数学史上、オイラー(Leonhard Euler,1707年~1783年)はどうやら以下の形で定義可能な代数方程式(Algebraic Formula)と、その基準に従わない超越方程式(Transcendental Formula)の概念を最初に峻別し、かつその統合を試みた最初の人と位置付けられているらしいのです。
【初心者向け】代数方程式(Algebraic Formula)について。
未知数xを含む方程式(Formula)f(x)=0には様々な形式があり、このうち代数的演算(Algebraic operations、加減算、乗除算、冪根)を有限回用いて表せる代数方程式(Algebraic Formula)という。
代数方程式でない方程式のことを超越方程式と呼びます。(ネイピア数exp(1)=2.718282を式中に含む)自然指数関数(Natural Exponential function)や自然対数関数(Natural Logarithmic function)、(円周率π=3.141593を式中に含む)三角関数(Trigonometric Function)の様に超越数(Transcendental Number)を式中に含む形のものが一般的で数値的な解法を取るのが普通です。
超越的な実数はすべて有理数(Rational Number。二つの整数a,b(ただしb≠0)を用いてa/bという分数で表せる数。b=1とすることにより、任意の整数を有理数として扱うことができる) ではない無理数(Irrational number=無比数)であるが、無理数sqrt(2)は代数方程式x^2−2=0の解であるから、逆は成り立たない。よく知られた超越数にネイピア数(自然対数の底)や円周率があり、またほとんど全ての複素数が超越数であることが分かっているが、超越性(Transcendence)が示されている複素数のクラスはほんの僅かであり、与えられた数が超越数であるかどうかを調べるのは難しい問題だとされている。例えば、ネイピア数と円周率はともに超越数であるにもかかわらず、それをただ足しただけのπ+eすら超越数かどうか分かっていない。
ところで現時点における私はこの方面のオイラーを殆ど「自然指数関数にマクリーン級数(MacLean Sries)を適用した結果からオイラーの公式(Eulerian Formula)e^θi=cos(θ)+sin(θ)iを思いついた人」程度にしか理解出来ていません。
【Rで球面幾何学】オイラーの公式を導出したマクローリン級数の限界?
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自然指数関数にマクリーン級数を適用すると、この関数がCosh(θ)関数とSinh(θ)関数の合成結果である事が明らかになる(これ自体は誰にでも再現可能な数理)。
- ところでCosh(θ)関数のマクリーン級数適用結果の符号の位置を弄るとCos(θ)関数のそれと一致する(発想の飛躍その1)。
- またSinh(θ)関数のマクリーン級数適用結果の符号の位置を弄るとSin(θ)関数のそれに複素数(0±i)を掛けた結果と一致する(発想の飛躍その2)。
- 改めて両者を合成するとe^θiとcos(θ)+sin(θ)iの2つの式が得られる(ただしここに現れるSin波とSin波の周期は何故か2πではなく複素等比数列-1^x=(0±1i)^2xと同じく2なのである)。
ノーベル賞を受賞した物理学者、高校生時代にこの公式と出会った時「何故突然、冪算の添字に複素数が現れる?(それまでこの場合について一切習わないし、これ以降も誰もそれについて語らない)」「ここではあくまでe^xiの定義が語られているだけであってe^x自体が何かについて語られている訳ではない」と直感したそうです。高校生にしてその発想に至る人間が科学の世界を発展させてきたという話ですね。
【無限遠点を巡る数理】オイラーの公式と等比数列④「中学生には難しいが高校生なら気付くレベル」?
それではどう考えれば良いのでしょう?
【無限遠点を巡る数理】オイラーの公式と等比数列③Cos波とSin波の正体?
- そもそも「(0±1i)を掛ける」とはガウス平面上において座標を実部中心に±90度回転させる事を意味する。
- 要するにこの演算により元座標はピタゴラスの定理(Pythagorean Theorem)y=±sqrt(1-x^2)に従って原点からの距離を保ち同心円を描くのである(-1^2=(0±1i)^2xの数理)。
【Rで球面幾何学】等差数列(算術数列)②数直線概念から同心円集合概念へ
だから(e^xi+e^-xi)/2の演算により「X軸上の平均を求める」イメージでCos(θ)波が取り出せる。
- そして(e^xi-e^-xi)/2iの演算により「Y軸上の平均を求める(その後、回転によりX軸上の展開に変換する)」イメージでSin(θ)波が取り出せる。
- 当時の記録にオイラーがこの二つの波形の合成で円が描ける事自体を「発見」と書き残していないところから見て、物理学における「等速円運動をX軸から観察するとCos波、Y軸から観察するとSin波が測定される」現象自体の方が先だったと推察される(ただしこの辺りの詳細は後世に伝わっていない)。
【初心者向け】物理学における「単位円筒」の概念について。
- その一方で自然指数関数のこうした側面の研究が発展する形で「対称的なものと交代的(反対称的)なものに分解するための恒等式」x=(X+Y)/2+x=(X-Y)/2の概念が次第に充実していったと目される(ただしこの辺りの詳細もやはり後世に伝わっていない)。
行列・関数・多項式に共通する有名な性質
この様にe^xが幾ら微分しても、幾ら積分してもe^xのままである事は、ピタゴラスの定理(Pythagorean Theorem)z^2=sqrt(x^2+y^2)の出力結果がどれも1である事と深い関係があったのです。要するに回転による影響を受けない=(中心からの距離だけが意味を持つ)1次元上の概念だったからなんですね。
【初心者向け】複素共役のアニメーション表示について。
すると残された問題は「どうしてe^xiとe^-xiの平均を求めると(X軸上のCos波やY軸上のSin波といった)円状分布(Circular Distribution)を構成する材料が得られるか」だけとなります。しかし考えてみれば自然指数関数の正体は「0を中心に-InfからInfを直線で結ぶ均等尺を1を中心に0からInfを結ぶ直線に射影して現れる対数尺」な訳ですから、この演算自体に(等差数列上の)1単位の均等尺を(等比数列上の)ネイピア数単位の対数尺に変換する効能があり(現時点の私はこの数理自体の詳細を全く知らない)、(0±1i)方向へのπ倍のベクトル入力により円形性(Circularity)を取り戻すとでも考えるしかないのです(それがまさに自然指数関数Cosh波とSinh(θ)波にオイラーが加えた操作だった訳だが、むしろこの操作が数理構造全体において如何なる意味を持つかが、私が知る限り未解明のまま)。
Int01<-function(Rad){
cx00<-seq(-3,3,length=61)
f0<-function(x) 1^x
cy00<-f0(cx00)
s00<-complex(re=cx00,im=cy00)
plot(s00,type="l",xlim=c(-2,2),ylim=c(-2,2),main="exp(a=0→1)^πi",xlab="Real",ylab="Imaginal",col=rgb(0,1,0))
#-1^x=(0±1i)^2x(i^2=-1)
par(new=T)#上書き
c01<-seq(-pi,pi,length=61)
f0<-function(x) exp(Rad)^(c01*(0+1i))
s01<-f0(cx00)
plot(s01,type="l",xlim=c(-2,2),ylim=c(-2,2),main="",xlab="",ylab="",col=rgb(0,0,1))
par(new=T)#上書き
plot(s01+1,type="l",xlim=c(-2,2),ylim=c(-2,2),main="",xlab="",ylab="",col=rgb(1,0,0))
par(new=T)#上書き
plot(s01-1,type="l",xlim=c(-2,2),ylim=c(-2,2),main="",xlab="",ylab="",col=rgb(1,0,0))
par(new=T)#上書き
plot(s01+2,type="l",xlim=c(-2,2),ylim=c(-2,2),main="",xlab="",ylab="",col=rgb(0,0,1))
par(new=T)#上書き
plot(s01-2,type="l",xlim=c(-2,2),ylim=c(-2,2),main="",xlab="",ylab="",col=rgb(0,0,1))
abline(h=0,col=c(200,200,200))
abline(v=0,col=c(200,200,200))
abline(v=1,col=c(200,200,200))
abline(v=2,col=c(200,200,200))
abline(v=-1,col=c(200,200,200))
abline(v=-2,col=c(200,200,200))
even01<-paste("y=(e×",Rad,")^πi(Even)")
odd01<-paste("y=(e×",Rad,")^πi+1(Odd)")
legend("bottomleft", legend=c("y=1^x",even01,odd01), lty =c(1,1,1),col=c(rgb(0,1,0),rgb(0,0,1),rgb(1,0,0)))
}
#アニメーション動作設定
Time_Code<-seq(0,1,length=11)
#アニメーション
library("animation")
saveGIF({
for (i in Time_Code){
Int01(i)
}
}, interval = 0.1, movie.name = "Int00.gif")
ところでオイラーにとってこの数理の発見は代数方程式(Algebraic Formula)と超越方程式(Transcendental Formula)の概念を統合しようという壮大な構想の一部に過ぎず、だから当人はそれほど大した内容とは考えていなかった様なのです。
無限小解析はオイラーの三部作の段階で関数概念が登場したが, 全体の枠組みは依然として 「変化量とその微分」 のままであった. オイラーを踏襲したラグランジュやコーシーの解析教程では関数概念が主役の座を占めて, 関数の微分, 関数の積分の定義が始点になった.この路線はなお伸展し, やがて変化量の概念は完全に消失し, 「全く任意の関数」を対象とする今日の解析教程の出現を見た. そうしてその 「全く任意の関数」 の概念を示唆した最初の人物もまたオイラーである. 曲線から関数へ. 変化量から関数へ無限小解析のこの二通りの変容過程の結節点に位置する人物が, 同じ一人の数学者オイラーなのであった.
現段階の私にはさっぱりですが、とにかくこれで終わりどころか、ここから始まる物語があるという事…そんな感じで以下続報。