が標準寄りで、構造と概念が独自という位置づけです。自前で運用すれば縛られませんが、運用の負担を引き受けることになります。

おわりに

  1. LLM は接続先から選べ、既定はいつでも切り替えられる。ただし「任意の LLM」ではない。
  2. ソースと接続口(MCP、REST API、Git)は、持ち出せるか外から使える。
  3. ワークフローの構造、概念、認証情報は 3B 固有で、移行時は作り直しになる。

「縛られない」は一つの言葉ではなく、層ごとの話だと思います。

連載の他の回

連載「Tines 3B を読み解く」(全11回):

参考

公式ドキュメント(docs.3b.tines.com):

Tines 3B 製品アップデート 2026年9月(www.tines.com/3b/product-updates/2026-09/、2026年10月に確認)

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