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3大クラウドベンダーのWell-Architected Frameworkを比較する

Last updated at Posted at 2024-05-21

顧客に寄りそった要件定義とWell-Architected Frameworkを考える(2/6)

Microsoft Certified: Azure Solutions Architect Expert
Google Cloud Professional Cloud Architect
AWS Certified Solutions Architect - Professional
資格を保有している著者の観点から

クラウドベンダー全てのWell-Architected Frameworkを確認し、「エーベルの三要素」で、
「誰に(Who)」、「何を(What)」、「どのように(How)」伝えたいのか を整理してみました。

整理した内容を確認する事で、理解を深めて頂けると、嬉しいです!

エーベルの3要素モデルは、事業の戦略的な範囲を定義するために、「誰に(Who)」、「何を(What)」、「どのように(How)」 の3つの次元を考慮します。これらは、それぞれ 「顧客グループ(Customer Groups)」、「顧客ニーズ(Customer Needs)」、「提供する技術(Technologies)」 に対応しています。

目次

  1. できること
  2. グーグル
  3. マイクロソフト
  4. アマゾン
  5. エーベルの三要素
  6. 要件定義

できること

Well-Architected Framework

どのベンダーも目指している方向は、同じである。
Well-Architected Framework
は、クラウド上でのワークロードの設計、構築、運用を効率的かつ効果的に行うための指針を提供するフレームワークである。

実践するメリット

  • クラウド環境の可用性信頼性の向上
  • セキュリティリスクの軽減
  • コストの最適化
  • パフォーマンスの向上
  • 持続可能性の向上

活用シーン

  • 新しいクラウド環境を構築する場合:ベストプラクティスを参考に、安全信頼性の高い基盤を構築。
  • 既存のクラウド環境を運用する場合:ツールを使って、環境健全性定期的に評価し、問題点発見
特徴 / クラウドプロバイダ Google Cloud Platform (GCP) Microsoft Azure Amazon Web Services (AWS)
柱の数 6つ 5つ 6つ
柱の名称 1.システム設計、2.オペレーショナル エクセレンス、3.セキュリティ、4.信頼性、5.費用の最適化、6.パフォーマンスの最適化 1.信頼性、2.セキュリティ、3.コストの最適化、4.オペレーショナルエクセレンス、5.パフォーマンス効率 1.運用上の優秀性、2.セキュリティ、3.信頼性、4.パフォーマンス効率、5.コスト最適化、6.サステナビリティ
主な目的 クラウドソリューションの設計と運用の最適化 高品質なソリューションの設計と継続的な改善 クラウドのベストプラクティスを活用したシステムの構築
提供するメリット 運用効率、セキュリティ、信頼性、コスト最適化、パフォーマンスの卓越性、持続可能性 高品質なソリューションの設計、リスクの特定と軽減、コスト効率の向上 ベストプラクティスの適用、アーキテクチャの評価、リスクの特定と軽減、コスト効率の向上
URL https://cloud.google.com/architecture/framework https://azure.microsoft.com/ja-jp/solutions/cloud-enablement/well-architected/#framework https://wa.aws.amazon.com/

グーグル

Google Cloud Platform (GCP) Well-Architected Framework

6つの柱で構成

1.システム設計 クラウド システムの要件を満たすために必要なアーキテクチャ、コンポーネント、モジュール、インターフェース、データを定義し、システム設計をサポートする Google Cloud のプロダクトと機能について確認します。

2.オペレーショナル エクセレンス クラウド ワークロードを効率的にデプロイ、運用、モニタリング、管理するためのプラクティスを提供します。

3.セキュリティ、プライバシー、コンプライアンス クラウド内のデータとワークロードのセキュリティを最大化し、プライバシーを考慮した設計を行い、規制要件と標準に対応するためのガイドラインを提供します。

4.信頼性 クラウドで復元性と高可用性を備えたワークロードを設計し、運用するための戦略を提供します。

5.費用の最適化 Google Cloud への投資のビジネス上の価値を最大化するためのコスト管理と最適化のアプローチを提供します。

6.パフォーマンスの最適化 パフォーマンスが最適化されるようにクラウド リソースを設計、調整するための戦略とツールを提供します。

実現できる事

運用効率を高める (Operational Excellence):変更管理や自動化などを通じて安定した運用を実現
セキュリティ向上 (Security): データやシステムを保護する。機密性、整合性、可用性 (CIA) を確保。
信頼性 (Reliability): システムダウンタイムを最小限に抑え、可用性を高める。障害発生時にも復旧を迅速に行う。
コスト最適化 (Cost Optimization) コストパフォーマンスを最適化する。無駄なコストを使わず必要なリソースを適切に利用する。
パフォーマンスの卓越性 (Performance Optimization): アプリケーションのパフォーマンスを向上。遅延を最小限に抑え、ユーザーエクスペリエンスを向上。
持続可能性 (Sustainability): 環境フットプリントを削減し、持続可能なクラウドソリューションを構築。

GCP では、Well-Architected Framework を活用するための リソース を提供。

Cloud Architecture Center
リファレンスアーキテクチャ、設計ガイド、ベストプラクティスなど、GCP 上でソリューションを構築するための包括的な情報が掲載されています。
https://cloud.google.com/architecture

マイクロソフト

Microsoft Azure Well-Architected Framework

5つの柱に基づいて構築

1.信頼性 システムが信頼性を持ち、障害から回復できるように設計。
2.セキュリティ データとアプリケーションを保護し、セキュリティを確保。
3.コストの最適化 コストを効率的に管理し、無駄を削減。
4.オペレーショナルエクセレンス 運用プロセスを最適化し、効率を向上。
5.パフォーマンス効率 リソースを適切にスケーリングし、パフォーマンスを最適化。

実現できる事

アーキテクチャの最適化: システムのアーキテクチャを評価し、AWSのベストプラクティスに基づいて改善点を特定できます。これにより、信頼性が高く、セキュアで、効率的なシステムを構築するためのガイドラインを得ることができます。

リスクの特定と軽減: システムのセキュリティ、信頼性、パフォーマンス効率、コスト最適化に関するリスクを特定し、それらを軽減するための戦略を立てることができます。

コスト効率の向上: システムのコストを最適化し、不要な支出を削減しながらビジネス価値を最大化する方法を見つけることができます。

パフォーマンスの最適化: システムのパフォーマンスを向上させ、技術の進化や需要の変化に柔軟に対応できるようにします。

持続可能性の向上: エネルギー消費を削減し、効率を向上させることで、環境への影響を改善します。

運用上の優秀性の確保: 運用プロセスを改善し、ワークロードの効率的な実行とビジネス価値の提供をサポートします。

セキュリティとコンプライアンスの強化: セキュリティとコンプライアンスの要件を満たし、データとシステムを保護するためのアプローチを強化します。

信頼性の高いシステムの構築: システムが期待どおりに機能し、障害から迅速に回復できるように設計します。

持続的な改善: アーキテクチャの継続的な評価と改善を通じて、システムを常に最新の状態に保ちます。

アマゾン

AWS Well-Architected Framework

1.運用上の優秀性 自動化とプロセスの最適化により、運用効率の向上
2.セキュリティ リスクの評価とリスクの軽減戦略を立て、ビジネス価値を生み出しながら情報やシステムを保護
3.信頼性 ワークロードが意図された機能を正確に一貫して実行できること
ライフサイクル全体を通してワークロードを運用・テストをすること
障害発生時の回復性を高めること
4.パフォーマンス効率 コンピューティングリソースを効率的に使用し、需要の変化と技術の進化に応じてその効率性を維持
5.コスト最適化 最も低いコストでビジネス価値を最大化する
6.持続可能性(サステナビリティ) 環境に対する影響、特にエネルギーの消費と効率性に配慮

実現できる事

ベストプラクティスの適用: AWSの専門知識に基づいたベストプラクティスを適用して、クラウドインフラストラクチャとアプリケーションを設計、実装、運用できます。

アーキテクチャの評価: 既存のアーキテクチャを評価し、AWSの推奨するアーキテクチャ設計原則に基づいて改善点を特定できます。

リスクの特定と軽減: システムのセキュリティ、信頼性、パフォーマンス効率、コスト最適化、サステナビリティに関するリスクを特定し、それらを軽減するための戦略を立てることができます。

コスト効率の向上: クラウドリソースの使用を最適化し、コストを削減しながらビジネス価値を最大化する方法を見つけることができます。

パフォーマンスの最適化: システムのパフォーマンスを向上させ、技術の進化や需要の変化に柔軟に対応できるようにします。

持続可能性の向上: エネルギー消費を削減し、効率を向上させることで、環境への影響を改善します。

運用上の優秀性の確保: 運用プロセスを改善し、ワークロードの効率的な実行とビジネス価値の提供をサポートします。

セキュリティとコンプライアンスの強化: セキュリティとコンプライアンスの要件を満たし、データとシステムを保護するためのアプローチを強化します。

信頼性の高いシステムの構築: システムが期待どおりに機能し、障害から迅速に回復できるように設計します。

持続的な改善: アーキテクチャの継続的な評価と改善を通じて、システムを常に最新の状態に保ちます。

エーベルの三要素

エーベルの3要素モデルは、事業の戦略的な範囲を定義するために、「誰に(Who)」、「何を(What)」、「どのように(How)」の3つの次元を考慮します。これらは、それぞれ「顧客グループ(Customer Groups)」、「顧客ニーズ(Customer Needs)」、「提供する技術(Technologies)」に対応しています。

  1. 誰に(Who - 顧客グループ)
    企業がサービスを提供するターゲット市場や顧客セグメントを特定します。これは、製品やサービスを購入する可能性がある個人や組織を意味し、年齢、性別、職業、地理的位置、業界などによって区分されます。

  2. 何を(What - 顧客ニーズ)
    企業が満たそうとしている具体的な顧客のニーズや問題点を特定します。これは、顧客が製品やサービスを購入する動機や目的を反映しており、機能性、利便性、価格、品質などが含まれます。

  3. どのように(How - 提供する技術)
    企業が顧客のニーズを満たすために使用する技術や手法を特定します。これは、製品の製造方法、サービスの提供方法、または解決策の実現方法を指し、イノベーションや差別化の源泉となります。

エーベルの3要素モデルの活用例

例えば、ある自動車メーカーが新しい電気自動車(EV)を市場に投入する場合、エーベルの3要素モデルに基づいて以下のように要件を定義することができます。

誰に(Who) 環境に配慮したライフスタイルを求める若い都市居住者や、テクノロジーに精通したエコ意識の高い消費者。
何を(What) 清潔で静かな運転体験、長距離走行能力、迅速な充電ソリューション、スマートな車内テクノロジーを求めるニーズ。
どのように(How) 高効率のバッテリー技術、持続可能な素材を使用した車体設計、ユーザーフレンドリーなインターフェース、スマートフォンと連携するアプリケーション。

このようにエーベルの3要素モデルを活用することで、企業は顧客のニーズに合わせた製品やサービスを提供し、市場での競争優位を確立するための戦略的な意思決定を行うことができます。

要件定義

エーベルの3要素モデルを用いて、要件定義し、Well-Architected Frameworkで、設計を行う

ステップ1: 要件定義

  1. 誰に(Who - 顧客グループ)
    プロジェクトのターゲットとなる顧客グループを特定します。どのような顧客がサービスから最大の価値を得るかを議論します。

  2. 何を(What - 顧客ニーズ)
    顧客が達成したい夢や目標、つまり彼らのニーズを明確にします。顧客が実現したい未来の状態を具体的に描き出します。

  3. どのように(How - 提供する技術)
    顧客のニーズを満たすために、どのAWSサービスや技術を利用するかを決定します。Well-Architected Frameworkを考慮しながら、最適な技術選択を行います。

ステップ2: 概要設計

  1. アーキテクチャの概要
    要件定義で特定した顧客ニーズに基づいて、システムの概要アーキテクチャを設計します。この段階では、サービスカタログから適切なサービスを選択し、顧客の夢を実現するための基盤を構築します。

  2. セキュリティと信頼性
    セキュリティと信頼性を確保するための概要設計を行います。セキュリティベストプラクティスに従い、データ保護、アクセス管理、災害復旧計画を策定します。

  3. パフォーマンスとコスト
    システムのパフォーマンス効率とコスト最適化のバランスを取りながら、リソースの選定とスケーリング戦略を設計します。

ステップ3: 詳細設計

  1. コンポーネントの詳細設計
    概要設計で定義したアーキテクチャの各コンポーネントについて、詳細な設計を行います。これには、データベーススキーマ、APIの設計、インフラストラクチャの構成などが含まれます。

  2. セキュリティとコンプライアンス
    セキュリティ要件を満たすための詳細な設計を行い、コンプライアンス基準に沿ったアーキテクチャを確保します。

  3. デプロイメントと運用
    システムのデプロイメントと運用に関する計画を立てます。これには、CI/CDパイプラインの設計、監視とアラートの設定、運用手順の文書化が含まれます。

エーベルの3要素モデルを用いることで、プロジェクトのターゲット顧客、彼らのニーズ、そしてそれを実現するための技術的手段を明確に定義 できます。Well-Architected Frameworkを利用することで、そのビジョンを実現するための堅牢でセキュアなクラウドベースのアーキテクチャを設計することができます。

読んで頂きまして、ありがとうございました。

顧客に寄りそった要件定義とWell-Architected Frameworkを考える(1/6) 
https://qiita.com/kimuni-i/items/aff6339130f160de16af

顧客に寄りそった要件定義とWell-Architected Frameworkを考える(2/6)
https://qiita.com/kimuni-i/items/4da6a2c91a5ecdf2c526

顧客に寄りそった要件定義とWell-Architected Frameworkを考える(3/6)
https://qiita.com/kimuni-i/items/1760874d6eec96fe75d7

顧客に寄りそった要件定義とWell-Architected Frameworkを考える(4/6)
https://qiita.com/kimuni-i/items/496ae4d41c8098f32f21

顧客に寄りそった要件定義とWell-Architected Frameworkを考える(5/6)
https://qiita.com/kimuni-i/items/a893228ce1ab52d3133e

顧客に寄りそった要件定義とWell-Architected Frameworkを考える(6/6)
https://qiita.com/kimuni-i/items/8dadc65f38d06a960f1a

AWS Well-Architected アーキテクチャのベストプラクティスを使う
https://qiita.com/kimuni-i/items/9f08f382ad73a03f601d

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