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カンファレンス・研修などの学びをふりかえるフレームワークの提案:フラクタル

Last updated at Posted at 2019-01-14

はじめに

今回は、カンファレンス・研修など、多くの学びを得た場について、あとで自分/自分たちでふりかえるための手法を提案します。
このふりかえり手法を発案するきっかけとなったものは以下の二つの出来事です。

対象とねらい

想定シーン
 勉強会・カンファレンス・研修などの「学び」をメインとしたイベントをふりかえる際

対象者
以下のいずれか

  • 一人
  • 同一の共通体験を受けた人たちの集まり

ねらい

  • 一人の場合
    • 学習を深化させ、深いレベルでの定着をする
    • 学びを仕事に活かすためのアクションプランの作成
    • outputの作成時に、自身の根源となる学びを書き出し、outputを未来にふりかえったときの思い出しのキーとする。
    • outputを未来にふりかえったとき、自身の成長を実感するための材料とする
  • 複数人の場合
    • 学習を深化・共有し、学びを多角的な観点でとらえ、メタ的な学びを引き出す
    • 参加したチームやグループなどが組織へと学びを還元するための情報源を作成する(場合によってはこのふりかえりのoutputそのものが還元するための資料になりうる)
    • outputの作成時に、共通体験の根源となる学びを書き出し、人に学びや熱量を伝えるためのキーとする
    • outputを未来にふりかえったときの思い出しのキーとする
    • outputを未来にふりかえったときの自分たちの成長を実感するための材料とする

手法の概要

image.png

勉強会・カンファレンス・研修などの学びを、必要な範囲で必要な分だけふりかえりを行います(Feedback Loop)。そして、そのふりかえりの結果を必要に応じてoutputのために再度見直しを行います(Output Cycle)。

Feedback Loop

個別の粒度ごとに、どんな学びがあったか、どんなアクションを起こしたいかというふりかえりを行います。
ふりかえりの粒度は以下のとおりです。

  • イベント:カンファレンスの1セッションや、研修の1テーマなど。また、人とある話題について話したり、といった話題が切り替わるタイミングごとに「イベント」と定義する。
  • 日:1日ごと。
  • 全体:勉強会・カンファレンス・研修などの最初から終わりまで。

ふりかえりを行うことにより、そのときの学びが掘り起こされ、学びの深化と記憶の定着が行われます。
全体のふりかえりをするだけではなく、小さい粒度のふりかえりを徐々に大きな粒度へと変化させていくことにより、学びが具体化かつ局所的なものから、抽象的かつ包括的なメタ的な学びへと変化していきます。

ふりかえりを行うタイミングは、イベントごと、日ごと、全体の終了後は問いません。
また、どのイベント・日をふりかえりするかはふりかえる対象者の判断にゆだねます。
特に重要だと感じたイベントや、日に対してふりかえりを行うという選択をしてもよいでしょう。
ただし、全体でのふりかえりは必ず行います。
自身・自分たちに無理のない範囲で、楽しくやれる範囲でふりかえりを行うとよいでしょう。

Output Cycle

ふりかえりを行った結果を、「文字」または「図」にして書き起こしてoutputします。
outputの粒度はFeedback Loopと同様ですが、必ずしも1つのFeedbackにつき1つのoutputを出さなければならないわけではありません。
必要だと思う粒度でoutputを出していきます。ただし、全体でのoutputは必ず行います。

文字や図に、自身の学びやアクションを書き起こすことにより、書き起こすプロセスの中で学びが再度反芻され、学習の転移が強化されます。また、より大きな粒度へと繰り返しアクションを出していくことにより、複数のアクションが結びつき、より具体的なアクションが生み出されたり、ビジョンのような大きな目的を見つけるきっかけにもなります。

必要な時間

Feedback Loop

一人の場合も、複数人の場合も変わりません。

  • イベント:15分 * イベント数
  • 日:15分 * 日数
  • 全体:15分

たとえば、Regional Scrum Gathering Tokyo 2019(RSGT2019)における私のイベント数では

  • イベント:15分 * 34 = 510分
  • 日:15分 * 3 = 45分
  • 全体:15分
    の最大計570分です。
    (実際は180分程度で終わっています)

※RSGT2019のイベント数が異常なだけであり、通常の3日程度のカンファレンス・研修なら120~240分程度でしょう。

Output Cycle

これはどんなアウトプットをするかにもよります。
ブログ形式なのか、TwitterやFacebookによる投稿なのか、PowerPointなどによる発表資料なのか。
粒度の細かいサイクル(イベント・日)であれば、TwitterやFacebookのようなライトなoutput、
粒度の大きいサイクル(日・全体)であれば、ブログやスライドにまとめるとよいでしょう。

ふりかえりの流れ

image.png

一人でふりかえりをする場合と、複数人とでふりかえりをする場合で若干異なる部分はありますが、基本的には同じ流れです。
複数人の場合のみの進め方は図のなかで()を記載しています。

1. 場作り

勉強会・カンファレンス・研修などの情報を思い出せるものを準備します。

  • 配布資料(紙/電子)
  • メモ(紙/電子)
  • 写真
  • Twitterのログ/TwilogやTogetterなど
  • Facebookのログ
  • 勉強会・カンファレンス・研修などのイベントの公開情報
  • 当日取得した戦利品
  • 当日会った人の名刺

などなど。
楽しくすることで学習効率を上げるために、過去のログを漁るなどをして当時の感情を思い出すとよいでしょう。

あとは、ふりかえりに使う道具を準備しましょう。
一人の場合であれば、付箋とペンのほか、大き目の紙(模造紙やスケッチブックなど)があるとやりやすくなります。複数人の場合は、ホワイトボードなどを使うのもよいでしょう。

私の場合は、RSGT2019のキーノートでいただいた本や、ノベルティのグラスに飲み物を注いで、飲みながらふりかえりをしました。
IMG_2339.JPG
IMG_2350.JPG

2. イベントを洗い出す

IMG_2340.JPG

カンファレンスや勉強会・研修の中で、どんなイベントがあったのかを思い出し、付箋に書き出します。
時系列にイベントを張り出していきましょう。
複数人の場合は、思い出したイベントはどんどんホワイトボードに張っていき、ほかの人が行っていないイベントや、思い出していないイベントを洗い出しましょう。
イベントの時系列は大体で構いません。
セッションのスケジュールや、研修のアジェンダがあるのであれば、そちらからイベントを転記しても構いません。ただ、スケジュール・アジェンダに載っていない「誰かとの会話」などのイベントも発生しているはずですので、そちらも思い出したら張っていきます。

(3. イベントごとの担当者を決める)

複数人の場合は、どのイベントにだれが出ているのかが分かれている場合もあるはずです。また、大量のイベントがある場合は、イベントすべてのふりかえりに時間を割けない場合もあります。そんなときは、誰がどのイベントをふりかえるか、担当を分けましょう。1つのイベントにつき、2人程度でも多角的な視点は取り入れられますので、効率よくふりかえりができるように振り分けをしていきます。この振り分けも厳密に行う必要はありません。特定の人にイベントが偏りすぎないことだけに注意しましょう。

4. N日目をイベントごとにふりかえる

一人または複数人で、最大15分程度でイベントをふりかえります。
このふりかえりは、YWTやFun/Done/Learn、Celebration Gridなど、学びにフォーカスしたふりかえりの手法であれば何でも問題ありません。
(※学びに関するふりかえりについては Fun/Done/Learnによるふりかえりレポート / 学び・楽しさにフォーカスするアクティビティ紹介 をご参照ください)

たとえば、YWTであれば、以下の3つの観点で付箋を貼っていきます。

  • Y:やったこと
  • どんなことを聞いたか
  • どんなことをやったか
  • どんなことに挑戦したか
  • どんなことに成功したか
  • どんなことに失敗したか
  • W:わかったこと
  • どんなことを学んだか
  • どんなことを思ったか
  • どんなことを感じたか
  • どこが楽しかったか、うれしかったか
  • T:つぎやること
  • 次はどうしたいか

ここで「Next Action」は必須ではありません。日 または 全体でのふりかえりでアクションを出すつもりであれば、イベントごとのアクションは出さなくても大丈夫です。

IMG_0221.JPG
写真:ふりかえりの例(緑=やったこと、黄色=わかったこと、つぎやること)

複数人で行う場合は、個人ワークで付箋を張り出したあとに、お互いが貼った付箋を確認しあいましょう。そして、さらに思い出したものをどんどん付箋で貼っていきます。

5. N日目をふりかえる

IMG_0257.JPG

「4. N日目をイベントごとにふりかえる」の結果から、抽象度を上げて学びをふりかえります。
どんな行動をとって、どう学びにつながって、それを次にどう活かしたいのか、というのを書き出します。
この写真ではFun/Done/Learn + Actionのやりかたでやっていますが、イベントごとのふりかえり同様、やりかたは何でも構いません。
個人でふりかえる場合は、イベントでの学びから、なにが繋がってきたのか、自分にとってどんな価値のある時間だったか、といった観点でふりかえりをします。
また、複数人でふりかえる場合は、他者のイベントのふりかえりから得られた学びが、自分にとってどんな価値をもたらしたのか、チームにとってどんな価値があるのかを考えます。

6. 全体をふりかえる

日ごとのふりかえりを眺めながら、全体として自分にとって/自分たちにとってどのような学びがあり、それをどう行動に変化させていくのかを考えます。
こちらもやりかたは決まっていませんので、チームにとってやりやすいふりかえりの手法を組み込みましょう。
ここで大事なのは、必ずNext Actionを考える、ということです。
個人にとってのNext Actionと、チームにとってのNext Actionの両面からAction Planを作成し、ふりかえりを終了します。

このAction Planは自分やチームの見える場所に貼り、すぐにでも着手できるようにします。
そして、1ヵ月後や1年後など、定期的に見直し、自分たちの成長を測るための材料とします。

Output Cycleのすすめかた

Output Cycleをするときに意識すべきなのは、「無理がないようにやる」ということです。
Outputを無理に行おうとすると、ふりかえりやoutputの行為が「強制されているもの」という感覚を抱きかねません。Feedback Loopをまわすことがもっとも大事ですので、Output Cycleはできる範囲で行います。

Outputはできる限り、人目に触れるような形にして、誰かに発信をします。
これは、家族・友人・部内・社内・社外と自身ができる範囲で公開の範囲を広げていくとよいでしょう。
人目に触れる形に整形しなおすことにより、学びの抽象化へとつながったり、outputへのフィードバックをもらうことにより、さらなる気付きを得ることができるようになります。

フラクタルによるふりかえりの例

最後に

フラクタルは、学びを効率的に、かつ高密度に吸収するフレームワークであり、その中の「アクティビティ」は実施者にお任せしています。
また、自身・自分たちのやりたい部分を重点的にふりかえることのできる、無理のないフレームワークです。
ぜひ、皆さんの学習の場で活用していただき、フィードバックをいただければと思います。

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