伴走支援に強いMSOL Digitalで、レガシー変革を加速させるAIエージェントを開発する意義

生成AIの進化によって、コードを書けること自体の価値は相対的に低下し、代わりに、技術をいかに事業創造へとつなげるか、どのように組織を巻き込みながら価値を高めていくかが、これからのエンジニアに問われるようになりました。

そうした変化の中、DXの伴走/実行支援に強みを持つ株式会社MSOL Digital(以下、MSOL Digital)では、ITコンサルティング/マネジメント・技術の伴走支援にとどまらず、自社プロダクトの立ち上げにも取り組んでいます。

今回お話を伺ったのは、いずれもキャリア採用で入社し、現在はレガシーシステムの可視化・理解を支援するAIエージェントプロダクトの立ち上げに携わるおふたりです。

起業、SIer、訪問営業、SES、AIエンジニア…。異なるバックグラウンドを持つ彼らが、なぜMSOL Digitalに転職し、どのような手応えを感じながら働いているのか。プロダクト開発のリアルや、他部署との連携、キャリア観の変化まで、ざっくばらんに聞きました。

プロフィール

草分 大地(くさわけ だいち)
株式会社MSOL Digital
Digital Technology Dept. DX Division
大学卒業後、金融系SIer、実家の自営業での訪問営業などを経験したのち、SES企業へ入社して、エンタメ系プロジェクトや公共系・Javaシステムのマイグレーション案件などに従事。その後フリーランスを経て、2025年11月にMSOL Digitalへ入社。自社プロダクトであるレガシートランスフォーメーション(LX)用AIエージェントサービスのプロダクトマーケティングマネージャー(PMM)として、提案活動や展示会企画などのマーケティング業務全般およびプロジェクト推進に従事している。
中村 凌(なかむら りょう)
株式会社MSOL Digital
Digital Technology Dept. アシスタントマネージャー
高専在学中に起業し、ノーコードを用いた学生向けの教育事業を約3年間展開。その後、印刷業の子会社へ入社し、2023年よりAIエンジニアとして社内システムへのAI活用などを推進。2025年2月にMSOL DigitalへITコンサルタントとして入社。現在は、自社プロダクトであるレガシートランスフォーメーション(LX)用AIエージェントサービスのプロダクトマネージャー(PdM)として、企画およびシステム開発に従事している。

異なるキャリアを歩んできた2人が、MSOL Digitalにたどり着くまで

―― はじめに、おふたりのこれまでのご経歴を教えてください。

中村:もともと東京都内の高専に通っていました。3年生のころ、ちょうどコロナ禍に入って時間ができたこともあり、プログラミングに触れたり、学生向けのハッカソンに出たりしていました。思った以上に上手くいったことがきっかけで起業し、学生向けのノーコード教育事業を3年ほどやっていました。

その後は印刷会社の子会社のIT部門に転職しました。親会社は協会の月刊誌や書道関係の雑誌などを手がけており、私はそのデジタル物販のシステムなどに携わっていました。既存のシステムへのAI活用を主に担当して、2023年頃からは実質的にAI担当として動いていました。

―― 起業から印刷業のIT部門、そしてAIエンジニアへと、かなりユニークなキャリアですね。

中村:起業経験者は転職で不利になると言われることも多かったですが、その会社は「若いうちから挑戦してきた人に、社内変革を担ってほしい」と考えてくれており、その言葉に惹かれて入社を決めました。結果的に、そこでAI活用の実務を深く経験できたのは大きかったですね。その後、2025年2月にMSOL Digitalへ転職し、現在に至ります。

―― 草分さんは、どのようなキャリアを歩んでこられたのでしょうか?

草分:大学では情報系を学んでいて、2019年に金融系のSIerに入社しました。ですが正直なところ、学生時代のアルバイトよりも給料が低いと感じてしまい、早めの段階で退職しました。その後は実家の自営業を1年半ほど手伝いました。小売業で、お客さまである高齢の方のところに訪問営業に行く仕事です。

そのうち、やはりITの仕事に戻りたいと思い、SES企業に入社しました。最初はQAリーダーとして入り、その後はエンタメ系プロジェクト、公共系のマイグレーション案件、Javaからの移行案件などを経験し、要件定義から総合テストまで幅広く関わりました。その会社を退職したあと、短期間のフリーランスを経て、2025年11月にMSOL Digitalへ入社しました。

―― かなり現場寄りの経験を積まれてきたんですね。

草分:そうですね。特にレガシー寄りの案件や、移行案件の現場は、それなりに見てきたと思います。

―― 現在、MSOL Digitalではどんなことをされているのでしょうか?

中村:2人とも同じ自社プロダクト開発チームに所属して、私はPdM(プロダクトマネージャー)を担当しています。

草分:私はPMM(プロダクトマーケティングマネージャー)として、営業資料の作成や提案支援、展示会の企画、プロダクトのロゴ制作まで、売れる仕組みづくりに関して幅広く担当しています。

―― チームの規模も教えてください。

中村:チーム全体では5名です。私と草分さんに加えて、新卒エンジニアが1名、スクラムマスターが1名、派遣の開発エンジニアが1名という構成です。

―― スタートアップのような雰囲気ですね。

草分:実際、かなり近いと思います。デザイナーが専任でいるわけでもないので、ロゴや展示会ブースの見せ方なども、みんなで「ああでもない、こうでもない」と議論しながら決めています。

レガシーシステムの理解を支援するAIエージェント「Mill」

―― 現在、開発を進めているプロダクトについて教えてください。

中村:出発点は、社内で掲げていた「LX(レガシートランスフォーメーション)」の考え方です。最初は、COBOLやJavaなどの古い言語で構築されたシステムを、AIを使ってマイグレーションを支援するサービスを考えていました。

ですが、国内のマイグレーション事例を調べていくと、失敗しているケースの多くが実は移行技術そのものよりも、その前段階でつまずいていると見えてきました。つまり、システムを持っている企業側が「自社システムが何をしているのか」を十分に把握できていないのです。すると、発注を受けたベンダー側も中身をきちんと理解しないまま進めてしまい、あとから「聞いていた話と違う」となる。このようなケースがかなり多いと感じています。

―― システムのブラックボックス化は、レガシーシステムの根深い問題ですよね…

中村:それならば、マイグレーションそのものではなく、その一歩手前にある自社システムの理解・可視化を進め、引き継ぎや運用に耐えられる状態にするよう特化したAIサービスのほうが、現場には必要なのではないかと考えました。そこで現在開発しているのが、システム運用AIエージェント「Mill」です。

中村:一般的な解析ツールと同様に、ソースコードから基本設計書や詳細設計書のたたきを生成したり、機能ごとのロジックやデータフローを解析したりできます。それだけではなく、システム担当者からの「他部署ではどのような機能を使っているのか」「この機能は何のために存在するのか」といった問いにも答えられるような仕組みをめざしています。

例えば、自分の部署では一部の機能しか使っていなくても、システム全体では別の部門が別の使い方をしていることがありますよね。そのようなシステムの全体像まで含めて支援したいと考えています。

―― 利用実績も教えてください。

中村:2026年1月にリリースしたばかりですが、現在運用しているケースでお伝えすると、社内システムや受託開発の保守を担っている開発部門に導入いただいています。特に定期バッチのような、規模はそこまで大きくないけれど止められないシステムを抱えていて、変更が発生するたびに空いている人をアサインするような現場にフィットしています。

そのような現場では、往々にして該当システムに明るくない方が対応することも少なくありません。当サービスであらかじめ設計書や概要を整備しておけば、中身を把握する時間を短縮できます。システムを触ったことのない人へ説明するための中間支援ツールとしても使えますし、引き継ぎ支援の用途でも期待されています。

プロダクトをゼロから立ち上げるフェーズへのやりがい

―― プロダクト開発を進めるにあたって、特に大変だったことや苦労したことを教えてください。

中村:AIで解析対象とするシステムが非常に大規模である場合が、結構大変です。私自身、これまでのキャリアではスタートアップや比較的小規模な組織での経験が中心だったため、これほど大きなシステムを本格的に扱うのは、このプロジェクトがほぼ初めてでした。

理想としては、解析対象のファイルや関連ファイルをすべてAIに入力できるのが望ましいのですが、実際にはそうはいきません。1つの関数が外部ファイルを呼び出し、その呼び出し先がさらに別のファイルを参照する、といった形で依存関係が連鎖的に広がっていくためです。しかも、それらの関係性が必ずしも明確で分かりやすいとは限りません。このような依存関係をどのように追跡し、どのように分割してAIに理解させるかについて、今も苦労しています。

―― コンテキストウィンドウが大きくなった現在でも、なお難しさが残るのですね。

中村:はい。単純な文字数の制約だけではなく、むしろ構造的な難しさのほうが大きいと感じています。どの文脈を与えれば適切に推論できるのか、どの順序で情報を読ませるべきかという設計が非常に重要です。

加えて、コードだけでは読み取れない背景情報の扱いも難しい点です。このシステムではヒアリング機能を重視しており、ソースコード解析に加えて、「なぜこの実装になったのか」「どのような意思決定の結果としてこの仕様に至ったのか」など、業務上の背景まで蓄積したいと考えています。

そのため、AIが人に質問し、その回答を業務ロジックとして蓄積していく仕組みを取り入れています。ここで難しいのが、必ずしも適切な相手に質問できるとは限らない点です。例えば、プロトタイプ段階の経緯を知らないメンバーに確認すると、誤った内容ではないものの、情報としては十分ではない回答になることがあります。そうすると、AIの中に不完全な前提が蓄積されてしまう可能性があります。

―― システム上の問題というより、組織内で知識が分散していることによる難しさとも言えそうですね。

中村:まさにその通りです。理想としては、AI自身が「この問いは誰に聞くべきか」を判断できる状態をめざしたいと考えています。社員のように適切な相手を見極めながら動けるかどうかが、次の大きな課題だと感じています。

―― 草分さんは、入社前後で業務内容がガラッと変わられた印象です。そのあたりはいかがでしょうか?

草分:おっしゃる通り、入社前に想定していた業務との間には一定のギャップがありました。もともとはITコンサルタントやPMOのような役割をイメージしていましたが、実際にはプロダクトづくり全体に関わる、いわば何でも担う立場に近い状況です。開発に限らず、商標取得、社内外の合意形成、営業資料の準備、展示会の企画など、対応すべき領域が非常に広い点に難しさを感じています。

また、デリバリーや環境構築の属人化を解消していく必要性も感じており、そのためにはチーム外のメンバーも巻き込みながら体制を整えていくことが大事だと捉えています。これと並行してマーケティングや提案活動も進める必要があるため、タスクの配分や優先順位付けについては、引き続き試行錯誤しているところです。

―― 大変そうですが、充実もしていそうですね。

草分:はい。プロダクトをゼロから立ち上げるフェーズにここまで深く関われていることに対して、非常にやりがいを感じています。実家が自営業で、ゼロから事業を形にしていく過程を間近で見てきたこともあり、自分自身もそのようなフェーズに関わりたいという思いは以前からありました。今後は、このプロダクトに限らず、チームとして継続的に新たなプロダクトを生み出し、事業として成長させていけるような状態をつくっていければと考えています。

2人ともが惹かれた「人」と「伴走」の力

―― MSOL Digitalへの入社を決めた理由を教えてください。

草分:最終的には、人ですね。社長と最終面接をした際に、AIが加速する中で「この仕事はいらなくなるのではないか」「どう生き残るべきか」といった自分の不安を率直に話したんです。そうしたらすごく共感してくださって、「社長とここまで話しやすいんだ」と感じたことが大きかったです。

もともと開発職に強くこだわっていたわけではなく、ノーコードやAIがどんどんと進化する中で、単に作るだけの仕事は代替されていくとも思っていました。それよりもお客さまとすり合わせをする力や、価値を届ける力を鍛えられる環境を探していたので、その意味でも、人で選んだ結果が今につながっているという感覚があります。

中村:私は前職で、営業や販促、導入後のアフターフォローに課題を感じていました。良いプロダクトでも、現場で使いこなされなければ意味がありません。問い合わせが電話中心で、開発側がオペレーション画面を想像しながらサポートすることも多く、「もっと良い伴走の仕方があるのではないか」とずっと考えていました。

そこで次はITコンサルとして、お客さまの現場に入りながら伴走支援を学びたいと考えて転職活動をしていました。もともとは、前職で身につけた0から1を作る力に、伴走支援の力を加えて、次のステップでは両方できるようになりたいと思っていました。ですがMSOL Digitalに入ってみると、この会社自体が伴走支援に強い。だったら、その中で自分がプロダクトを作れば、ここで両方できるじゃないか、と考えました。結果的には、想定していたよりもずっといい形で目的に近づけていると感じます。

―― 他部署との関わりについても教えてください。

中村:下の図にある通り、私たちが所属するデジタルテクノロジー部門の他に、アジャイルやコーポレートITガバナンス、情報システム部門向けコンサルティングの部署などがあります。日常的な関わりについては、例えば展示会の支援をする場合には、アジャイルの部署は以前から展示会出展の経験が豊富なので、ブースづくりや運営の知見、備品の貸し出しなどで助けてもらっています。

草分:今後の構想としても、アジャイルの部署と組めたら良いなと思っていますね。

中村:私たちが扱うレガシーシステムの現場では、「今のやり方を変えたくない」という反発が起きやすいです。いきなりAIや新しいツールを持ち込むと、どうしても拒否感が出てしまいます。アジャイル部隊は、新しい動き方を現場に根づかせることに強みを持っているので、上手に連携できればと考えています。

―― 単にツールを入れるだけではなく、変化の受け皿も一緒につくる必要があるのですね。

中村:そうですね。レガシートランスフォーメーションに強い私たちと、変革の伴走に強いアジャイル部隊が組み合わされば、よりシームレスな提案ができると考えています。

入社して見えた、MSOL Digitalならではの働き方と評価

―― 入社してから、技術力やキャリアに対する考え方に変化はありましたか?

中村:最終的にめざしている方向は、実はあまり変わっていません。ただ、将来的に東京を出て、岐阜に行きたいとずっと思っています。

―― そうなんですね! なぜそのような目標を定めているのでしょうか?

中村:祖父母が岐阜市で果物屋をやっていて、商店街が衰退していく様子を見てきました。ITの力で、そういう地方の暮らしや商いを支えたい、そこに関わっていきたいという気持ちがあります。

あと、教育にも強い関心があります。もともと起業時代の商材がノーコード教育だったのも偶然ではありません。学生や社会人向けのIT教育にはずっと課題を感じています。そのためにも、今はしっかり実績を積んで、スキルを身につける時期だと捉えています。

草分:自分も、中長期で見れば実家の事業に関わっていきたい気持ちがあります。そのためにも、今ここでプロダクトを立ち上げて軌道に乗せる経験ができているのはすごく大きいです。

―― おふたりが感じている、会社としての魅力も教えてください。

草分:まず、なんといっても人が良いです。縦割りが強すぎず、上の方たちにも意見を言いやすいですし、違っていればきちんと軌道修正してくれます。若い人も「会社に何か貢献したい」という意欲が強くて、チーム外でも手伝ってくれることがあります。助け合いが自然に起きる環境が魅力だと感じています。

中村:私は、有志の活動が活発な点が印象的です。生成AIの社内活用ガイドラインを考えるワーキンググループや、社内セミナーを後押しする取り組みなど、業務の外側から会社を良くしようとする動き、トップダウンだけでなく下からの提案が成立しやすい会社だと感じています。

あと、評価制度も独特です。自分で評価会議に出て「これだけ頑張りました」とアピールするのではなく、別部署のレポーターが第三者視点で実績を整理し、評価会議で伝えてくれます。自己アピールの上手さではなく、事実ベースで見てもらえるのは良い仕組みだと思います。

―― 技術力の評価についてはどうでしょうか?

中村:面白いのは、技術力そのものだけでは評価されにくいことですね。もちろん、技術力は前提として求められます。その上で何が評価されるかというと、「自社のプロダクトや事業をどう良くするかを考えて提案できたかどうか」なんです。

書籍出版やイベント登壇のように、社外発信を通じて会社のブランド向上につながる行動もきちんと評価されます。ですので、純粋に技術を磨くことだけに集中したい人よりも、技術を使ってプロダクトやビジネスを前に進めたい人のほうが合っていると思います。

―― ありがとうございます。それでは最後に、Qiita読者の皆さまへのメッセージをお願いします。

中村:自分は中途採用の面接にも関わっているのですが、個人的に一緒に働きたいのは、「ここが不便だ」「ここはおかしい」と、身の回りの違和感をきちんと言葉にできる人です。我慢して飲み込むのではなく、問題を見つけて、自分で直そうと動ける人ですね。スタートアップ気質と言えるかもしれませんが、そのような人と働けるとすごく楽しいと思います。

草分:仕事に熱意を持っている人と働きたいです。中村さんのように若くても本気で仕事に向き合っている人と一緒だと、自分も刺激を受けます。なんとなく働くのではなく、何かを良くしたい、前に進みたいと思っている人には、すごく面白い環境だと思います。

プロダクト開発チームの皆さまと一緒に

編集後記

インタビューで語られていた「技術力だけでは評価されない」という点は、今の時代を象徴しているように感じました。つまり、コードを読む/理解する力は重要であり続ける一方で、単に書けるだけでは価値になりにくい。むしろ、その技術をどう事業に接続し、どう周囲を巻き込んで実装するかが問われています。今回のおふたりのキャリアも、その変化を体現していると感じました。

取材/文:長岡 武司
撮影:大森 光太郎
提供:株式会社MSOL Digital

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