最近「完全なる数学門外漢」タイプの人と話す機会があって、
- 点(0次元)が連続すると線になる(1次元)。
- 線(1次元)が連続すると面(2次元)になる、
- 面(2次元)が連続すると立体(3次元)になる。
- これを無限に繰り返すのがN次元。
と、ついつい考えてしまう「デカルト座標系概念の呪い」の根強さを改めて思い知らされました(というか、その考え方を覆せなかった)。
そういう私も2017年末に数学再勉強に着手する以前は同レベルだったので全然他人事ではありません。「方法序説(Discours de la méthode,1637年」において平面上における直交座標系(Cartesian coordinate system)のアイディアを発表したデカルト(René Descartes、1596年~1650年)も基本的には同じだった筈。
Wikipedia「ルネ・デカルト」
ラテン語名はレナトゥス・カルテシウス (Renatus Cartesius) 。デカルト座標系(仏: système de coordonnées cartésiennes ; 英: Cartesian coordinate system)、デカルト積(デカルトせき、英: Cartesian product)のようにデカルトの名がついたものにカルテジアン(Cartesian)という表現が用いられる。デカルト主義者もカルテジアン(仏: Cartésien ; 英: Cartesian)と呼ばれる。
というのも、彼の生きた時代にはまだニュートン(Sir Isaac Newton、1642年~1727年)やライプニッツ(Gottfried Wilhelm Leibniz,1646年~1716年)が微積分学を完成させていなかったからです。
Wikipedia「微分積分学」
アイザック・ニュートンは、積の微分法則、連鎖律、高階差分解読法、テイラー展開、解析関数といった概念を独特の記法で導入した。ちなみにそれらを数理物理学の問題を解くのに使ったとする従来の説には現在科学史家より否定的見解が出されている。従来の説を要約すると「ニュートンは『自然哲学の数学的諸原理』を出版する際に、当時の数学用語に合わせて微分計算を等価な幾何学的主題に置き換えて非難を受けないようにした」というものだが、彼の研究ノートを見分しても初等幾何と現代でいう極限の考え方を素朴に組み合わせて試行錯誤していることや、同書ではいわゆる「逆問題」について踏み込んでいないことから、彼が逆問題を結局解けなかった、つまり微積を使っていなかったことがうかがえる。ニュートンはあくまで幾何と極限の組み合わせを駆使して、天体の軌道、回転流体の表面の形、地球の偏平率、サイクロイド曲線上をすべる錘の動きなど、様々な問題について『自然哲学の数学的諸原理』の中で論じたのである。ニュートンはそれとは別に関数の級数展開を発展させており、テイラー展開の原理を理解していたことが明らかである。ゴットフリート・ライプニッツは当初ニュートンの未発表論文を盗作したと疑われたが、現在では独自に微分積分学の発展に貢献した1人と認められている。
これらの考え方を体系化し、微分積分学を厳密な学問として確立させたのがゴットフリート・ライプニッツである。当時はニュートンの盗作だと非難されたが、現在では独自に微分積分学を確立し発展させた1人と認められている。ライプニッツは極小の量を操作する規則を明確に規定し、二次および高次の導関数の計算を可能とし、積の微分法則と連鎖律を規定した。ニュートンとは異なり、ライプニッツは形式主義に大いに気を使い、それぞれの概念をどういう記号で表すかで何日も悩んだという。
ライプニッツとニュートンの2人が一般に微分積分学を確立したとされている。ニュートンは物理学全般に微分積分学を適用するということを初めて行い、ライプニッツは今日も使われている微分積分学の記法を開発した。2人に共通する基本的洞察は、微分と積分の法則、二次および高次の導関数、多項式級数を近似する記法である。ニュートンの時代までには、微分積分学の基本定理は既に知られていた。
ニュートンとライプニッツがそれぞれの成果を出版したとき、どちら(すなわちどちらの国)が賞賛に値するのかという大きな論争が発生した。成果を得たのはニュートンが先だが、出版はライプニッツが先だった。この論争により、英国数学界とヨーロッパ大陸の数学界の仲が険悪になり、その状態が何年も続いた。現在では、ニュートンとライプニッツがそれぞれ独自に微分積分学を確立したとされている。
それでは以降、空間認識の常識はどう変わったのでしょうか。順番に見ていく事にしましょう。
「傾き1」から線形方程式y=xへ
連続一様分布(Continuous Uniform Distribution)の概念を援用すると「傾き1」f(x)=1の式形とf(x)=xすなわち線形式y=(a)x(+b)の式形を連続的に扱う事が出来ます。
【Token】連続一様分布(Continuous Uniform Distribution)の平均と分散と最尤値
これでとりあえず以下の関係が説明出来たものとして先に進みます。
x\frac{dx}{dy}=1=x^0,1\frac{dx}{dy}=\frac{1}{x}=x^{-1}
\int_0^xx^{-1}dx=\int_0^x\frac{1}{x}dx=\frac{x}{x}=1=x^0
\int_0^xx^0dx=\int_0^x1dx=x=x^1
ChatGPTへの質問「1を微分したら幾つになりますか?」
ChatGPTへの回答「1を微分すると、常に0になります。微分とは、関数が与えられた点における変化の割合を求める操作ですが、定数関数である1はどの点でも変化しないため、その微分は常に0となります。」
あえてこうは考えないという話ですね。さらに連続一様分布概念からの援用でルベール測度b-aの外測度を0に設定しますが、これは集合論における「閉世界仮説(Closed World Assumption)」採用と表裏一体の関係にある考え方といえましょう。
【Token】ベン図と組み合わせ計算と確率演算
冪乗算の積分公式に従った展開
あとはもう冪乗算の定積分公式$\int_0^xx^ndx=\frac{x^{n+1}}{n+1}$に従って展開するばかりですが、ここで「デカルト座標系の呪い」が重くのしかかってくる訳です。
\int_0^xxdx=\left[ \frac{x^2}{2} \right]_0^x=\frac{x^2-0}{2}=\frac{x^2}{2}
\int_0^xx^2dx=\left[ \frac{x^3}{3} \right]_0^x=\frac{x^3-0}{2}=\frac{x^3}{3}
- 特に「3個組み合わせると1辺xの立方体$x^3$になる四角錐」はイメージも作図も難しく、多くの記事がカヴァリエリの原理(Cavalieri's principle)「錐体の体積は(如何に歪んでても)底面積と高さの積の1/3」を提示するだけで作図を放棄。
- Wikipedia「カヴァリエリの原理」
微分積分学が発展する以前の1635年に、カヴァリエリが著書 Geometria indivisibilibus continuorum nova quadam ratione promota(『不可分者による連続体の新幾何学』)により原理を発表した。カヴァリエリの発想は、平面図形は無数の線分から成り、立体は無数の面から成る、というもので、この線分や面を「不可分者」(indivisible) と呼んだ。カヴァリエリは、遅くとも1629年までには原理を発見し、これを用いて様々な図形の面積や体積を求めている。アルキメデスの方法を発展させたもので、ケプラーの考えも取り入れており、歴史的にカヴァリエリはケプラーと共に近代求積法の先駆けと位置付けられる。
上掲の累積分布関数の展開イメージが頭に入ってないと、この$\frac{1}{2},\frac{1}{3}$がなんだかよく分からなくなってしまうのです。正直私も、数学最勉強を始める前はそうでした。
冪乗算の微分公式に従った展開と積分イメージとの統合
微分に至ってはさらなる試練が待ち受けています。
(x^n)^{'}=nx^{n-1},(x^3)^{'}=3x^2,(x^2)^{'}=2x
一般に冪乘算の微分はこう表現されますが、実は3通り×2通り=6通りの選択肢があるのです。
しかも(「外測度を0に設定する」上掲のルベール測度の要請に従って)全展開を同一立方体の辺内で収めるには、すなわち任意の立方対角線の対蹠が始点(+1,+1,+1)と終点(-1,-1,-1)になる様に設定するには、微分の順番を四元数の要請する以下のルールに従わせねばなりません。
【Token】ハミルトンの四元数
- ijk=-1
- ij=k,ji=-k
- jk=i,kj=-1
- ik=j,ki=-j
絶対値関数を用いた表現では以下となります。表記上、負号導入のタイミングが真逆(すなわち対蹠[-1,-1,-1]から対蹠「+1,+1,Z,+1」への遷移)が興味深い?
【Token】「マックスウェルの魔」と絶対値関数
- abs(x,y)+z=-abs(y,x)+z
- abs(y,z)+x=-abs(z,y)+x
- abs(z,x)+y=-abs(x,z)+y
とはいえ絶対値関数と付加次元(三次元アフィン変換における回転軸)は可換なので(始点を揃えるという思惑に拘らねば)四元数と同様の表記も可能です。
- z+abs(x,y)=z-abs(y,x)
- x+abs(y,z)=x-abs(z,y)
- y+abs(z,x)=y-abs(x,z)
要するにこれ「微分によって導関数(Derivative)を求めるプロセス」と「積分によって原初関数(Primitive Function)を求めるプロセス」の表裏一体性に対応している?
立方対角線上のどちらの対蹠を選んでも、その背景に「始点からの3通り」「回転方向で相互拘束される2通り」「終点に辿り着く為の1通り」なる計算上の組み合わせ展開が透けて見える点は変わりません。こうした計算の順番を拘束される「逐次全微分」方式を嫌った人類が発明したのが、ナブラ演算の様な「システィマティックに始点から偏微分を一斉処理する」方式とも。
【分布意味論時代の歩き方5パス目】現代社会から遡る「数学中心歴史観」?
「便利だから部分導入」アプローチは∇演算による勾配(∇f=grad f:四元数の傾き)、発散(∇・A=div A:四元数の内積部)、回転(∇xA=rot A:四元数の外積部)を求める計算にも出てきます。
①まずはナブラ演算を
∇ \equiv i\frac{∂}{∂_x}+j\frac{∂}{∂_y}+k\frac{∂}{∂_z}
あるいは
∂_x=\frac{∂}{∂_x},∂_y=\frac{∂}{∂_y},∂_z=\frac{∂}{∂_z}
$ $と置いて$∇ \equiv i∂_x+j∂_y+k∂_z$と定義する。
②任意の空間座標r=(x,y,z)の関数Xの値域X(r)として定まる量を場(field)という。この時(スカラー量が空間座標rの関数として与えられる)スカラー場ψ(r)にナブラ演算子∇を作用させた結果としての(ベクトル量が空間座標rの関数として与えられる)ベクトル場α(r)=勾配(gradient)が以下。
∇ψ=i∂_xψ+j∂_yψ+k∂_zψ=i\frac{∂ψ}{∂_x}+j\frac{∂ψ}{∂_y}+k\frac{∂ψ}{∂_z}
③ベクトル場α(r)に「内積の様に」作用させた結果としてのスカラー場ψ(r)=発散(devergence)が以下。
∇・α=∂_xα_x+∂_yα_y+∂_zα_z=\frac{∂α_x}{∂_x}+\frac{∂α_y}{∂_y}+\frac{∂α_z}{∂_z}
④ベクトル場α(r)に「外積の様に」作用させた結果としてのベクトル場α(r)=回転(rotation)が以下。
∇×α=i(∂_yα_z-∂_zα_y)+j(∂_zα_x-∂_xα_z)+k(∂_xα_y-∂_yα_x)=i(\frac{∂}{∂_y}α_z-\frac{∂}{∂_z}α_y)+j(\frac{∂}{∂_z}α_x-\frac{∂}{∂_x}α_z)+k(\frac{∂}{∂_x}α_y-\frac{∂}{∂_y}α_x)
ちなみに
- スカラー場ψ(r)の勾配(grad.)∇ψの回転(rot.)∇×(∇ψ)=0(無次元量だからベクトル成分を持たない)
- ベクトル場α(r)の回転(rot.)∇×αの発散∇・(∇×α)=0(互いに直交してるから内積0)
- スカラー場ψ(r)の勾配(grad.)∇ψの発散(dev.)∇・(∇ψ)はラプラス演算子(ラプラシアン)$∇^2 \equiv ∇・∇=(\frac{∂^2}{∂_x^2}+\frac{∂^2}{∂_y^2}+\frac{∂^2}{∂_z^2})$を用いて$∇^2ψ$
- ベクトル場α(r)の回転∇×αの回転は$∇×(∇×α)=∇(∇・α)- ∇^2α$
- ラプラシアンはスカラー微分演算子なのでこれをベクトル場α(r)に作用させると成分それぞれに働いて$∇^2α=i(∇^2α_x)+j(∇^2α_y)+k(∇^2α_z)$
もはや数学というより物理演算の世界?
人類がそう容易には到達出来ない「四次元以上」
ここまでの内容を俯瞰してみると、冒頭で掲げた以下の定義そのものが間違ってる訳ではありません。
- 点(0次元)が連続すると線になる(1次元)。
- 線(1次元)が連続すると面(2次元)になる、
- 面(2次元)が連続すると立体(3次元)になる。
ただイメージが以下の様な直交座標系の図に拘束されているのが問題で、これこそが「デカルト座標系(あるいはユークリッド幾何学系)概念の呪い」の正体といえましょう。
ここでその呪いを解く鍵となりそうなのが「加速度1、質量1に単純化されたニュートン物理学」の世界。
【Token】物理学と数学の接点②ニュートンの運動3法則
- 「重力加速度1(数学でいう「傾き1」)」に任意の次元数のスカラー量$α_n$とベクトル量$x_n$の組を与えると速度ベクトルFとなる(線型結合表現)。
Wikipedia「線型結合」
F(a_n,x_n)=\sum_{i=1}^n a_ix_i
- この速度ベクトルFを時間積分すると距離Dが求められる。
\int_0^{t_{max}}F(t)dt
- 「任意の曲線の各点の状態を微分によって求め、積分によって全体距離を割り出す演算」もこの部類に入る。
\int_a^b\sqrt{1+(\frac{dy}{dx})^2}dx
何のことはない。機械学習理論を含め、今日なお科学実証主義の柱であり続けている「微分方程式を整備する形で外測度領域の神秘に迫ろうとする観測アプローチ」そのものという訳です。
物理にも使える!微分方程式の解法まとめ
そして「カンブリア爆発期(5億4200万年前から5億3000万年前)に授かった視覚と視覚情報を処理する脊椎の末裔」で思考する人類は「2の倍数$2^n$と3の組み合わせ」以上の数理を用いて物を考えるのが原則として苦手。最新数学では「数理世界の構造的複雑さは導入する素数の数で決まる」といわれ、掛け算の九九にすらさらに素数5、7が登場し、数聖ガウス(Carolus Fridericus Gauss、1777年~1855年)の様に「17までの素数の振る舞いならありありと思い浮かべられる」と豪語した人物すら歴史上存在したというのに全体としてはその感じなので、その範囲で扱える(行列演算に立脚した)線形代数や(微積分演算に立脚する)解析学に人類の関心が集中していったともいえそうです。
【Token】どうして36個の数字しか使われないのか?
「(3集合までしか扱えないベン図で行き詰まる)古典的集合論」や「(3次元の扱いで行き詰まった)古典的幾何学」に共通するある種の生物学的制約を見てとった結果…
【Token】ベン図と組み合わせ計算と確率演算
以下の様な四次方程式に対応する集合論的構造や幾何学的構造がイメージできないのが「人類(ひいては視覚に頼る生物)の自然な姿」なんじゃないかという考え方に到達したという次第。
(b-a)^4=b^4-4b^3a+6b^2a^2-4ba^3+a^4
「球の求積」においてさらに露呈する「人類の空間認識能力の限界」
上掲の冪乗算の微積分公式は、いわゆる「球の求積」においても活躍します。例えば「線から面を積分する場合」が「円周長から円の面積を積分する場合」に…
「面から立体を積分する場合」が「球の表面積から球の体積を積分する場合」に対応する訳ですが…
ところで私は昔から「(運動の第3法則(作用反作用の法則)とか持ち出すしか説明の仕様がない)半径の2倍が直径(直径の半分が半径)」なる考え方との連続性がいま一つの様に感じてきたのです。
【Token】物理学と数学の接点②ニュートンの運動3法則
この疑問が氷解したのは、その全体像をN次元球として捉えΓ(ガンマ)関数を導入して表現する方法を知った時の事でした。
Γ関数を用いた考え方の統合
①まず$C_n$を以下と置く。導出過程は以下。
【Token】半径・直径・円周長・円の面積・球の表面積・球の体積の計算上の往復
c_n = \frac{\pi^{\frac{n}{2}}}{\Gamma(\frac{n}{2}+1)}
②この場合の半径rのn次元球の体積は$c_n r^n$、表面積は$n c_nr^{n−1}$となる。
- 1次元球(n=1)座標系において$C_n=\frac{\pi^{\frac{1}{2}}}{\Gamma(\frac{1}{2}+1)}=2$。従ってその「体積(直径)」は2r。
- 2次元球(n=2)座標系において$C_n=\frac{\pi^{\frac{2}{2}}}{\Gamma(\frac{2}{2}+1)}=\pi$。従ってその「体積(面積)」は$\pi r^2$、「表面積(円周長)」は$2 \pi r$。
- 3次元球(n=3)座標系において$C_n=\frac{\pi^{\frac{3}{2}}}{\Gamma(\frac{3}{2}+1)}=\frac{3}{4} \pi$。従ってその体積は$\frac{3}{4} \pi r^3$、表面積は$4 \pi r^2$。
- 4次元球(n=4)座標系において$C_n=\frac{\pi^{\frac{4}{2}}}{\Gamma(\frac{4}{2}+1)}=\frac{1}{2} \pi^2$。従ってその「体積(?)」は$\frac{1}{2} r^4$、「表面積(?)」は$2 \pi^2 r^3$
なんとスッキリとシンプルこの上なく美しい表現。歴史的に全体像の把握を阻害してきたのは,むしろ人類がそれまで思考の拠り所としてきた「カンブリア爆発期(5億4200万年前から5億3000万年前)に授かった視覚と視覚情報を処理する脊髄の末裔」そのもので、それは四次元以上の空間認識には全く歯が立たないという制約を抱えていたという訳です。
まぁこういう考え方はわからない人にはわからない(2017年以前の自分も分からなかった)という結論が出た時点で以下続報…