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【つながりを考える⑥】余剰とアウトフロー

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Last updated at Posted at 2025-11-07

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背景と目的

余剰と自分を含めた他者視点のアウトフローを整理してみる。

1. 余剰のアウトフロー

1.1. 内村鑑三の「後世への最大遺物」

内村鑑三は、「後世への最大遺物」で人生で遺すべき4つの遺物を示した。

01 金(カネ)
02 事業
03 文筆
04 生き方そのもの

01~03は、前回で示した作品にあたる領域のものである。
04は、行為そのもの、その姿が遺物=アウトフローとなると示している。
三大宗教の開祖は、書物を残さなかったが、現世にその教えは残っている。
04の良い例だろう。

1.2. 日本の産業構造

下記図は、労働政策研究・研修機構:産業別就業者数の推移
の産業別の就業者数である。
スクリーンショット 2025-11-02 114348.png

1951年に一次産業の比率は、40%であったが、1981年に10%まで下がり、
2022年に3%まで下がっている。
100人の日本であった場合、3人程度で生産物=生命維持のINPUTを満たしている状態である。
2023年時点で、カロリーベースの自給率は38%、生産額ベースでは64%である。
カロリーベースの自給率を100%にするために、3倍必要だとしても、
100人中9人が一次産業に従事すれば、満たせると推測できる。

1.3. 作品に関わること

作品は、英語では"work, piece, creation"と言う。
作品を言いかえると、制作物、創作物、本、芝居、著作など。

現在では、労働者の90%以上が、直接は生命維持ではないことを生業としている。
そこで生み出されるモノゴトは、広い意味で作品ともいえる。

一方で、労働以外の領域で生み出されるモノゴトも多くなっている。
実物の創作(手芸、民芸、形をつくる)、デジタルの創作(音声、文字、動画)、
これらを組み合わせたものなどもある。

暮らしの中で必須ではない何かが足されることがある。
キャラ弁、らしさを示すストラップ、お気に入りの色や柄のアイテム。

1.4. 話すこと、聞くこと

ソクラテスや釈迦は、文字を残さなかったと言われている。
ソクラテスは”無知の知"を説き、自身は知らないモノとし、外に探求を求めた。
釈迦は、書物は知識であるが、智慧ではないとし、一部の切り取りを避けた。

話すことと聞くことは、合わせて行われる。
話すとき、その声を自身で聞いている。
また、聞いた他者の反応を見て、次の言葉を選ぶ。
その実践の一つ一つが、智慧につながるのだろう。

1.5. 行動すること

音楽には、休符という音を出さない記号がある。
釈迦が回答をしなかった問いがある。無記という。
止まる、答えない、動かないという行動も余剰ならではの可能性になる。

人間は、だれしもが、
動くこと、動かないこと、止まること、それぞれの行動を選べる。
余剰とは、選ぶことを楽しみ、動かないことを楽しむことだろう。

1.6. あること、いること

富士山の"フジ"は、不二であり、不死である。
大きなものを"宗"と言い、崇拝した。
崇は、山+宗である。

西田幾多郎は、宗教を「大きなものと一体となったとしたら」を起点に哲学をひろげた。
一緒にいる、一緒でいる。
不二とは、二つとない、二つではない。という意味である。

2. 出されたアウトフローからの影響

2.1. 生存率の向上

a) 運動エネルギー

18世紀に起こった産業革命の原動力は、蒸気機関である。
熱により蒸気をつくり、その蒸気を使い、回転する動力を手にした。

1馬力は、75Kgの物体を1秒間に1m持ち上げる力のことである。
人間は、0.14~約1馬力ある。(瞬間的には75kgを持ち上げることができる)
現代の自動車は、軽自動車で64馬力になる。

日常での動力として、人の100倍以上のエネルギーを手に入れた。
身体を動かすことが、健康のために必要となるほど身体の活動を減らしていった。
多くの活動では、身体ではなく道具が直接運動をしている。

b) 食べ物の生産

日本において、
1800年代は、栄養不良が原因での死亡率が高い。
1960年代には、栄養不良がほぼなくなった。

道具による運動エネルギーを用い、食べ物を十分な量まで生産していった。

c) ワクチンの発明と流通

1796年にイギリスのエドワード・ジェンナーがワクチンを開発した。
日本でも明治時代は年間数万人が、天然痘に発症していた。
ワクチンが流通し、
1980年にWHOにより、天然痘根絶宣言が発表された。

子どものためのワクチンの予防接種は15種類ほどあり、
乳児死亡率(1才まで)は、0.2%ほどまで低下している。

d) 高齢化

下記表は令和6年簡易生命表の概況より、
image.png

日本において、平成27年(2015年)に男女とも平均寿命が80才を越えた。
a~cの効果により、生存率が高くなり、生命としての機能の限界に近い寿命となってきている。
その結果として、令和になり平均寿命は若干低下している。

2.2. 機会

一次産業、二次産業のアウトフローにより、生命維持に必要なものが満たされている。
現在は、生命維持に必要ではないものに触れる機会が増えている。
多くは、本、広告、音楽、動画、アプリ、ゲームなど。

誰かのアウトフローに触れる機会がとても増えている。
それに伴い、依存という現象が起こっている。
ゲーム依存、動画視聴依存、SNS依存など。

2.3. 憧れと畏れ

日本には石の建造物がとても少ない。
建築に適した石が手に入りにくかったこと、地震が多く壊れやすい素材であることが考えられる。
その代わり、時間を考える②で示したように、式年遷宮という木材使いを新しくし続けるという形式が採用された。

永く残るものは、崇拝の対象になりえる。
世界遺産は、そのようなものと言える。
人は到達できそうなものに憧れ、到達できないものに畏れを抱く。

2.4. 推し(fan,bias)

身近な憧れの対象として、"推し"が使われている。
誰かのアウトフローや活動自体を支える活動で、関係性を築く行為といえるだろう。

9. リンク

URL

wikipedia:内村鑑三
wikipedia:ムハンマド・イブン=アブドゥッラーフ
wikipedia:イエス・キリスト
wikipedia:釈迦
weblio:作品の類語
wikipedia:産業
wikipedia:無記
「富士山」名前の由来
浄土宗大辞典:不二(ふに)
西田幾多郎『善の研究』における<宗教的要求>とは何か
wikipedia:産業革命
wikipedia:馬力
年次統計:死亡数
wikipedia:ワクチン
wikipedia:ペニシリン
wikipedia:世界遺産

論文

「推し」の心理構造に関する探索的研究

官公発行

労働政策研究・研修機構:産業別就業者数の推移
農林水産省:日本の食料自給率
人口統計資料集(2025年版)
厚生労働省:予防接種・ワクチン情報
厚生労働省:令和6年簡易生命表の概況

書籍

内村 鑑三(1897,1994).後世への最大遺物.青空文庫.
内村 鑑三(2011).後世への最大遺物・デンマルク国の話.岩波書店.
酒井 敏(2019).京大的アホがなぜ必要か カオスな世界の生存戦略.集英社.
千葉 雅也(2020).勉強の哲学 来たるべきバカのために 増補版.文藝春秋.

変更履歴

2025/11/07 新規作成
2025/11/12 2.追記

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