Salesforceのレポートを取り込んだスプレッドシートを、何枚か突き合わせて1枚の表にする。毎週やってたやつです。
それがある日、急に壊れました。突合の関数がエラーだらけになって、値が入らない。
え、なんで。
直前に自分でいじってたので、最初から「自分が壊した」しか疑ってませんでした。数式を戻す。直らない。列を戻す。直らない。半日くらい落ち込んでました。
で、シートは壊れてませんでした。取り込んでるデータの方が、途中から2,000件で止まってたんです。
遠回りした理由ははっきりしています。「エクスポートできない」って言葉で、全然別の3つの話が呼ばれてるんですよね。メニューが出ないのか、押した後に止まるのか、出たけど足りないのか。
私が当たったのは3つ目。2026年7月から増えてるのは2つ目です。有償の組織だと、エクスポートのたびに追加の認証(ステップアップ認証)が入るようになりました。検索して出てくる記事も生成AIの答えも、だいたいこの変更より前の前提で書かれてます。それっぽい答えが返ってくるのに解決しない理由がこれです。
なので、権限やレポートの作りを疑う前に、押した後の画面に何が出たか。まずこれだけ聞けば片が付きます。
| 画面に起きていること | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| メニューに「エクスポート」が無い | 権限「レポートのエクスポート」が無い / モバイルアプリ / 履歴トレンドレポート | 管理者に権限を依頼。PCのブラウザで開く |
| 認証コードを求められる、届かない | ステップアップ認証(2026年7月〜) | 認証アプリかパスキーを登録。連絡先を更新 |
| 1万件超のときだけ止まる | イベントモニタリングの既定ポリシー | 管理者がReportEventのポリシーを確認 |
| 10分ほど待たされて失敗 | タイムアウト / 同時5件の上限 | 条件で半分に分けて2回出す |
| 「内部サーバーエラー」 | 列のグループ化にからむ既知の不具合 | 「詳細のみ」で出す。行レベルの数式でグループ化 |
| 行が切れる、長文や時刻が欠ける | 形式ごとの上限 | 「詳細のみ」の.csvにする |
| 画面で変えた条件が入ってない | 未保存の変更を無視する既知の不具合 | 保存してから出す |
以下、引っかかりやすいところだけ。
権限が無いと、選択肢ごと消える
エクスポートにはユーザー権限「レポートのエクスポート」(Export Reports)が要ります[1]。グレーアウトではなく選択肢ごと消えるので、ボタンが壊れてると思っちゃうんですよね。
情報の持ち出しを防ぐためにわざと外してる組織もあります。技術の話じゃなくて社内ルールの話です。
朝にMFAを通っていても、また聞かれる
有償の本番組織は2026年7月1日から約30日かけて順番に(Sandboxは6月17日から)、エクスポートで追加の認証が要るようになりました[4]。
いちばん「は?」ってなるのがここですが、仕様です。管理者が決めた時間(1〜120分)を過ぎてたら、エクスポートのたびに聞かれます。ログインとエクスポートは別の関門、と思っておくと腹落ちします。SSOでログインしていても同じで、外部のIDプロバイダーには任せられません。
コードが届かないときは、ユーザー詳細のメールアドレスと電話番号を見てください。認証方法が未登録の人には、そこにコードが飛びます。古いままだと詰みます。
同じ会社でも出る人と出ない人が分かれるのは、プロファイルのログインIP制限のせいです。IPが変わってなければ認証は求められません。開発者組織やトライアル組織も対象外。
2026年9月のMFA必須化は別の話です。時系列は別の記事に分けました。
件数で挙動が変わるなら、犯人は別
イベントモニタリング(Shieldまたは単体ライセンスで使える操作ログの機能)を契約してる組織では、2026年7月13日から別の仕組みが動いてます[5]。
画面で1万件を超えるエクスポートをすると、既定のトランザクションセキュリティポリシーが発動して認証を求めます。認証方法を設定してない人は、認証すらできずに止められます。API経由(Data Loaderのコマンドライン版を含む)は対象外です。
「内部サーバーエラー」は原因を探すより、形式を変えた方が早い
「内部サーバーエラー」としか出ないので、これを見ても何が悪いのか分かりません。既知の不具合には条件が載っていて、書式設定されたレポートで列のグループ化が2つあり、1つ目が名前項目のときに出ます。2019年登録で、2026年9月13日時点でもまだ修正中(Spring '27予定)[6]。
ただ、この条件に当てはまらなくても出ます。なので原因を当てにいくより、形式を変える→件数を半分にする→列を減らす、の順で試して消えるかどうかを見た方が速いです。それでも消えないなら、正直もうサポートに聞くしかないです。自分はここで粘ってもしょうがないかな、と諦めました。
2,000という数字が、あちこちに出てくる
形式ごとの上限です。
| 形式 | 上限 |
|---|---|
| 詳細のみ(.csv / .xls) | 行・列とも上限なし |
| 詳細のみ(.xlsx) | 10万行・100列 |
| 書式設定済み(表形式・サマリー) | 10万行・100列 |
| 書式設定済み(マトリックス) | 2,000行・100列 |
| 結合レポート | 常に書式設定済みで出力。2万行まで |
出典はレポートのエクスポートと制限と割り当て。
厄介なのは、レポート画面の表示上限も2,000行だということ。どこの2,000に当たってるのかを先に切り分けないと、私みたいに関係ない場所を直し続けます。画面の2,000行は表示の上限で、エクスポートの上限ではありません。
あと、ロングテキストとリッチテキストは書式設定済みと.xlsxだと255文字で切り捨て、日付/時間項目は時刻が落ちます。どちらも「詳細のみ」の.csvで回避できます。
自分で直せないときは、管理者にここを見てもらいます
- ユーザーに「レポートのエクスポート」権限があるか
- 設定 → ID検証 の「セッションセキュリティレベルポリシー」で、「レポートおよびダッシュボード」と「ステップアップ認証期間(分)」
- ユーザーのメールアドレスと電話番号が今も生きてるか、認証方法が登録されてるか
- イベントモニタリングを契約してるなら、ReportEventのトランザクションセキュリティポリシー
5つ目。同じレポートを毎週手で出してるなら、直すべきは手順じゃなくて、手で出してること自体です。 購読(定期配信)とAPIは、どちらもステップアップ認証の対象外[4]。認証を毎回通す担当者を置き続けるより、通らなくていい経路に移した方が静かになります。方法の比較は別の記事に。
この「通らなくていい経路」を通るツールは私も1つ作っていて、ReportZen という Google Workspace Marketplace のアドオンです。Salesforceのレポートを SOQL を書かずに Google スプレッドシートへ全件取り込んで毎朝勝手に更新しておくもので、取得はAPI経由なので人がエクスポートボタンを押す場面がそもそもありません。冒頭の2,000件のところで止まる、みたいなことが起きないように作りました。
出典(2026-09-19 確認)
- [1] Salesforce Help: レポートのエクスポート
- [2] Salesforce Help: Reports and Dashboards Limits and Allocations(レポートとダッシュボードの制限)
- [3] Salesforce Help: Reports and Dashboards: What's Different or Not Available in the Salesforce Mobile App
- [4] Salesforce Help 005321566: レポートアクションにおけるステップアップ認証への適用準備
- [5] Salesforce Help 005321565: トランザクションセキュリティポリシーの強化への適用準備
- [6] Salesforce Known Issues W-6966853: Lightning report - Exporting Formatted Report fails with Internal Server error if there are 2 column groupings and the first one is a Name field
- [7] Salesforce Known Issues W-20289866: Lightning Report Export Skips Unsaved Modifications in Some Orgs