1.はじめに
本記事は、Azure 資格1および AWS 資格2の内容を体系的に整理した「マッピング表」です。
※2025年8月時点の最新情報に基づいて作成しています。
主に次のような方に向けて書いています。
- Azure 資格 または AWS 資格 のいずれかの取得を目指している方
- Azure 資格 と AWS 資格 の体系や試験制度を比較し、自身の学習戦略に活かしたい方
この記事を書いたきっかけは、Azure エンジニアとしてチーム内の若手 AWS エンジニアの方と資格の話をした際に、両資格の体系や試験制度の違いをうまく説明・理解できなかった経験によるものです。
Azure 資格・AWS 資格はともにクラウド市場を牽引する主要資格ですが、それぞれの資格構成や試験の仕組みには大きな違いがあり、比較しながら説明できる資料や情報が不足していると感じました。
そこで、両者の資格を実際に取得・学習してきた経験を踏まえ、Azure と AWS の資格体系・難易度・制度などの違いを整理したマッピング表を作成しました。
クラウドエンジニアとして、どちらの資格にも敬意を持ちつつ、両者の特徴をフラットに捉えられるよう意識しています。
本記事が、Azure と AWS エンジニア双方の理解を深め、スムーズに学習計画を立てる助けとなれば幸いです。
Azure 資格にフォーカスした記事はこちらです。よければご覧ください。
2.Azure ⇔ AWS 資格マッピングの全体像
まずは、Azure・AWS の資格体系を俯瞰できる「全体マッピング図」をご覧ください。
この図は、Azure と AWS の全資格をレベル別・分野別に整理し、体系的に比較したものです。
資格の位置づけやカバー領域を直感的に理解する手助けを目的に作成しています。
本図は、筆者が実際に資格を取得・調査した経験をもとに独自に作成したものであり、Microsoft および AWS が公式に示す対応関係ではありません。
あくまで資格体系を俯瞰・比較するための参考資料としてご活用ください。
2-1.資格レベルの共通点と違い
Azure・AWS の資格は、いずれも4つのレベルに分類されています。
レベル | Azure | AWS |
---|---|---|
初級 | Fundamentals | Foundational |
中級 | Associate | Associate |
上級 | Expert | Professional |
専門 | Specialty | Specialty |
名称に違いがありますが、構造自体は非常に類似しています。特に初学者にとっては、用語の違いが混乱を招きやすい点です。
資格取得を検討する際は、まず初級レベル(Fundamentals / Foundational)から始め、業務経験やスキルの深度に応じて上位資格を目指すのが一般的なステップです。
2-2.資格体系
試験体系には明確な設計思想の違いがあります。
Azure は「AZ」「AI」「DP」「SC」などの「シリーズ」が設けられており、分野単位にカテゴライズされています3。
一方で、AWS は Azure のような「シリーズ」はなく、「資格名自体がそのまま対象分野の領域や役割を表す」シンプルな体系です。
この違いにより、Azure はやや複雑ながら網羅性のある体系となっており、AWS は資格選びの直感的なわかりやすさに優れています。
2-3.資格数と選択観点
提供されている資格数は以下の通りです(2025年8月時点)。
- Azure 資格:全23資格
- AWS 資格:全12資格
Azure はより細分化された資格体系により、技術領域を網羅的にカバーする構成が特徴です。
対して AWS は、選択肢が絞られている分、目的に応じた資格を選びやすく、初学者にも取り組みやすい傾向があります。
2-3-1.試験情報の確認方法
資格の取得を検討する上では、各試験の概要や対象者、出題範囲をあらかじめ把握しておくことが非常に重要です。ここでも Azure と AWS では情報の提供形式に違いがあります。
-
Azure の場合
資格数が多いため、情報が分散しがちです。以下のような早見表を活用することで、試験情報の把握がスムーズになります。
-
AWS の場合
公式ページ に、資格の概要から学習教材まで一括で掲載されており、試験情報の把握がしやすくなっています。
これらの情報を活用することで、資格の比較や選定がスムーズに進み、学習の方向性を明確にすることができます。
3.資格制度
Azure 資格と AWS 資格は、レベル構造こそ似ているものの、受験料・試験時間・合格条件などの制度面には明確な違いがあります。
ここでは、それらの違いを一覧表に整理して比較しました(2025年8月時点)。
項目 | Azure 資格 | AWS 資格 |
---|---|---|
受験料 | ・Fundamentals:12,180円 ・Associate:20,300円 ・Expert:20,300円 ・Specialty:20,300円 (参照元4) |
・Foundational:15,000円 ・Associate:20,000円 ・Professional:40,000円 ・Specialty:40,000円 (参照元) |
試験時間 | 45分~120分(レベルにより異なる)5 ・Fundamentals:45分 ・Associate:100分 ・Expert:120分 ・Specialty:120分 (参照元4) |
90分~180分(レベル・試験により異なる) ・Foundational:90分 ・Associate:130分 ・Professional:180分 ・Specialty:170分6 (参照元4) |
受験方式 | オンライン/テストセンターの選択可 | オンライン/テストセンターの選択可 |
試験形式 | 選択問題+ケーススタディ+ドラッグ&ドロップなど多様(単一/複数回答) | 選択式(単一/複数回答) |
試験言語 | 日本語対応 | 日本語対応 |
合格基準 | 700点以上(参照元) | ・Foundational:700点以上 ・Associate:720点以上 ・Professional:750点以上 ・Specialty:750点以上 (参照元) |
試験結果通知 | 即時。メール通知あり(参照元) | 5営業日以内(参照元) ※筆者の経験上、受験時間によるが、受験日当日または翌日。メール通知あり |
有効期限 | ・Fundamentals:なし ・Associate、Expert、Specialty:1年間 ※更新方法:有効期限6ヶ月前より受験可能な無償の更新試験に合格(参照元) |
3年間 ※更新方法:原則、有償での再受験(参照元) |
再受験ポリシー | 初回不合格時:24時間で再受験可能。以降、14日間の待機が必要(参照元) | 不合格時:14日間の待機が必要(参照元 ) |
公式参考資料 | Microsoft Credentials | AWS Certification |
このように、Azure・AWS ともにオンライン受験が可能で受験環境は整っていますが、合格基準の明確さ・再受験のしやすさ・有効期限とその更新方法などに差がある点には注意が必要です。
ご自身の受験スタイルやスケジュール・更新方針なども考慮しながら、どちらの資格が適しているかを判断すると良いでしょう。
4.受験時の印象
ここでは筆者の実体験をもとに、Azure 資格と AWS 資格の試験設計や受験時の印象の違いを整理します。
同じクラウド資格でも、受験中に求められるスキルや思考プロセスには明確な違いがありました。
本章の内容は筆者自身の受験経験に基づく所感であり、Microsoft や AWS の公式見解ではありません。個人の見解(参考情報)としてご理解ください。
4-1.Azure 資格
Azure 資格の試験では、各試験において Microsoft Learn (公式ドキュメント)を参照可能です。
試験環境には制限付きのブラウザが用意され、Microsoft Learn のみアクセスが許可されています。
筆者の見解ですが、この仕様は単なる知識の暗記だけではなく、限られた時間内で、前提知識をもとに必要な情報を適切に検索・理解・判断する力を測ろうという設計意図が感じられます
問題形式も多様で、選択問題に加えて、ケーススタディ・ドラッグ&ドロップ・手順の並べ替えなどが出題されます。
実際には、Microsoft Learn も構造が複雑であるため、試験中に効率よく参照するには、あらかじめ基礎知識を身につけておくことが不可欠です。
筆者としては
Azure 資格は短時間で情報を調べ、判断し、アウトプットする「実務訓練」に近い試験
という感覚を持ちました。
実際に Azure では、日常業務でも Azure ドキュメントや Microsoft Learn を活用しながら設計や限られた時間内での対応を行う場面が多く、試験の設計と実務スタイルの近さを強く感じます。
4-2.AWS 資格
AWS 資格の試験では、受験中に公式ドキュメントなどを参照することができません。
そのため、事前の学習で出題範囲の内容を正確に理解し、知識として定着させておく必要があります。
問題形式は選択式(単一または複数回答)で構成されており、選択肢の差異がわかりづらい問題や、ややひっかけに近い設問も見られます。
筆者としては
AWS 資格は、クラウド全体を円滑に活用するための「基礎力」や「設計思考の型」を身につける訓練
という印象を受けました。
Azure のようにドキュメント参照が前提となる試験とは異なり、AWS 資格はあくまで知識ベースでの判断力が重視されます。
そのため、試験自体が現場スキルに直接的というよりも、基礎知識の体系化やロジック形成を促す設計だと感じました。
4-3.実体験に基づく比較まとめ
Azure 資格と AWS 資格の受験体験を通して感じた違いを、以下の表に整理しました。
クラウド資格という共通点はありつつも、求められる能力や試験スタイルには明確な違いがあります。
観点 | Azure 資格 | AWS 資格 |
---|---|---|
ドキュメント参照 | 試験中に Microsoft Learn を参照可能 | 試験中に参照不可 |
試験の設計意図 | 調査・判断・整理力をはかる「実務寄り」設計 | 知識の定着と読解力をはかる「基礎力」設計 |
業務との接続感 | 業務での対応プロセスと近い(調査・判断・アウトプット) | 実務の土台となる設計力・知識体系の訓練 |
求められる力 | 短時間での情報収集、根拠に基づく判断力 | 設計全体の理解、知識の定着、精緻な読解力 |
それぞれの試験は性質が異なるため、どちらが優れているというよりも、目的や現在のスキルに応じて選ぶことが重要だと感じました。
5.おわりに
本記事では、Azure 資格と AWS 資格の制度や試験設計の違いについて、筆者の経験をもとに整理しました。
それぞれに特徴的な設計思想や学習のアプローチがあり、両方を経験することで、クラウドエンジニアとしての視野やスキルの幅をより広げることができると感じています。
ご自身の目的や業務内容に合わせて資格を選び、うまく活用していく際の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
We Are Hiring!
-
正式名称(Microsoft Certifications Program = MCP)。本記事では「Azure 資格」と定義 ↩
-
正式名称(AWS 認定資格)。本記事では「AWS 資格」と定義 ↩
-
AZ-900(Azure のスタンダード試験)、AI-900(AI 試験)、DP-900(データベース試験)、SC-900(セキュリティ試験)など ↩
-
各試験の試験申し込みリンクより確認可能。記載リンクは Azure:AZ-900(Fundamentals)、AWS:CLF-C02(Cloud Practitioner) の一例 ↩ ↩2 ↩3
-
申し込み時は記載した試験時間に加え、同意書の確認時間を考慮した時間が表示される ↩
-
MLS-C01(Machine Learning)のみ180分 ↩