はじめに
Xilinx 社のFPGA開発環境の Vivado(Vitis)、いちいち GUI でマウスボタンをポチポチするのは面倒です。
Vivado(Vitis) は Tcl スクリプトでバッチ処理が出来るので、決まり切った仕事なら Tcl スクリプトを書いて処理させたほうが楽です。
この記事では、Vivado(Vitis) で Zynq の FSBL(First Stage Boot Loader)を自動的に生成するスクリプトを紹介します。
環境
- Xilinx Vivado 2019.2 (Vitis)
「Vivado SDK でZynq FSBL(First Stage Boot Loader)をビルドするTclスクリプト」 および 「Vivado SDK でZynq FSBL(First Stage Boot Loader)をビルドするTclスクリプト(hsi編)」 で紹介した Tcl スクリプトでは Vivado 2019.2 (Vitis) 以降では動作しません。Vivado(Vitis) で同様のことを行うには、ここで紹介する xsct コマンドを使います。(ちなみに xsct とは Xilinx Software Command line Tool だそうです。)
手順
ハードウェアスペックファイルを用意しておく
この Tcl スクリプトではワークスペース(後述)の下にハードウェアスペックファイルを用意しておく必要があります。通常は Vivado でインプリメンテーションした後、Export > Export Hardware... でハードウェアスペックファイルを作ります。また、こちらの記事(「Vivadoでハードウェア情報をエクスポートするTclスクリプト」)も参考にしてください。
Tclスクリプトを用意する
まずはスクリプト全体を示します。
#!/usr/bin/tclsh
set app_name "fsbl"
set app_type "zynq_fsbl"
set hwspec_file "design_1_wrapper.xsa"
set proc_name "ps7_cortexa9_0"
set project_name "project"
set project_directory [file dirname [info script]]
set sdk_workspace [file join $project_directory $project_name.sdk]
set app_dir [file join $sdk_workspace $app_name]
set app_release_elf $app_name.elf
set app_release_dir $project_directory
setws $sdk_workspace
set hw_design [hsi::open_hw_design [file join $sdk_workspace $hwspec_file]]
hsi::generate_app -hw $hw_design -os standalone -proc $proc_name -app $app_type -compile -dir $app_dir
file copy -force [file join $app_dir "executable.elf"] [file join $app_release_dir $app_release_elf]
exit
xsct を実行する
Vivado(Vitis) の xsct で前節の Tclスクリプトを実行します。これで fsbl.elf が出来ていれば成功です。
Vivado% xsct build_fsbl.tcl
Tclスクリプトの説明
各種定数を定義しておく
まずは様々な定数を定義しておきます。
この例ではハードウェアスペックファイルの名前を design_1_wrapper.xsa としていますが、実際には Vivado で Export した時のファイル名を設定します。
set app_name "fsbl"
set app_type "zynq_fsbl"
set hwspec_file "design_1_wrapper.xsa"
set proc_name "ps7_cortexa9_0"
set project_name "project"
set project_directory [file dirname [info script]]
set sdk_workspace [file join $project_directory $project_name.sdk]
set app_dir [file join $sdk_workspace $app_name]
set app_release_elf $app_name.elf
set app_release_dir $project_directory
ワークスペースを設定する
Vivado(Vitis) はワークスペースを設定する必要があります。
ここでは Tclスクリプトのあるディレクトリの下の project.sdk という名前のディレクトリをワークスペースとして設定します。
setws $sdk_workspace
プラットフォームプロジェクトを作る
ここでワークスペースの下に事前に用意しておいたハードウェアスペックファイルを指定します。hsi::open_hw_design コマンドを使ってプラットフォームプロジェクトを作り hw_design 変数にセットしておきます。
set hw_design [hsi::open_hw_design [file join $sdk_workspace $hwspec_file]]
アプリケーションプロジェクトをビルドする
hsi::generate_app コマンドを使ってアプリケーション(zynq_fsbl)を作ります。-compile オプションを指定することで、プロジェクトを作るだけでなくビルドもやってくれます。
hsi::generate_app -hw $hw_design -os standalone -proc $proc_name -app $app_type -compile -dir $app_dir
生成した executable.elf を fsbl.elf にコピーする
hsi::generate_app コマンドが成功すると、app_dir で指定したディレクトリに executable.elf というファイルが出来ます。これが目的の fslb.elf です。このファイルを app_release_dir で指定したディレクトリに fsbl.elf としてコピーします。
file copy -force [file join $app_dir "executable.elf"] [file join $app_release_dir $app_release_elf]