VUCA時代におけるキャリアや働き方とは?日立製作所主催「Social Tech Talk #02」イベントレポート
VUCA(Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguity)の時代と言われる現在、旧来型の予測可能なキャリアモデルはある意味で通用しなくなり、自分自身でキャリアをデザインする必要があるフェーズへと突入しています。これはどの職種にも共通することであり、いかに自分自身が幸せに生きるかを真剣に考え、実行することができる時代になってきたとも言えます。
このような「キャリア」や「働き方」という切り口で、2021年8月28日に日立製作所主催で開催されたのが「Social Tech Talk #02」です。同年2月25日に開催された第1回が非常に好評だったことを受け、半年後に第2回が開催される形となりました。(#01のレポートはこちら)
不確実性の高い時代において、私たちはどのようなことを意識して日々を過ごすべきなのか。日本を代表するエバンジェリストと日立のエンジニア達が、あらゆる視点から語り尽くす5時間となりました。本記事では当日のイベントの様子について、エッセンスを抽出してお伝えします。
目次
プロフィール
Lumada Innovation Evangelist
2019年10月10日より、株式会社圓窓の代表取締役に就任。企業に属しながら個人でも活動を行う「複業」のロールモデルとなるべく活動中。また、美容業界やファッション業界の第一人者たちとのコラボも、業界を超えて積極的に行っている。
2021年2月より日立製作所Lumada Innovation Evangelistに就任。Lumada関連施策について社外に向けた発信をリードしていく役割を担っている。
コミュニティマーケターのコミュニティ「CMC(Community Marketing Community)_Meetup」も主催する。
Software CoE クラウドビジネス推進センタ
Qiita Organization (CBC): https://qiita.com/organizations/hitachi-cbc
Software CoE OSSソリューションセンタ
Qiita Organization (OSS): https://qiita.com/organizations/hitachi-oss
澤円氏 基調講演「『グレートリセット時代』で輝くエンジニアに必要なマインドセットとは」
最初に基調講演でお話されたのは澤円氏。かつて日本マイクロソフトにて業務執行役員を務め、現在は日立製作所にてLumada Innovation Evangelistとして活動されている人物です。
#テクノロジー全般や #サイバーセキュリティといった技術面の他、 #ビジネスマネジメントや #ピープルマネジメント、#プレゼンテーションといったマネジメントスキル、#マルチキャリアや #他拠点生活といった時代を体現するようなライフスタイルなど、実に多様な顔を持つことでも知られています。
インターネット登場に匹敵するほどの衝撃となったCOVID-19
そんな澤氏による講演テーマが「グレートリセット時代で輝くエンジニアに必要なマインドセット」ということで、まずは世の中の情報量に関するお話から始まりました。
現代の日本人が1日に触れる情報量は、平安時代の日本人が一生で触れる情報量とも言われる時代。時間と空間の課題を、飛行機や新幹線といった高速移動手段のテクノロジーが解決したことで、情報量が圧倒的に増えています。
情報量が圧倒的に増えている一方で、人間の脳のサイズやスペックは、実は20万年前からほぼ変わっていないと言われています。我々の情報処理能力はそこまで上がってはいない中で情報が増えているからこそ、デジタルは人類にとってのインフラになっていったわけです。
その上で、この「移動」という要素が大きく影響を受けることになったのが、COVID-19時代です。COVID-19により、自由に移動しづらい世界になってしまったわけです。これまで発展してきたデータと通信の手段によって、ビジネスを含めた生活自体は行えている状況ですが、逆に捉えると、ITが苦手だとビジネスパーソン生命の危機になる時代だともいえます。
「つまり、2020年に世界はリセットされたということになります。これは、実に25年ぶりのリセットになると考えています」
25年前といえば、ミレニアル世代以上の方であれば覚えているでしょう。「Windows95」が発売された年、つまりはインターネット元年となったとも言える年です。
1995年当時、それまでは電話やFax、手紙が主なコミュニケーション手段でしたが、メールやチャット、SNSへとシフトしていくきっかけとなりました。それから25年後の2020年。移動や対面が大前提でデザインされていたものも、どんどんとオンラインへとシフトしていきました。つまり、COVID-19はインターネット登場に匹敵するほどの衝撃だと言えそうです。
では、それぞれの「Before」の手段が完全に無くなったかというと、そんなことはありません。電話やFax、手紙は今でも使われており、今さらメールやチャットとFAXを比較するようなこともありません。すでに浸透しているものだからこそ、比較する必要性がなくなっており、人々は働き方に選択肢があることに気づいたことになります。これは、COVID-19前後においても同様だと言えそうです。
ゲームがリセットされる瞬間を狙え!
「デジタルの世界を生きるために必要なことは、マインドセットのアップデートです。僕のシリコンバレーの友人も、「シリコンバレーは地名ではなく、マインドセットだと現地の人はよく言う」と言っています」
このようにコメントする澤氏。ここで4象限マトリクスが表示されました。縦軸には「知識・経験」、横軸には「スピード」がプロットされています。ここに澤氏のキャリアを当てはめながら「自分が最強になれる場所」についての解説がスタート。
「僕は経済学部出身でプログラマーになったのですが、結果、スーパーポンコツエンジニアになりましたし、そもそも数字に弱いので、仮に僕に経理の仕事をやらせたら、左下の『“愚か”で“遅い”』ことになるでしょう。
次に、澤にプレゼンを禁止させたら、今度は左上の『“賢い”けど“遅い”』、つまりは知識・経験が豊富にあるけど、手を動かす機会がないので、口ばかりになるでしょう。
さらに、仮に澤をスライド作成専任スタッフにしたら右下の『“速い”けど“愚か”』、つまり作業としては速いが、作業者なので頭を使わないことになります。
この結果、以下のような弊害が発生しやすくなると言えます」
その上で、自分にとっての右上は何か?を考えることが、キャリアを考える上では大切になると言います。
澤氏の場合、1993年にCOBOLプログラマーとしてキャリアをスタートさせたわけですが、当時はコンピューターのことがさっぱりわからないので、思いきり挫折したと言います。そんな中で転機となったのは、先述したインターネット時代の到来だと言います。
「その時僕がとった行動が、自宅にコンピューターを買うということです。絶対に投資したほうが良いと思い、ローンを組んで、以下の機種を買いました」
当時はメインフレームの会社に勤めていたものの、会社のコンピューターはインターネットに接続されていない状況。帰宅してからネットサーフィン含めていじり倒したことで、澤氏は「IT業界の中でインターネットをよく知っている人」という立ち位置を徐々に確立していきました。
さらにその過程で、分かりにくい話を必死になって学び、知らない人でもわかるように説明をしていくことを繰り返したことで、結果として分かりやすく人に説明するスキルが身についていったと言います。
「今お伝えしたように、ゲームがリセットされる瞬間を狙うことが大切です」
自分が「最強」になれる場所を見つける
では、コロナ禍において澤氏がどのように動いたかというと、まずは東京・世田谷にある事務所でスタジオを組み、オンライン対応環境を徹底的に作り上げたと言います。
さらに、23年間務めた日本マイクロソフトも退職。その後、日立製作所から声がかかり、現在はLumada Innovation Evangelistとして楽しく活動しています。
「大事なこととして、自分が『最強』になれる場所を見つけるようにしましょう。ハーバード・ビジネススクールでは「旧来はKnowingに価値がありコストがかかっていたが、インターネット等の出現によってKnowingのコストが下がった」と言われています。それに替わってDoing、つまり手を動かしたものが価値になる時代に移ってきた。これが今、Being、つまりはどうありたいかを重要視する流れになってきています」
仕事は「幸せ」になるためにするもの、ということが原理原則だと強調する澤氏。あらゆる人は「マインドセット」次第で自由になることができるからこそ、少しばかりの「自己中」を推奨していると言います。
例えば、不要なミーティングを欠席するといった「やめること」を決めることで、可処分時間も増え、そこに対してより価値のある行動を当て込めるようになります。また、時間は「貸し借り」をするものだという捉え方も大事だと言います。
「要するに、自分への投資が不可欠な時代になってきています。もっと自分のために時間を使っていいし、お気に入りのワークスペースを見つけたっていい。『うちの会社』という大きなぼんやりとした言葉を使わず、必ず自分の言葉としてアウトプットすることを意識するべきでしょう」
澤氏は、多くの人はキャリアを二次元で考えるといいます。年収があの人よりも高い、あの人の方が自分よりも活躍している、などといった優劣が発生するのは、このキャリアの二次元思考に起因しているからだと言います。
「そうではなく、キャリアは宇宙遊泳です。宇宙空間だと上も下もないのです」
このときに、澤氏が意識していることが「外のモノサシ」を持つということだと言います。これは後述する通り、パラレルマーケターの小島氏も強調していることです。外のモノサシを持てる場所やコミュニティに顔を出し、そこで情報を得るようにしたことで、様々な気づきにつながっていったと言います。
未来は面白いに決まっている
「会社の肩書きを使わない活動をすることで、全ての仕事は社会貢献であると気づき、『ステキなことをしているんだ』という自信にもつながります。もちろん、最初からフルスイングするのではなく、ちょっとだけグレて、いつでも戻ってこれるような感じで1歩目を踏み出す。そして、慣れたらそれを何個もやってみる。こんな進め方が良いのではないでしょうか。
今こそ『自己中』になる最高のチャンスです」
江戸時代の武士にとって最も大事だったもの。それは「世間体」です。では、この「世間」という言葉の語源は何かというと、元々はサンスクリット語の「loka:壊され、否定されていくもの」だと言います。「世」は時間を表し、「間」は空間を表す。つまり、時間と空間は、壊され否定されていくものだということです。
「テクノロジーは常に、時間と空間を超えます。そのテクノロジーを使って、自分がコントロールできることに集中する。これが非常に大切です。
未来は面白いに決まっています。一緒に面白い未来を作っていきましょう!」
小島英揮氏 基調講演「外のモノサシを持とう」
次にお話されたのは、パラレルマーケターの小島英揮氏。自走するコミュニティこそがビジネスも人生もグロースさせることを記した著書『コミュニティマーケティング』を読んだことがある方も多いのではないでしょうか。
もともと、マーケティングで生業を立てたいと考えていたという小島氏は、会社にこだわりを持つ就「社」では無く、就「職」で1991年よりキャリアをスタート。富士通グループのPFUやAdobe等を経て、2009年よりAWSにて、日本法人の第一号社員、さらにはAWS全体の米国外で初のマーケティング担当として従事し、8年ほどかけてAWSの成長に貢献された後は、2017年より独立し、Still Day One 合同会社の代表社員として様々な会社のマーケティング支援を行っています。
上図の通り、キャリアが進むにつれて、スキルやできることを広げていった小島氏のキャリアタイムライン。所属する組織や役割のチェンジが、スキル拡大の大きなトリガーになっていったと言います。
人任せにしないキャリア形成のススメ
最初に小島氏は、これからの時代を生きていく上では「人任せにしないキャリア形成」をするべきだと強調します。言い換えると、「自分が主導権を握れる=コントロールできることに注力する」ということ。
世の中にはコントロールが難しいことと可能なことがあり、VUCAの時代においては、コントロールが難しい領域(上図左側)の見通しも立ちにくい状況になっています。
様々な価値が変わりゆく時代においては、社内にロールモデルがいない時代になっていくと予想する小島氏。前提条件があまり変わらない時代では社内の経験者から学ぶことが非常に大事でしたが、ロールモデルを社外に求めざるを得ない時代になっているというわけです。
一方で、自分でコントロールできることは、組織や市場などの「器」の選択と、スキルやアウトプット等「自分」の努力に大別されます。4象限で表現すると以下図の通り。
人任せにせず、器と自分を「適切に」変えるのに有効な考え方を知る上で小島氏が挙げるのが「孫子メソッド」。
「彼を知り己を知れば百戦殆からず」ということで、彼=敵(競合・環境)と己=味方(自分の能力)の実情を熟知していれば、百回戦っても負けないということです。逆に、敵情を知らず味方のことだけを知っていては、勝ったり負けたりして勝負がつきませんし、敵情のことも味方のことも知らないと、必ず負けてしまうことになります。
なぜこの孫子メソッドをお勧めしているかというと、王者の戦略を取れる人や会社は少ないことが挙げられます。誰しもが相手の数十倍の資金や能力などのリソースがあるわけではないからこそ、孫子メソッドを実行して、状況や自身を俯瞰することが大切だと、小島氏は主張します。
そして、ここで必要となるのが、講演タイトルにもある「外のモノサシ」だと言います。既存の器から出ない限り外のモノサシを持つことは難しく、外に出てコミュニティに参加することが大事だと言います。
ここでいうコミュニティとは、目的や理念等の「関心軸」を共有する人の集まりと定義されます。
「外のモノサシ」と「コミュニティ」
関心軸が同じだと、異なる立場や視点であっても、コミュニケーションや相互理解が成立しやすいというメリットがあります。技術者で考えた場合、自分のアウェイな技術に関するコミュニティにはなかなか足が動かないかもしれませんが、自分が何かしら関わっている技術のコミュニティであれば、よりハードル低く参加できるでしょう。もちろん、参加したらずっと参加し続けなければいけないわけでもありません。
関心軸が同じで、立場が異なる人の集まりに参加すると、俯瞰した視点や尺度に触れることになり、「外のモノサシ」が得られやすくなります。このように、コミュニティで相手(顧客、同業者)と、自分の力量、ポジションを理解することが、百戦殆からずの世界へとつながっていくということです。
「これは様々な方が発信されている内容で、一例として、上場企業であるフジテック株式会社の常務・友岡さんは『情シスやエンジニアをコミュニティに放流しよう』とおっしゃっています」
コミュニティで拡がるキャリア
このように「外のモノサシ」と「コミュニティ」を通じて視点が広がると、必然的にキャリアも拡がることになります。つまり、コミュニティによって自分の「関係人口」が増える、ということです。
そして関係人口が増えると、自分にとってのロールモデルを見つけやすくなり、また自分を「想起」してくれる人も増えることになります。自分が何者かを適切な人に知ってもらう機会が増えるということです。
「プレゼンといえば澤さん、コミュニティマーケティングといえば小島みたいな形で、自分は、誰に、どう想起されたいのか。これを考えることが大切です。もちろん、いきなり決めるのが難しければ、最初は目指す人を探すのも良いと思います」
では、想起がどのように拡がるかというと、そのスジの人=コミュニティを通じて拡がることが多い。そしてベストな拡がり方が“sell through the community”、つまり、コミュニティの中だけでなく、コミュニティを通じてより多くの人に想起をスケールさせるということです。
この言葉は、小島氏がAdobeにいた頃に言われたものだと言い、コミュニティの中で正しく想起されるためには、コミュニティに売るのではなく、コミュニティに満足してもらうのが大切だということに気付いたとのことです。
「特にコミュニティを通じてアウトプットをすることが、想起をされるようになるのに最も効果的かなと思います。人に話すでもいいし、文章を書くでもいいし、みんなに共有するでもいいです。更に、多様なコミュニティに参加しアウトプットすることで、有益なフィードバックループを数多く持てるようになります。その結果、想起が多様かつ強力になるとともに、「外のモノサシ」も増えていきますから、変化への対応力も鍛えられるのでオススメです」
自分のハッシュタグを持とう
最後に、小島氏がオススメするのが、「自分のハッシュタグを持つ」ということ。小島氏の場合は上の通りで、これにより、自分のキャリアの次なる方向性が向こうからやってきやすくなると言います。
ハッシュタグが増えていくということは、領域が増えていき、掛け合わせによる希少性につながっていきます。
「僕の場合、もともとはAWSにいたということもあり最初はテクノロジー系のお声がけが多かったのですが、次第にイベントやマーケティング関連の文脈でのお声がけいただく機会も増えていき、領域が自然と広がっていきました。
以上、本日は人任せにしないキャリア形成のオススメ、そのための『外のモノサシ』と『コミュニティ』の大切さ、そして自分のハッシュタグを持つことについてお伝えしました。ぜひこの3つの視点で明日からの行動を変えていくと、数年後に大きなキャラチェンジがもたらされるし、目の前の見方も変わってくると思います」
社会イノベーションを実現する日立エンジニアの働き方
当日は上述した2セッションの他に、日立製作所のエンジニア2名による技術講演も行われました。以下、それぞれの要点をお伝えします。
未経験から1年でクラウドエンジニアとして活躍する
最初に発表したのは、日立製作所のSoftware CoE クラウドビジネス推進センタ(以下、CBC)所属エンジニアとして、クラウド案件の技術支援に従事する水越裕也氏。2020年に設立されたCBCでは、日立グループの各部門の事業成長に貢献するべく、クラウドの利活用に向けた活動や支援を行っています。
ほぼ未経験から1年でAWS、GCPのプロフェッショナル資格を取得したという水越氏の講演テーマは「未経験から1年でクラウドのプロフェッショナルになってみた ~日立の楽しいエンジニアライフ~」。
日立ならではのクラウド案件の紹介や、SREチーム向けにアラート対応をAWS Lambdaで改善したエピソード、AWS LambdaのCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)の仕組みを構築した話といった本人の担当業務の詳細、それに付随する日立で働くことの楽しさが発表されました。
イベント当日の発表資料は、以下よりダウンロードしてください。
また、クラウドビジネス推進センタの業務詳細ややりがい等については、以下の記事もご覧ください。
OT×ITで社会イノベーションに切り込む!今、日立製作所のクラウドエンジニアが面白い
OSSコントリビュートのサイクルを回す
次に発表したのは、日立製作所のSoftware CoE OSSソリューションセンタ所属の認証認可スペシャリストとして、API/SSO関連案件の支援や認証認可・API管理関連OSSへのコントリビュート、OSS活用事例や検証結果の発表等に従事する田畑義之氏。
2015年に設立されたOSSソリューションセンタでは、オープンソースに特化した組織として、ソリューションの提供はもちろん、OSSコミュニティや標準化活動への参加を通じて、OSSとその関連技術やコンプライアンスの発展や普及に貢献し続けています。
講演テーマは「日立でOSSにコントリビュートするということ」で、上に表示した
OSSスキームそれぞれの要素についての具体的な内容を解説。サイクルを回していくことで、コミュニティ貢献による技術力の向上や案件採用数の増加がもたらされ、それに伴い顧客事例の紹介や複数OSSを絡めたソリューションの紹介など、アウトプットする機会も質も向上するというポジティブな影響が発表されました。
イベント当日の発表資料は、以下よりダウンロードしてください。
また、OSSソリューションセンタの業務詳細ややりがい等については、以下の記事もご覧ください。
日立のエンジニアライフの実態とは?超エンジニアドリブンな、OSSセンタのワークスタイルに迫る。
パネルトーク(澤氏 × 小島氏 × 水越氏 × 田畑氏)
最後に、ここまで登壇された4名によるパネルトークで盛り上がりました。ここでは、3つのテーマに対して、それぞれの登壇者による発言の要点を絞ってお伝えします。
トークテーマ①:澤氏・小島氏の新しい働き方について
澤: 僕の場合、場所も時間も仕事内容も、制約がどんどんなくなったことが大きかったです。あらゆる人が顧客になり得る状況になったからこそ、僕の中でのトッププライオリティーは、貢献する相手の幅を広げることにあります。教科書がない世界の話なので、自分で作るしかない。もちろん、小島さんのような参考事例をチラチラと見ながら進めています。
その上で、具体・抽象・汎用という分け方で仕事を捉え、パラレルでやること前提に、あまり具体を掴まないようにしています。
小島: パラレルでやると時間がなくなる問題があると思います。クライアント対応としては代走、伴走、そしてコーチという分け方が考えられると思うのですが、代走を増やすと1〜2つだけでいっぱいになってしまいます。伴走を増やしてディシジョンメイキングを中心に活動すれば、多くのビジネスに携わることができると考えています。
僕自身、「寝ないでやればいい」と考えていた時期もあったのですが、それだとどうしても2倍・3倍ができないんですよね。どこかで抽象化して伴走体制を作ることが、パラレルでスケールさせたい人には大切なのではないでしょうか。
トークテーマ②:今後、エンジニアに求められる働き方や、変化について
小島: これからますます、好奇心の張り方が大事になっていくと思います。いつの間にか攻守が入れ替わってるみたいなことが、テクノロジーの世界では今以上に加速度的になっていくと思うので、1人では対応が難しくなっていきます。だからこそ、自分の周りに信頼できる目利きを置けて、かつ自分もその人達の目利きとしていかに機能できるか、ということが大切になると思います。
澤: 今の小島さんのお話は外側の環境に対することだったので、僕からは、それに対する内側の話として。外側の情報を全て適切にキャッチして正解を掴もうとするのは無理です。最初から不可能であることを前提にして、その上で、最も自分が関わっていきたい世界観にプロットしていくのが大事です。このようなBeingを無視して外側のDoingだけを追いかけてしまうと、自分の人生を生きていないことになってしまいます。
トークテーマ③:日立でできる新たな働き方
水越:先ほどのおふたりの講演にもあった、「こうなりたいというビジョンを持つ」という話について、まさにこれからの日立に当てはまるなと思いました。
日立では、自分が何をやりたいかを上長に伝える1on1の仕組みが取り入れられており、自分から活躍できる場を獲得していく環境ができつつあると感じています。
また、「技術と心中しない方が良い」という話もありましたが、これについても、日立ではグループ公募やFA制度があって、やりたいことがあったら自ら手を挙げ、活躍の場を変えるチャレンジをすることができます。
田畑:エンジニアはアウトプットしてナンボのところがあるので、現在のようにリモートほぼ100%の状況になっても、日立として社外貢献の場が広がっていると思います。
リモートワークにしても、コロナの前から活用する社員も多く、変化としては少ない方だったのではないかと個人的には感じます。柔軟な対応ができるというところが、日立の良いところかなと思います。
澤: 今年から日立にジョインをしたわけですが、まず僕を雇っている時点で変化してきているなと感じます(笑)僕としては仮入部のような感覚で入ったのですが、その時にお伝えしたのが「雑に扱ってくれ」です。そしたら本当に雑に扱ってくれて、なんだできるじゃん!と思いました。思ったよりもフレキシビリティが高いし、水越さんや田畑さんの上司の方などと何度もやりとりしていますが、本人達がめちゃくちゃ変わる気満々なんです。そもそも日立には「変人を尊ぶ」というDNAがあって、国分寺の中央研究所にも「変人橋」という名前の橋があったくらいですからね(現在は「返仁橋」)。
小島: 社外の僕から見ると、例えば「クラウドビジネス推進センタ」という部署が組織の中心としてあるのは、10年以上前からクラウドをやってきた人間からすると大きな変化だと感じています。一方で、どこに行こうとしているのか、どんな想起をしてほしいのかは、もっと明確に社内外に発信しても良いかなと思いました。
今「変わっています」という会社は多くなっていますが、どうなるという部分を明確に想起できているところはまだ少ないので、早くそこに持っていければ、さらに変化が加速すると思います。
アフタートークを含めると5時間以上にわたって開催されたSocial Tech Talk #02。最後まで白熱したディスカッションや、参加者からの質問が続きました。
最後の小島氏からの指摘に対する日立の1つのアクションが、まさに澤氏のジョインにも現れる「Lumada」の存在だと言います。家電からプラントまで幅広く作っている会社だからこそ、Lumadaの旗印のもとに、全てをデータという横串でつなげ、その上でどれを使ってもいいよという世界観を描こうとしている、とのことです。これをいかに広めていくかが現在の日立のステージであり、この点について代走を依頼されているのが澤氏だという理解で良いでしょう。
編集後記
自身の働き方やキャリアをじっくりと振り返るきっかけになったSocial Tech Talk #02。豪華登壇者による5時間を超えるイベントでは、様々な金言が飛び出してきました。
- ゲームがリセットされる瞬間を狙うことが大切
- 自分が「最強」になれる場所を見つける
- 必ず自分の言葉としてアウトプットする
- キャリアは宇宙遊泳
- 今こそ「自己中」になる最高のチャンス
- 自分が主導権を握れることに注力する
- 自分の「関係人口」を増やす
- Sell Through The Community
- 自分のハッシュタグを持つ
この中から1つ、まずはベイビーステップでの実践をスタートしてみることが、参加したことの大きな成果になるのではないでしょうか。ぜひ本記事や、リンクされている資料等を参考に、ご自身のキャリアにプラスとなるアプローチを見つけていただければと思います。
取材/文:長岡武司
「Qiita×HITACHI」AI/データ×社会課題解決 コラボレーションサイト公開中!
「Qiita×HITACHI」AI/データ×社会課題解決 コラボレーションサイト公開中!
日立製作所の最新技術情報や取り組み事例などを紹介しています
コラボレーションサイトへ
日立製作所の人とキャリアに関するコンテンツを発信中!
デジタルで社会の課題を解決する日立製作所の人とキャリアを知ることができます
Hitachi’s Digital Careersはこちら