動機
- 長らく数学から離れているので、基本から思い出すためのメモ。まずは定義を復習するところから。
- 自分にとって復習のためと、他に記事書くときに毎回基本から書いていると大変なので参照先として残しておきたい。
- 記法もメモっておく。今更それ書くの?みたいなのは、どちらかというとMathJaxの例として残している。
- qiitaにある他の数学の記事を読む際に、定義、性質を思い出すために使いたい
定義以前の話
用語
- 公理(axiom):その理論体系において理由ぬきに成り立つ前提条件、仮定のこと。
- 定義(definition):数学的な概念や、数学的対象のもつある性質に、名前を付けること。
- 命題(proposition):真か偽かを示せる文章や式のこと。公理と定義から論理的に導いた数学的対象の性質のうち、定義から比較的簡単に導けるものにこれがついていることが多い。命題のうち重要なものは定理と呼ばれる。
- 補題(lemma):定理を導くために使われる命題。長い証明などで段階的に定理を証明するために、重要な性質として補題を切り出すことがある。
- 定理(theorem):命題のうち、自明ではなく、応用範囲が広かったり、分野を関連づけるような、比較的影響の大きいものに付与される。
- 系(corollary):定理から直ちに導かれる重要な命題。
- 予想:命題や定理の候補ではあるが、厳密に証明されていないため、まだ命題、定理になっていない文章や式。
前提 (議論の出発点)
- 集合や代数の話の前提として、自然数 $N$ 、有理数 $Q$、整数 $Z$ くらいは既知のものとする。
- 微積分や線形代数の前に、切断から実数の連続性の話をする。このときも $N$ 、$Q$、$Z$ を既知としておく。
- 幾何学の前に、微積分、線形代数、位相空間の話を書いておく
- 確率論は、、、関連している話は多いんだが、追々。。
集合論
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代数学
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線形代数
定義 (線形空間 linear space, ベクトル空間 vector space)
集合 $V$ において、2つの演算 , ベクトルの加法 (i)、体 (係数体) $F$ によるスカラー乗法 (ii) が定義されており、かつ後述の8つの公理を満たす場合、$V$ は線形空間 (またはベクトル空間) と呼ばれる。(係数体 $F$ 上のベクトル空間、体 $F$ 上のベクトル空間)
演算
(i) ベクトルの加法 : $v , w \in V \Rightarrow v + w \in V$
(ii) スカラー乗法 (c がスカラー) : $v \in V , c \in F \Rightarrow cv \in V$
公理 (axioms of vector space)
$u, v, w, 0 \in V$ 、$c, d, 1 \in F$ とする。
(1) 加法の交換法則 : $v + w = w + v$
(2) 加法の結合法則 : $(v + w) + u = v + (w + u)$
(3) 加法の単位元 : $v + 0 = v$
(4) 加法の逆元 : $v + (-v) = 0$
(5) ベクトルの加法に対するスカラー乗法の分配法則 : $c (v + w) = cv + cw$
(6) 係数体の加法に対するスカラー乗法の分配法則 : $(c + d)v = cv + dv$
(7) 係数体の乗法に対するスカラー乗法の結合法則 : $c (dv) = (cd) v$
(8) スカラー乗法の単位元 : $1v = v$
定義 (実線形空間、複素線形空間)
係数体 $F$ が実数体 $R$ であるとき、この $F$ 上のベクトル空間を実線形空間、または実ベクトル空間という。
係数体 $F$ が複素数体 $C$ であるとき、この $F$ 上のベクトル空間は、複素線形空間、または複素ベクトル空間などと呼ばれる。
例 (n次元実ベクトル空間)
実数体を $R$ とし、 $\forall i \in \{1, ..., n \}$ に対して $v_i \in R$ とする。
$n$ 個の実数の組 $\boldsymbol{v} = (v_1, ..., v_n)$ を $n$ 次元実ベクトルと呼ぶ。
実数体 $R$ を係数体として、ベクトルの加法 (i) とスカラー乗法 (ii) を以下のように定めるとき、$\boldsymbol{v} = (v_1,...,v_n)$ 全体の集合 $R^n$ を $n$ 次元実ベクトル空間と呼ぶ。
(i) $\boldsymbol{v} = (v_1,...,v_n)\ ,\ \boldsymbol{u} = (u_1,...,u_n) $ に対して $\boldsymbol{v} + \boldsymbol{u} = (v_1 + u_1,...,v_n + u_n)$
(ii) $c \in R , \boldsymbol{v} = (v_1,...,v_n)$ に対して $c \boldsymbol{v} = (c v_1,...,c v_n)$
\boldsymbol{v} + \boldsymbol{u} = (v_1 + u_1,...,v_n + u_n)
c \boldsymbol{v} = (c v_1,...,c v_n)
定義 (部分空間、部分ベクトル空間)
$F$ を係数体、$V$ をベクトル空間とする。部分集合 $S \subset V$ で、$V$ の演算 (ベクトルの加法 (i) およびスカラー乗法 (ii)) についてベクトル空間となっているものを、部分ベクトル空間、部分空間と呼ぶ。
(i) $s, t \in S \Rightarrow s + t \in S$
(ii) $s \in S , c \in F \Rightarrow cs \in S$
S \subset V
s, t \in S \Rightarrow s + t \in S
s \in S , c \in F \Rightarrow cs \in S
定義 (線形結合、一次結合)
$V$ をベクトル空間とし、$v_1,...,v_n \in V$ とするとき、スカラー (係数体 $F$ の元) $c_1,...,c_n$ に対して、
$\displaystyle \sum_{i=1}^{n} c_i v_i = c_1 v_1 + ... + c_n v_n$
をベクトル $v_1,...,v_n$ の線形結合または一次結合という。
\displaystyle \sum_{i=1}^{n} c_i v_i = c_1 v_1 + ... + c_n v_n
定義 (線形独立、線形従属)
$V$ をベクトル空間とする。$V$ のベクトル $v$ を $v_1,...,v_n \in V$ の線形結合で表すとき、ただ一通りで表せる場合、$v_1,...,v_n$ は線形独立または一次独立であるという。2 通り以上の表し方が存在する場合は、線形従属または一次従属という。
$V$ の係数体を $F$ とし、$c_1,...,c_n \in F$ とすると、一次独立とは次が成り立つことである。
$\displaystyle \sum_{i=1}^{n} c_i v_i = 0 \Rightarrow \forall c_i = 0$
\displaystyle \sum_{i=1}^{n} c_i v_i = 0 \Rightarrow \forall c_i = 0
定義 (生成する)
$V$ をベクトル空間、$F$ を係数体とする。$V$ のベクトル $v_1,...,v_m \in V$ が $V$ を生成するとは、$\forall v \in V$ に対して $\exists c_1,...,c_m \in F$ が存在し、
$v = \displaystyle \sum_{i=1}^{m} c_i v_i$ が成り立つことをいう。
v = \displaystyle \sum_{i=1}^{m} c_i v_i
定義 (基底)
$V$ をベクトル空間とする。$v_1,...,v_m \in V$ が次の 2 つを満たすとき、$v_1,...,v_m$ は $V$ の基底という。(基底は、いいかえると、一次独立な生成系のことを指す)
(1) $v_1,...,v_m$ は一次独立 (線形独立)
(2) $v_1,...,v_m$ は $V$ を生成する ($V$ の任意のベクトルは基底の一次結合として表せる)
$v_1,...,v_m \in V$ の一次結合全体の集合を $$ と書く。これは $V$ の部分空間となる。
定理 (基底の存在)
ベクトル空間には基底が存在する
(これはツォルンの補題より証明される)
定理 (ベクトル空間の次元)
ベクトル空間 $V$ の基底 $v_1,...,v_m$ を構成するベクトルの数 $m$ は、基底の取り方によらず一定である。ベクトル空間の基底の個数 $m$ を $V$ の次元といい、dim $V$ と表す。
定義 (ベクトルの内積)
$V$ をベクトル空間とし、$\boldsymbol{a} , \boldsymbol{b} \in V$ とする。
$\boldsymbol{a} = (a_1,...,a_n) , \boldsymbol{b} = (b_1,...,b_n)$ とするとき、写像 $V \times V \mapsto R$ を
$(\boldsymbol{a} , \boldsymbol{b}) = \displaystyle \sum_{i=1}^{n} a_i b_i$
と定義し、これをベクトル $\boldsymbol{a} , \boldsymbol{b}$ の内積という。
\boldsymbol{a} = (a_1,...,a_n) , \boldsymbol{b} = (b_1,...,b_n)
V \times V \mapsto R
(\boldsymbol{a} , \boldsymbol{b}) = \displaystyle \sum_{i=1}^{n} a_i b_i
定義 (ベクトルのノルム)
$V$ をベクトル空間とし、$(\boldsymbol{a},\boldsymbol{b}) : V \times V \mapsto R$ をベクトルの内積 とする。$\boldsymbol{v} \in V$ に対して
$\| \boldsymbol{v} \| = \sqrt{(\boldsymbol{v}, \boldsymbol{v})}$
と定義する。$\| \boldsymbol{v} \|$ をベクトル $\boldsymbol{v}$ のノルム (ユークリッドノルム) という。
(\boldsymbol{a},\boldsymbol{b}) : V \times V \mapsto R
\\| \boldsymbol{v} \\| = \sqrt{(\boldsymbol{v}, \boldsymbol{v})}
命題 (ベクトルのノルムの性質)
$V$ をベクトル空間、$c \in R \ ,\ \boldsymbol{v} \in V$ とする。
(i) $\Vert \boldsymbol{v} \Vert \geq 0$ , $\Vert \boldsymbol{v} \Vert = 0 \Leftrightarrow \boldsymbol{v} = 0$
(ii) $\Vert c \boldsymbol{v} \Vert = \vert c \vert \Vert \boldsymbol{v} \Vert$
(iii) $\Vert \boldsymbol{u} + \boldsymbol{v} \Vert \leq \Vert \boldsymbol{u} \Vert + \Vert \boldsymbol{v} \Vert$
(i) \Vert \boldsymbol{v} \Vert \geq 0 , \Vert \boldsymbol{v} \Vert = 0 \Leftrightarrow \boldsymbol{v} = 0
(ii) \Vert c \boldsymbol{v} \Vert = \vert c \vert \Vert \boldsymbol{v} \Vert
(iii) \Vert \boldsymbol{u} + \boldsymbol{v} \Vert \leq \Vert \boldsymbol{u} \Vert + \Vert \boldsymbol{v} \Vert
定義 (ノルム空間)
ノルムの定義されたベクトル空間をノルム空間と呼ぶ。
定義 (ベクトルの外積)
$\boldsymbol{a}=(a_1,a_2,a_3), \boldsymbol{b}=(b_1,b_2,b_3) \in R^3$ とする。このとき、ベクトルの外積 $\boldsymbol{a} \times \boldsymbol{b}$ を以下で定義する。
$\boldsymbol{a} \times \boldsymbol{b} = (a_2 b_3 - a_3 b_2 \ ,\ a_3 b_1 - a_1 b_3 \ ,\ a_1 b_2 - a_2 b_1)$
定義 (線形写像)
$V, W$ を体 $F$ 上のベクトル空間とする。写像 $f : V \mapsto W$ が以下の (i), (ii) を満たすとき、写像 $f$ を体 $F$ 上の線形写像という。
(i) $f(\boldsymbol{x} + \boldsymbol{y}) = f(\boldsymbol{x}) + f(\boldsymbol{y}) \ (\forall x,y \in V)$
(ii) $f(c\boldsymbol{x})=c f(\boldsymbol{x}) \ (\forall x \in V, \forall c \in F)$
定義 (像 image, 核 kernel)
$V, W$ を体 $F$ 上のベクトル空間、$f : V \mapsto W$ を線形写像とする。
$Im(f) = { f(\boldsymbol{v}) \in W | v \in V}$ を $f$ の像という。
$Ker(f) = { \boldsymbol{v} \in V | f(\boldsymbol{v}) = 0 }$ を $f$ の核という。
定義 (行列表現)
$V, W$ を体 $F$ 上のベクトル空間、$f : V \mapsto W$ を線形写像とする。
$V$ の基底を $v_1,...,v_n$ とし、$W$ の基底を $w_1,...,w_m$ とする。
このとき、$v \in V$ は $c_1,...,c_n \in F$ により
$v = \displaystyle \sum_{j=1}^{n} c_j v_j$
と表せるが、$f$ は線形写像であり $W$ は $w_1,...,w_m$ から生成されるので、$\exists d_{i} \in F$ により
$f(v) = \displaystyle \sum_{j=1}^{n} c_{j} f(v_{j}) = \displaystyle \sum_{i=1}^{m} d_{i} w_{i}$
と表せる。
$V$ の基底に $f$ を適用した結果、ある $a_{ij} \in F$ により
$f(v_1) = \displaystyle \sum_{i=1}^{m} (a_{i1})\ w_{i} \ ,\ ... \ ,\ f(v_j) = \displaystyle \sum_{i=1}^{m} (a_{ij})\ w_{i} \ ,\ ... \ ,\ f(v_n) = \displaystyle \sum_{i=1}^{m} (a_{in})\ w_{i}$
と表せるとすれば、線形写像 $f$ は
$f(v) = f \left( \displaystyle \sum_{j=1}^{n} c_{j} v_{j} \right) = \displaystyle \sum_{j=1}^{n} c_{j} \ f(v_{j}) = \displaystyle \sum_{j=1}^{n} c_{j} \ \left( \sum_{i=1}^{m} (a_{ij})\ w_{i} \right) = \displaystyle \sum_{i=1}^{m} \left( \sum_{j=1}^{n} c_{j} \ (a_{ij}) \right) \ w_{i} $
となるので、
$d_i = \displaystyle \sum_{j=1}^{n} c_{j} \ (a_{ij})$
となる。
これは $(c_1\ ,\ ....\ ,\ c_j \ ,\ ...\ ,\ c_n)$ と $(a_{i1}\ ,\ ...\ ,\ a_{ij}\ ,\ ...\ , \ a_{in})$ の内積であり、$d_i (i=1,...,m)$ を縦にならべ以下のように書いて演算を定義することができる。この $a_{ij}$ を縦 m 行、横 n 列で順に並べたものを m 行 n 列の行列という。
\left(
\begin{array}{c}
d_1 \\
... \\
d_i \\
... \\
d_m
\end{array}
\right) =
\left(
\begin{array}{c}
\sum_{j=1}^{n} c_{j} \ (a_{1j}) \\
... \\
\sum_{j=1}^{n} c_{j} \ (a_{ij}) \\
... \\
\sum_{j=1}^{n} c_{j} \ (a_{mj})
\end{array}
\right) =
\left(
\begin{array}{ccccc}
a_{11} & ... & a_{1j} & ... & a_{1n} \\
... & ... & ... & ... & ... \\
a_{i1} & ... & a_{ij} & ... & a_{in} \\
... & ... & ... & ... & ... \\
a_{m1} & ... & a_{mj} & ... & a_{mn}
\end{array}
\right)
\left(
\begin{array}{c}
c_1 \\
... \\
c_j \\
... \\
c_n
\end{array}
\right)
このように線形写像 $f$ でベクトルを写像した際には、線形性の性質から各基底の係数の間には対応関係ができ、行列により係数間の対応を記述できる。この行列を線形写像の表現行列という。
任意の線形写像は表現行列により表現できる。
$V \subset R^n, W \subset R^m$ ならば $f : V \mapsto W$ の表現行列は m 行 n 列となる。
定義 (行列式)
定義 (固有値)
定義 (固有ベクトル)
微積分
位相空間論
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幾何学
定義 (道)
$R^1$ の閉区間を $I=[0, 1]$ 、$X$ を位相空間とする。連続写像 $\alpha : I \rightarrow X$ を $X$ 内の道という。
$\alpha(0)$ を始点、$\alpha(1)$ を終点という。始点と終点が一致している道をループという
定義 (ホモトピー)
$X$ を位相空間とする。連続関数 $H: [0, 1] \times [0, 1] \rightarrow X$ が、$X$ 内の 道 $\alpha, \beta$ に対し
$H(0, t) = \alpha (t) , H(1, t) = \beta (t)$
を満たすとき、写像 $H$ を道 $\alpha,\beta$ の間のホモトピー (homotopy) という。
2つの道 $\alpha,\beta$ の間にホモトピーが存在することを、$\alpha$ と $\beta$ は互いにホモトープ (homotope)、ホモトピック (homotopic) である、または、同じホモトピー型であるという。
互いにホモトピックであることを $\alpha \simeq \beta$と表す
参考
Qiitaで使える数式や圏論については、以下を参考にさせていただきました。
- MathJax Documentation
- Qiitaの数式チートシート
- Easy Copy MathJax
- MathJaxで利用可能なTeXコマンド(非公式)
- 機械学習などの本でよく出てくる数式の、Qiitaでの書き方集
- nLab
以上