二重ルーターは本当に悪なのか? MAP-E環境で“二重に見えるだけ”の構成を検証してみた
Discussion
■はじめに
私の家は南北に長く、快適に利用するにはメッシュWi-Fiが必須です。
そのため TP-Link Archer BE805 を親機としたメッシュ構成を組んでいますが、BE805は仕様上「ルーターモード」でないとメッシュが組めません。
結果として構成は、図のように物理的二重ルーター。
しかし、一般には「二重ルーターは速度低下や不安定化を招く」と言われ、ISPからも同様の指摘を受けました。実際にいくつか構成変更も試しましたが、うまくいきませんでした。
一方で「通常の使用では問題ない」とする情報もあります。ただし “どの構成なら問題ないのか” を具体的に説明した記事は非常に少ない と感じています。
そこで今回、自宅ネットワークの実挙動を調査し、二重ルーターが問題にならない条件を整理しました。私の理解が正しいかどうか、皆さんの意見もいただければ幸いです。

■ ネットワーク構成の概要
• 回線:ドコモ光 10G
• ISP:OCN(バーチャルコネクト / MAP-E)
• 機器構成:
ONU → XG-100NE(HGW) → TP-Link Archer BE805(親機) → BE7200(子機)
• メッシュ構成:BE805 をルーターモードで使用(仕様上必須)
• BE805の設定:
- IPv4=動的IP接続
- IPv6=パススルー
■ これまでに試したこと(いずれも失敗)
● HGWのルーター機能をオフにする
• フレッツジョイント解除(OCNに依頼)
• XG-100NEのIPv4をOFF
→ いずれも IPv4サイトにアクセス不能。
MAP-Eセッションが成立しなくなるため。
● TP-Linkから提案された静的NAT→ 10Gプランはポート開放不可が仕様(MAP-Eの特性)。そのため実現不可能。
→行き詰まったものの、そもそも「この構成は本当に不具合を起こすのか?」と疑問をもち、実際の通信経路を観測することにしました。
■ 観測結果と考察。図をご参照下さい。
① IPv4通信の挙動
ipconfig /all の結果:
• デフォルトゲートウェイ:192.168.0.1(BE805)
• DHCPサーバー:BE805
つまり、PCはBE805を唯一のルーターとして認識しています。
さらに、MAP-Eのカプセル化処理も BE805 が実行しており、IPv4パケットはすべて BE805 経由で外部へ出ていきます。
一方、XG-100NE は:
• MAP-E のために必要な IPv6 セッション・設定情報を提供
• しかし IPv4 NAT もルーティングも行っていない
つまり、役割は以下のように分離しています:
• XG-100NE:MAP-Eの前提条件(IPv6側の要素)だけ提供する装置
• BE805:IPv4ルーター(NAT) + MAP-Eカプセル化を実施する装置
➡ IPv4経路は完全に「単一ルーター」と同じ経路
物理的には二重ルーターでも、機能的には一重ルーターになっている、という結論に至りました。
② IPv6通信の挙動
IPv6デフォルトゲートウェイ:fe80::… (リンクローカルアドレス)
GUA:2400:4153:…
DNSサフィックス:flets-west.jp
これらは すべてXG-100NEからRA(Router Advertisement)とDHCPv6で配布された情報 です。
BE805は:
• IPv6を遮断せず、
• RA / DHCPv6 をそのままLAN端末へ透過(パススルー)
➡ IPv6経路は「HGW → ISP」に一直線。
➡ IPv4とは役割が完全に分離されている。

③ 通信の安定性・速度
10G回線にして3か月、
一度も接続が不安定になったことはありません。
速度測定も以下の通り高水準:
• Fast.com:最大 8.9Gbps
• Speedtest.net(Ookla):8.0Gbps
• みんなのスピードテスト:6.1Gbps
➡ 二重ルーターによる速度低下・不安定化は発生していない

■ おわりに
以上より、私の構成では 「二重ルーターでも問題なし」 と判断しています。
ただし、同様の構成を取る場合は:
• HGWがIPv4 NATをしないこと
• 下位ルーターがMAP-Eに対応していること
• IPv6 RAを透過すること
• DHCPが二重化しないこと
といった条件が必要になると考えています。
同じような構成を試された方、MAP-E環境でのRA透過に詳しい方がいれば、ぜひ意見をお聞かせください。