ITエンジニア転職はなぜ難しくなっているのか
ぱっと見の求人件数と体感のギャップ
ITエンジニアの求人件数は多く見えますが、実際に応募し書類選考を通過できる求人は驚くほど少ない、という体感的なギャップが生じています。
求人票が示すものと実際のニーズの差
ITエンジニアという言葉の範囲は広く、企業や案件ごとに扱う技術が全く異なります。そのため、求人票には「その会社独自の特定技術」に強く依存した要件が記載されがちです。これにより、求人は多く見えても、自分のスキルに一致するものは限られます。
「誰でもよい募集」がほとんど存在しない現実
求人が多く見えるのは、工程や技術領域が細分化されているためであり、未経験歓迎のような幅広い募集は減少しています。採用側は必要な技術が明確なため、募集要件に「特定スタックの実務経験」が強調され、応募者が通れる枠は狭くなっています。
求人がすぐ消える理由
ITエンジニア市場は流動性が高く、フロー求人と呼ばれるものは出ては消えるサイクルが早いため、求職者が「求人が多い」と錯覚しやすい構造があります。短期間で候補者が集まり求人が非公開になったり、内定辞退で求人を出し直したりするサイクルが、応募者とマッチする絶対数を限定的にしています。
企業側の選考基準の変化
企業が求めるエンジニア像がこの十年で変わり、それが転職の難易度を押し上げています。
即戦力要求の強まり
現在のIT現場では、扱う技術が個別特化しているため、即日から戦力になる経験が優先されます。
使用技術スタックの一致が重視される背景
- 特定クラウドや特定言語を深く触った人材が求められ、応募者の経験と企業の技術構成が一致しないと書類落ちしやすくなっています。
実務経験年数よりも成果事例が問われる流れ
- 単に経験年数ではなく、どのような成果を出したか、どのような課題を解決したかという深さや再現性が重視される時代になっています。
ポテンシャル枠の縮小
過去十年でITエンジニアが大量に増えた結果、企業側は未経験採用よりも、少し経験した中途を採用するほうが効率的だと判断する傾向が強まっています。
中途採用で「育成コスト」を嫌う理由
- 若手が長く同じ会社にいる前提が崩れたことで、教育してもすぐに転職されてしまう懸念があり、初期教育コストが不要な人材が望まれやすくなっています。
転職希望者が陥りやすい誤解
求人が多く見えることが、求職者側の誤解を生み、転職活動の長期化につながります。
「応募すればどこかは通る」という発想
- 落ちた理由を深掘りせず、自分の経験と企業の期待のズレに気付けないまま、応募数ばかり増えて通過率が上がらないという状況に陥りがちです。
応募軸が曖昧なまま数を打つリスク
- 扱いたい技術や希望する業界・領域が定まっていないと、求人の選定がブレてしまい、書類が通りづらくなります。
市場を正しく読むための視点
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年収水準と求められるレベル感の対応
年収を上げたい応募者側の期待値が高まる一方で、企業側も高い年収には高いスキルを求めるため、このギャップが書類落ちの一因になっています。
自分のポジションを棚卸しするチェックリスト
自己理解が不足していると、どれだけ応募しても通らない状況になります。以下の点を整理することが重要です。
- 扱える技術と扱えない技術の整理
- 深く経験した領域はどこか
- 成果として語れる事例は何か
- 今の年収と能力の市場相場は一致しているのか
おわりに
ITエンジニア転職が難しい背景には、求人の構造と技術特化、即戦力要求の強まり、ポテンシャル枠の減少、そして応募者側の誤解が複雑に絡み合っています。
求人が多く見えるからといって、自分に合う求人が多いわけではありません。市場と自分の位置を正しく理解することが、転職成功の鍵となります。
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