育成ゲームの息抜きに新作を試したら、ドラクエの偉大さに気づいた
「ワールドマップ、AIで1日で作れるでしょ」
そう思っていました。
育成ゲームの開発がひと段落ついて、息抜きに新作RPGの構想を練っていた週末のこと。雲の上の浮島群を舞台にした、ドラクエ風ターンバトルRPG。子猫の勇者ミルクが、魔王を倒す物語です。
設計書はだいたい固まっていました。あとはタイル画像をAIで作って、並べるだけ。
AIで草・山・町のタイル画像を作る
↓
並べる
↓
完成
この甘い見積もりが、地獄の入り口でした。
第1の試練:AIは「ドラクエ風」を知らない
最初に作ったのは、草地のタイル。シンプルなプロンプトで投げました。
A grass tile for a JRPG world map, top-down view
返ってきたのは、国営放送のドキュメンタリー番組に出てきそうな、リアルな草原の航空写真でしたw
「いや、ピクセルアートで」と書き直します。今度は3DCGで作った草原が来ました。立体感がすごい。フラットじゃない。これじゃない。
以下のような禁止事項を足してみます。
flat 2D pixel art, NO 3D rendering, NO photorealistic
ようやく、それっぽい絵が出てきました。
1枚目で気づいたことがあります。
AIに「ドラクエ風」を作らせるには、「これは違う」を山のように書かないといけない。
「こうしてほしい」より「こうしないでほしい」の方が長い。これが、最初の違和感でした。
第2の試練:ドラクエを観察し始めて、2時間が消える
タイルが何種類必要か考えていて、ふと気になりました。
「ドラクエって、実際どんなタイル構成なんだろう?」
実機画像を開きました。眺め始めました。次にスマホを見たら、2時間が経っていました。
そしてこの2時間で、最初の設計が完全に間違っていたことに気づきました。
私はこう思っていました:
「山のタイル」=「草地に山が描かれた1枚の画像」
ドラクエは違いました。
「草地のベース」+「山のシルエット」を別々のレイヤーで重ねている
つまり、山のタイルは山だけが描かれていて、その下に草地ベースが敷かれている。だから「砂漠の山」も「草地の山」も、同じ山タイルを使い回せる。
これに気づいた瞬間、背筋が凍りました。
設計書、全部書き直しです。
第3の試練:「ベースはベースだ」をAIに理解させる戦い
設計を直して、「ベース地面」と「オブジェクト」を分離しました。ベース地面は純粋な地面のテクスチャだけ。山も木も建物も乗せない。
簡単な指示だと思いました。
草地タイルを生成してください。純粋な草の地面テクスチャだけ。
何も乗せないでください。
→ 出力:草地の上に色々な草がのっている
花も肉球もダメです。本当に草だけ。
→ 出力:草地の上に小さなクローバー
クローバーもダメです。装飾物は一切なし。
→ 出力:草地の上に葉っぱの装飾
…葉っぱ?それは草の一部?それとも別物?
AIに「葉っぱは草地の表現か、別オブジェクトか」を区別させるのに、何往復したかわかりません。最終的にプロンプトはこうなりました。
NO clovers, NO flowers, NO paw prints, NO mountains,
NO trees, NO buildings, NO decorations of any kind.
ONLY pure grass texture.
禁止事項リストの方が、本文より長い。
第4の試練:マップエディタの存在
ここまで散々苦労した後、息抜きに別の開発者の動画を見ていました。Godot Engineの画面が映っていました。
タイルパレットから選んで、マウスで並べていく。マップエディタでした。
時が止まりました。
「…これがあれば、AI生成のブレに苦しまずに済むんじゃ?」
調べたら、Tiledという無料のマップエディタが定番でした。しかも、今使っているフレームワーク(Bonfire)と公式連携しています。
もっと早く知りたかった。
しかも、Tiledには「Terrain Brush」という機能があり、海岸線タイルの配置を自動でやってくれる。私が苦労して書いた「配置ロジックの設計書」、全部不要になりました。
振り返り:4つの学び
ここまでの試行錯誤を振り返って、本気で残った学びを書きます。
学び1:「簡単に作れる」と思った瞬間が、罠の入り口
「タイル並べるだけでしょ」と思った瞬間、私は何も理解していませんでした。
ドラクエが30年積み上げてきた設計思想を、無料で借りようとしていたんです。当然、AIは「ドラクエ風」を知りません。「ドラクエとは何か」を自分で言語化しないと、AIには通じない。
仕事でも同じだと思います。「これくらい簡単だろう」と思った案件ほど、深掘りすると根本設計が間違っている。最初の感覚を疑うことから始まる、と感じました。
学び2:AIは「何を作るか」を教えてくれない
AIは「言われたものを作る」のは得意です。でも「何を作るべきか」は教えてくれません。
- ベースとオブジェクトを分離する2層構造
- 凹角を発生させないマップ設計ルール
- 海岸線タイルの最適な種類数
これらの設計思想は、ドラクエの開発者が考案したもの。私はそれを観察して理解することしかできませんでした。
AI時代になっても、「何を作るか」の解像度を上げるのは、結局人間の仕事です。これはマネジメントでも同じで、AIに丸投げすると、平凡なものしか出てきません。
学び3:適材適所、また同じ結論
前回の記事で「ツールは適材適所」と書きました。今回もまったく同じ結論にたどり着きました。
・設計の議論 :Claude.ai
・コード実装 :Claude Code
・タイル画像生成:gpt-image-2
・マップ作成 :Tiled
「全部AIで完結」は幻想でした。ツールを組み合わせて、人間が設計する。これが現時点の正解です。
学び4:先人の制約を、リスペクトすること
ドラクエ初期作のROM容量は64KB。今のスマホアプリの数千分の1です。その中に、地形タイル・遷移タイル・マップ・キャラ・戦闘・ストーリー、全部詰め込んでいます。
制約があったからこそ、洗練された設計が生まれたんだと思います。
ベースとオブジェクトの分離は、容量を節約するため。海岸線タイルの最適化も、ROMに収めるため。「凹角を出さない」という美学も、結果的に少ないリソースで美しい世界を見せるための工夫だったのかもしれません。
AI時代の私たちは、容量の制約から解放されています。だからこそ、先人の設計思想を意識的に学ばないと、すぐに膨らんで破綻する。
「制約がない」ことは、「設計の腕が試される」ということでした。
結論:ドラクエは、神
息抜きに始めたはずが、設計書のページ数だけが膨れ上がっていきました。気づけば、ドラクエへのリスペクトが5倍くらいになっていました。
「個人開発でドラクエ風RPGを作りたい」と思っている人へ、最後に伝えたいことがあります。
ドラクエは神。リスペクトを持って、徹底的に観察してから始めてください。
次回:実装が動いたら、また書きます
ここまでで、設計書はv0.3まで進化しました(最初の数倍の厚みになりました)。
次は実装フェーズです。Claude Codeに渡して、19種類のタイル生成 → Tiledでマップ作成 → ゲームエンジンで描画 → 移動制御、と進めていきます。
実装が動いたら、また書きます。「ドラクエ風RPGを作る」というテーマは、想像以上に学びの宝庫でした。
おまけ:こんな奮闘を経て、開発してるアプリがこちらです!
コードが書けない非エンジニアが、AIと格闘しながら完全バイブコーディングでアプリを作っています。
第一弾:もふふミルクとにゃんこ脱出ゲーム 🐾
動画に登場している白い猫のミルクが主人公。ふわふわの謎を解いて、ミルクと一緒に脱出するゲームです。
📱 アプリはこちらからダウンロードできます 👉
次回作:もふふミルクのにゃんこ図鑑、開発中 🌱
今回の記事で書いた"引き継ぎ書"の仕組みを最初から適用して作っているのが、この育成ゲームです。ミルクと一緒にふわふわ島で暮らしながら、いろんな猫たちと出会って、育てていくゲーム。
▲ 開発中の画面(2026年4月時点)。ミルクを育てるコアループ部分が動いている状態。
その次:もふふミルクのにゃんこクエスト ふわふわ島と勇者の扉(構想中)
引き継ぎ書を置いて開発したおかげで、脱出ゲームのときより明らかに順調です。リリース時期が近づいてきたらまたお知らせします。
興味ある方はフォローしてもらえると嬉しいです!
これまでのシリーズ
- 「外注500万円」に絶句した私がClaudeCodeで1週間・約2万5千円でアプリをリリースした話
- AIハネムーン期の終わり—Claude Codeに感動していた1ヶ月、そして冷めた話
- Claude CodeのAutoModeに全部任せたら、バグだらけで全部やり直した話
- AIに暴言を吐いたら、本当に出力が劣化した話 — Claude Codeに罵声を浴びせた1週間の記録
- CLAUDE.mdを育てる、の先にあったもの — Claude Codeに”組織設計”を持ち込んだ話
- 非エンジニアの私が「AIに毎回同じ注意してる」問題を解決したら、作業がぐんと進んだ話
- 非エンジニアの私がAIにゲームのCM作らせたら素人以下だった。指示に1行足したら9割マシになった話
- 「それ2週間前に変えたよね?」とAIを詰めた私が、自分のメモを見て凍りついた話
- モチベ上げるために収益ダッシュボードを作ったら、「赤字18,431円」と殴られた話
- 非エンジニアの私がAIで作った個人開発ゲームのCM、本物のレベルに到達したので見てほしい
- ドラクエ風RPG、AIで作るのが大変すぎて「これを30年前に作った人類すごい」ってなった話(この記事)
※本記事はnoteからの転載です:https://note.com/natty_yarrow1907/n/ne296d8988392










