この連載(全3回)
個人開発している「見開きPDFビューア(MihirakiPDFViewer)」のために、サンプルマンガ『ためし部』を作りました。東京の架空の高校で、4人の女子高生が校内の小さな困りごとを解決していく日常系4コマです。
アプリで開いて表示や検索を試せる作品を用意するため、ChatGPTに相談しながら設定、台本、作画、文字組み、PDF化を進めました。本稿では、8ページの第1話「ひと息マップ」を作り、ラフを見ながら作品の形式を決めていった過程を扱います。第1話の日英配布版はiOS・Androidで共用しています。
図1 配布版PDFから作成した掲載用図。右綴じのため、右が2ページ、左が3ページです。
制作は2026年9月26日に始まりました。私がイメージした分担は、開発者である私が「編集者」、ChatGPTが「漫画家」です。期待や用途を渡し、出てきた設定案・台本・絵を読んで、良い点を採用し、必要な修正を次のプロンプトで返しました。
最初から完成像を細部まで決めていたわけではありません。ChatGPTの実力をまだ把握できていなかったので、往復しながら調整するつもりでした。なるべく広く検討・提案してもらい、良い案はそのまま使うことで、人から出す指示を最小限にする方針です。
この記事では、第1話の「任せる→ラフを見る→採用・修正を決める」を追います。第2・第3話での編集判断は第2回、検索できる多言語PDFへの組版と配布は第3回で扱います。
引用元は、Codexに残る会話「考案するオリジナル4コマ設定」です。依頼文は原文全文(一部の名称は伏字)、回答は抜粋を掲載し、日付は2026年・日本時間です。「ラフ」は設定案・台本案・作画の途中出力・PDFの途中版を含む総称として使い、それぞれの種類を明記します。
制作意図や選んだ理由は、10月28日の筆者自身の振り返りを補っています。ChatGPTが画像生成ツールへ渡した作画指示は、人の依頼文と区別します。Android StudioのGeminiによるアプリ開発とは別の履歴です。
素材作りから、8ページの作品へ
先に、アプリアイコン、Bronze/Silver/Goldのチップ画像、ライトノベル風の表紙・目次・本文画像などを作っていました。標準アイコンやチップ画像の元データは両OSで共用し、用途別の派生も用意しています。
これらのアイコンやGoogle Playのフィーチャーグラフィックの詳細は、Android開発記録の第5回で扱う予定です。ここでは、共用するマンガそのものの設定・演出・作画をどう決め、修正したかを中心にします。
期待をリストにして、設定案を任せる
9月26日17:15の初回発注です。用途上の条件は書きましたが、最終的な刊行物としての見せ方まで確定した仕様書ではありません。
PDFビューアアプリで使うために、著作権の問題がない漫画を作ります。
まずは、設定を考えてください。
- き⚫︎ら風
- 登場キャラ: 女子高生4人
- キャラクター設定の注意: キャラ毎にテーマカラーを決める。髪型や身長など外見やシルエットで区別しやすいこと。
- 集団: イマドキの校内活動クラブ
- 舞台: 東京
- 漫画形式: 4コマ漫画
- 本の形式: 右綴じ、8ページ、全ページカラー
- セリフの書き方: 日本語版は縦書き(日本語)、英語版は横書き(英語)
- 最終成果物: PDFファイル、セリフなどのテキストを検索可能にすること
- 既存の作品と重ならないこと
回答では、作品とクラブの設定が提案されています。
東京の高校で、校内の「ちょっと不便」を小さなアイデアで変えてみる、女子高生4人の4コマ漫画。
4人が所属するのは、通称「ためし部」こと校内くらし試作部。
この時点の題名は『放課後、ためしてみる?』でした。提案された「校内の小さな不便を工夫で変える」という方向を採用し、17:16には短く制作を進める指示を出しています。
進めてください。
この短い承認も、編集者としての判断です。設定や台本を自分で全部書き直すのではなく、漫画家役の提案を具体化してもらいました。題名は9月28日の改題指示で『ためし部』になります。
依頼では、作品の雰囲気だけでなく、右綴じ、8ページ、日本語の縦書き、英語の横書き、セリフの検索も指定しました。ビューア用のサンプルなので、本の形式とPDFの機能も制作条件に含めています。
原文の「著作権の問題がない」「既存の作品と重ならない」は制作の目標です。この指示だけで、既存作品との非重複や、権利上の問題がないことを保証できるわけではありません。
色とシルエットで4人を区別する
設定案と台本はChatGPTに提案してもらい、内容を選び、修正しながら進めました。4人は、色だけでなく髪型や小物でも区別しています。
| キャラクター | テーマカラー | 外見と担当 |
|---|---|---|
| 小坂こよみ | コーラル | 小柄なボブ、四角い髪留め。発案係 |
| 瀬尾凪 | ターコイズ | 背が高く、長いストレート髪。記録係 |
| 三輪くるみ | マリーゴールド | 高いポニーテール、腕時計。工作係 |
| 折原すみれ | ライラック | 肩までのウェーブ、丸眼鏡。言葉係 |
図2 色に加え、髪型・小物・身長で4人を描き分けた。人物紹介用の画像を再配置し、身長は設定値を棒で示している。
作画では、この作品の表紙を人物の参照画像として使いました。それでも、こよみのコマが別の人物に見えたり、すみれにこよみの髪留めが付いたりすることがあり、制作中にChatGPT自身が点検・修正しています。これは人がすべて発見して依頼した修正ではありません。
第1話は、校内でほっとひと息つける場所を探し、「ひと息マップ」を作る話です。表紙が1ページ、2〜7ページに4コマを2本ずつ、8ページに4コマ1本と人物紹介・奥付。8ページに13本の4コマを収録しました。
本文の画風をそろえる
9月26日の制作中には、本文の画風も指定し直しています。
表紙以外は、線画をベースにペイントした画風にしてください。
表紙はそのまま、本文を線画に着色した画風にそろえて完成しました。
初期版は、最初の依頼どおり全ページカラーです。この出力を見てから、本としての形式を考え直しました。
全カラーのラフを見て、コピー本の形式を選ぶ
全ページフルカラーではWebtoonとの差別化がしにくい、と私は感じました。雑誌の連載をイメージしつつ、作品は同人誌のコピー本のスタイルにすることにしました。本文の一部をモノクロへ変えたのは、この形式を選んだからです。
一方、カラーがまったくなければアピール力が下がり、4人のイメージカラーも伝わらなくなります。そこで「コピー本で印刷費用を抑える」という想定で、1ページと8ページをカラー、2〜7ページをモノクロにしました。実際に印刷費用を比較した話ではなく、作品の形式を考えるための想定です。
初期のコマには文字用の白い帯もありました。これはChatGPTが作画指示に入れたもので、人が初回発注で指定したものではありません。
英語版を見ると、コマ上部の白い帯にセリフを置く構成は、私がイメージする英語のコミックに近く、「ああ、なるほど」と感じました。初期の日英版は絵を共用しており、日本語版にも同じ帯が残っています。ただし、ChatGPTがこの構成を選んだ理由を、英語版の存在だけから断定することはできません。
図3 初期の英語版PDF・2ページ上半分。コマ上部の白い帯に横書きのセリフを置いている。初期の日英PDFでは、このページの埋め込み画像が一致する。
このままでは、私が目指す日本のマンガの雰囲気とは違います。そこで、上部の白い帯を消し、コマいっぱいに絵を置いてセリフを吹き出しへ入れる方針に変えました。
9月27日7:00に送った依頼です。
シナリオは現在のまま、日本語版の画像を変更します。
- 2ページから7ページをモノクロに変更
- コマの上部に余白を設けてセリフを載せる方法をやめて、画像はコマいっぱいに置き、セリフを吹き出しに入れる
- 舞台(場所)を示す必要が無いコマは背景をベタまたは効果線にする
- セリフが一人だけのコマでは、話者のみアップで登場する
- セリフのフォントはゴチック体、モノローグのフォントは細明朝体、ナレーションのフォントは中ゴシック体
- 吹き出し内のテキストは縦書きで、なるべく5文字以上の幅(高さ)を確保する
- なるべくコマ毎にカメラの角度やズームを変える
- セリフが長い時は吹き出しを大きく取り、必要な場合は吹き出しの中に話者の顔を小さく入れる
- 強調が必要なセリフがあるコマは効果線を使う
回答の抜粋です。
日本語版の2〜7ページを改訂しました。モノクロ作画、話者のアップ、効果線、ゴシック体の縦書き吹き出しを反映しています。
図4 左が初期カラー版、右が改訂後の配布版。同じ台本をもとに、作画・吹き出し・見出しなどを変更しています。
変更したのは色だけではありません。誰が話しているか、どの表情を見せるか、背景が必要か、長いセリフをどう収めるかまで指定しました。
一人だけが話すコマでは原則として話者のアップにし、強調したいコマは効果線を使っています。背景を毎回描く代わりに、場所を伝えるコマと表情を見せるコマを分けました。
白い余白帯をやめても、吹き出しを置く場所は必要です。作画時に人物を左右へ寄せ、顔を避けて文字を配置できるようにしました。制作メモによると、今回は長いセリフも吹き出しの拡大で収まり、依頼にあった「吹き出し内の小さな顔」は使わずに済んでいます。モノローグやナレーションも、実際の台本にないものを追加したわけではありません。
8ページは、同じ変更でもカラーを残す
9月27日7:33、本文の変更を8ページへ広げるよう依頼しました。
8ページの4コマも同じように変更してください。キャラクター紹介の枠内にキャラの顔の画像を追加してください。
直後の7:34に、カラーを維持する条件を補いました。処理中に追加した指示で、二つの出力を見比べて選んだ記録ではありません。
私が想定した商業雑誌のカラー配置は1・2ページでした。一方、今回は8ページのコピー本を想定し、表紙側の1ページと裏表紙側の8ページにカラーをまとめることにしました。8ページの人物紹介をカラーにすれば、4人のイメージカラーも伝えられます。そのため、ここは本文と同じ修正を加えてもカラーを残す、と補足しました。
8ページの4コマも同じように変更してください。ただしカラーにします。
キャラクター紹介の枠内にキャラの顔の画像を追加してください。
8ページの4コマをカラーで描き直し、縦書きの吹き出しと、紹介枠内の4人の顔画像を追加しました。文字検索も確認済みです。
こうして、最終形はカラー表紙、モノクロの本文2〜7ページ、カラーの8ページになりました。初期の全カラー仕様と、後から変えた仕様は分けて記録しています。
図5 第1話8ページの初期PDFと改訂後の配布版。4コマはカラーを残し、紹介枠には4人の顔が加わった。
表紙は途中版を見ながら、題名と情報量を詰める
図6 初期の日本語版PDF・1ページ。上部に題名などの帯、下部に人物名を置いた最初の表紙。この後、イラストを全面に広げて文字を重ねる構成へ変更した。
私がイメージしたのは、イラストを全面に広げ、人物の顔などに重ならない場所へタイトルを置く表紙です。ただ、今回のイラストは人物が上側に寄っているため、全面に広げるとタイトルを置くスペースが少なく、調整に苦心しました。サブタイトルも試しましたが、置く場所の余裕がなく、最終的には外しています。インパクトを重視する方針です。
9月27日7:44には、イラストを全面に置き、文字を重ねる表紙へ変更しました。
表紙はイラストを全面に拡大してください。タイトルやサブタイトルをPOPなフォント(極ボールド)に変更して載せてください。作家名を考えてページ下側に載せてください。
作者名の追加や英語版の制作を挟み、翌28日には、文字の位置・大きさ・太さを短い指示で調整しています。以下は当時保存された途中版です。完成図を後から加工して修正前を再現したものではありません。
配置を変えた表紙を見て、題名を短くする
4:45の依頼です。
日本語版の1ページのテキストを修正してください。
サブタイトル"〜校内くらし試作部〜"をタイトルの下に移動して、フォントサイズを今の3倍に変更してください。
話数"第1話 ひと息マップ"を人物より下に左寄せで置いてください。
作者名の表示を"presented by こまいろ日和"にして、画面の右下に置いてください。フォントをもっと太くしてください。
図7 9月28日4:46の配置調整後(左)と、4:49の改題・サイズ調整後(右)。同じイラストに載せる文字を修正した。
その途中版の後、4:49に改題を指示しました。4文字の題名を持つ作品を念頭に、『ためし部』という短い名前にインパクトと覚えやすさを期待しました。
タイトルを"ためし部"に変更してください。
話数のフォントを太ゴシック体にして、フォントサイズを2倍にしてください。
作者名表示の内"こまいろ日和"の部分のみ、フォントサイズを1.4倍にしてください。
書体とサイズを試し、サブタイトルを外す
続く依頼も全文を残します。特定の変更理由が履歴に書かれていない箇所は、見た目と指示の対応として示します。
4:52の指示:
サブタイトルを明朝体に変更してください。話数のフォントサイズを70%に変更して、位置を下げてください。作者名表示のうち"こまいろ日和"の部分のフォントを太くして、フォントサイズを120%にしてください。
図8 4:53の明朝体サブタイトルの途中版(左)と、4:56の削除後(右)。間にゴシック体への変更指示もある。
4:55の指示:
タイトルのフォントサイズを120%にして、位置を少し上げてください。サブタイトルのフォントをゴシック体に変更して、タイトルの下に置いてください。
4:56の指示:
サブタイトルを外してください。
大きな発注だけで完成形を決めず、出力された文字の占有面積や絵との重なりを確認しながら、変更箇所を返す往復でした。
日本語の自然さと、オチを残す英訳
ここまでは主に画面の見せ方を見ていましたが、ふと、あるコマのセリフに目が止まりました。漢字だけが並んでいたので、一瞬「中国語? 誤訳?」と思ったのです。よく読むと中国語ではありませんでした。それでも、今回の作品の会話の雰囲気には合わないと感じ、修正を相談しました。
10月2日17:49には、まず日本語版の該当コマについて次の依頼をしました。
日本語版の4ページの"6 名前の長さ"の2コマ目のセリフを日本語に変更してください。
回答は「校内小休止推奨地点案内図。」に修正するというものでした。この言い方を見て、17:51に自然さの見直しを依頼しました。
セリフ「校内小休止推奨地点案内図。」は日本語の会話文として不自然なので変更を検討してください。
このコマは「名前が長すぎる」というオチにつながるので、長さを残しながら、口に出して自然な表現にするとよさそうです。
ChatGPTは、長い名前を発表する流れと、最後に「ひと息マップで。」と短くするオチを残す案を出しました。私は17:52にその案を採用します。
おすすめのセリフに変更したPDFを作成してください。
図9 第1話4ページ「名前の長さ」の2コマ目。左は保存された初期PDF、右は自然さの修正を反映した配布版。初期PDFからは作画も変わっており、10月2日の文章修正だけの比較ではない。
この言い回しが回答された直後のPDFは、今回の保存資料では独立した版として確認できませんでした。実コマの比較には初期PDFと配布版を使い、言い回しの変更そのものは次の説明図で示します。
図10 第1話の会話修正を整理した説明図。吹き出しは記事用に組み直したもので、制作当時のラフ画像ではない。名詞の連なりを案内の言い方へ変え、名前の長さとオチは残した。
10月4日には、英語版も見直しています。
英語版第1話の4ページ「6 Quite a Name」の2コマ目のセリフを「校内でほっとひと息つける場所をご案内するマップです!」の英語訳に差し替えたいです。英語訳の案を考えてください。
3案から選んだのは、長い名前を発表する雰囲気のある2案目でした。
A Guide to Places Around School Where You Can Relax and Take a Little Break!
次に出した採用指示です。
案2に差し替えた英語版第1話のPDFを作成してください。
意味を短く訳すだけでなく、「長い名前を発表する」セリフの役割を残す判断でした。このコマでは吹き出しも拡大しています。
ラフを見て、作品の形を決める
最初の期待リストから、設定と台本を提案してもらい、全カラーの出力を見てコピー本のスタイルを選びました。本文の見せ方、表紙の情報量、日本語の自然さを、その都度のラフと照らして調整しています。完成形を最初から細部まで指定するのではなく、良い提案を採用し、必要な変更を返す進め方でした。
続編では、この分担の中でも判断する観点が変わりました。第2話は自然な続きとして提案を採用し、第3話は時間を置いた再読から画面のリズムを見直します。その経緯は、第2回の「第2・第3話」の制作編へ続きます。
マンガ:© 2026 こまいろ日和。配布版のライセンス表記はCC BY 4.0です。マンガ図版は制作過程または配布版のPDFを画像化し、掲載用の縮小・配置・見出し追加を行っています。説明図は、制作時の依頼・回答・制作資料をもとに整理したものです。
前後の記事
- 次の記事:第2回:第2・第3話の編集判断と作画









