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#9 PostgreSQL on k8sで障害テスト(3) ポッド

Last updated at Posted at 2018-12-08

本記事はPostgreSQL on Kubernetes Advent Calendar 2018の9日目です。
昨日は「PostgreSQL on k8sで障害テスト(2) ストレージノード」ということで、PostgreSQL on Kubernetesの構成でストレージノードを落とした際の動きをテストしてみました。

今日はポッド障害のケースを整理してみたいと思います。

#TL;DR

  • PostgreSQL on Kubernetesの構成でポッド障害を起こして影響を確認してみた。
  • PostgreSQLポッドが落ちた場合は当然サービス停止、復旧には想定以上に時間がかかった。
  • Rook/Cephのポッド停止によるサービス影響はなし。

#障害パターン(結果込み)
前回2回の結果と今回結果を受けた、PostgreSQL on Kubernetesの障害パターン表を以下にまとめます。

障害分類 障害部位 想定する動き 結果
ノード DBノード サービス継続、PostgreSQLフェイルオーバ 課題あり
ストレージノード サービス継続、Ceph縮退 想定どおり
ポッド PostgreSQL サービス停止、PostgreSQLポッド再起動 想定どおり
Rook.Operator サービス継続、Rookポッド再起動 想定どおり
Rook.Agent サービス継続、Rookポッド再起動 想定どおり
Ceph.MON サービス継続、Cephポッド再起動 想定どおり
Ceph.OSD サービス継続、Cephポッド再起動 課題あり

k8sにおけるポッド障害って何?

今回テストにするにあたり、そもそもk8sにおけるポッド障害とは何を指すのかを確認しておきます。

ポッドの障害ケースを試す際に良く見られるのが、kubectl delete pod コマンドです。
しかし、使ってみると分かりますが、kubectl deleteでは即時に別のポッドが起動されます。
これはおそらく、KubernetesのAPIサーバにコマンドを投げた際、ポッド削除とメタデータ更新がされているため、すぐにリカバリが走る状態になっていると考えられます。

そのため、本来のポッド障害を想定した場合にはkubectl deleteではない方法で擬似障害を起こさなくてはならないのではないでしょうか。

その方法として、以下の3つを考えてみました。

  1. kubectl execでポッドに接続し、PID:1のプロセスをkill
  2. ポッドが稼動するノードに接続し、psコマンドで適当なプロセスをkill
  3. ポッドが稼動するノードに接続し、docker psで適当なコンテナを探してdocker stop

いろいろ試したのですが、今回は3.を試したいと思います。

PostgreSQLポッド障害

上の方針を踏まえ、PostgreSQLのポッド障害をテストしてみます。
手順は以下のようになります。

  1. pgbenchで3分のベンチマークを実行
  2. DBノードでPostgreSQLが稼動しているコンテナをdocker stop
  3. pgbenchが停止することを確認
  4. PostgreSQLのポッドが再起動され、復旧することを確認

ベンチマーク実行

こちらは想定どおり、手順2.のdocker stopがされた時点でベンチマークはabortしています。

$ kubectl exec -it pgtools-7() -c pgbench -- /usr/pgsql-10/bin/pgbench -h pg-rook-sf.default.svc -U bench -c 2 -T 180 -l --aggregate-interval=60 bench
starting vacuum...end.
client 1 aborted in command 10 of script 0; perhaps the backend died while processing
client 0 aborted in command 9 of script 0; perhaps the backend died while processing
(途中省略)

PostgreSQLコンテナをdocker stop

ベンチマークを実行しながら、docker stopするコンテナを探します。

docker psの結果(一部抽出)
$ sudo docker ps
CONTAINER ID        IMAGE                    COMMAND                  CREATED             STATUS              PORTS  NAMES
8b71113b1e12        978b82dc00dc             "docker-entrypoint..."   40 seconds ago      Up 39 seconds              k8s_pg-rook-sf_pg-rook-sf-0_default_3de2a8a4-fa0e-11e8-83f0-02786407b9a8_1
85c879676f67        rancher/pause-amd64:3.1  "/pause"                 4 hours ago         Up 4 hours                 k8s_POD_pg-rook-sf-0_default_3de2a8a4-fa0e-11e8-83f0-02786407b9a8_0

障害を発生させたいポッド:pg-rook-sf-0に相当するコンテナが2つ出てきます。
*k8s_pg-rook-sf-0_default・・*と、*k8s_POD_pg-rook-sf-0_default・・*です。

今回の検証環境ではKubernetesをRancher2.0を利用して構築していますので、IMAGEが*rancher/・・となっているk8s_POD_pg-rook-sf-0_default・・がポッドに相当するコンテナ、もう一つのk8s_pg-rook-sf-0_default・・*がPostgreSQLのコンテナ、だろうと予測します。
テストではPostgreSQLのコンテナ(k8s_pg-rook-sf-0_default・・・)をstopしてみます。

docker stop
$ sudo docker stop k8s_pg-rook-sf_pg-rook-sf-0_default_3de2a8a4-fa0e-11e8-83f0-02786407b9a8_1

その結果、予想通りにPostgreSQLのポッドが停止し、Kubernetesによる自動復旧が走ります。

サービス停止時間は?

このケースではdocker stopによる擬似障害から、PostgreSQLポッドの再起動までどれぐらいかかるのかが気になる点です。
2度テストし他結果、停止時間は以下のようになっていました。

  • 1度目は15秒
  • 2度目は29秒

該当のStatefulSetのマニフェストは以下のようになっています。

pg-rook-sf.yaml(一部抽出)
    livenessProbe:
        tcpSocket:
           port: 5432
        initialDelaySeconds: 10
        periodSeconds: 3
        timeoutSeconds: 3
        failureThreshold: 2
    readinessProbe:
        tcpSocket:
           port: 5432
        initialDelaySeconds: 5
        periodSeconds: 3
        timeoutSeconds: 1
        successThreshold: 1

停止判定は3秒間隔で投げており、タイムアウト3秒*2回の6秒でチェックNGのはずなのですが、今回は遥かに時間がかかっています。
この辺りは時間を取って、細かくログを確認したほうが良さそうです。

PostgreSQLポッドの復旧を確認

起動時のPostgreSQLポッドを確認すると、以下のようなログが出力されています。


00:29:52.011 JST [1] LOG:  listening on IPv4 address "0.0.0.0", port 5432
00:29:52.011 JST [1] LOG:  listening on IPv6 address "::", port 5432
00:29:52.046 JST [1] LOG:  listening on Unix socket "/var/run/postgresql/.s.PGSQL.5432"
00:29:52.190 JST [25] LOG:  database system was interrupted; last known up at 2018-12-08 00:21:18 JST
00:29:52.262 JST [25] LOG:  database system was not properly shut down; automatic recovery in progress
00:29:52.308 JST [25] LOG:  redo starts at 0/34CFFD30
00:29:52.672 JST [25] LOG:  invalid record length at 0/3E5EA6B8: wanted 24, got 0
00:29:52.672 JST [25] LOG:  redo done at 0/3E5EA690
00:29:52.672 JST [25] LOG:  last completed transaction was at log time 2018-12-08 00:29:23.800195+09
00:29:52.770 JST [25] LOG:  checkpoint starting: end-of-recovery immediate
00:30:05.182 JST [25] LOG:  checkpoint complete: wrote 16384 buffers (100.0%); 0 WAL file(s) added, 0 removed, 9 recycled; write=10.381 s, sync=1.910 s, total=12.459 s; sync files=21, longest=1.684 s, average=0.090 s; distance=156586 kB, estimate=156586 kB
00:30:05.199 JST [1] LOG:  database system is ready to accept connections

大した負荷をかけてないのでRedoのリカバリはすぐなのですが、その後end-of-recoveryのチェックポイントが走り、その時間が13秒ほどかかっています。
実際のコネクション再接続はこの後となってしまうため、サービス停止時間は現在の設定だと30秒から1分程度かかってしまうことになります。

Operator、Agent、MONのポッド障害

これらは上記と同じdocker stopで該当のコンテナを止めてみたのですが、即時復旧されました。
pgbenchによるベンチマークでもabortは発生せず、サービスにも影響ありません。

OSDポッド障害

では、ポッド障害の最後はOSDです。
結論からいうと、OSDのコンテナをdocker stopで止めてもpgbenchによるベンチマーク続行に影響は与えませんでした。

ただ、OSDはMONと違って、ポッドの再起動後にデータの再同期・リカバリが走ります。
今回のテストではポッドの再起動が失敗するケースがありました。

OSDコンテナの停止

まず、手順としてはこれまでと同様にpgbcenhで3分間のベンチマークを実行します。
その後、docker psでストレージノードのコンテナを確認し、OSDコンテナをdocker stopします。
この際もIMAGEが*rancher/・・*でないほうをstopします。

docker psとdocker stop(一部抜粋)
$ sudo docker ps
CONTAINER ID        IMAGE                               COMMAND                  CREATED             STATUS        PORTS NAMES
bd65349ce4d9        8005b7c5fc5b                        "ceph-osd --foregr..."   5 hours ago         Up 5 hours          k8s_osd_rook-ceph-osd-2-7c7b568bd-gwjch_rook-ceph_1a2a7dc9-fa0e-11e8-83f0-02786407b9a8_0
4d8b7aa7a0ac        rancher/pause-amd64:3.1             "/pause"                 5 hours ago         Up 5 hours          k8s_POD_rook-ceph-osd-2-7c7b568bd-gwjch_rook-ceph_1a2a7dc9-fa0e-11e8-83f0-02786407b9a8_0

$ sudo docker stop bd65349ce4d9

Cephの状態確認

上記でOSDを停止した後に、ceph statusで状態を確認してみます。


$ kubectl exec -it rook-ceph-tools-57f88967f4-fb66j -n rook-ceph -- ceph status
  cluster:
    id:     7d2ba914-6739-4e79-891a-59702e681ac4
    health: HEALTH_WARN
            1 osds down
            1 host (1 osds) down
            Degraded data redundancy: 1261/3783 objects degraded (33.333%), 100 pgs degraded, 100 pgs undersized
  services:
    mon: 3 daemons, quorum a,c,b
    mgr: a(active)
    osd: 3 osds: 2 up, 3 in
  data:
    pools:   1 pools, 100 pgs
    objects: 1.26 k objects, 4.4 GiB
    usage:   31 GiB used, 209 GiB / 240 GiB avail
    pgs:     1261/3783 objects degraded (33.333%)
             100 active+undersized+degraded

OSDが起動してきません。しばらく待っても結果は同じでしたので、OSDの起動ログを確認してみます。

2018-12-07 16:30:44.470 7f1ea31ef1c0  0 ceph version 13.2.2 (02899bfda814146b021136e9d8e80eba494e1126) mimic (stable), process ceph-osd, pid 14126
2018-12-07 16:30:44.470 7f1ea31ef1c0  0 pidfile_write: ignore empty --pid-file
starting osd.2 at - osd_data /var/lib/rook/osd2 /var/lib/rook/osd2/journal
2018-12-07 16:30:44.518 7f1ea31ef1c0 -1  Processor -- bind unable to bind to 10.42.5.21:7300/0 on any port in range 6800-7300: (99) Cannot assign requested address
2018-12-07 16:30:44.518 7f1ea31ef1c0 -1  Processor -- bind unable to bind to 10.42.5.21:7300/0 on any port in range 6800-7300: (99) Cannot assign requested address
2018-12-07 16:30:44.518 7f1ea31ef1c0 -1  Processor -- bind was unable to bind. Trying again in 5 seconds

特定のポートでIPがアサイン出来ないというエラーに見えます。
おそらくポッドの停止状態が中途半端になり、ネットワーク関連のリソースが解放されていないのでは?と思われます。

再度テストを行い、今度はポッド側のコンテナをSTOPしたところ、OSDポッドが正常に再起動されました。
このあたりが他のポッドとは動きが違ったところです。

Cephのリカバリ

OSDポッドが再起動されるとデータ再同期・リカバリが走ります。
その状況下でceph statusを実行すると以下のように表示されます。

ceph status(復旧中)
$ kubectl exec -it rook-ceph-tools-57f88967f4-fb66j -n rook-ceph -- ceph status
  cluster:
    id:     7d2ba914-6739-4e79-891a-59702e681ac4
    health: HEALTH_WARN
            Reduced data availability: 1 pg peering
            Degraded data redundancy: 327/3822 objects degraded (8.556%), 76 pgs degraded
  services:
    mon: 3 daemons, quorum a,c,b
    mgr: a(active)
    osd: 3 osds: 3 up, 3 in; 67 remapped pgs
  data:
    pools:   1 pools, 100 pgs
    objects: 1.27 k objects, 4.5 GiB
    usage:   31 GiB used, 209 GiB / 240 GiB avail
    pgs:     1.000% pgs not active
             327/3822 objects degraded (8.556%)
             75 active+recovery_wait+undersized+degraded+remapped
             23 active+clean
             1  active+recovering+undersized+degraded+remapped
             1  peering
  io:
    recovery: 35 MiB/s, 9 objects/s

しばらくたってから再度状況を確認し、HEALTH_OKとなっていれば復旧完了です。

#まとめ
障害テストの最終回、ポッド障害をまとめてみました。

Rook/Cephのレイヤでは大きな問題はありませんでしたが、PostgreSQLの復旧時間が思ったよりもかかっていることが気になりますね。
ここはprobe設定を変えて、もう一度試してみたいと思います。

よろしくお願いします。

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