Cursorは、AIを活用したコーディング支援に特化したエディタで、VSCodeをベースに開発されています。GitHub Copilotのような補完機能に加え、AIとの対話を通じたコード生成、リファクタリング、レビューなどの高度な開発支援機能を提供します。
本記事では、このCursorのトライアル導入について、私個人が得た知見を共有します。特に、日々進化を続けるCursorの最新機能の活用方法や、チーム開発における効果的な導入プロセスについて詳しく解説します。10週間にわたる実践を通じて、AIツールと人間の協業による新しい開発スタイルが見えてきました。
1. トライアルの背景と目的
GMOペパボ EC事業部では、AI活用による開発生産性の向上を目指し、Cursorのトライアル導入を9月から開始しました。主な目的は以下の3つです。
- AI前提の開発を実体験し、生産性を向上させる
- ComposerやAI Reviewなど、GitHub Copilotとは異なる開発体験を得る
- エバンジェリストとしてチーム内外に知見を共有する
2. トライアルの実施内容
実運用中のコードベースに対してCursorを適用し、実践的な活用方法を模索しました。GMOペパボでは以前からGitHub Copilotを全社導入していましたが、より高度な開発支援機能を持つCursorの可能性を探るため、月額プラン($20/月)を選択し、年内を期限としたトライアルを事業部内で実施することにしました。
3. 週次での知見共有
トライアル期間中、個人的な取り組みとして、毎週Qiitaで新しい発見や活用方法を共有しました。Cursorは急速に進化するツールであり、最新情報のキャッチアップと共有が重要だと考えたためです。
以下が共有した主な記事です。
Cursorのルール設定で実現する!チーム開発の一貫性を保つための.cursorrulesファイル活用術
- .cursorrulesファイルの設定方法と活用例を解説
- 学び:プロジェクト固有のルールをAIに理解させることが可能
エージェントモードが追加された Cursor v0.43アップデートまとめ
- v0.43で追加された新機能の詳細な解説
- 学び:エージェントモードとファイル推奨機能により、AIとの対話がより効率的になり、開発者の生産性向上に大きく貢献することが期待される
Cursor: 利用できるようになったo1-miniおよびo1-previewについて
- o1-miniとo1-previewの特徴と性能比較
- 学び:o1-miniと既存の言語モデルの違いを理解できた。
- 学び:o1-previewは、明確に定義された推論集約型の問題に対して優れた性能を発揮する。
- 学び:汎用タスクには、特gpt-4oモデルを推奨し、Claude 3.5 Sonnetは特定のタスクにおいて効果的である。
Cursor: AI レビューの使い方
- AIレビュー機能の基本的な使い方
- 学び:AIレビューは、コードベースの最近の変更をレビューし、潜在的なバグを検出できる機能。
Cursor: Chatでの効率的な複数ファイル・フォルダ選択テクニック
- 複数ファイルの効率的な選択方法
- 学び:Cursorの多様なファイル・フォルダ選択機能を活用し、
@Files
、@Folders
、Add context機能を使い分けることで、AIチャットに最適なコンテキストを提供し、効率的な開発作業を実現できる
CursorとChatGPT 4o with canvasの違い
- 両ツールの機能比較と特徴
- 学び:文章の編集を手軽に試したいならCanvasが最適。本格的にプログラミング効率を上げたいならCursorが有力。
Cursor: Notepad機能の使い方
- Notepad機能の基本操作と活用例
- 学び:Notepad機能はアイデアのブレインストーミングやファイルの参照に便利
- 学び:保存した情報を簡単に参照でき、文脈に沿った具体的な質問や効率的な情報交換を可能にする
- 学び:問題解決や学習プロセスを効果的に支援するツール
CursorのComposerとChatの使い分け
- ComposerとChatそれぞれの特徴と長所
- 学び:Composerは短いコンテキストのコード開発に、Chatは長いコンテキストの作業に最適化されているため、場面に応じた使い分けが重要。
Cursorチームメンバーが実践するRules for AI設定の解説
- チーム開発でのAI活用ルールの実例
- 学び:各開発者が自身のニーズに合わせてカスタマイズすることで、より効率的な開発環境を構築できる
Cursor: AI開発アシスタント Clineを導入する手順
- Clineの特徴と導入メリット
- 学び:最新のClaude 3.5 Sonnetのエージェントコーディング機能を使用して、様々なタスクを実行できる
- ファイルの作成・編集
- 複雑なプロジェクトの探索
- ブラウザの使用
- ターミナルコマンドの実行(ユーザーの許可が必要)
4. トライアルから得られた知見
トライアルを通じて得られた知見は、AIを活用することで開発生産性が向上することを示すだけでなく、さまざまな新しい開発スタイルやチーム内の知見共有の重要性も明らかにしています。特に、以下の点が重要です。
- AI前提の開発体験: Cursorを使用することで、AIを前提とした開発が実体験でき、従来の開発手法との違いを実感しました。特に、GitHub Copilotとの違いとして、Cursorはより高度な対話型のインターフェースを複数提供し、開発者がAIと直接コミュニケーションを取りながらコードを生成・リファクタリング、高度なタスクの自動実行ができる点が挙げられます。これにより、開発者はAIの補完機能を最大限に活用する方法を学び、特定のコンテキストに基づいた提案を受けることで、より効率的な開発が可能になりました。
- AIとの協業インターフェイスの進化: トライアル中に感じたのは、ChatやComposerなどのAIとの協業のためのインターフェイスが日々進化していることです。v0.43でエージェントモードが登場し、使い始めた当初とは別物になりました。今後も開発シーンにおいて、より便利なUIがこれらの機能に追加され、AIとの共同作業が加速すると考えています。
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プロジェクト固有のルール理解:
.cursorrules
ファイルを通じて、プロジェクト固有のルールをAIに理解させることが可能です。これが開発の一貫性を保つ鍵となります。チーム全体でAIレベルでルールを共有しながら開発やレビューを行い、得られた知見を基に.cursorrules
をアップデートするプロセスを繰り返すことで、強いチームが生まれる手応えを感じています。
まとめ
Cursorのトライアル導入を通じて、AIを活用した新しい開発スタイルが見えてきました。AI前提の開発体験やチーム内の知見共有が生産性向上に寄与し、今後の開発プロセスにおいてAIとの協業がますます重要になると考えています。これらの知見を基に、今後もCursorを活用し、さらなる生産性向上を目指していきます。
この記事は、Visual Studio Code Advent Calendar 2024
とGMOペパボ EC Advent Calendar 2024の11日目の記事でした。