はじめに
私が日々の仕事で使用しているノートPCに搭載されたNVMe SSDのPercentage Usedという統計情報が増えるたびに、期間中のSSDへの書き込みデータ量などについて紹介し、SSDの寿命とその継続監視の重要性を説明してきました。
- NVMe SSDの寿命消費率(Percentage Used)が増えたので調べてみた
- NVMe SSDの寿命消費率(Percentage Used)が増えたので調べてみた(その2)
- NVMe SSDの寿命消費率(Percentage Used)が増えたので調べてみた(その3)
- NVMe SSDの寿命消費率(Percentage Used)が増えたので調べてみた(その4)
- NVMe SSDの寿命消費率(Percentage Used)が増えたので調べてみた(その5)
- NVMe SSDの寿命消費率(Percentage Used)が増えたので調べてみた(その6)
- NVMe SSDの寿命消費率(Percentage Used)が増えたので調べてみた(その7)
- NVMe SSDの寿命消費率(Percentage Used)が増えたので調べてみた(その8)
この"Percentage Used"とは、NVMe仕様[1]が定めるSelf-Monitoring Analysis and Reporting Technology (S.M.A.R.T.)情報のひとつで、日本語では「寿命消費率」と言えるような数値です。
前回この数値が増えたのは2024年7月のこと。それから4か月強で増えました。具体的には21 (%)から22 (%)に増えました。
今回も、前回数値が変化してから今回数値が変化するまでの状況をまとめ、考察します。
なお、「寿命消費率」という呼びかたは"Percentage Used"に対して私が勝手に付けたものであり、公式な呼びかた(日本語訳)ではありません。
このPCはWindows 10のサポート終了と共にお役御免になるはず(?)ですので、一般的なオフィスユースのノートPCに搭載されているSSDは快適動作に必要な余裕分を加味しても十分な寿命を備えていることが良くわかります。
まとめ
- Percentage Usedは、NVMe仕様に規定された「メーカー保証寿命に対する消費率(%)」で、計算方法はメーカー依存
- Percentage Usedを見る限り現在の寿命消費は安定しているものの継続監視が必要
おさらい:寿命消費率(Percentage Used)とは
NVMe仕様のSelf-Monitoring Analysis and Reporting Technology (S.M.A.R.T.)情報における「寿命消費率(Percentage Used)」とは メーカー依存の寿命使用度見積もり(百分率) です。
図1:CrystalDiskInfoで取得した当該NVMe SSDのS.M.A.R.T.情報(赤枠内がPercentage Used)
この「寿命消費率」は、NVMe仕様が規定する標準項目中で寿命を直接的に表現した唯一の数値で、メーカー基準の保証寿命を使い尽くした状態が100 (%)になるように現在の使用状況を正規化した値です。
なおこの"Percentage Used"は100を超えることもあり得ます(100を超えることを仕様として許容している)。これは、メーカー基準の保証寿命と実際のSSDの寿命に差がある(後者のほうが長い)ためです。
詳細は以前の記事をご覧ください。
以前からこれまでのホストからの書き込み量推移
今回、Percentage Usedが21から22に増えました。
数値が増えた時点でこのPC (SSD)の通算使用期間はおよそ5年と11か月です。この期間にメーカー保証寿命換算で22%を消費した、ということになります。
前回(2024年7月)このPercentage Usedが20から21に増えた時から、今回21から22に増えるまでの累積書き込み量の様子は、SSDから取得したS.M.A.R.T.情報によると図2のようになります。
図2:前回Percentage Usedが増えてからのホストからSSDへの累積データ書き込み量
前回Percentage Usedが20から21に増えるまでは約6.6 TB(約6.1 TiB)書き込んでいました。同様に調べると、今回Percentage Usedが増えるまでに約6.4 TB(約5.9 TiB)書き込んでいました(図3)。
図3によると、前回増加時と比較してPercentage Usedの増加にかかる時間は延びたもののホストから書き込んだデータサイズが減りました。
Percentage Usedの増加には、ホストからの書き込みサイズ以外にSSDの内部処理によるNANDフラッシュメモリへの書き込みサイズが影響します。もしSSDの内部処理が頻繁に行われると、ホストからの書き込みサイズが少なくてもNANDフラッシュメモリへの書き込みサイズが増加しPercentage Usedの増加要因になり得ます。逆に言えば、空き容量が増えたなどの要因でSSDの内部処理頻度が下がればPercentage Usedの増加速度つまり寿命の消費速度が下がります。
しかし、前回からこれまでこのPCの使いかたやSSD内の空き容量に大きな変化はありません。このことから今回の区間は前回(20から21に増えたとき)と比較してやや内部処理での書き込みサイズが増加してホストから書き込めたサイズが減少したように見えます。
ただPercentage Usedが10台前半の頃と比較すれば現在はより多くホストからデータを書き込めていますので、このSSDの状態(寿命消費)は安定した状態であると言えます。
以上、図2と図3およびドライブの状況からわかることと考えられることは以下の通りです。
- 現在SSDの寿命消費は安定した状態に見え、使いかたが同じであれば約6 TB書き込むとPercentage Usedが1増えそう
- 継続的な監視が必要
なおPercentage Usedが22に変化した時点でのホストからの累積データ書き込み量は約145 TB (135 TiB)です。ワークロードが異なるので直接の比較はできませんが、参考までにこのSSDのカタログスペック上のTBWは300 TBです。
おわりに
今回の記事では、私が実際に使用しているノートPCに搭載されているNVMe SSDの「寿命消費率(Percentage Used)」が増えたことを取り上げて、前回増えた時から今回までのホストからの書き込み量などを調べ、状況を考察しました。
SSDのS.M.A.R.T.情報をはじめとする統計情報も、他の機器の統計情報と同様に異常値がないか、異常な変化がないか、継続的に監視を続けることが重要です。
Reference
[1] NVM Express, "NVM Express Base Specification," Revision 2.0c, October, 2022
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