「日立らしさ」を武器に、前例のない領域へ挑む。開拓者精神で昇格を続けるメンバーの「巻き込み力」とは

大企業のエンジニア組織というと、整備された役割分担のもとで、経験豊富な上司や先輩に支えられながら着実に成長していく。そのようなイメージを抱く人は少なくないかもしれません。実際、安全性や品質を重視する企業ほど、プロセスは緻密で、組織としての再現性も高く設計されています。
一方で、現場ではそうしたしっかりとした仕組みの中にいながら、前例のない技術や案件に向き合い、自ら道を切り開いていくことを求められる場面もあります。
今回お話を伺った栗本健太さんも、まさにそのような1人です。日立製作所のクラウド関連ソリューションの拡販からキャリアを始め、4年目からSIの現場へとジョイン。大規模プロジェクト案件のPM/PLを、日立の人間として一手に担うなど、若くして大きな責任を伴う経験を積み重ねてきました。
日立らしさを大事にしながら、会社として前例のない案件をメインで担当されている方は、どのような視点を持ってチームをけん引しているのか。これまでの経験の中で培われた巻き込み力やマネジメント観に迫ります。
目次
プロフィール

AI&ソフトウェアサービスビジネスユニット マネージド&プラットフォームサービス事業部
エンジニアリングサービス第2本部
しっかりと自社技術で社会に貢献するという雰囲気に魅力を感じて日立に入社

――まずは現在の業務内容を教えてください。
栗本:基本的には物理サーバ/ネットワークからAWS、Azure、VMwareなど、インフラ周りに関してなんでもやるというスタンスのチームの課長(主任技師)を務めています。最近ではチーム全体としてMicrosoft 365(以下、M365)の案件が増えてきており、特に自治体のお客さまにM365を導入するプロジェクトが多くなっています。
――栗本さんのキャリアから伺っていきたいのですが、いつからインフラ周りを担当されるようになったのでしょうか?
栗本:2012年に新卒で日立に入社したのですが、入社後研修が終わってからの配属で、早々にその領域に入りました。当時、Virtage(バタージュ)という日立独自のサーバ仮想化技術がありまして、その他クラウド関連サービスも含めたHitachi Cloudのソリューションを拡販する部隊に配属されました。入社から4年ほどは、その拡販部隊にいました。
――拡販というと、いわゆるプリセールス的な動きですか?
栗本:そうですね。プロジェクトのPMになるというよりは、各SEさんと一緒に動くプレSEとして、基本的には受注までの仕様説明と値段調整が主なタスクでした。
――学生の頃からこの領域を志望されていたのでしょうか?
栗本:いえ、当時は全く考えていませんでした。学生の時は理系だったものの、今では一般的なデバイスになってきている「HMD(ヘッドマウントディスプレイ)」のディスプレイにおけるデザイン評価について研究していました。いわゆる人間工学の領域です。
――全く違う領域ですね。
栗本:研究内容をそのまま就職先でも活かそうという気はあまりなくて……。就職活動では、鉄道分野から広告業界まで、研究とは関係のないところばかり受けていましたね。その中で、日立の企業理念である「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」というキーワードが気になって選考に進み、その過程で、しっかりと自社技術で社会に貢献している雰囲気がいいなと感じて入社に至りました。
大きな裁量のもと、現場の最前線で磨かれた突破力

――Hitachi Cloudの拡販部隊以降の業務変遷も教えてください。
栗本:それまではプリセールスエンジニアだったわけですが、拡販部隊を離れた2016年からは、インフラを実際に作っていく側になりました。まずはプロジェクトの中でも比較的小規模の案件について、PLやPMとして担当していきました。その後、2018年に担当した生保企業さまのプライベートクラウド構築を皮切りに、大規模クラウド基盤導入プロジェクトを任されるようになりました。あの時はVMwareで、300VMほどの大規模環境でしたね。自分は物理サーバ側の担当だったのですが、物理サーバは70台ぐらいあったと思います。
――70台……かなりの量ですね。拡販からSIに移って、ギャップは相当大きかったのではないでしょうか?
栗本:まず、役割とプロジェクトへの関わり方が全然違いましたね。拡販のときは前述の通り受注までの対応が多かったのですが、SI案件はプライムで、構築から運用まで担っていく役割に変わりました。案件数も、拡販のときは同時並行で10ほどの案件を担当していましたが、SI側に来てからは当面、1案件ごとにアサインされていきました。あと、何よりも、知識が全然追いついていませんでした。分からないことだらけで辛いことも多かったのですが、分からないなりになんとか成立させていく過程は面白くもありましたね。
――役職としての変遷も教えてください。
栗本:2016年から6年ほどは担当としてPLやPMに従事し、その後、2022年に技師(主任職)に昇格し、さらにその2年後の2024年に現在の主任技師、つまりは課長職に上がりました。
――昇格に伴い、プロジェクトとの向き合い方は変わりましたか?
栗本:2024年までは、良い意味で大きな裁量を任せていただいていたという感覚が強いです。上司の信頼のもと、日立側のフロントに立ち、パートナーの皆さんと力を合わせて、主体的にプロジェクトを動かしていくスタイルでした。
――日立のような大きな企業だとプロパーもチームで動くイメージが強いのですが、そうでもなかったわけですね。2024年に課長になってからはいかがですか?
栗本:昇格直後もプレイングマネージャーの側面が強く、複数のプロジェクトで先頭に立っていました。ただ、今年に入ったくらいから、メンバーが単独でM365案件の対応ができるようになってきて、ようやく課長になり始めたという印象です。
最終的な設計判断等はまだ私が行うこともありますが、メンバーが自立して案件対応を担えるまでに成長してきてくれていますね。
お客さまと日立、双方の思いを理解して納得できる落としどころを設定する

――現在のチーム構成を教えてください。
栗本:全員新卒です。メンバーは4人で、そのうち3人は別部署から異動してきています。
――マネジメントとして気をつけていることはいかがでしょう?
栗本:お客さまの思いと自分たちの思いが、必ずしも一致しないシーンがあります。それは、お客さまの要件を満たすためには技術的難易度が高いケースもありますし、単純にコストとの兼ね合いでお受けできないケースもあります。
そうした場面で、双方の思いを理解して納得できる落としどころを設定する。そこをしっかりとコーディネートできるような判断軸を、メンバーに養ってもらうようにしています。
――ぜひ、具体例も教えてください。
栗本:例えばM365に付随するサードパーティー製品を扱ったケースでは、お客さまと一緒に改善要望を作り、ベンダー側に連携するといったことを行いました。ただ、仕様上すべて取り込めるわけではありませんし、ベンダー側も「ここまでしかできません」となることが多いです。そのような場合、「交渉したがこういう結果でした」と説明しつつ、運用設計で回避策を作り元の要件に近い形を満たしにいく、という形で対応しています。
――日立側としての事情と、お客さま側の要望がぶつかることもありますか?
栗本:もちろんあります。例えば自治体さまの案件で、リリースまでの期間が半年もなく、5ヵ月ほどで職員さんに触ってもらう必要がありました。
要件定義と基本設定を1ヵ月で終わらせる、といったスピード感でしたが、お客さまからは「これもやりたい、あれもやりたい」とたくさんのご要望をいただいていました。一方で、リリース期日との兼ね合いから現実的な落としどころを見出す必要があったので、「それは初回リリースから外して、1ヵ月後に提供しましょう」といった調整をしました。
「任せる」ことの難しさと、そこから得た確かな気づき

――これまでのマネジメント経験から、いまにつながっている学びを教えてください。
栗本:お客さまのご期待に応えることはもちろん大事です。そして、プロジェクトメンバーが最高のパフォーマンスを発揮し続けられる環境も大事です。
ですので、必要な場面では私が先頭に立って、お客さまとの合意形成を担うようにしています。プレイングの時期が長かったので、難しい調整事項は極力自分に集約して、メンバーがパフォーマンスを発揮できる環境を整えていきたいと思っています。
――そのような考えに至ったのは、前例のない領域で自ら最適解を見出していく必要があった経験もあってのことでしょうか?
栗本:そうかもしれませんね。パートナーさんとプロジェクトを進める中で、日立としての判断が求められた際には、自分が窓口となって一貫した方針を示すことを大切にしてきました。
会社として前例のないプロジェクトを扱うことも多かったものですから。
ただ、当時の上長に言わせれば、また異なる育成上の意図や期待があったのではないかと。あえて詳細を指示しすぎず裁量を大きくゆだねる、「戦略的な信頼の置き方」だったと思います。なんでもできる方でしたから。
――戦略的な信頼の置き方、ですか。今の時代でも通用するのでしょうか?
栗本:実は初めて部下を持った時に、「戦略的な信頼の置き方」を実践してみたのですが、メンバーが求めるサポート量との間にギャップが生じてしまいました。マッチするかどうかはメンバーによると思うので、いまは人を見ながらやるようにしています。
――サポート量のギャップですか。
栗本:異動で来たメンバーはそれぞれの文化と技術を持っていますが、必ずしもメンバーの得意領域ではなく、クラウドやM365を任される。
そのような中である程度自由に任せて様子を見ようとしたところ、進め方に対する戸惑いのサインを出してくれるメンバーがいました。
もともとネットワーク側にいた当時27歳のメンバーなのですが、「1回やってみな」というアプローチをしたら「これは無理です」と正直に言ってくれました。課長になった直後のことです。
そこから「どうしたらいいか」を一緒に考えるようになり、伝え方を修正して、そこでの学びを踏まえて他のメンバーにも応用していきました。逆にメンバーに育ててもらっている節もありますね。
――いいメンバーに恵まれていますね。ちなみに、先ほど「会社として前例のない案件を扱うことが多かった」とおっしゃっていましたが、希望されてそうなっていたのですか?
栗本:たまたまだと思います。定石が確立されておらず難易度の高い案件が回ってきたのだと思います。
――その経験は、いまの育成にどう影響していますか?
栗本:前例のない案件だと、最初はなかなかうまくいかないことも多いので、ネガティブに感じる人もいるのではと思います。ですが「とりあえずやってみよう」という姿勢は育てたいと考えており、一緒に検証環境を触りながら確認したりしています。最初から「できない」と突っぱねるより、やってみて、できなかったなら「この理由でできなかった」と言える方が、お客さまの信頼も得られますからね。
重厚なプロセスが担保する、お客さまへの「絶対的な安心感」

――お話を伺っていると、これまで私がお話を伺ってきた日立の他のチームとは少し毛色が違う印象です。他のチームとの連携は発生しますか?
栗本:たしかに、横を見ると色が違いますね(笑)
実は今年度からクラウドチームと合体して、同じ課の中に課長が3名いて、自分がその1人になりました。他チームは日立らしいやり方が強く、だからこそ、自分たちのやり方を共有して巻き込んでいくのが今年度のテーマと捉えています。明示的に言われているわけではありませんが、会社的にもそのような期待はあると思います。
――「日立らしいやり方」とは、具体的にどういうことでしょうか?
栗本:安全・品質が第一、という考え方に沿ったアプローチです。それらを担保するために多角的な検討や重層的な確認プロセスを敷くため、設計変更や投資判断に相応の準備期間を要する場合もあります。決してネガティブな意味ではなく、安全・品質が第一という姿勢で物事を進める姿勢は、日立らしいなと思います。
――スピードが求められるフェーズもあると思うのですが、日立の品質管理はかなり重厚なのですね。
栗本:もちろん、時勢に応じてアップデートすべき点もあると感じていますが、かなり重厚ですね。大まかな流れとしては、まず品質計画を作って、各フェーズゲートで過去案件での経験から蓄積されたチェック項目をクリアしていきます。
また、品質保証部門のチェックも入ります。
メンバーの中には、このフェーズゲートのプロセスに苦戦される方も少なくない印象ですね。
基本はウォーターフォールのプロセスなので、アジャイルの手法は適用しづらいのですが、良くも悪くもしっかりとしていて、お客さまには安心してもらえます。
――なるほど。その「安心感」こそが、日立が選ばれ続ける理由なのですね。
栗本:プロセスは煩雑な部分もありますが、自分としてはそこが日立らしいところであり、大事なところだとも考えています。日立の品質が高い、というお客さまからの評価は、ルールがあるからこそ実現できていると強く感じています。
――栗本さんが得意とされる「前例のない領域へ挑む姿勢」と、今おっしゃった「日立らしいやり方」は、一見すると異なるようにも感じますが、実際にはどのように両立されてきたのでしょうか。
栗本:そこは、エビデンスを提示することで進めています。金額的な回収の見立てや、事前検証で動作できている証拠、ベンダーサポート含むプロジェクトの体制など、リスクは決して高くはないことの根拠を積み上げ、納得感を持って判断いただける状態をつくることを意識しています。
評価されたのは「数字」より「巻き込み力」

――ここまでのお話を踏まえると、日立の中でも開拓者と言いますか、攻めの姿勢が際立っている印象を受けたのですが、担当→主任→課長へと順調にキャリアを積まれてきているのは、どこを評価されたと捉えていますか?
栗本:課長昇格前に上長に言われたのは「巻き込み力」でした。新しいことをやる上で、知見を持っている方を探して声をかけていき、前例のない状況でも前に進むように巻き込む。巻き込んで終わりではなく、関わるメンバー全員にとってプラスになるよう道筋を作る。そこが評価されたと聞いています。
――もともとそのようなタイプだったのでしょうか?
栗本:社会人になってから身についた部分が大きいと思います。おそらく、早い段階から裁量を任される環境だったこともあり、自ら考え、周囲を巻き込みながら進める力が自然と身についたと感じています。
――日立の評価基準についても教えてください。定量的な成果と、定性的な動きと、どのようなバランスで評価が行われるのでしょうか?
栗本:一般的には、先ほどお伝えしたような日立のプロセスに合うかどうか、が大事だと思います。納得してやっていけるか、というのはしっかりと見られるでしょう。
そのような観点で、技術力はもちろん、それ以上に大きな案件でPM/PLでマネジメントしてきたという経験軸も大事になります。
その前提はありつつも、採用面談においては、技術に対して思いがある方を採用したいと考えています。最近面談した中でいいなと思った方は、Azureのある機能に関してプレビュー段階から検証して、大きな企業に導入された方です。
――いいですね!栗本さんのような方ですね。
栗本:プレビュー段階から開拓して、Microsoft側にも一度仕様を変えてもらったりと、結構チャレンジングなことをされていました。自分としては、そのようなところがあると強いなと思います。
――栗本さんから見て、日立の強みはどこだと感じますか?
栗本:何か困ったことがあったら、社内もしくはグループ会社のどこかに、必ず解決してくれるメンバーがいるということだと思います。
新人や入社したばかりの方だと、誰が何に強みを持っているのかを探すのが大変かもしれませんが、案件共有の場もありますし、プロジェクト成果報告のような形で失敗から得た学びも含めて共有される時間もあるので、いくらでもキャッチアップできると思います。
――今、日立に入社して経験を積むことの意義についても教えてください。
栗本:人それぞれだとは思いますが、大規模案件をメインでやる企業でありながら、新技術を学ぶ環境がしっかりとできているというのは、1つの強みであり、やりがいのあるフェーズだと思います。
少しずつですが、「日立=家電」というイメージから「AIやDXもやっている」に変わってきているとも感じますからね。
――チームとしての中長期的なビジョンも教えてください。
栗本:一人ひとりが高い意欲を持ち、前向きに挑戦し続けられるチームでありたいと思っています。やりたいことはやらせてあげたいですし、自分のやりたい方向性を見つけて、仕事も人生の楽しみの1つにしてほしいと思っています。
――そのようなチームに向けて、どのような方と一緒に働きたいですか?
栗本:自律的に考え行動できる方には、心地よく感じられる環境だと思います。
特に最近は、日立としてAIやDXの文脈で多角的な施策を展開している状況ですが、良くも悪くも、安定志向の方が多いとも感じます。
変化の大きい時代において、自らリスクを取って新しい領域に挑戦できる人は、やはり強い存在感を放ちますし、そういった人財は今後さらに必要になると思います。
会社としての戦い方もこれから変わっていくでしょうから、社内ルールも自分たちで変えていこうというマインドのある方も大事ですね。あとは、巻き込み力がある方も、前例のない挑戦が多いチームにおいては重要になると思っています。いずれにしても、広い視点でコミュニケーションの取れるメンバーがいいですね。
――ありがとうございます。それでは最後に、Qiita読者の皆さまへメッセージをお願いします。
栗本:結構自由にお話ししましたが、自分のような者もいるので、ぜひ自分の好きなこと/モチベーションが高まることをやっていただきたいなと思います。
編集後記
今回の取材で個人的に最もテンションが上がったのは、栗本さんが語ってくれた「日立らしいやり方」のリアルでした。大規模プロジェクトにおけるフェーズゲートや品質保証プロセスは、外から見ると“重たい仕組み”に見えることもあります。しかし、過去の膨大な案件から蓄積された知見が、具体的なチェック項目や承認プロセスとして体系化されている話を聞くと、「これを実直に進められる組織はたしかにめちゃくちゃ強いな」とも感じました。大規模案件が好きなエンジニアほど、この仕組みの奥行きにワクワクするのではないでしょうか。
取材/文:長岡 武司
撮影:平舘 平
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