はじめに
これまで数回、私が日々の仕事で使用しているノートPCに搭載されたNVMe SSDのPercentage Usedという統計情報が増えた際に、期間中のSSDへの書き込みデータ量などについてご紹介してきました。
- NVMe SSDの寿命消費率(Percentage Used)が増えたので調べてみた
- NVMe SSDの寿命消費率(Percentage Used)が増えたので調べてみた(その2)
- NVMe SSDの寿命消費率(Percentage Used)が増えたので調べてみた(その3)
- NVMe SSDの寿命消費率(Percentage Used)が増えたので調べてみた(その4)
この"Percentage Used"とは、NVMe仕様[1]が定めるSelf-Monitoring Analysis and Reporting Technology (S.M.A.R.T.)情報のひとつで、日本語では「寿命消費率」と言えるような数値です。
前回この数値が増えたのは2023年2月のこと。それから5か月を経てまたこの数値が増えました。具体的には17 (%)から18 (%)に増えました。
そこで今回も、前回数値が変化してから今回数値が変化するまでの状況をまとめ、考察します。
なお、「寿命消費率」という呼びかたは"Percentage Used"に対して私が勝手に付けたものであり、公式な呼びかた(日本語訳)ではありません。
まとめ
- Percentage Usedは、NVMe仕様に規定された「メーカー保証寿命に対する消費率(%)」で、計算方法はメーカー依存
- Percentage Usedの増加(寿命消費の進行度合い)を見る限り、引き続き、TBW算出に用いられた「使いかた」よりも「優しい使いかた」をしている模様
おさらい:寿命消費率(Percentage Used)とは
NVMe仕様のSelf-Monitoring Analysis and Reporting Technology (S.M.A.R.T.)情報における「寿命消費率(Percentage Used)」とは メーカー依存の寿命使用度見積もり(百分率) です。
図1:CrystalDiskInfoで取得した当該NVMe SSDのS.M.A.R.T.情報(赤枠内がPercentage Used)
この「寿命消費率」は、NVMe仕様で規定された標準項目中で唯一寿命を直接的に表現した数値で、メーカー基準の保証寿命を使い尽くした状態が100 (%)になるように現在の使用状況を正規化した値です。
なおこの"Percentage Used"は100を超えることもあり得ます(100を超えることを仕様として許容している)。これは、メーカー基準の保証寿命と実際のSSDの寿命に差がある(後者のほうが長い)ためです。
詳細は以前の記事をご覧ください。
以前からこれまでのホストからの書き込み量推移
今回、Percentage Usedが17から18に増えました。
このPC (SSD)の通算使用期間は4年と8か月です。この期間にメーカー保証寿命換算で18%を消費した、ということになります。
前回(2023年2月)このPercentage Usedが16から17に増えた時から、今回17から18に増えるまでの累積書き込み量の様子は、SSDから取得したS.M.A.R.T.情報によると図2のようになります。
図2:前回Percentage Usedが増えてからのホストからSSDへの累積データ書き込み量
前回Percentage Usedが16から17に増えるまでは約6.0 TB(約5.5 TiB)書き込んでいました。同様に調べると、今回Percentage Usedが増えるまでにほぼ同じ約6.0 TB(約5.5 TiB)書き込んでいました(図3)。
図3によるとPercentage Usedが増える時間間隔が徐々に短縮しています。しかし休日の存在などで稼働率に差が出ますので、この時間間隔にあまり意味はありません。
むしろ、各期間でのホストからの書き込みデータサイズがほぼ等しいことがとても重要です。
Percentage Usedの増加には、ホストからの書き込みサイズ以外にSSDの内部処理によるNANDフラッシュメモリへの書き込みサイズが影響します。もしSSDの内部処理が頻繁に行われると、ホストからの書き込みサイズが少なくてもNANDフラッシュメモリへの書き込みサイズが増加しPercentage Usedが増える可能性があります。
ただ今回の計測期間中ドライブ内の有効なデータのサイズはほぼ増えておらず、空き容量はドライブ容量の半分程度(240 GB程度)ある状態です。このため、Trimが適切に行われていればGarbage Collectionの効率が悪くなる状況とは考えられません。
このことから、Percentage Usedの増加にあたりホストからの書き込みデータサイズがほぼ等しいという状況は、SSDの内部状態が定常状態に落ち着いていて内部処理の頻度や内部処理によるNANDフラッシュメモリへの書き込みサイズも落ち着いている、と考えることができます。
なおPercentage Usedが18に変化した時点でのホストからの累積データ書き込み量は約120 TBです。
いずれにせよ寿命は経過時間には依存せずあくまで書き込み量に依存しますので、今後も書き込み量について継続的な監視が重要です。
以上をまとめると、図2と図3およびドライブの状況からわかることと考えられることは以下の通りです。
- 今の使いかたを続けている限り、当面の間は約6 TB書き込むとPercentage Usedが1増えそう
- SSD内部が定常状態に落ち着いている可能性が高いが要継続監視
- このSSDのカタログスペック上のTBWは300 TB。S.M.A.R.T.情報のData Units Writtenから単純計算するとホストからの累積書き込みデータ量は約120 TB。これはTBWの40%に相当するもののPercentage Usedはそれよりも低い値(18%)を示している。
- TBWとホストから書き込んだデータ量が一致した時にPercentage Usedが100になると仮定すると、単純計算ではPercentage Usedの1%は3 TB。しかし今回もPercentage Usedが1増える間に3 TBより多くのデータを書き込めている。
これまでの繰り返しになりますが、TBWもPercentage Usedも「SSDの使いかた」に依存する値です。TBW算出時に想定した使いかた(ワークロード)と全く同じ使いかたになることはまずあり得ませんので、ずれるほうが自然です(ずれないほうが不自然)。ずれていることこそTBWが「SSDの使いかた」に依存することの証拠です。
今回のずれは「引き続き私のSSDの使いかたがTBW算出の前提となる使いかたよりもやさしい使いかたである」ことを示していると考えられます。ただし今後もPercentage Usedの値が同じペースで増えていくとは限らず、今後「SSDにやさしくない使いかた」をすればPercentage Usedの増加スピードが上昇するはずです。
またSSDの内部状態が変化すればPercentage Usedの増加スピードも変化するはずです。
ちなみに、このSSDのメーカー保証は「5年かTBW消費のどちらかに到達するまで」です。仮にTBW (300 TB)消費時にPercentage Usedが100になると仮定すると、当分Percentage Usedが100になることはなさそうですので、「5年」という期間のほう(あと半年)で保証期間切れになりそうです。
まとめ
今回の記事では、私が実際に使用しているノートPCに搭載されているNVMe SSDの「寿命消費率(Percentage Used)」が増えたことを取り上げて、前回増えた時から今回までのホストからの書き込み量などを調べ、状況を考察しました。
SSDのS.M.A.R.T.情報をはじめとする統計情報も、他の機器の統計情報と同様に異常値がないか、異常な変化がないか、継続的に監視を続けることが重要です。
Reference
[1] NVM Express, "NVM Express Base Specification," Revision 2.0c, October, 2022
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