投稿者について
2005年からサーバーエージェントで働いています。最近は主に社内のエンジニア職の育成施策を担当しています。
この記事について
前回投稿してから1年半ほど間が空きました。
その後も「生成AI徹底理解リスキリング for Developers」というエンジニア職向けの社内研修を続け、途中からコーディングエージェントの教材をカリキュラムに追加したのですが、その際に感じたことを書きたいと思います。
図:エンジニア職向け社内研修「生成AI徹底理解リスキリング for Developers」のカリキュラム

研修についての詳しい内容は、最後に記載してあるリンク先の記事をご覧ください。
コーディングエージェントの教材と講義については、ちょうと良いタイミングでCursorの社内勉強会を希望者向けに始めていた社員に依頼しました。
コーディングエージェントを使ってみる
教材と講師は他の社員にお願いできたので、作ってもらったコーディングエージェントの教材を評価出来るように、「コーディングエージェント初心者」というペルソナになり、オンラインハンズオンのリハーサルをやる、というのが次の仕事ですが、
「1Day開発イベント」で積極的に使ってもらい「コーディングエージェント初心者」が普段使いを始めるキッカケにする
という狙いもあったので、まずは自分でコーディングエージェントの普段使いを始めてみました。
とにかく使い慣れる
普段開発の現場で仕事をしていない身としては、いきなり課題の実装を始めるのはハードルが高かったので、助走をつけました。
助走1:情報収集
自分の用途にあったコーディングエージェントや研修課題を実装するのに最適な技術スタックはなにか?を把握しようと思い、以下の順で半日ほどかけて情報を収集しました。
- AI(ChatGPT、Gemini)
- 社内ポータル(勉強会のアーカイブ動画)や社内SNS(Slackのオープンチャンネル)
- 社外のエンジニアコミュニティサイト(このQiitaなど)
- 過去に実施した研修の受講者の提出物
助走2:ハンズオン動画で質量転換
Youtubeでハンズオン動画を探してサンプルアプリケーションを実装する。という作業を3日間ほど続けました。
”Cursor 初心者 ハンズオン”
”Windsurf 初心者 ハンズオン”
“Claude Code 初心者 ハンズオン”
などのキーワードで検索すると大量の動画がリストアップされるので、教材には事欠きません。数をこなしていくうちに、研修のオンラインハンズオンで使うことにしていたCursorが、
- 利用者数と世間のノウハウの蓄積が多そう
- 使い勝手がVSCodeとほぼ同じで違和感なく操作できる
と思ったので、普段使いするツールに決めました。
Claude Codeについては、Cursorのターミナルウィンドウで動作させ、複数エージェントを協業させるハンズオン動画を見つけて試しました。
助走3:とにかく普段使いする
調べものをしたいときはブラウザでChatGPTでやGeminiやGoogle検索を使うのではなく、Cursorのチャットパネルで調べるようにしました。(ウィンドウの右下あたりにある本来はコードを書くときなどにAIと対話をする場所)
たとえば『今日スーパーで惣菜買って帰りたい。コレステロール値を下げるものを教えて』とか。
助走後の気付き
3段階の「助走」をしましたが、結果として「助走1:情報収集」は やらなくてもよい遠回りでした。自分の用途にあったコーディングエージェントも、研修課題を実装するのに最適な技術スタックも、スーパーの惣菜のように、コーディングエージェントにお勧めを聞けばよかったんです。
研修の課題をコーディングエージェントで実装してみる
Cursorにお勧めを聞いてスーパーで惣菜を買うくらい使い慣れてきたところで、次は「1Day開発イベント」の課題を毎日1つ実装するという作業を繰り返しました。
作業手順としては以下の通りです。
- 新しいプロジェクトを開始する
- やりたいことをAIへ伝える
- AIにヒアリングをしてもらって実装範囲を明確にして仕様を決める
- AIに技術スタックとアーキテクチャをお勧めしてもらい決める
- AIに開発/実行環境を作ってもらう
- 実装して検証と修正を繰り返す
6.1. AIにコードの実装とテストをしてもらう
6.2. 実装してもらったものを使う
6.3. 修正点をAIへ伝える - AIに資料を書き出してもらう(仕様、環境構築手順、アプリケーションの起動停止手順など)
図:研修課題をコーディングエージェントで実装したときのAIとの対話

1つの課題に半日ほどかけ、仕上がりは以下のようになりました。
AIとの仕事のやり方を覚える
前出の研修課題の実装をした時の作業手順から「AI」を消してみます。
- 新しいプロジェクトを開始する
- やりたいことを伝える
- ヒアリングをしてもらって実装範囲を明確にして仕様を決める
- 技術スタックとアーキテクチャをお勧めしてもらい決める
- 開発/実行環境を作ってもらう
- 実装して検証と修正を繰り返す
6.1. コードの実装とテストをしてもらう
6.2. 実装してもらったものを使う
6.3. 修正点を伝える - 資料を書き出してもらう(仕様、環境構築手順、アプリケーションの起動停止手順など)
人と仕事をする時の段取りと違いはなさそうです。
Youtubeのハンズオン動画をこなしてる時や、研修課題を実装している時、いくつか印象的な出来事がありました。
前出のチャットボットについて、より「ソヤマン」らしい回答を得るために、チャットボットが使うJSONファイルを作成する作業をCursorに依頼しました。
印象的な出来事1:依頼範囲
データを「PDF→テキスト→JSON」と変換する際、前半の「PDF→テキスト」でAIが袋小路にハマったので、人力で変換することにしました。AIは優秀なビジネスパーソンのように、依頼されたことをなんとか実現するべく、あらゆる手段を突き詰め代替案も提案してくれます。ですが不本意な遠回りをすることもあるので、人にお願いした時と同様に、過度な期待を控えて早めに見切りをつける判断も必要です。
印象的な出来事2:進捗報告
データ変換後半の「テキスト→JSON」は任せて大丈夫そうだったので、『完了を100%とした場合の進捗率を5分毎に報告してください。』と伝えて変換作業を依頼しました。『5分毎に進捗を報告します』と返答してくれたものの、いつまでたっても進捗報告がなく、理由を問い詰めてみると、『5分ごとに進捗をプッシュ通知することはできません』という回答が返ってきました。AIとのやり取りを遡って見返してみると、決して“No”とは言わず、なんとか期待に応えようとギリギリ嘘にはならない回答をしていたようにも見えました。プロジェクトの進捗管理と同様に、報告に違和感があったときには、背景を掘り下げて確認したほうがよさそうです。
印象的な出来事3:チームマネージメント
Claude Codeを使ったハンズオン動画では複数のエージェントを起動して使用しました。エージェントが分業してアプリケーションを実装していく様を見て衝撃を受けました。その一方で個別に役割を伝えていない場合、なにもしていないエージェントが必ずいるのにも気付きました。たいていの人間と同じように、集団の中で全員が休みなく常に自律的に仕事を見つけて働き続けるのは難しいようです。チームマネジメントと同じく、役割設計が生産性を上げる重要なポイントだと感じました。
まとめ
研修の準備を通じて、改めて他者との協業について考えることが出来ました。
AIはとても頼りになる仕事仲間ですね。
【参考】エンジニア職向け社内研修「生成AI徹底理解リスキリング for Developers」について
研修の詳しい内容は、会社の公式技術ブログに投稿してあるので、興味のある方はぜひご覧ください。






