はじめに
私が日々の仕事で使用しているノートPCに搭載されたNVMe SSDのPercentage Usedという統計情報が増えるたびに、期間中のSSDへの書き込みデータ量などについて紹介し、SSDの寿命とその継続監視の重要性を説明しています。
- NVMe SSDの寿命消費率(Percentage Used)が増えたので調べてみた
- NVMe SSDの寿命消費率(Percentage Used)が増えたので調べてみた(その2)
- NVMe SSDの寿命消費率(Percentage Used)が増えたので調べてみた(その3)
- NVMe SSDの寿命消費率(Percentage Used)が増えたので調べてみた(その4)
- NVMe SSDの寿命消費率(Percentage Used)が増えたので調べてみた(その5)
- NVMe SSDの寿命消費率(Percentage Used)が増えたので調べてみた(その6)
この"Percentage Used"とは、NVMe仕様[1]が定めるSelf-Monitoring Analysis and Reporting Technology (S.M.A.R.T.)情報のひとつで、日本語では「寿命消費率」と言えるような数値です。
前回この数値が増えたのは2023年11月のこと。それからやはりまた4か月を経てこの数値が増えました。具体的には19 (%)から20 (%)に増えました。
そこで今回も、前回数値が変化してから今回数値が変化するまでの状況をまとめ、考察します。
なお、「寿命消費率」という呼びかたは"Percentage Used"に対して私が勝手に付けたものであり、公式な呼びかた(日本語訳)ではありません。
まとめ
- Percentage Usedは、NVMe仕様に規定された「メーカー保証寿命に対する消費率(%)」で、計算方法はメーカー依存
- Percentage Usedの増加間隔が短縮しているのはSSD内部での書き込みが増えていることが要因と考えられ、この傾向が続くのか注視が必要
おさらい:寿命消費率(Percentage Used)とは
NVMe仕様のSelf-Monitoring Analysis and Reporting Technology (S.M.A.R.T.)情報における「寿命消費率(Percentage Used)」とは メーカー依存の寿命使用度見積もり(百分率) です。
図1:CrystalDiskInfoで取得した当該NVMe SSDのS.M.A.R.T.情報(赤枠内がPercentage Used)
この「寿命消費率」は、NVMe仕様が規定する標準項目中で寿命を直接的に表現した唯一の数値で、メーカー基準の保証寿命を使い尽くした状態が100 (%)になるように現在の使用状況を正規化した値です。
なおこの"Percentage Used"は100を超えることもあり得ます(100を超えることを仕様として許容している)。これは、メーカー基準の保証寿命と実際のSSDの寿命に差がある(後者のほうが長い)ためです。
詳細は以前の記事をご覧ください。
以前からこれまでのホストからの書き込み量推移
今回、Percentage Usedが19から20に増えました。
このPC (SSD)の通算使用期間はおよそ5年と3か月です。この期間にメーカー保証寿命換算で20%を消費した、ということになります。
前回(2023年11月)このPercentage Usedが18から19に増えた時から、今回19から20に増えるまでの累積書き込み量の様子は、SSDから取得したS.M.A.R.T.情報によると図2のようになります。
図2:前回Percentage Usedが増えてからのホストからSSDへの累積データ書き込み量
前回Percentage Usedが18から19に増えるまでは約6.0 TB(約5.5 TiB)書き込んでいました。同様に調べると、今回Percentage Usedが増えるまでに約6.4 TB(約6.0 TiB)書き込んでいました(図3)。
図3によると、前回増加時と比較してPercentage Usedの増加にかかる時間が延びました。また、ホストからの書き込みデータサイズも約500 GiB増加しています。
Percentage Usedの増加には、ホストからの書き込みサイズ以外にSSDの内部処理によるNANDフラッシュメモリへの書き込みサイズが影響します。もしSSDの内部処理が頻繁に行われると、ホストからの書き込みサイズが少なくてもNANDフラッシュメモリへの書き込みサイズが増加しPercentage Usedの増加要因になり得ます。逆に言えば、空き容量が増えたなどの要因でSSDの内部処理頻度が下がればPercentage Usedの増加速度つまり寿命の消費速度が下がります。
前回からこれまでこのPCの使いかたやSSD内の空き容量に大きな変化はありません。強いて言えば、年末年始の休暇を経ていて実稼働日数が少ないことやアプリケーションのアンインストールなどを実施しました。これらが今回のPercentage Used増加の様子に影響を及ぼしている可能性はあります。
なおPercentage Usedが20に変化した時点でのホストからの累積データ書き込み量は約132 TB (123 TiB)です。使いかたが異なるので直接の比較はできませんが、参考までにこのSSDのカタログスペック上のTBWは300 TBです。
いずれにせよ寿命は経過時間には依存せずあくまで書き込み量に依存しますので、今後も書き込み量について継続的な監視が重要です。特にPercentage Usedの増加間隔推移(さらに短縮するのかそれとも落ち着くのか)がポイントになりそうです。
以上をまとめると、図2と図3およびドライブの状況からわかることと考えられることは以下の通りです。
- 今の使いかたを続けている限り、当面の間は約6 TB書き込むとPercentage Usedが1増えそう
- Percentage Usedの増加間隔が延びたが一過性の可能性があり今後も継続的な監視が必要
まとめ
今回の記事では、私が実際に使用しているノートPCに搭載されているNVMe SSDの「寿命消費率(Percentage Used)」が増えたことを取り上げて、前回増えた時から今回までのホストからの書き込み量などを調べ、状況を考察しました。
SSDのS.M.A.R.T.情報をはじめとする統計情報も、他の機器の統計情報と同様に異常値がないか、異常な変化がないか、継続的に監視を続けることが重要です。
Reference
[1] NVM Express, "NVM Express Base Specification," Revision 2.0c, October, 2022
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