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【地図を考える③】ある地図ができるまで

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Last updated at Posted at 2025-09-26

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背景と目的

今までに無かった、ある地図ができたとしよう。
その地図ができるまでを整理してみる。

1. 大きな流れ

1.1. 関心

地図のタネは、見たい"地"を持ってしまった何かだろう。

上野千鶴子は、何かをひろげる方法として、下記のようにテキストのツリーを辿っていく流れを示す。

先行研究について知りたければ、いちばんかんたんなのは、あなたが影響を受けたり、違和感を覚えたり、反発したりしたテキストに記載されている参考文献を芋づる式にトレースしていうという方法があります。
いったん、「参考文献」の山に踏みいったら、その先にさらに別の論文の「参考文献」が登場します。そのテキストとテキストの織りなす網の目をたどっていけば、どこに何があり、何がないか、が見えてきます。
情報生産者になる」 P52

qiita_map_10.png

関心のあることを辿っていくと、どこかで関心のない所に到達する。
それが、"ある地図"の端になる。

1.2. 関連

「本を読む本」に4つの読書のレベルがあり、最上級の"シントピカル読書"がある。
シントピカル=synoptical、
synopticは、"要約の", "総観の"の意味。
synopticalは、一つの物事を複数の方向から見るという意味で使われている。

「本を読む本」に"シントピカル読書"の5つの段階を示している。

01 関連箇所を見つけること
02 著者と折り合いをつけさせる
03 質問を明確にすること
04 論点を定めること
05 主題についての論考を分析すること
「本を読む本」P227~P233

"論点を定めること"が、地図の"図"に生まれる軸にあたる。
例えば、変化を論点に含む場合、時間や違いが座標に組み込まれる。
"論点"が定まると領域の限界範囲が定義できるようになる。

qiita_map_11.png

1.3. 仮配置

若林芳樹は、「デジタル社会の地図の読み方 作り方」で地図のあり方を示す。

地図研究家のブライアン・ハーレーが「地図とは内面の心的表象と物理的な現実世界をつなぐ架け橋である」と述べたように、遠く離れた世界を知り、遠い過去の場所を想像するとき、地図が仲立ちとなって人と世界をつなぐ役割を果たすのです。
「デジタル社会の地図の読み方 作り方」P11

2つ以上の軸の上で、集まった関連の要素を置いていく。
論点からはみ出るものは、軸に納まらず、"地図"の外にはじかれる。

1.4. 初回の確定

一通り手に入った情報から仮配置が決まり、相関が適切だと判断できたら、
初回の"ある地図"が確定する。

"ある地図"は、心的表象にあった関心と関連が、現実世界に表出したものとなる。
そこから、新しい関心と問いが生まれる。

2. 気になった地図

2.1. ガードナー・パイプサイクル(可視性 x 時間)

特定の技術領域にあるサービスや製品を地図にしたものになる。

https://www.floor.nl/ebiz/gartnershypecycle.htmより
GartnerHypeCycle.gif

段階 段階名(日本語) 段階名(英語) 内容・特徴
1 技術の黎明期 Innovation Trigger 新技術が登場し、初期の注目を集める。実用化は未確定。
2 過度な期待のピーク期 Peak of Inflated Expectations メディアや業界の過剰な期待が集中。成功事例と失敗事例が混在。
3 幻滅期 Trough of Disillusionment 技術の限界や課題が顕在化し、関心が急落。淘汰が始まる。
4 啓発期 Slope of Enlightenment 実用的な理解が進み、現実的な応用が始まる。
5 生産性の安定期 Plateau of Productivity 技術が成熟し、広く普及。ROIが明確になり、標準化が進む。

2段階が、最も世の中で目立つ状態である。
その後、大きな課題が世に出て注目されなくなり、課題が解決され安定に向かう。

2.2. いきがい:IKIGAI (志向 x 活動)

日本の独特の概念である"いきがい"を図にしたものである。

Ikigai-JP.png

2.3. 真善美と知情意 (価値 x 行為)

価値と行為のそれぞれの観点で3軸での地図である。
真善美は価値であり、知情意は行為である。

qiita_map_12.png

古代ギリシャのプラトンが理想を真善美で示したと言われている。
真(truth)=真実であること。
善(goodness)=道徳的、倫理的にあうこと。
美(beauty)=調和していること、とした。

18世紀の哲学者カントは、人間のはたらきとして、知情意を示した。
知=知る力
情=感じる力
意=行動する力

京都大学の平成11年学部入学式で当時の総長がこう言っている。

繰り返しになりますが、これからの社会においては真だけでは不十分であり、善を実践する努力をしなければなりません。ただ何が真であるか、何が善であるかを判断する基準は簡単でなく、究極的に何によって判断するかと問われれば、それはその人のもつ美に対する鋭い感覚によると言わざるをえないのであります。そして美的直観を磨いている人の判断はまず間違わず、その実践は正しく、また社会に対して善をもたらすことになるでしょう。
"京都大学 平成11年 学部入学式"より

また、夏目漱石も「草枕」で行為の難しさを表現している。

智に働けば角が立つ。
情に棹させば流される。
意地を通せば窮屈だ。
"Globis:「知・情・意」の観点から仕事とキャリアを眺めよう"より

対峙する事態において、真(正しいこと)を知り、善(よいこと)を行う。
その基準は、自身の美による判断だろう。

2.4. ラカンのシェーマRSI (現実 x 想像)

精神科医のジャック・ラカンは、人の主体がどのように形成されるかを図式化した。
シェーマR、シェーマRSIという関連図がある。

qiita_map_14.png

アニメ"エヴァンゲリオン"の大きなテーマは、この構図をもとに構成されていると言われる。

9. リンク

URL

英ナビ:synoptic
Gartner:Hype Cycle Identifies Top AI Innovations in 2025
wikipedia:ハイプ・サイクル
wikipedia:生き甲斐
コトバンク:真善美
京都大学 平成11年 学部入学式
Globis:「知・情・意」の観点から仕事とキャリアを眺めよう
wikipedia:現実界・象徴界・想像界
wikipedia:ジャック・ラカン
note:chatgtpに聞いた、ジャック・ラカンのシェーマRにおける「a-a'」と「i-m」による四辺形が現実界を構成する意味
wikipedia:シニフィアンとシニフィエ
涙なしのジャック・ラカン

論文

千葉 雅也(2012).ガタリとドゥルーズの「分裂分析」における 「機械」と「切断」の概念.フランス哲学・思想研究,17巻.

書籍

上野 千鶴子(2018).情報生産者になる.筑摩書房.
若林芳樹(2022).デジタル社会の地図の読み方 作り方.筑摩書房.
J・モーティマー・アドラー, V・チャールズ・ドーレン, 外山 滋比古(訳), 槇 未知子(訳)(1997).本を読む本.講談社.
神谷美恵子(2004).生きがいについて――神谷美恵子コレクション.みすず書房.
Ken Mogi(2017).The Little Book of Ikigai: The secret Japanese way to live a happy and long life.Quercus.

変更履歴

2025/09/26 新規作成
2025/09/27 2.追加
2025/09/28 2.4.追加

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