この連載(全3回)
個人開発している「見開きPDFビューア(MihirakiPDFViewer)」のサンプルマンガ『ためし部』を、ChatGPTと制作しました。東京の架空の高校で、こよみ・凪・くるみ・すみれの4人が校内の小さな困りごとを解決していく日常系4コマです。
第1回では、第1話「ひと息マップ」の発注から、コピー本を想定したカラー構成や表紙・セリフの調整までを紹介しました。本稿は、その後の第2話「机、ひろがる。」と第3話「出張、ためし部!」を扱います。どちらも8ページ・13本の4コマで、表紙と8ページはカラー、2〜7ページはモノクロです。
紹介図 第2話「机、ひろがる。」と第3話「出張、ためし部!」。日本語版PDFの実際の表紙と、あらすじ・本稿で追う編集判断を並べた掲載用の紹介図です。制作途中のラフや、修正前後を比較した図ではありません。
私が「編集者」、ChatGPTが「漫画家」という分担は、続編でも同じです。なるべく広く検討・提案してもらい、良い案を採用して人から出す指示を減らす方針を続けました。ただし、第2話では自然な続編を選び、第3話では再読をきっかけに描き込みや画面の変化を見直すなど、判断する観点は変わっていきます。
引用元は、Codexに残る会話「考案するオリジナル4コマ設定」です。依頼文は原文全文、回答は抜粋を掲載し、日付は2026年・日本時間です。設定案・台本案・作画の途中出力・PDFの途中版を「ラフ」と総称し、それぞれの種類を明記します。
制作意図や選んだ理由は、10月28日と30日の筆者自身の振り返りを補っています。ChatGPTが画像生成ツールへ渡した作画指示は、人の依頼文と区別します。検索できる多言語PDFの組版・検証・配布は、第3回の技術編で扱います。
第2話は、自然な続編を提案から選ぶ
第2話の動機は、2つ目のアプリ「見開きPDFユーティリティ」の開発です。PDFの結合機能を試すため、2つのマンガPDF、つまり2話分が必要だと考えました。ここではアプリの開発自体ではなく、この作品を続けた理由として触れます。
この時は大幅な変更を期待せず、第1話の続きとして自然な内容になればよいと考えていました。10月3日には、性格とセリフの特徴を整理しました。その際、有名な作品をいくつか分析し、今回の作品に取り入れたい要素をプロンプトにまとめました。既存作品のキャラクターと一致しないことと、4人のバランスに注意しました。
第2話を作成します。まず、性格とセリフの特徴を修正します。
こよみ: 天真爛漫な行動派
凪: クールでマイペース、独特な感性を持つ
くるみ: 明るく賑やか、つっこみ役
すみれ: おっとり系、さりげなく場を和ませる
第2話では、4人の性格とセリフを以下に更新します。外見・テーマカラー・担当は引き継ぎます。
こよみが動き、凪が独特な視点を添え、くるみがつっこみ、すみれが和ませる。この整理は続編の会話を作るための調整で、第2話を作り始めた主な動機そのものではありません。
図1 第2話で指定した4人の性格・セリフの特徴と、掛け合いでの働き。外見・テーマカラー・担当は引き継ぎ、会話の役割を整理した。
複数案を頼み、妥当に見える案で進める
12:54に、構成案を依頼しました。
第2話のシナリオ構成案をいくつか出してください。
ChatGPTが出した構成案の抜粋です。ここでのラフは画像ではなく、話の提案です。
案1「机、ひろがる。」
机を広げたら、部室で過ごす楽しみまで増えていく話。
案2「部室のもようがえ」
机を広げるために始めた模様替えが、部室全体の大移動になる話。
案3「ためし部、おためし開店」
広くなった机を使い、校内向けの小さな相談窓口を開く話。
案4「雨の日のためし部」
机の試作品を試す予定が、雨の日を楽しく過ごす実験になる話。
第1話の最後の試作品から続けられる案1が妥当に見えたので、12:55に採用しました。
案1で進めてください。
図2 第2話の4つの構成案と、案1「机、ひろがる。」の採用。回答内容を記事用に図解したイメージで、制作当時のラフ画像ではない。人物は図1の顔画像を流用した。
続いて出てきた台本の一部です。
3「最初の一個」
① こよみ「最初に何を置くか、大事だよ!」
② 凪「第一号。」
③ すみれ「ひとりだと、落ち着かないかしら。」
④ こよみ「仲間、連れてきた!」
くるみ「急に満員!」
この台本を受け、12:58には短い承認だけで作画へ進めました。
進めてください。
第2話も8ページ・13本の4コマです。良い提案を採用して指示を増やさなかったことも、この制作の方針を表しています。
第3話では、舞台と動きを広げ、描き込みに差をつける
10月27日、第2話から期間を置いて読み返したことが、第3話を作るきっかけでした。私がイメージしていた作品群と比べると、背景が詳細すぎる、人物のアップが多すぎる、コマ間の変化が乏しい、と感じたためです。
第1話では、話者のアップなどを指定して個々のコマを読みやすくしました。しかし一冊を通して見ると、別の調整も必要になります。前の指示を単純に取り消すのではなく、見る範囲がコマから全体のリズムへ広がりました。
場所を変えれば画面に出るものも変わります。そこで12:03に、校内への出張と、個性が見える動きを依頼しました。
第3話の構想を始めます。狙いは次の通りです。
- 場面を部室の外に広げたい。ただし、今回は校舎内または学校の敷地内まで。
- 場面を表す背景を含めるコマを含めたい。
- キャラクターのポーズや動きを表すコマを含めたい。ポーズや動きは、かわいい印象を与えるものにする。
- 表情やポーズ・動きについて、キャラクター毎の個性を明確にしたい。
- 読者にポジティブな印象を与える内容にする方針を維持する。
シナリオの検討から始めてください。
構想案には、次の3つがありました(回答の題名と内容の抜粋)。
1「出張、ためし部!」――図書室から「おすすめ本の紹介台を作りたい」という相談。
2「雨の日の寄り道」――雨の休み時間、昇降口から渡り廊下へ。
3「おひさまのお届け」――校内の花壇に付ける紹介札を頼まれる。
図書室なら、移動、本を選ぶ姿、展示を整える手元などを描けます。12:07に案1を選びました。
案1で進めてください。
図3 第3話の3つの構想案と、案1「出張、ためし部!」の採用。図書室・雨の渡り廊下・花壇という案の違いを図解したもので、制作当時のラフ画像ではない。人物は図1の顔画像を流用した。
具体化された台本の抜粋です。
7「見える高さ」
① 台を横から見た中景。凪が紹介札を置き、こよみが下からのぞく。
② 凪がゆっくりしゃがみ、こよみと同じ高さに目線を合わせる。
③ 2人ともしゃがんだまま、札を見上げる。
④ くるみ「下げるの、札のほうね。」
12:12に、作画へ進む承認をしました。
進めてください
台本では、凪が札の高さを調整するつもりでしゃがみ、こよみも一緒にしゃがんでしまう場面や、本を手に取った生徒を見て、声を抑えて喜ぶ場面が提案されました。場所を説明する引き、足元や手元の寄り、セリフの少ない表情のコマを組み合わせています。背景は場所を伝え、動きは会話のオチや喜びを伝える役割を持ちました。
モノクロの簡略化を、見せ場の強弱につなげる
12:26には、作画の途中出力を受け、カラーとモノクロの密度を変える依頼を送りました。次の図は、その前の作画を使ったページと最終版の同じコマです。
図4 第3話4ページ「ひとことの入口」の2コマ目。左の細かな図書室背景を、右では白・トーンへ整理。人物の表情と指さす動きは残している。最終版までの複数の指示が反映された比較。
カラーページは現在の作画品質で、モノクロページは作画コストを下げる(塗りを簡略化するなど)のような変化をつけてください。
続けて、簡略化の方法と、丁寧に描いてほしいコマの扱いを補足しました。
作画コストの下げ方には、背景の書き込みを簡略化する(ベタまたは白/スクリーントーン/幾何学的な模様などの背景など)、キャラクターをデフォルメ化するなどの方法があります。モノクロページのコマでも重要な目立たせたいものは、作画コストを上げてください。
デフォルメを見て、作品に合う頻度へ絞る
デフォルメは、表現に変化をつける手段としても期待していました。しかし、多いとギャグ漫画の印象が強くなると感じました。私が参考にした作品群では多用しないと捉えていたこともあり、頻度を絞ります。
図5 10月27日12:33:26に出た作画途中画像(左・文字組み前)と、限定後の第3話3ページ右列3コマ目(右)。こよみのデフォルメは残り、凪・くるみは通常の頭身に戻った。
この途中出力の後、12:34:07に送った指示です。
デフォルメは、何かを強調したいときなど使う場面を少なくしてください。
これを受けて、AIが画像生成ツールへ渡した最終の作画指示では、通常の頭身を基本にし、デフォルメを「初出張!」、凪の両手の間に収まるこよみ、「私じゃなかった!」の3コマに限定する方針が書かれています。図書室の全景、しゃがむ動作、本を取る手、読書中の表情、静かに喜ぶ場面は丁寧に描き、ほかは白・トーン・ベタなどで背景と陰影を整理する指定です。これは人の依頼をAIが具体的な作画指示へ展開したもので、人物ごとの指示まで人が最初から書いたわけではありません。
ここでいう「作画コスト」は、指示の中で描き込みの量を表す言葉です。制作時間や画像生成の費用がどれだけ減ったかを測定したものではありません。全コマを一律に簡略化するのではなく、何を見せたいコマかによって密度を変える、という演出の調整でした。
図6 第3話4ページの完成版から、4コマ「ひとことの入口」の2・3コマ目を抜粋。左は背景を整理して表情を見せ、右は図書室の背景と本を開くしぐさを描いている。修正前後の比較ではない。
日英版を作り、文字情報も確認する
日本語版の完成後、同じ日に英語版も依頼しました。
英語版を作成してください。
英語題は “Out and About” になりました。最新の絵を共用し、セリフは横書きに変更。制作履歴では、図書室の依頼を説明する長い英語文を短くし、吹き出しの幅も調整しています。絵を変えずに言語別の文字組みを直せる点は、今回も役立ちました。
第3話も、冒頭で述べた8ページ・13本の4コマとカラー構成を引き継いでいます。文字情報とPDF設定の確認内容は、第3回の技術編にまとめます。
第3話の日英PDFは、10月27日にGitHub Pagesで公開しました。
The Try-It Club — Episode 3: Out and About
編集者として、任せる範囲と見る観点を変える
開発者が編集者、ChatGPTが漫画家というイメージは、今回の制作を通した私の意図です。用途や方針を伝え、漫画家役の提案を読み、採否を決める分担でした。
図7 筆者が意図した制作の往復を整理した説明図。ラフは設定・台本・途中画像・途中PDFを含む。
第1話では、ラフを見ながらコピー本という作品の形式を探りました。その続編に当たる第2話では、自然な続きとして妥当な提案を短い指示で採用しました。第3話では、時間を置いた再読で全体のリズムを見直し、場面・動き・背景の密度・デフォルメの頻度を調整しました。
ChatGPTには、設定や脚本の提案から演出、作画、修正まで広く任せています。人が細部を先回りしてすべて指定すればよい、という体験ではありませんでした。出力を見て、良い点を残し、必要になった変更だけを返す。その都度、自分が作品に何を求めているのかも具体的になりました。
PDFの文字組み・検索・多言語展開・版管理は、第3回の技術編へ続きます。
マンガ:© 2026 こまいろ日和。配布版のライセンス表記はCC BY 4.0です。マンガ図版は制作過程または配布版のPDFを画像化し、掲載用の縮小・配置・見出し追加を行っています。説明図は、制作時の依頼・回答・制作資料をもとに整理したものです。
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