この記事はLITALICO Engineers Advent Calendar 2025 カレンダー1 の 12日目の記事です
こんにちは、コーポレートエンジニアリング部部長の藤田です。
昨年、ITサービス部ITサポートグループのマネージャを兼務することになった際に、以下の記事を書きました。
昨年の記事は、これから始まる組織運営への「仮説」と「決意」でした。
あれから1年。今回はその 「検証」と「結果(Before/After)」 について、少しほろ苦い反省も含めて共有したいと思います。
昨年の記事では、理想的なチームの状態として 「最強のチームには明確なリーダーがいないのかもしれません(全員がリーダーシップをとっている状態)」 という、釣りの合宿での体験談を書きました。
そこを目指して走った1年間、実際には何が起き、どう軌道修正(ピボット)したのか。組織改善に取り組む方の参考になれば幸いです。
1. 「分科会」の誤算とピボット(理想と現実)
昨年、私はチームの大玉課題を解決するために「分科会」という形式を導入しようとしました。メンバー主体で課題に取り組み、自走してもらうことが狙いでした。
直面した現実:経験の差とボトルネック
結論から言うと、この「分科会」は当初の想定通りにはうまく進めることができませんでした。
「何が課題か」まではメンバーも見えていました。しかし、いざそれをプロジェクトとして進めようとしたとき、壁にぶつかりました。
- 課題解決に向けた具体的なプロセスの設計
- タスクの管理手法
- チームへ情報共有するためのアウトプット(資料作成など)
これらのスキルにおいて、私とメンバーの経験の違いが、思った以上に大きいと気づきました。
「任せる」つもりで始めたものの、適切な難易度設定のチャレンジになっておらず、プロジェクトが進まないという状況に陥りました。
権限移譲をしてチームを加速させるつもりが、マネージャである私自身が作業を引き取ってしまい、最大のボトルネックになってしまうという、一番避けるべき事態になりかけました。
打った対策:方針のピボット
そこで私は、「いきなり自走してもらう(分科会)」という方針を諦め、アプローチを切り替えました。
- Before: 課題を渡し、解決策の立案から実行までを任せる
- After: 私が設計・方針をまとめ、推進しながらレクチャ・育成する
遠回りに見えるかもしれませんが、「まずは一緒に走りながら、課題解決の『型』や資料作成の『視点』を体感してもらう」フェーズが必要だと判断しました。
結果として、課題解決のスピードは私の可処分時間に依存することにはなりましたが、メンバーへの教育機会と割り切ることで、着実に前に進むことができるようになりました。
2. 「ミニ相談」がもたらした効果
一方で、週次・隔週で実施した「ミニ相談(1on1)」は非常に機能しました。
当初の目的であった「相互の知識共有」に加え、この場が 「目線合わせ」と「新しい武器の配布」 の場として定着しました。
具体的には以下の2点で成果がありました。
-
MBO目標の具体化
- 日々の業務課題を拾い上げながら、それを半期の目標(MBO)と接続することで、「組織が目指すこと」と「個人の動き」の整合性が取れるようになりました。
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生成AI活用の浸透
- 今年注力したかった生成AIの活用について、「使ってください」と号令をかけるだけでなく、このミニ相談の場で「こういう時にこう使うと便利だよ」と具体的なプロンプトや活用例をライブで見せるようにしました。
これにより、心理的な安全性を保ちつつ、組織としての技術レベルの底上げができたと感じています。
3. 定量化の前に必要だった「型の定着」
組織改善において「定量的な成果(数字)」は欠かせません。しかし、この1年で最も成果を感じているのは、数字そのものではなく、 「数字を測るための土台(型)ができたこと」 です。
以前の課題:情報の迷子
以前は、業務の記録やナレッジが属人化しており、どこに何が書かれているか、あるいは書かれていないかが不明確な状態でした。この状態で無理やりKPIを設定しても、正確な測定は不可能です。
取り組んだこと:「業務の型」の構築
そこで、徹底して以下のサイクルの定着に取り組みました。
- 依頼の管理
- 自身の判断と行動
- その結果共有
- 状態の記録
「どの情報を、どこに残すべきか」というルールを明確にし、迷わずに業務推進ができる状態を目指しました。
結果:測定可能な状態へ
ようやく、これらが業務の「型(文化)」として定着し始めました。
定量的な変化としてグラフをお見せするのは次のフェーズになりますが、「依頼〜判断〜記録」の一連のフローがログとして残るようになったことは、ITサポートという広範な業務を担うチームにとって大きな進歩です。
ナレッジ蓄積や状況共有に型が生まれたことで、新しく入る人へのオンボーディングコストも下がりますし、何より 「過去のログを見れば、チームの誰かが助けてくれる(過去の自分が助けになる)」 という安心感につながっています。
その結果として、ようやく定量的な捕捉が可能になってきたと感じています。
4. 「全員リーダー」への現在地
さて、昨年の記事で触れた「釣りの合宿のような、全員がリーダーシップをとっている状態」には近づけたでしょうか。
まだ「阿吽の呼吸で全てが回る」というレベルではありません。しかし、確実な変化の兆しはあります。
- 担当業務に対する責任感の明確な芽生え
- チーム内の有識者としての自発的な情報発信
- 「それは私がやります/知っています」という声掛け
目に見える派手なリーダーシップばかりではありませんが、各自が自分の持ち場を守りつつ、チーム全体のパフォーマンス(生産性や品質)を意識した行動が増えてきました。
「最強のチーム」への道はまだ半ばですが、土台となる信頼関係と業務フローは整ったと感じています。
まとめ
1年前、「分科会で権限移譲を進めよう」と意気込んでいた自分に対し、今の自分なら 「まずは業務の『型』を作り、アウトプットのスキルを横に並んで教えるところから始めよう」 とアドバイスするでしょう。
組織改善に特効薬はなく、特に「任せる」ためには、その前段階としての「型の共有」と「泥臭い並走」が必要不可欠であることを学んだ1年でした。
ようやく「計測可能な状態」というスタートラインに立つことができました。来年はこの土台の上に、定量的な改善と、本当の意味での「自走する組織」を積み上げていきたいと思います。
ITサービス部ITサポートグループで活躍する@sayazamuraiさんが、私たちのグループの一日の業務を書いてくれています。ぜひご覧ください🙆
明日は@ogifsさん、@tsunami273さん、@0c0さん、@m20inaさんの記事です🙆
お楽しみに!!