運用設計の範囲を理解する|人的・業務・システムの3つの視点
運用設計って、名前は聞くけど実際なにをどう設計するのかよくわからない……。
そんな状態だった運用初心者の私が、書籍や実務を通して学んだ「運用設計の基礎と実践ポイント」を、自分なりに整理してまとめました。
※書籍に沿って基礎からまとめていますので、入門編の内容も一部含みます。ご了承ください
📖 本記事は「運用設計の基礎知識まとめてみた」シリーズの一部です。
👉 シリーズ全体:運用設計を体系的に学ぶシリーズ|入門から実践まで
◀第1回の記事:運用設計とは?未経験でも理解できる基礎と実践ポイント #1
システムの運用設計を考えるとき、まず大切なのは「どこまでを設計の対象とするか」という範囲を明確にすることです。
運用設計の範囲は大きく分けて以下の3つに整理できます。
- 人(運用に関わる担当者や役割)
- 業務(具体的な運用タスク)
- システム連携(周辺システムとの関わり)
1. 人的な範囲
システム運用には、利用者からの問い合わせを受ける窓口や監視担当、実際に作業を行う運用担当者など、複数の役割が存在します。
実際の組織では、これらの役割を一人が兼務する場合もあれば、逆に細かく分担している場合もあります。
運用設計を行う際は、以下のような情報連携をどう整理するかが重要です。
- 利用者 → サポート窓口(問い合わせ・一次対応)
- 監視担当やオペレーター → 運用担当(一次から二次対応へ)
- 運用担当 → 運用管理者(承認や障害報告)
- 運用担当 → 保守ベンダー(技術的サポートや部品交換依頼)
このように「誰がどの段階で対応し、どのように情報が流れるか」を明確にしておくことで、トラブル発生時にも混乱が少なくなります。
2. 業務的な範囲
運用設計では、導入したシステムに対して「どの業務を誰が行うのか」を定めます。
典型的な役割と業務の関係は以下の通りです。
- サポートデスク:利用者からの問い合わせ対応
- 監視担当:システムの稼働監視
- オペレーター:障害検知や初期対応
- 運用担当:各業務のハブ、全般的な対応
- 保守担当(ソフト・ハード):高度な技術支援や部品交換など
システムが追加されるたびに「どの役割に新しい運用業務が発生するか」を検討し、関係者と調整して設計を進めることが求められます。
3. 周辺システムとの連携範囲
多くのシステムは単独で動いているわけではなく、認証基盤や監視基盤、ログサーバーなどと連携しています。
例えば、Windows環境のパッチ適用を統合管理システム(SCCMなど)で一括制御しているケースもあります。
運用設計の段階で以下を整理しておくことが大切です。
- どの周辺システムと連携するのか
- どんなデータをやり取りするのか
- 障害時の役割分担をどうするのか
これらを図や表で可視化し、事前に役割とフローを合意しておくことで、安定した運用が実現できます。
4. 運用設計の成熟度レベル
「どこまで設計すれば完了か?」という基準には、COBITの成熟度モデル(0〜5段階)が参考になります。
その中でも運用設計の目標は 「レベル3:定められたプロセス」 を確立することです。
つまり、手順書や体制図など必要なドキュメントを揃え、誰が対応しても同じ品質で作業できる状態を目指します。
さらに運用が始まってからは、改善活動によってレベル4や5へ引き上げていくことが期待されます。
まとめ
運用設計では以下の3つの範囲を整理することが基本です。
- 人:役割と情報の流れを明確にする
- 業務:タスクを担当者ごとに定義する
- システム連携:周辺システムとの関係を可視化する
そして「レベル3(定められたプロセス)」を目指し、運用を始める準備を整えることが運用設計のゴールとなります。
📚 参考文献
近藤誠司『システム運用の教科書 改訂新版』技術評論社
※本記事は書籍内容を参考にしつつ、筆者の視点で再構成・要約したものです。
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