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海外と日本のエンジニアの様々な比較

Last updated at Posted at 2020-10-29

IT企業に勤めて25年ほどがたち、その間日本で12年、アメリカに5年、ドイツで8年ほどになります。現在もドイツでシステムの運用系のエンジニアをしています。
同じ会社内で移動しているので、他の企業との比較や業界全体のことは書けませんが、どのような経験ができるかなど紹介していきます。

これからエンジニアを目指す方や、海外転職を検討されている方の参考になればと思います。
所感は個人的な経験によるもので一般的にと言うわけではないので、参考程度にとらえてください。

言語について

どの国いても基本的には英語が公用語のようになります。勤めている会社が多くの国に支店を持っているのでたとえ日本が勤務地でも、外国ベースの同僚と仕事をすることがほとんどで、日本語を使うことのほうが少なかったです。
これは企業によりますが、プロジェクトを海外の企業に外注とかしている場合でもあるのではないでしょうか。

アメリカは英語が公用語なのですが、だからと言って全員が映画で聞くようなきれいな英語を話すわけではなく、様々な国の人がその母国語独特のアクセントをもって普通に話しています。慣れてくるとそのうち英語を聞いて母国語が何かわかるようになってくるものです。

ドイツでも基本的に仕事を一緒にする相手が、色々な国の同僚とリモートでやり取りをするので、ドイツ語が仕事で必要なことはありません。こちらでも、大概の人はそれなりのアクセントのある英語で話しています。例えばドイツ語圏の英語はインド圏出身の人の英語とはかなり発音が違ったりして慣れるまでちょっとかかりますが、しばらくするとそれぞれの癖もわかってくるものです。場所がヨーロッパなので、最近は東欧圏の国でITエンジニアの発展が進んでいるようで、よく東欧圏の人とも仕事をするようになりました。

プロジェクトの進め方

一番印象に残っているのはそれぞれの国でどのようにプロジェクトを進めるかです。
これはあるイベントのスタッフとして参加した時の経験で、今でもその時の経験がよく生きていることです。

ドイツはいきなりスタート

ドイツで参加して一番驚いたのは、イベント当日の役割分担を当日の朝にみんなで集まって”さあどうする?”って話し合いを始めた時です。イベントはあと数時間で始まるのに、ちょっと計画性がなさ過ぎなような。
うちの会社だけかもしれませんが、あまり先を見通して何かを計画するってことはないようです。それでも最終的にはどうにかなっているので、決めたことの実行力は相当のようです。

アメリカは計画を立てる日まで計画

同様のイベントをアメリカで参加した時は、リーダーの人がちゃんとMicrosoft Projectなどを使って計画書を作り、それぞれの役割分担もちゃんと決まっていて、誰が何をするかスタッフ全員が分かるようになっていました。おまけに計画書には計画書を作る日まで数日組まれており、きっちり計画を立てている様子がよくわかります。ただ、それが計画通り実行されるかというと別の話で、それぞれのタスクがちゃんと完了したかっていうのは、少し注意をして確認が重要になったりします。

日本は残業してでも完成度を上げる

日本にいると一見当たり前のようなことですが、海外から特にドイツから見るとこれはあり得ません。そもそも残業しないし、過度な残業が必要な仕事を任せることもありません。言い換えればマネージャーがちゃんとチームの仕事量を把握してそれを超えるようなことはさせないってこととです。
特に日本ではよく100%を目指すがために多くの残業が必要になるとこともありますね。それは80%-90%を達成するにはそれ程難しくなくても残りの10%は最初の90%を達成するより時間がかかることもあります。
社内のプロジェクトだととりあえず90%スタートで残りの10%はほかの仕事との優先度と兼ね合いで進めるというようにすると残業が減るかもしれません。
ちなみに自分が参加したアメリカやドイツでのプロジェクトで100%の完成度でスタートってことは一度もありません。

仕事と休暇

残業

ドイツもアメリカも基本的には残業はしません。仕事が残っていても関係なく定時になれば、”じゃあまた明日”って感じで帰っていきます。
これは一般社員だけでなく、マネージャーたちも同じでこっちが残業していると”早く帰れ”って感じでプレッシャーをかけてきます。自分は日本で仕事をした経験もあって少々の残業することもあるのですが、それでも日本で仕事をした時とは比較にならないぐらい少なく、月にどれだけ忙しくても20時間程度。これも年に一回あるがどうかで普段は10時間以下です。
ドイツと日本では7-8時間の時差があるのですが、こちらの同僚がよく日本人の同僚はこっちでランチが終わっても(つまり日本では夜9時ごろです)まだオンラインで仕事しているけどこれは普通なのかって聞かれることがあります。
ちなみにドイツで夜9時まで残っていると夜警に会ったり、最後の一人になったりします。

金曜日

今は基本的には在宅勤務ですが、そうでなかった時も金曜日は半分休みのようなもので、出社するのも半数以下。多くの人が在宅勤務して3時ぐらいになるとオフラインになっていきます。理屈は”水曜と木曜数時間余分に働いたから、今日は短くしないとワークライフバランスが良くない”といった感じ。

休暇

これは印象ですが休暇取得率はドイツが圧倒的に高く、アメリカ、日本の順と思われます。企業にもよりますがドイツでは30日ほど有給があり、皆さん基本的には完全消化しています。特に夏休みとクリスマス休暇に長期でとる傾向があり、自分の同僚にも毎年8月に3週間いなくなる人もたくさんいます。
アメリカでは多くの人が感謝祭の時期はいなくなり、クリスマスも同様で休みを取ります。ただ、ヨーロッパの人のように3週間みたいな取り方はあまりされないようです。

これだけ休みを取って仕事がちゃんと回るのか聞かれるのですが、担当者が休暇中だと待つしかないっていうのが現状です。周りの人も”彼は明日から休暇だから2週間待って”となり”明日から休暇だから今日中に”ってことはありません。休暇の数日前からすでに、メールの自動返信で休暇だから新しい依頼は受け付けませんってこともあります。

雇用形態やキャリアなど

ジョブセキュリティー

雇用形態はそれぞれの国の法律の関係でかなり違います。日本での正規社員というのは労働基準法である程度保護されていたりします。これがアメリカになると、かなり簡素なもので保護といったものはほとんどなく、会社にもよるでしょうがまともに雇用契約書みたいなものもないことがあります。雇用も"At Will"(任意)の雇用・就業といったことが普通のようです。基本的には会社はいつでも理由なく解雇にできるし、社員もいつでも理由なく退職できるといったことです。アメリカで仕事をしていた時は何度も見てきて、隣に座っていた同僚が次の日から突然いなくなることも普通にあります。これは当然引き継ぎとかもないので、退社した社員が何をどこまで進めていたかというのが全く分からずプロジェクトが止まってしまうこともあります。
ドイツの場合は日本よりも法律の保護が強く、契約書も細部まで記載されていて数十枚になることもあります。ドイツには従業員代表制というのがあり、社員から選ばれた代表者が会社の経営にある程度関与できたりします。これにより社員に不利益になるようなことは事前に従業員代表と合意をしないと進められなかったり、従業員代表が会社を相手に訴訟を起こして変更を迫ることもあります。

このようなことから、会社が事業再編成などをする場合おのずと人員整理、給与交渉などがしやすい国と、難しい国とで社員に対する影響にも差が出てくるようです。

生涯現役エンジニア

キャリアについては日本では今まで、会社に勤務し会社の方針によって転勤や部署変更などあったりするのが普通かと思います。
アメリカもドイツも会社に勤務するのですが、それよりも特定のポジションに応募して採用され、突然ほかの部署や職種に異動ってことはありません。自分も周りを見ているとエンジニアは特にその傾向が強く、マネージャーなどにならず生涯現役エンジニアという人も多くいます。
マネージャーになっていないので平社員というわけでもなく、マネージャーよりも収入の多いエンジニアも十分あり得ます。優秀なエンジニアが必ずしも優秀な上司になれるとは限りませんので、自分に向いた職種を選べれるという点では出世以外にも違う選択肢があるのはエンジニアにとって魅力的な点かもしれません。

福利厚生

ドイツと日本はともに国民皆保険制度のようなものがあるので、健康保険に加入し社員と会社が一定の割合で保険料を払ったりしていますが、アメリカになるとこれは大きく異なります。アメリカのニュースでもよく保険のことが取り上げられますが、アメリカには皆保険はなく社員が入る保険も会社によって異なります。それにより保障の内容も異なったりしていて、自分もアメリカで眼科に行ったときに”ITの会社は眼科系の保障はさすがに優れているなぁ”と感心されたりしました。

通勤手当なども国によって異なります。日本では都市圏に勤める人は公共交通機関を使って通勤し、通勤手当を受け取るというのが多いと思われます。アメリカではこのような通勤手当というもは存在していませんでした。基本的に交通費は自己負担で、会社が支給するといったことはありませんでした。
ドイツではカンパニーカー制度があり多くの会社で採用されているようです。社用車とは違い、社員が自分で車を選択しその値段に応じて給料から毎月いくらか支払うといった感じです。会社によって違うようですが、ガソリン代、保険代、メンテナンス費用などすべて込みで月数百ユーロといった感じです。業界によっては一切社員負担はなしというところもあるようです。この制度のいいところは、その車をプライベートで使っても問題なかったり、家族が使ってもよかったりします。ですので、陸続きのヨーロッパをカンパニーカーで旅行するというのもごく普通に行われています。この場合は交通費は基本的になしで旅行ができたりします。

納税

日本で会社員の場合、多くは年末調整をして終了というの一般的ではないでしょうか。アメリカもドイツもこのような簡易では済まされず、全員が確定申告をしないといけません。慣れてくるとすぐにできるようにはなるのですが、それぞれの国の税制を勉強して何が経費として計上されて何が課税対象となるかなど知っておかなければなりません。
例えば先ほどの通勤費ですが、日本では非課税で経費扱いできますがアメリカではこれは経費として認められず所得から控除はできません。
ドイツではカンパニーカーを私用で使った場合は給与としてみなされ課税対象になったりします。
それぞれの国の税制を学ぶとどの様にして国が成り立っているのか勉強もできるのですが、それでも最初はかなり面倒で多くの時間がかかりました。

最後に

3か国でそれぞれ印象に残っているとを取り上げてみました。いかがでしたでしょうか。
個人の経験によるものですので、同じドイツとアメリカで全く違った経験をした方もいると思われます。一例として参考にしていただければと思います。
日本人でも英語の勉強をしてエンジニアの技術を身に着ければ、十分海外で仕事をしていくこともできると思います。
海外で仕事をすることが必ずしもベストとは言えませんが、日本でできない経験ができて見識が広がることは間違いなしです。
興味のある方は挑戦されてみてはいかがでしょうか。

追記1

多くの方にご覧いただき、ありがとうございます。もう少し細かな経験をまとめた記事を書いてい見ました。よろしければ、こちらもご覧下さい
海外と日本のエンジニアの様々な比較2 - 海外だから経験できたであろうこと

追記2

海外にいる同僚と仕事をしている場合や、自分が海外で仕事をしている場合、エンジニアにとって時差やタイムゾーンが結構な影響を持っています。そのあたりをすこしまとめてみました。
時差とタイムゾーンがシステムとエンジニアに与える影響

追記3

1年間ドイツで完全に在宅勤務をしていました。そのあたりの経験をまとめてみました。
ドイツで1年間完全テレワークをしてみて

追記4

海外でエンジニアになるまでにどのような事を経験したかなどまとめてみました。
海外でエンジニアになるまで

追記5

海外でエンジニアをしていると、良いこともそうでないことも色々とあります。そのあたりをご紹介します。
海外でエンジニアをして良かった事とそうでなかった事

追記6

2年間ドイツで完全に在宅勤務をしていました。そのあたりの経験をまとめてみました。
ドイツで2年間完全テレワークをしてみて

追記7

海外でエンジニアとして仕事をするための英語勉強の勧めを書いてみました。
海外で(国内でも)エンジニアとして成長するための英語勉強のすすめ

追記8

3年間ドイツで完全に在宅勤務をしていました。この1年で在宅勤務やリモートワークで変化のあったことをまとめてみました。
ドイツで3年間完全テレワークをしてみて

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