この記事について
子どもの創造性を育むために、AIはどこまで役に立つのでしょうか?
この疑問を解決するため、私たちはLINEアプリ「CookLab」を使った特別な料理イベントを開催しました。従来の「みんなで同じレシピを作る」形式ではなく、AIと一緒に自分だけのオリジナルレシピでお菓子作りに挑戦してもらいました。
結果として見えてきたのは、AIの可能性と同時に、その限界でした。AIは確かに創造性の「きっかけ」を提供できましたが、真の創造性支援には人間の指導者や温かい環境が不可欠でした。
この記事ではイベントの詳細な解説と結論に至った理由を書いてます。ぜひご覧ください。
料理教室での検証
子どもたちにとって料理は楽しい体験のひとつです。実際、多くの子どもが料理教室に通い、調理の基礎を学んでいます。
しかし、従来の料理教室には課題があります。先生1人に対して学生が多い環境では、どうしても「みんなで同じレシピを作る」形式になりがちです。安全性や効率を重視するあまり、子どもたちが自分なりの工夫を加える機会が限られてしまうのが現状でした。
そこで今回、S-labさんとコラボレーションし、夏休みに特別なイベントを開催しました。コンセプトは「AIと一緒に自分だけのレシピでお菓子作り体験!」です。
事前に決まったレシピをただ守るのではなく、子どもが自身でレシピを選び、AIの力を借りながら自分だけの工夫を加えて、オリジナルのお菓子を作ることを目指しました。

図1 皆がAIの力を借りて自分だけのお菓子を作るイメージ図 (Imagine4により生成)
CookForYouとは
CookForYou(旧: CookLab)は「料理を通して幸せに」をコンセプトに開発されたLINEアプリです。
「料理の楽しさは誰かの笑顔から生まれる」という考えのもと、単に美味しい料理を作るだけでなく、人に喜んでもらう・感動してもらうための機能を豊富に搭載しています。
- 栄養バランスの提案
- 家計に優しい節約レシピ
- オリジナルな工夫のサポート
- 美しい盛り付けの提案
- 美味しかったが集められるレポート共有機能
これらの機能により、料理を作る人、食べる人両方が幸せになれる体験を提供しています。
今回ご協力いただいたS-labさんについて
今回のイベントは、つくば・守谷で「科学実験×お菓子づくり」の独自STEAM教育を提供するS-lab(エス・ラボ)さんとの共催で実現しました。
図3:S-labについて HPより引用
S-labさんは「お菓子作りのワクワクドキドキを科学実験に結びつける」というユニークなアプローチが特徴です。例えば、かぼちゃのモンブランタルトを作りながら蛍光物質について学んだり、シフォンケーキを通して重力の仕組みを探究したりと、子どもたちが「好き」から自然に深い学びへと向かえる環境を提供されています。
今回のコラボレーションでは、S-labさんの「好きなことから導入して探究型学習へ」という教育哲学と、CookForYouの「AIを活用した創造的な料理体験」が完璧にマッチしました。お菓子作りを通じて子どもたちの創造性と自己肯定感を同時に育むという共通の価値観があったからこそ、素晴らしいイベントが実現できました。
当日の流れ
子どもにAIの紹介
図4:AI学習の仕組みを学ぶ子どもたち
ただ理論を説明するのではなく、実際にAI学習ソフトを使いながら:
- 「AIはどのようなシステムで学習しているのか」
- 「AIの回答が全て正しいわけではないので、最後は自分でしっかりと考えることが大切」
といった、AIを活用する上で重要な内容を、子どもでも理解できるよう実演を交えて講義ました。特にAIが間違える様子を実際に見せることで、「AIも完璧ではない」ことを体感してもらえました。
アプリをインストール
CookForYouはLINEアプリなので、Lineのアカウントを友だち追加するだけで、アプリの利用が可能になります。
体験してみたい方は以下のQRコードより追加してみてください。
図5:CookForYouを友だちに追加するためのQRコード
QRコードを読み取って友だち追加するだけ。アプリストアからのダウンロードも不要で、子どもたちも普段使っているLINEなので、操作に戸惑うこともありませんでした。
レシピを選ぶ
CookForYouの推薦機能を使って、子どもたちが作りたいお菓子を選びます。
図6:Line メッセージ上でAIによるレシピ提案画面
CookForYouは以下の情報を総合してパーソナライズされた提案をします:
- ユーザーの入力内容(「甘いお菓子が作りたい」など)
- 本日の季節・気温・天気
- 設定画面から設定した好みやアレルギー情報
この機能を利用することで、子どもたちは自分の作りたいスイーツを人に聞くかのように見つけることができました。
※開発者目線のコメントをすると、この推薦エンジンに限らず、アプリの運用費をなるべく抑える方針で実装してます (個人開発なので、運用費をなるべく抑えたいのが理由です)。運用費を抑えながらも推薦エンジンを作る話はこちらで紹介してます。
レシピの登録
選んだレシピをCookForYouに登録すると、AIが自動で解析してくれます。
図7:実際のアプリの画面のスクリーンショット。レシピ解析結果
図7のようにAIが提供してくれる情報:
- 盛り付け画像提案: そのレシピに最適な美しい盛り付け方をAIが画像で提案
- 栄養素情報: レシピに載っていない栄養価も推測して表示
- 料理のコツ: レシピには書かれていない細かなテクニック
- 材料の量のまとめ: 工程ごとに必要な材料を整理
✨️レシピの工夫を考える ✨️
ここが今回のイベントのハイライトです。
図8:CookForYouで行える、レシピについての相談
AIが生成した美しい盛り付け画像を見た子どもたちは「こんな風に作りたい!でも、もっと自分らしくしたい」と考え始めました。CookForYouのAIに相談機能を使って:
- 「もっと見栄えを良くするにするには?」
- 「簡単に工夫する方法はありますか?」
- 「残った素材で新しいスイーツを作りたい」
といった相談を重ね、自分なりの工夫のアイデアを膨らませていきました。
ただし、AIだけでは限界もありました。子どもたちの創造的なアイデアを具体的な形にするには、S-labスタッフの先生方の豊富な経験と洞察力が不可欠でした。この点については後ほど詳しく振り返ります。
買い物に出かける
工夫したレシピが決まったら、いよいよ買い物です! CookForYouにはレシピの材料から買い物リストを作成する機能があり、その機能を利用して、買い物すべきものをまとめました。
図9:AI生成の買い物リスト
CookForYouの特徴的な点として、買い物リスト機能は単なる材料の羅列ではありません。AIが自動で:
- 乳製品グループ(牛乳、バター、チーズなど)
- 果物グループ(いちご、バナナ、レモンなど)
- 調味料グループ(砂糖、塩、バニラエッセンスなど)
のように、売り場ごとにまとめて表示してくれます。
おかげで店内を行ったり来たりすることなく、スムーズに買い物を完了できました。子どもたちも「迷子にならなかった!」と喜んでいました。
作る
いよいよ調理開始です!
S-labスタッフさん (白衣)のきめ細かなサポートのもと、子どもたちはそれぞれの工夫を加えながらお菓子作りに取り組みました。
AIの提案をベースにしながらも、「ここにもう少し色を加えたい」「形を変えてみたい」といった子どもならではのアイデアが次々と生まれました。
発表
完成したお菓子を持って、保護者を含めたみんなの前で発表タイム!
図12:作品発表の様子
驚くことに、子どもたちはAIで生成された盛り付け画像とほぼ同様の見た目のスイーツを作ることができました。それぞれが加えた工夫により、AIの提案を超える個性的で美しい作品が完成していました。
AIエンジニアとしての教訓と学び
このイベントを通じて、AIプロダクト開発者として重要な気づきを得ました。
子どもたちの評価から見えたもの
子どもたちはイベントに対して非常にポジティブな評価をしてくれました。しかし興味深いことに、感想の中にAIが良いから楽しかった!といったコメントはほぼありませんでした。
代わりに聞かれたのは:
- 「いろんな工夫ができて楽しかった」
- 「自分だけのお菓子が作れて嬉しかった」
- 「スイカを手で潰す工夫が楽しかった」
等々
つまり、子どもたちはAIを使ったことによる楽しさよりも、自分で工夫したことによる達成感を感じていたのです。
AIプロダクトの本質
この結果から、AIプロダクトにとって本当に大切なことが見えてきた様に感じます。
昨今主流の「AIの凄さを前面に押し出すプロダクト」ではなく、ユーザーにAIを使っている実感がないほど、スムーズにAIがユーザーの目的達成をサポートするプロダクトこそが理想的だということです。
最高のAI体験とは、ユーザーが「AIを使った」ではなく「自分でできた」と感じられるものなのかもしれません。
AIだけでは完結しない創造性支援
当初は「AIで自分なりの工夫をサポートする」ことを目指していましたが、実際にはAIだけでは限界がありました。
AIは確かに創造性のきっかけを作ることができました。しかし:
- 子どもの背中を押す
- より具体的な工夫の仕方を提案する
- 安全に実現する方法を教える
- 初めての工夫を失敗させることなく、成功に導く
これらはS-labスタッフの皆さんの豊富な経験と教育への情熱なくしては実現できませんでした。
子どもの創造性のきっかけを潰さず、最後まで形にできたのはスタッフの皆さんのおかげです。
予想外の副産物:親の喜び
図15:我が子の発表を見守る親の様子
イベント終了後、多くの親御さんから嬉しいコメントをいただきました:
「子どもが自分で作りたいものを選んで、材料を自分で買って、工夫まで加えて料理をする姿を見て、本当に成長を感じました」
これは最初から想定していた効果ではありませんでしたが、親にとって子どもの主体性と創造性の成長を目の当たりにできる貴重な機会となったようです。
結論
「AIが子どもの料理の創造性を上げられるのか?」
この問いに対する答えは「きっかけ作りはできる。しかし、それだけでは不十分」です。
AIは子どもの創造性を刺激するきっかけを提供できました。美しい盛り付け提案、材料の組み合わせアイデア、工夫のヒントなど、子どもたちの想像力を掻き立てる材料をたくさん提供できました。
しかし本質的には、AIだけでなく:
- 子どもの背中を押し、最後まで形にしてくれる経験豊富な指導者
- 子どもの成長を見守り、挑戦を応援してくれる家族
- 失敗を恐れず試行錯誤できる安全な環境
これらがあって初めて、真の創造性支援が実現するのだと実感しました。
テクノロジーは素晴らしいツールです。しかし、人と人とのつながり、経験に基づく指導、温かい見守りがあってこそ、その真価を発揮するのだということを、子どもたちから教えてもらいました。
Press Release
このイベントの成果に多くのメディアの皆様が注目してくださり、25件もの媒体に取り上げていただきました👏。
主な掲載メディアとして、PR TIMESの記事を貼ります。 AIを活用した子ども向け料理イベント開催
良ければ見てください。
多くの方にこの取り組みを知っていただけたことで、「AIと教育」「子どもの創造性支援」といったテーマに対する関心の高さを実感しています。
お問い合わせ
CookForYouに関するお問い合わせ、イベントの詳細についてのご質問、コラボレーションのご相談などは、以下からお気軽にお問い合わせください。 (私が連絡に気が付きづらいため、複数媒体に連絡していただけると幸いです。)
x: https://twitter.com/Yoooongtae
facebook: https://www.facebook.com/yongtaih1
email: yong723.enjoy.everything@gmail.com
また、CookForYouは、料理好きの方々が簡単にレシピを共有し、お気に入りのレシピを保存できるLINE Bot + LIFFアプリです。
主な機能:
- レシピの検索、解析
- レシピの相談
- 盛り付け例の画像提案
- セール品で作れるレシピの提案
等、料理を楽しめる様々な機能があります。
以下のQRコードまたはリンクから、LINEの公式アカウントを友だち追加して、体験してみてください!

以下のURLからも追加可能です












