顧客に寄りそった要件定義とWell-Architected Frameworkを考える(1/6)
目次
- はじめに
- 心理的安全性の特徴
- 心理的安全性を高めるノウハウ
- なぜ率直な発言が難しいのか
- 心理的安全性の重要性を確認出来る事例
- 心理的安全性を高めるための3つのポイント
- 期待される効果
- 心理的安全性を考慮した要件定義
-
フレームワークで要件定義を行う
Well-Architected Frameworkと夢新聞を組み合わせて要件定義から設計を行う
はじめに
心理的安全性は、チーム内の誰に対しても自分の意見や気持ちを安心して伝えられる状態を指します。ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授は、「どのような発言をしても拒絶されず、罰せられることなく、チーム内は安全であるとメンバー全員が共通に考えている状態」と定義 しています。
あなたは、所属する組織で、楽しく、働いていますか?
今の会社は、楽しい所です。私は、昔、会社というものは、楽しくない所だと考えていました。その時は、自分の意見を言う事が出来ず、息苦しさを感じて、言われた事を指示通りにこなす日々を過ごしていました。指示通り出来ると、出来て当たり前だと思われていた。
自分が良い意見だと思っていることも、どうせ、話しても無駄だと諦めて、あまり、発言はしていませんでした。 今では、そうい う自分の経験を踏まえて、私の周りの人達が所属する組織で、楽しく働けるように工夫をしています。
ざっくりいうと、個人を尊重し、「あなただから」こその、あなたの 異見 を聞かせて下さい。という雰囲気を心理的安全性が高い環境で、創り上げるという工夫です。
その場の心理的安全性を高めるテクニックである 「ファシリテーション」 というノウハウを知り、いくつかの研修に参加し、ライセンスを保有しています。夢新聞講師(とても変な人が多いです。集まれば、様々な異見が集まります。)レゴ®シリアスプレイ研修・ワークショップ認定講師(製品やサービスの開発や人材育成、チームビルディングなどを扱います)このノウハウを身に着ける事で、声なき声を前向きな方向に修正することが出来るようになります。「えっ、こんな事考えていたのか?」 とか、生産的な意見を拾えるようになります。
システム開発では、コミュニケーションが必要だと思います。ストレスや緊張によって、相手の意図を見誤ることがあります。それがきっかけで、メンバーが対立する事があります。 非常に恐ろしい事です。会社には、何のメリットもありません。この辺りの事は、以前、プレッシャーに挑む【心理的安全性】に記載しています。
それでは、本題に入りたいと思います。楽しく働くためには、何が必要なのでしょうか? 私は、心理的安全性を理解し、使いこなしていることが前提になると考えています。
心理的安全性の特徴
話しやすさがある
自由に意見を交換できる雰囲気。上司や同僚とのコミュニケーションが円滑であり、意見を言いやすい環境。
- 当然のように思っていたことをそうではないと気付かせる事の出来る環境。
助け合いの気持ちがある
協力し合い、共同で目標に向かって取り組む。弱点を補完し合い、共同で成果を出す。
- チーム内でのオープンなコミュニケーションと透明性が促進される。
挑戦しようとする姿勢がある
新たなアイデアや方法に積極的に挑戦する。失敗を恐れず、学びの機会として捉える。
- 個人が間違いを恐れずに質問、意見、懸念、またはアイデアを自由に表現できる環境。
新寄を歓迎し、安易に否定しない
異なるバックグラウンドや意見を尊重し、新しいアイデアを歓迎。個性を尊重し、多様性を活かす。
- チームメンバーが非難されることなく失敗を認め、学習し、成長することが奨励される文化。
心理的安全性を高めるノウハウ
心理的安全性は、イノベーション、チームビルディング、そして組織全体のパフォーマンス向上に不可欠です。チームメンバーが安心してリスクを取り、新しいアイデアを提案できる環境を作ることで、組織はより創造的で生産的になります。
-
オープンなコミュニケーションを奨励する
リーダーは率直な意見交換を奨励し、全員が意見を共有する機会を提供する必要があります。 -
失敗を学習の機会として捉える
ミスや失敗を個人の非難の対象とするのではなく、チーム全体の学習と成長の機会として捉えます。 -
リーダーのモデル行動
リーダー自身が自らの弱さを示し、自らの失敗や不確実性を率直に話すことで、他のメンバーも同様の行動を取りやすくなります。 -
質問と好奇心を奨励する
チームメンバーに質問をすることや、新しいアイデアを探求することを積極的に奨励します。 -
非難の文化を排除する
非難や指摘を個人攻撃としてではなく、建設的なフィードバックとして捉える文化を作ります。 -
多様性とインクルージョンを促進する
さまざまな背景を持つ人々の意見が尊重され、評価される環境を作ります。 -
安全なフィードバックのループを確立する
フィードバックを受け入れ、それに基づいて行動を改善するプロセスを確立します。
なぜ率直な発言が難しいのか
対人関係のリスクとして考えられる4つの不安要因
其の一.無知だと思われる不安
- 業務で知らないことやわからないことを聞く際、「こんなことも知らないのか?」 と思われることを恐れて、質問を避けることがあります。
- 知識や情報の不足を指摘されることを避けたいと感じるため、「分からない」 と言えないことがあります。
其の二. 無能だと思われる不安
- 失敗した際、「こんなこともできないのか?」 と思われることを恐れて、ミスを報告しなかったり、自分の失敗を認めなかったりすることがあります。
- 過ちを認めることで責められると感じるため、隠したくなることがあります。
其の三. 邪魔をしていると思われる不安
- ミーティングで自分の発言が議論を長引かせたり本題から外れたりする場合、「いつも議論の邪魔をしてくる」 と思われることを恐れて、発言を控えることがあります。
- 新しいアイデアやイノベーションを生み出す機会を逃すことになります。
其の四. ネガティブだと思われる不安
- 改善の提案をする際、「他人の意見を否定する」 と思われることを恐れて、発言をためらったり、重要な指摘をしなくなったりすることがあります。
- 間違いを指摘しにくいと感じるため、問題を指摘しないことがあります。
王女カッサンドラの話を思い出しましょう。カッサンドラはギリシャ神話に登場するトロイアの王女で、真実を見通すことができる予言者でした。彼女はアポロン神に愛され、予言の力を授かりましたが、後に神を裏切って拒絶したため、予言を信じてもらえない呪いを受けました。カッサンドラはトロイア陥落を正しく予言し、自分の死に方まで正確に見えてしまいました。しかし、誰も彼女の予言を信じず、結局トロイアは滅びてしまいました。 彼女の悲劇的な運命は、現代でも「カッサンドラ症候群」として知られ、警告者が無視されることを指します。
率直な発言を受け入れてもらえる環境を作り、素直に耳を傾けることが大切です。
心理的安全性を高めるためには、相談しやすい雰囲気をつくったり、感謝の気持ちを伝えたりすることが重要です。そして、率直な発言がチームの成果にプラスの影響を与えることを理解し、積極的に取り組んでいくことが求められます。
心理的安全性は、チームや組織内で個々人がリスクを恐れずに意見を表明し、失敗を恐れずに挑戦できる環境を意味します。これは、組織の力学に大きな影響を与えます。
何故、率直な発言が出来ないのか?【心理的安全性シリーズ 1/3】
心理的安全性の重要性を確認出来る事例
東日本大震災のケース
- 東京電力福島原子力発電所事故では、人為的ミスに起因する問題が浮き彫りになりました。
- 組織文化や日本的な集団浅慮が、異議を唱えることを許さない状況を作り出しました。
- リーダーが不安を与えてマネジメントする場合、心理的安全性は著しく損なわれます。
フォルクスワーゲンのケース
- フォルクスワーゲンは排ガス規制をパスさせるために数値を捏造した事件を起こしました。
- 上からの強い圧力により、成果を優先した集団浅慮が引き起こされました。
スペースシャトル「チャレンジャー」の打ち上げ失敗のケース
- チャレンジャーの爆発事故は、過度のプレッシャーから生じるストレスが関係していました。
- 部品の不具合報告があったにもかかわらず、成果を優先した集団浅慮が原因でした。
集団浅慮は、外部情報を無視し、自己防衛的な態度を取ることで発生します。心理的安全性を高め、異議を唱える文化を育むことが重要です。人々は恐れを遠ざけたがりますが、大切な問題から目を背けないようにしましょう
ダイバーシティーインクルージョン(D&I)は、多様性と受容性を組み合わせた考え方で、組織内で異なる人材を受け入れ、活かすことを目指します。具体的には、性別、年齢、国籍、価値観、ライフスタイルなどの違いを認め、個性を発揮して活躍できる社会を実現することを目指します。
心理的安全性は、D&Iの一環であり、チームや組織内で率直な意見を述べられる環境を作ることです。
心理的安全性を高めるための3つのポイント
其の一. 仕事を学習の機会と捉える。失敗やミスは新たな知識を得るチャンスです。
- 完璧主義や成果主義から離れ、仕事を通して学ぶことにフォーカスする。
- ミスや失敗を恐れるのではなく、そこから何を学べるかを考える。
- 挑戦や困難な状況も、成長のチャンスと捉える。
其の二. 自分が間違うことを認める。改善するための機会として活用しましょう。
- 誰もが間違いを犯すことを受け入れ、自分の弱みや欠点を認める。
- 間違いを隠したり言い訳したりするのではなく、正直にオープンに話す。
- 間違いから学び、改善していく姿勢を持つ。
其の三. 好奇心を形にし、積極的に質問する。新しい知識や視点を得るために、積極的に質問しましょう。
- 疑問や不安は積極的に解消し、理解を深める。
- 周囲の人に積極的に質問し、新しい知識や情報を収集する。
- 既知の領域にとどまらず、新しいことに挑戦する。
「あなただから」という姿勢を持ち、率直な思いを引き出すことが心理的安全性を高める鍵です。
成功事例として、マイクロファイナンスを通じて才能を発揮できるようになった人々がいます。マイクロクレジットは貧困層向けの無担保小口融資で、グラミン銀行などが成功事例として挙げられています。この取り組みは、心理的安全性を相手に感じさせ、「率直な思い」を引き出す仕組みとなっています。
期待される効果
プロダクトイノベーション
多様な視点から新しい製品やサービスを開発し、市場での競争力を高めることができます。
プロセスイノベーション
効率的な業務プロセスを構築し、生産性を向上させることができます。
外部評価の向上
多様な人材を受け入れることで、企業のイメージが向上し、顧客や取引先からの信頼を得ることができます。
職場内の効果
多様な人材が活躍することで、職場のコミュニケーションが活性化し、従業員のモチベーションが向上します。
ダイバーシティーインクルージョンとは?【心理的安全性シリーズ 3/3】
心理的安全性を考慮した要件定義
心理的安全性を考慮した要件定義は、チームメンバーが自由に意見を述べ、創造的なアイデアを共有し、リスクを取ることを奨励する環境を作ることを目指します。
オープンなコミュニケーションの促進
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ワークショップの開催
全員が意見を出しやすいように、ファシリテーターを配置したワークショップを開催します。これにより、階層や役職に関係なく、全員が平等に発言できる場を提供します。 -
アイデアボードの設置
チームメンバーがいつでもアイデアを書き込めるように、オフィスにアイデアボードを設置します。これにより、非公式な形でのアイデア共有を促進します。
失敗の受容と学習の促進
失敗からの学習を共有
定期的に「失敗からの学習」セッションを開催し、失敗を経験したメンバーがその教訓を共有します。これにより、失敗を責めるのではなく、学びの機会として捉える文化を醸成します。
馬で移動していた時代に、車という革新的な価値を提供した
ヘンリーフォードは、「失敗は、今度はより賢く再試行する機会にすぎません。」
と言っていましたし、失敗は、賢く学ぶ学習の機会ととらえましょう!
フレームワークで要件定義を行う
エコシステムを構築する
1. オープンなコミュニケーションの促進
-
ワークショップの開催
AWSのサービスと機能に関する知識を共有するためのワークショップを開催し、チームメンバーが自由に意見を交換できる環境を作ります。これにより、チームメンバーは自分のアイデアや懸念をオープンに表現できるようになります。
2. 失敗の受容と学習の促進
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失敗からの学習を共有
AWSの導入や運用における失敗事例を共有し、チームメンバーが同じ過ちを繰り返さないようにします。また、失敗を経験したメンバーがその教訓を共有し、全員で学ぶ文化を醸成します。
3. 安全なフィードバックのループの確立
-
匿名フィードバックシステム
チームメンバーが匿名でフィードバックを提供できるシステムを導入し、批判的な意見も安心して提出できるようにします。
4. 多様な視点の尊重
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多様性を重視したチーム編成
AWSの導入にあたり、異なるバックグラウンドを持つメンバーをチームに含め、多様な視点を要件定義に取り入れます。
5. チームメンバーの自己効力感の強化
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個々の貢献の認識
チームメンバーの貢献を認識し、個々のアイデアがプロジェクトにどのように影響を与えるかを明確にします。
Well-Architected Frameworkと夢新聞を組み合わせて要件定義から設計を行う
ステップ1: 要件定義(夢新聞を利用)
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夢新聞ワークショップの実施
- プロジェクトチームで夢新聞ワークショップを行い、未来の成功したプロジェクトの姿を描きます。この時点での「夢」は、プロジェクトの最終的な成果物や達成したい目標を具体的に表現します。
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ビジョンの共有
- チームメンバーが共有したビジョンをもとに、プロジェクトの目的と目標を明確にします。これは、Well-Architected Frameworkの「ビジネス価値」の観点に対応します。
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要件の収集
- ビジョンに基づいて、必要な機能、性能、セキュリティ、信頼性などの要件を収集します。このプロセスでは、Well-Architected Frameworkの5つの柱(運用上の優秀性、セキュリティ、信頼性、パフォーマンス効率、コスト最適化)を考慮に入れます。
ステップ2: 概要設計(Well-Architected Frameworkを利用)
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アーキテクチャの概要作成
- 収集した要件に基づいて、システムの高レベルなアーキテクチャを設計します。この段階では、各要件がどのAWSサービスに対応するかを検討し、適切なリソースと技術を選定します。
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セキュリティと信頼性の設計
- セキュリティと信頼性を確保するための設計を行います。これには、データの暗号化、アクセス制御、バックアップとリカバリ戦略が含まれます。
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パフォーマンスとコストのバランス
- システムのパフォーマンス効率とコスト最適化のバランスを取りながら、リソースの選定とスケーリング戦略を設計します。
ステップ3: 詳細設計(Well-Architected Frameworkを利用)
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コンポーネントの詳細設計
- 概要設計で定義したアーキテクチャの各コンポーネントについて、詳細な設計を行います。これには、データベーススキーマ、APIの設計、インフラストラクチャの構成などが含まれます。
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セキュリティとコンプライアンスの詳細
- セキュリティ要件を満たすための詳細な設計を行い、コンプライアンス基準に沿ったアーキテクチャを確保します。
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デプロイメントと運用の計画
- システムのデプロイメントと運用に関する計画を立てます。これには、CI/CDパイプラインの設計、監視とアラートの設定、運用手順の文書化が含まれます。
夢新聞を利用することで、プロジェクトチームは未来の成功を具体的にイメージし、そのビジョンに向かって動機づけられます。Well-Architected Frameworkを利用することで、そのビジョンを実現するための堅牢でセキュアなクラウドベースのアーキテクチャを設計することができます。この組み合わせにより、プロジェクトは成功に向けて強固な基盤を築くことができます。
読んで頂きまして、ありがとうございました。
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