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代数学メモ

Last updated at Posted at 2020-01-07

動機

  • 数学に関する記事を作成していて、分量が増えたため分割。
  • ガロア理論で出てくる言葉が理解できる程度をとりあえずの目標とする。

群論

環論

定義 (半環 , semi-ring)

集合 $R$ と、その元に関する加法 $+$ , 乗法 $\cdot$ が以下の性質を満たすとき、 $(R, +, \cdot)$ を半環という。(モノイドと群の差は乗法の逆元の有無であることに注意する。つまり半環の場合、逆元は存在しないかもしれない。)
(1) 加法について $R$ は単位元 $0$ をもつ可換モノイドをなす
(2) 乗法について単位元 $1$ をもつモノイドをなす
(3) 乗法は加法に対し分配法則が成り立つ
 $r \cdot (s + t) = r \cdot s + r \cdot t$
 $(r + s) \cdot t = r \cdot t + s \cdot t$
(4) 0倍は $R$ を0化する。つまり $0 \cdot r = r \cdot 0 = 0$

定義 (環, ring)

集合 $R$ と、その元に関する加法 $+$ , 乗法 $\cdot$ が以下の性質を満たすとき、 $(R, +, \cdot)$ を環という。
(1) 加法について $R$ は可換群
(2) 乗法の単位元 $1$ が存在する。
 $\exists 1 \in R \: s.t. \: \forall r \in R , 1 \cdot r = r \cdot 1 = r$
(3) 乗法について結合法則が成り立つ
(4) 加法と乗法について分配法則が成り立つ

$\exists 1 \in R \\: s.t. \\: \forall r \in R , 1 \cdot r = r \cdot 1 = r$

定義 (可換環 , commutative ring)

環 $(R, +, \cdot)$ のうち、乗法について交換法則が成り立つものを、可換環という

$(R, +, \cdot)$

定義 (零環)

1つの元しか持たない環 $(\{x\}, +, \cdot)$ を零環という。
演算は、加法、乗法ともに、$(x,x) \rightarrow x$で定義する。
なお、零環では、加法の単位元 $0$ , 乗法の単位元 $1$ は一致してしまう。

定義 (零因子, zero divisor)

環 $(R,+,\cdot)$ の元 $a \in R$ は, $ax=0 (x \neq 0) $ となる $x \in R$ が存在するとき、左零因子と呼ばれる。同様に、環の元 $a \in R$ について、ある $y \neq 0$ が存在して $ya=0$ となるとき、 $a \in R$ は右零因子と呼ばれる。左または右零因子である元を、単に零因子と呼ぶ。

$ax=0 (x \neq 0) $

定義 (整域 , integral domain)

可換環 $(R,+,\cdot)$ で,単位元 $1$ を持ち,零元 $0$ 以外に零因子を持たない環を、整域と呼ぶ。

$(R,+,\cdot)$

体、ガロア理論

定義 (交代多項式 , alternating polynomial)

多項式の変数のうち任意の2つを入れ替えたとき、符号が反転する多項式を交代多項式と言う。 $\sigma$ を置換とすると、
$f(x_{\sigma(1)}, \cdots, x_{\sigma(n)}) = sgn(\sigma) f(x_1, \cdots, x_n)$
もっとも単純な交代多項式は差積である。

定義 (差積, difference product)

n個の変数 $x_1 , \cdots , x_n$ に関する差積とは、以下で与えられる多項式のことをいう。
$V_n = \displaystyle \prod_{1 \leq i \lt j \leq n} (x_j - x_i)$

$V_n = \displaystyle \prod_{1 \leq i \lt j \leq n} (x_j - x_i)$

定義 (単多項式)

最高次係数が 1 の一変数多項式を単多項式、モニック多項式と呼ぶ。
たとえば、$x^2 + ax + b$ がそうである。

定義 (最小多項式)

$E/F$ を体の拡大とし、$a \in E$ , $F[x]$ を F 上の x の多項式環とする。
$a$ の最小多項式とは $a$ を根に持つ $F[x]$ の 0 でない多項式のうち最小次数の単多項式である。

定義 (分離多項式)

体 $K$ 上の多項式 $P(X)$ が分離的とは、$K$ の代数的閉包においてその根が相異なる(重複を考えない根の個数が多項式の次数に等しい)ことをいう

定義 (体 , field)

零環ではない可換環 $(R, +, \cdot)$ のうち、加法の単位元 $0$ を除く全ての元 $r \in R$ について、乗法 $\cdot$ に関する逆元 $r^{-1} \in R$ が存在するとき $(R, +, \cdot)$ を体 $F$ と呼ぶ。

定義 (交換子群 , commutator group)

群 $G$ の部分群 $H, K$ に対し、$[h, k] = \{ hkh^{-1}k^{-1} | h \in H, k \in K \}$ で生成される $G$ の部分群を $[H, K]$ で表し、HとKの交換子群という。
$G$ の交換子群を $[G, G]$ と定義する。これは正規部分群となる。

$[h, k] = \\{ hkh^{-1}k^{-1} | h \in H, k \in K \\}$

定義 (可解群 , solvable group)

有限群 $G$ の部分群の列を考える。
$G = G_0 \supset G_1 \supset \dots \supset G_{n-1} \supset G_n = \{ e \}$
このとき、商群 $G_k/G_{k+1} (k=0, \dots, n-1)$ がすべてアーベル群のときに、$G$ を可解群という。

$G = G_0 \supset G_1 \supset \dots \supset G_{n-1} \supset G_n = \\{ e \\}$
$G_k/G_{k+1} (k=0, \dots, n-1)$

定理 (可解群)

群 $G$ の正規部分群を $H$ とする。
$G$ が可解群 $\iff H$ および $G/H$ が可解群

定義 (拡大)

体 $K, L$ とする。体の拡大 $L/K$ とは、$K$ は $L$ に集合として含まれ、$K$ の体構造が $L$ の体構造の制限として得られる構造に一致していることをいう。

定義 (代数拡大)

体 $K$ の拡大 $L/K$ が代数的とは、体 $L$ のすべての元は $K$ 上で代数的であること。
つまり $L$ のすべての元は $K$ 係数のあるゼロでない多項式 $f(x)$ の根である。
代数的でない体の拡大 (超越元を含む場合) は、超越的と言う

定義 (分解体 , splitting field)

定義 (正規拡大 , normal extension)

体の代数拡大 $L/K$ において、L が K[X] の多項式の族の分解体であるとき、拡大 $L/K$ は正規拡大という

定義 (分離拡大, separable extension)

代数的体の拡大 $E \supset F$ で、すべての $a \in E$ に対して $a$ の $F$ 上の最小多項式が分離多項式であるとき(すなわち相異なる根をもつとき)、拡大 $E/F$ は分離拡大という

定義 (ガロア拡大)

体 $K$ の代数拡大 $L/K$ であって、正規拡大かつ分離拡大であるものをガロア拡大という。

定義 (中間体)

$K, M, L$ を体とする。
$L/M$ および $M/K$ がともに体の拡大であるとき L/M/K と書いて体の拡大の列と言い、$M$ を拡大 $L/K$ の中間体という。

定義 (ガロア群)

体 $L$ を体 $K$ の拡大体とする。拡大 $L/K$ の自己同型を $K$ の元を固定する $L$ の自己同型とする。
このとき $L/K$ の自己同型全体は群を成し、これを $Aut(L/K)$ とする。
$L/K$ がガロア拡大のとき、 $Aut(L/K)$ を拡大 $L/K$ のガロア群と呼び $Gal(L/K)$ と書く。

定理 (ガロア理論の基本定理)

$K$ を体, $L$ を $K$ の有限次ガロア拡大, $M$ を $L$ と $K$ の中間体 とする。
また $L^H$ を 部分群 $H$ の下で不変な $L$ の元のなす $L$ の部分拡大、 $Gal(L/M)$ を拡大 $L/M$ のガロア群とする。

このとき、中間体 $M$ と、ガロア群 $Gal(L/K)$ の部分群 $H$ について、以下が成り立つ。

(1) $M = L^{ Gal(L/M) }$
(2) $H = Gal(L/L^H)$
(3) $M$ とガロア群 $Gal(L/K)$ の部分群 $H$ の間の対応は全単射であり、以下の 対応 $\phi, \psi$ は互いに逆である。
$\phi : M \rightarrow H = Gal(L/M)$
$\psi : H \rightarrow M = L^H$
(4) 上記(3)の対応は包含関係を逆にする。すなわち、
$M_1 \supset M_2 \Rightarrow \phi(M_1) \subset \phi(M_2)$ ,
$H_1 \supset H_2 \Rightarrow \psi(H_1) \subset \psi(H_2)$

$\phi : M \rightarrow H = Gal(L/M)$
$\psi : H \rightarrow M = L^H$
$M_1 \supset M_2 \Rightarrow \phi(M_1) \subset \phi(M_2)$ 
$H_1 \supset H_2 \Rightarrow \psi(H_1) \subset \psi(H_2)$

なお、古典的ガロア理論は、グロタンディークのガロア理論に拡張され、圏論により定式化される。

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