はじめに
本記事の企業分類は、公開情報をもとにした筆者独自の基準によるもので、各社の公式見解ではありません(組織見解に関する免責は記事末尾に記載)。
2026 年、AWS の全認定資格を取得し、いわゆる AWS 全冠 になりました。あわせて「Japan All AWS Certifications Engineers」にも選出いただきました。
ありがたいことに、私の所属するパナソニック コネクトでも、AWS 資格に関する記事がいくつも投稿されていて、社内で資格取得を後押しする空気が広がってきているのを感じます。たとえば、こんな記事があります。
- 【社内LT】AWS認定をノー勉で全冠する方法【筋肉・メンタル・作戦】(全冠)
- AWSのAI資格に挑戦してみた!(AIF-C01)(Foundational)
- 【合格体験記】1ヶ月で AWS Certified Solutions Architect - Associate(SAA-C03) 合格した話(Associate)
- AWS SAP に受かってみた(Professional)
Foundational から Professional、そして全冠まで、幅広いレベルの体験記が並んでいます。
とはいえ、自分の受賞報告をそのまま書いても面白くありません。そこで本記事は、受賞者数の 3 年分(2024 / 2025 / 2026)の公開データを、自分の所属である 「メーカー系」の視点で分析してみた、というデータ分析の記事にしました。
TL;DR
- 2026 年の「Japan All AWS Certifications Engineers」に選出いただきました。せっかくなので、受賞者数の 3 年分(2024 / 2025 / 2026)の公開データを、自分の所属である 「メーカー系」の視点で分析してみました。
- 全体の受賞者は 1,222 → 1,633 → 2,330 名(2 年で約 1.9 倍)と伸びています。
- そのなかで、メーカー系(製造業を主業とする企業グループ)の受賞者は 144 → 227 → 379 名(2 年で約 2.6 倍) と、全体を上回るペースで増えています。
- 全冠者に占めるメーカー系の比率は 11.8% → 16.3% に上昇しました。
- 結論:AWS 全冠人材は、いわゆる SIer だけでなく「ものづくり企業」でも急速に増えている、という仮説が数字から見えてきました。
1. 表彰プログラムと本記事の狙い
「Japan All AWS Certifications Engineers」は、AWS Partner Network(APN)参加企業に所属し、その時点で対象となる AWS 認定資格をすべて保持しているエンジニアを表彰するプログラムです。認定資格は年々増えており、全冠の維持難易度は上がり続けています。
- 2024 Japan AWS All Certifications Engineers の発表
- 2025 Japan All AWS Certifications Engineers の発表
- 2026 Japan All AWS Certifications Engineers の発表
私はいわゆる SIer やクラウドインテグレーターではなく、「ものづくりの会社」のなかでソフトウェア/クラウドをやっている立場です。そこで、「同じような『メーカー系』の全冠エンジニアは、この 3 年でどう増えてきたのか?」を数えてみることにしました。
2. 「メーカー系」をどう定義するか
「メーカー系」という言葉は意味が曖昧になりがちなので、最初に定義を固めます。
2-1. 「メーカー系 SIer」という業界慣習の分類
IT 業界では、SIer をよく次のように分類します。
| 分類 | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| メーカー系 SIer | コンピュータ/電機メーカーを母体とする SIer | 富士通、NEC、日立グループ 等 |
| ユーザー系 SIer | 非 IT 事業会社(金融・商社・通信・鉄鋼など)の情報システム部門が分社化 | 金融系・商社系・通信系の IT 子会社 等 |
| 独立系 SIer | 特定の親会社を持たない | クラウドインテグレーター各社 等 |
2-2. 本記事で採用する「メーカー系」の定義
私(パナソニック コネクト)の立ち位置は、IT を売るのが主業ではなく、製品(ものづくり)を主業とする会社のなかにあります。この視点を活かして、本記事では次のように定義します。
メーカー系=「有形製品の製造業(ものづくり)」を主たる事業とする企業グループ。
具体的には、製造業の事業会社本体と、その製造業グループのIT/デジタル子会社・販売子会社を含む。
対象とする「製造業」は、電気機械・電子部品・情報通信機器・輸送用機械(自動車など)・精密機器・産業機器・鉄鋼・素材・印刷などを想定しています。
なお、富士通・NEC・日立グループは「電機メーカー発祥」ですが実態は IT サービス/SI が主力、という側面があります。とはいえ本記事は 「製造業を母体とするグループ」をまとめて 1 つのメーカー系として数える方針とし、これらも含めています(区分けはしません)。
2-3. 判断が割れる企業の扱い(グレーゾーン)
一貫性のため、次のように機械的に処理しました。
| 企業(例) | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 鉄鋼系 IT 子会社(日鉄ソリューションズ、JFE システムズ、コベルコシステム、エクサ 等) | 含める | 母体が鉄鋼・素材の製造業グループ |
| 印刷系(TOPPAN、DNP、モリサワ 等) | 含める | 印刷・同関連は製造業 |
| ソニービズネットワークス | 除外 | ソニーグループだが会社の主業は通信/ISP サービス |
| 三菱総研 DCS | 除外 | シンクタンク系(製造子会社ではない) |
| エフサステクノロジーズ | 除外 | 旧富士通系だが現在は独立系(投資ファンド傘下) |
| 川田テクノシステム | 除外 | 母体は建設・橋梁(建設業であり製造業ではない) |
| 電力系 IT 子会社(北海道電力系・北陸電力系など) | 除外 | 母体は電力(インフラ業) |
この基準は主観を含みます。別の基準なら数字は変わりますが、3 年間で同じ基準を通しているので、推移(トレンド)の比較としては意味があると考えています。
なお念のため補足すると、この分類はあくまで筆者個人の便宜的な区分であり、パナソニック コネクトを含め、ここで挙げたいかなる企業の公式見解・立場を示すものでもありません。特定の企業を「含める/除外する」という判断も、公開データを分析するための一時的な線引きにすぎない点をご理解ください。
3. データソースと集計方法
- データ(出典):AWS 公式ブログの受賞者発表 3 記事(2024 / 2025 / 2026)に一般公開されている受賞者一覧(会社名+人数)。
- 人数:各社見出しの「◯名」表記、単独掲載は 1 名として集計。
-
全体人数:各記事に明記された合計値(2024: 1,222 / 2025: 1,633 / 2026: 2,330 名)を採用。
- ※ 2024・2026 は公式に訂正(人数追記)が入っています。本記事は訂正後の最終値を使用。
- 検証:集計は2 回、別々に数え直して一致を確認しました。それでも手作業による拾い間違いの可能性はゼロではありません。数名単位のズレはご容赦ください(トレンドが変わる規模ではありません)。
本記事は、上記のとおり一般公開されている情報を出典として引用し、筆者が独自の観点で再分類・集計・考察したものです。数値はすべて各公式記事へのリンクから確認できます。元記事の文章や表をそのまま転載したものではありません。
4. 全体の推移
まず母数となる全体から。直近3年で集計しています。
| 年 | 全体受賞者数 | 前年比 |
|---|---|---|
| 2024 | 1,222 | - |
| 2025 | 1,633 | ×1.34 |
| 2026 | 2,330 | ×1.43 |
2 年間で約 1.9 倍。新しい認定資格(AI Practitioner など)が増えて全冠のハードルが上がっているにもかかわらず、受賞者はむしろ加速して増えています。
5. メーカー系の 3 年推移
本題です。
| 年 | 全体 | メーカー系 | メーカー系比率 |
|---|---|---|---|
| 2024 | 1,222 | 144 | 11.8% |
| 2025 | 1,633 | 227 | 13.9% |
| 2026 | 2,330 | 379 | 16.3% |
伸び率の比較
| 区分 | 2024 | 2026 | 2 年間の倍率 | 実質年成長率(CAGR) |
|---|---|---|---|---|
| 全体 | 1,222 | 2,330 | ×1.9 | 約 38% |
| メーカー系 | 144 | 379 | ×2.6 | 約 62% |
ポイントは、メーカー系の伸びが全体を上回っていることです。全体が年 38% ペースで増えるなか、メーカー系は年 62% ペース。結果として、全冠者に占めるメーカー系の比率は 11.8% → 16.3% へと上昇しました。
「クラウド全冠人材=クラウド専業/SIer の人」というイメージがあるかもしれませんが、ものづくり企業側にも全冠エンジニアが確実に増えているということです。
6. 内訳:メーカー系グループ別の 3 年推移
どのグループが伸びているかを見るために、グループ単位の合計で並べました。個々の事業会社(本体・IT 子会社・販売子会社など)は、それぞれの製造業グループにまとめて合算しています。並び順は 2026 年の多い順(「−」=その年はグループとして受賞者一覧に非掲載)。
| グループ | 2024 | 2025 | 2026 |
|---|---|---|---|
| 日立グループ | 33 | 54 | 79 |
| NEC グループ | 37 | 47 | 75 |
| 富士通グループ | 31 | 51 | 74 |
| 三菱電機グループ | 8 | 21 | 45 |
| 日本製鉄グループ | 14 | 18 | 28 |
| トヨタグループ | 2 | 13 | 22 |
| 印刷(TOPPAN・DNP・モリサワ 等) | − | 2 | 12 |
| オムロングループ | 6 | 6 | 8 |
| キヤノングループ | 4 | 3 | 8 |
| 東芝グループ | 4 | 3 | 8 |
| パナソニック コネクト | − | 4 | 6 |
| 住友電工グループ | − | − | 4 |
| シャープグループ | 2 | 2 | 2 |
| 富士フイルムグループ | 1 | 1 | 2 |
| 神戸製鋼グループ | 1 | 1 | 2 |
| JFE グループ | − | − | 2 |
| その他製造(造船・農業機械 等) | − | − | 2 |
| 京セラグループ | 1 | 1 | − |
| 合計 | 144 | 227 | 379 |
各グループには、事業会社本体とそのグループの IT/デジタル・販売子会社を合算しています(例:富士通グループ=富士通本体+富士通 Japan など)。個別の法人単位の数値は、前述のとおり出典の AWS 公式記事でご確認いただけます。
とくに動きが大きいのはこのあたりです。
- 三菱電機グループ:8 → 21 → 45 と、この 3 年で最も急拡大したグループのひとつ。
- トヨタグループ:2 → 13 → 22。2025 年から自動車メーカー本体も受賞者一覧に登場。
- 日本製鉄グループ:14 → 18 → 28 と、鉄鋼系 IT グループが安定して増加。
- 印刷系:2026 年に 12 まで伸び、製造業のなかでも存在感が出てきました。
- パナソニック コネクト:2025 年から登場し 4 → 6 と着実に増加。
補足:この一覧に載るのは「APN 参加企業の所属者」だけです
この表彰プログラムは、AWS Partner Network(APN)参加企業への所属が条件です。パナソニックグループでは APN に参加しているのはパナソニック コネクトのみのため、この一覧に載るパナソニック関連の全冠者はコネクト所属者に限られます。グループ全体で見れば、APN 非参加の会社にも全冠者はいるため、実際のパナソニック全体の全資格取得者はもう少し多くなります。同様に、他社グループでも「APN 参加企業だけがカウントされている」点は、数字を読むうえで共通の前提になります。
7. まとめ
- AWS 全冠エンジニアは全体で 2 年で約 1.9 倍。そのなかで メーカー系は約 2.6 倍と、全体を上回るペースで増加。
- 全冠者に占めるメーカー系の比率は 11.8% → 16.3% に上昇。
- 「クラウド人材は SIer のもの」という時代から、ものづくり企業でもクラウド全冠人材が育つ時代に移りつつある、と数字から読み取れました。
同じ「メーカー系」で全冠を目指している方の参考になれば嬉しいです。そして来年、メーカー系の数字がどこまで伸びるか、また数えてみようと思います。
本ブログに掲載している内容は、私個人の見解であり、所属する組織の立場や戦略、意見を代表するものではありません。
